大新聞でも取り上げられて一騒動起こっている。出版社の武田ランダムハウスジャパンの損害は数千万円になると思う。
いずれブログでこの本のあらすじを紹介するが、13章の「さまよえるシオニスト」の前後をのぞければ、翻訳もふくめてこの本の出来は悪くない。
新聞は不祥事として報道し、初版本がコレクターアイテムとなり、アマゾンではいまや4万円で売りに出されている。
しかし今必要なのは出版社である武田ランダムハウスジャパンのバッシングではない。
問題はどうやって再発を防止するかだ。
武田ランダムハウスジャパンは他にも良い本を多く出している。今回の件があって、ホームページを見て、興味を惹かれて読んだ本が「ぼくと1ルピーの神様」だ。

著者:ヴィカス スワラップ
武田ランダムハウスジャパン(2009-02-20)
販売元:Amazon.co.jp
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この本は2009年度アカデミー賞受賞作品の映画「スラムドッグ$ミリオネア」の原作である。
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出演:デーブ・パテル
メディアファクトリー(2009-10-23)
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実は家内がWOWWOWで録画していたのを知らずに、ツタヤでDVDを借りてしまった。
3回繰り返して見てしまったが、非常に楽しめる映画である。
そして原作の「ぼくと1ルピーの神様」も良い。映画の脚本と原作はかなりストーリーが異なるが、映画以上に原作も大変楽しめる作品だ。
原作者はインドの現役外交官で、トルコ、アメリカ、エチオピア、イギリスに赴任経験がある。
この作品がデビュー作で、16カ国語に訳されるベストセラーになったという。
映画でもヒンズー教徒が主人公の家族が住むイスラム教徒の村を攻撃するシーンがあったが、小説でもインドのヒンズー教徒とイスラム教徒の人種問題がところどころに出てくる。
たとえばこんな感じだ。
500,000ルピーの章では、1971年のインド・パキスタン戦争の話を取り上げている。インド人兵士が次のように語る場面がある。
「パキスタンの兵士はインド人兵士の死体を、決してインド軍に引き渡さないというもっぱらの噂だった。たとえ死んだ兵士がヒンドゥー教徒であろうと、ムスリムの習慣に従って、死体を地中に埋めるらしいと。」
「私が死んだら、絶対に火葬にしてほしいんです。さもなければ、私の魂は3万6千年の間地獄をさまよい、決して安らぎを得ることはできなくなります。」
また主人公の新しい雇い主となる大女優からは、次のような会話がある。
「じゃあイスラム教徒ね。ごめんなさい、一緒に住んでいる母が、イスラム教徒の手が触れたものは一切口にしないの。わたくし自身は、汚れがうつるとかいう非科学的なことは信じていないけれど、どうにもできないわ」
この辺が映画のストーリーとは直接関係ない部分で出てくる。
インドの中の少数派イスラム教徒とヒンズー教徒の対立は根深いもののようだ。
閑話休題。
武田ランダムハウスジャパンはこんな良い本も出している。
是非バッシングに耐え、損失に耐えて、再発防止策を出版業界で徹底して、出版業に精を出して欲しい。
頑張れ!武田ランダムハウスジャパン!
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