2011年09月22日

証券会社が売りたがらない米国債を買え! 米国債投資の啓蒙書

証券会社が売りたがらない米国債を買え!証券会社が売りたがらない米国債を買え!
著者:林 敬一
ダイヤモンド社(2011-08-26)
販売元:Amazon.co.jp
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読書家の上司に借りて読んだ。

著者の林敬一さんは最初JALに入社し、アメリカ駐在中に投資銀行のサロモン・ブラザースに転職、その後英国投資会社のIT系人材会社に転職し、M&Aを手がけた後2009年に独立。現在はフリーランスのコンサルタントをしているという。

林さんは「ストレスフリーの資産運用」というブログを書いている。

この本は林さんが所属しており、筆者の会社の大先輩でもある森祥二郎さんが主催している「サイバー・サロン」という1,000人くらい会員のいるメーリングリストで発信したものだ。

アマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、目次を参照して欲しい。


米国債投資はフィクストインカム(利回り確定)、リスクフリーで、購入・管理手数料もかからない。しかも売りたいときに売れるという流動性があるという。安全・確実・有利な投資なのだと。

しかし、たぶん多くの人の反応も同じだろうが、筆者も上司からこの本を勧められたときにドル安の為替リスクはどうなるのか?との疑問がまず湧いた。


為替変動の例ー筆者のドル建ての生命保険

為替変動の一例としてこのブログでも紹介した、筆者がアメリカ駐在の時に購入した掛け捨ての生命保険の例を紹介しよう。

これは30年間毎月100ドル強を支払い、78歳までに死亡すると50万ドルの生命保険が支払われるというものだ。

life insurance











最近日本でもネット生命保険などが、さかんに保険料が安いことを宣伝しているが、筆者の年齢では100ドル=8,000円程度の保険料では、期間10年で1千万円の生命保険すら買えない。

アメリカで買った生命保険は、30年間の保険金総支払額は4万ドル弱、つまり保険料の8%以下。それでいて30年間のうちに死亡すれば50万ドルが支払われるものだ。もし喫煙者だと料率は倍以上に跳ね上がる。

筆者の場合、コレステロール値が基準よりやや高かったので、最低料金ではなかったが、タバコを吸わない健康な人はそれだけ死亡率が低いということだ。

その後アメリカでも10年超の生命保険商品はなくなった。30年間同じ保険料という現在では到底ありえない有利な条件の保険だった。

10年前に購入した時の為替レートは1ドル120円くらいで、死亡時の保険金は6千万円くらいになると想定していた。他の掛け捨ての生命保険もあり、家のローンも生命保険でチャラになるので、全部で1億円くらいと家があれば、残された家族はなんとかなると踏んでいた。

ところが1ドル70円くらいになると50万ドルでも3千5百万円にしかならないので、だいぶ安心感が違ってくる。

このままドル安が続くかどうかわからないし、GDPで世界ランクがどんどん下がり、日本政府の財政赤字が際限なく膨らむと、保険が満期を迎える20年以内には逆に円安になる可能性が高いと思う。

ひょっとすると保険料を支払っているときは円高で負担が楽になり、死亡した時は円安になって円建てで十分な保険金となるという、いいとこどりの可能性もあるかもしれない。

(もちろん78歳までに死亡しなければ、保険料は掛け捨てだが、その場合には78歳まで生きられたことを喜ぶべきだろう。)

閑話休題。


長期複利運用すれば為替変動をカバーできる

このように為替レートの変動は大きいが、林さんは複利で長期運用すれば、金利メリットが為替変動ロスを下回る可能性は低いと説明している。

例として1997年に退職した某企業の元財務部長の米国債への投資を挙げ、13年間でみると米国債に5,000万円投資したほうが、日本国債に同額投資するより約2,000万円金利収入が多いという結果となったことを紹介している。

それは年間の金利差4.5%を複利で運用すれば、13年間で77%となり(筆者計算)、投資実行時との為替差損の23%を軽くクリアーできるからだ。

実際にはその時々の為替レートにあわせて期間毎に計算する必要があるが、それでもドル安になってもまだ金利差のほうが勝つことがわかる。

さらに円が対ドルで77円前後と史上最高値をつけている現状からさらに円高となるかどうかという疑問も残る。

中国の人民元は高い成長率と好調な輸出に支えられて、今後も引き続き引き上げられると思うが、成長の鈍化した日本ではこれ以上の大幅な円高、たとえば1ドル=50円になるとかは、考えずらいところだ。

2011年8月5日に格付け機関のS&Pが米国債をAAAからAA+に引き下げたからといって、依然として米国債は、林さんが”リスクフリー”と呼ぶ世界で最も安全な投資であることは間違いない。

その証拠に米国債の買い手は外国投資家が多く、外国投資家の中でも公的機関が8割を占める。政府系投資ファンドが安全な投資先として米国債に投資しているのだ。

為替リスクについても、長期複利投資なら為替でやられる可能性は少ない。林さんの言うように、30年物などの長期米国債が日本でも手軽に買えるのであれば、「買い」だと思う。


実際に買ってみないと分からない点もありそう

一方、アマゾンのカスタマーレビューを見ると、この本を5つ星評価している人にまじって、2つ星評価の人もいる。

この人は「米国債に投資した経験のある者からすれば、証券会社の外国債の販売担当者の回し者のような気がしてなりません。」と言っている。

要は米国債は売値と買値に大きな差があり、見かけ上は手数料がかかっていないようにみえるが、売りと買いの差が証券会社の儲けであり、それは相当大きいと。

自分で実際に買ってみないとわからない点もあるのだと思う。


結局は複利投資が長期的には一番有利

筆者はこれまで株、金、米国投資信託、郵貯の定額預金など様々なものに投資してきた。

たとえば金はアルゼンチンにいた時に、インフレヘッジのためにメキシコ金貨に投資した。ちょうどタイミングがよかったこともあり、1オンス300ドル以下で買って、約1年後に650ドル程度で売った。しかし金はその後相場が長く低迷し、ずっと300ー400ドル前後のボックス相場の時期がたしか20年近くあった。

日本株は長期投資対象としては不適格のパフォーマンスだし、米国投資信託は手数料が高い上に、当てることは難しい。筆者の場合にはIT系米国ファンドに投資して30%くらい損した。

結局筆者の今までの投資で、最も確実に資産が増えたのは、当時7%前後で購入した郵貯の定額預金だった。

日本株は良いタイミングで売れたものは、3倍くらいで売れてすごく儲かったが、逆に20年以上持っていた株でも簿価を割って損失が出たことがある。現在も20年以上保有しているわりには、利益はたいしたことがない。

その意味では筆者も林さんの意見に同感で、長期的には複利投資が一番だと思う。そして複利投資をしろというのは、このブログでも紹介した名著「バビロンの大富豪」の教えるところでもある

バビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのかバビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか
著者:ジョージ・S・クレイソン
グスコー出版(2008-08-08)
販売元:Amazon.co.jp
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住宅ローンは返すな?

筆者はまだ住宅ローンを抱えているが、林さんは住宅ローンは変動金利なら1%前後であり、繰り上げ返済はせず、”円キャリートレード”として投資に回したほうがよいと勧めている。

筆者の住宅ローンの金利は、今年借り換えたので平均1.2%となった。こんな低利なので、筆者も全く繰り上げ返済する必要性を感じていない。


最終評価

この本のもとになったメルマガ講座が、特定のサークルの人達向けの講義だったことも考えると、アマゾンでレビューを書いている人のように、林さんを「証券会社の回し者」とは思わない。

そもそもこの本を読んで米国債を買うことになっても、林さんには一切直接的な便益はないと思う。

その意味で、この本は「個人が米国債を買う」というほとんど知られていなかった投資方法にスポットライトを当て、日本国債との比較、購入方法などを懇切丁寧に解説しており、米国債投資の啓蒙書というべきだと思う。

読んで面白い海外投資ということなら、このブログで紹介している「海外投資を楽しむ会」の橘玲さんの「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」などの本にはかなわないが、米国債だけに的をしぼって、マニュアル的に使えるので、大変役立つ本と思う。

黄金の扉を開ける賢者の海外投資術黄金の扉を開ける賢者の海外投資術
著者:橘 玲
ダイヤモンド社(2008-03-07)
販売元:Amazon.co.jp
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筆者は定年退職まであと数年あるが、この本を読んで退職金の運用先としては米国債も考慮に入れようと思った。大変参考になる本だった。


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Posted by yaori at 02:44│Comments(0)TrackBack(0) 趣味・生活に役立つ情報 | Financial Intelligence

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