2011年10月04日

史上最大のボロ儲け 金融危機で巨大化したポールソン&カンパニー

史上最大のボロ儲け ジョン・ポールソンはいかにしてウォール街を出し抜いたか史上最大のボロ儲け ジョン・ポールソンはいかにしてウォール街を出し抜いたか
著者:グレゴリー・ザッカーマン
阪急コミュニケーションズ(2010-12-09)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

2008年にアメリカのサブプライムローンの破綻から端を発した世界金融危機は世界の株式投資家の資産を30兆ドル減らし、世界の金融機関に3超ドルの損失をもたらした。その後の全世界同時不況によりGMが米国政府の支援により倒産を免れるなど、世界経済に与えた影響は計り知れない。

そんな中で、世界同時不況で巨額の利益を挙げ、自らのヘッジファンドを世界第2位の規模にした投資家がいる。

それがポールソン&カンパニーのCEOジョン・ポールソンだ(同じポールソン姓でも、ヘンリー・ポールソン元財務長官とはつながりはない)。

この本では400ページに渡って、ポールソンや彼を取り巻く部下、他のヘッジファンド代表者などが、世界金融危機をどう乗り越えたかをそれぞれの人にスポットライトを当てて、一つのストーリーとして構成している。

2007年にポールソン&カンパニーの挙げた利益は150億ドル(当時の為替レートで1.8兆円)、ポールソン自身は40億ドル(4,800億円)の収入を得た。2008年にも会社は50億ドル、ポールソン自身は20億ドルの収益を上げている。

ポールソンは世界金融危機以前は資金20億ドルと自己資産1億ドルを運用していた中小ヘッジファンドだったが、2009年には360億ドルの運用資産を持つ世界第2位のヘッジファンドとなった。

まさに世界一成功した投資家だ。


最近は金に注目

最近ポールソンはドル安にも注目している。人民元以外のほとんどの主要通貨は危ないとして、金を安全資産と見て、金の現物と金鉱山会社に巨額の投資をした。

2009年夏にポールソンは「3,4年後にはみんなもっと早く金を買っておけばよかったって言うさ。いずれドルの価値が下がり、インフレになる。間違いなくね」と語っているという。

金相場はポールソン予言の通り、急騰している。

gold2006-2011





出典:三菱マテリアルホームページ

なんという先見の明だろう。


米国不動産バブルの前にCDSを大量購入

筆者は日本のバブル直後に米国駐在から帰国した後で、郊外に一戸建ての家を購入して大きな損失をくらった。

投資は言うは易し、行うは難しだが、この本を読むと今から思えばサブプライムローンの破綻や米国の住宅バブルの破綻は、日本のバブル崩壊と同じ道を10年後にたどった当然の帰結だったことがわかる。

FRBは実質ゼロ金利政策を実施し、米国の不動産価格は大恐慌以来下がったことがないので、誰もが一本調子で上がると信じていた。筆者はバブル時代には米国に駐在しており、日本にいなかったが、この状況は日本のバブルと全く同じである。

ポールソンが違っていたのは、不動産市場はバブルで、住宅ローン債権の価値は下がると見込んで、逆バリで一挙に投資したことだ。

ポールソンはニューヨークのクイーンズで育ち、ニューヨーク大学とハーバードビジネススクールを優秀な成績で卒業後、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ),ベアスターンズなどに務めた。1994年に独立して着実な運用が売り物のヘッジファンド会社を設立した。

ポールソン&カンパニーの業績はずっと低位安定しており、不動産投資の経験もなかったが、サブプライムローン破綻前の2007年からあらゆる金融会社のCDS(Credit Debt Swap)というデリバティブを買い占め、巨額の利益を挙げる。当時100ドルの債権が50セント(0.5%)以下の値段で購入できたという。

2007年秋、ついにサブプライムローンが破綻し、世界の金融機関が巨額の評価損を計上しはじめた。CDSを買った企業から現金が送られてきてポールソン&カンパニーは巨額の利益を計上しはじめた。2007年の利益は150億ドルにも上った。

2007年秋にはジョージ・ソロスがポールソンを呼んで、CDSの手ほどきを受けている。いよいよポールソンへの注目度が高まっていった。

2008年にはベア・スターンズのJPモルガンへの身売り、2008年9月にはリーマン・ブラザースの清算、住宅金融公社ファニーメイ、フレディマックの救済、バンクオブアメリカによるメリルリンチの買収などが続けて起こった。

CDSの価格は跳ね上がり、2008年もポールソン&カンパニーは50億ドルの利益を計上した。


バブル崩壊後は金融機関株で大儲け

さらにポールソンはロイヤルバンクオブスコットランド、バークレイズ、ロイズTSBの核の空売りで10億ドルを稼いだ。イギリスの世論はポールソンをバブルを利用して儲ける"Public enemy"(公衆の敵)と見なしたという。

2009年にはシティバンクを中心とした金融機関の株や債権に200億ドルを投資し、ちょうど経済が達直し始めたタイミングに合致して30億ドルの利益を挙げた。
ポールソンが次のターゲットを金として、行動を開始していたことは前述の通りだ。


グリーンスパンを顧問に

2008年11月にはポールソンは主要顧客100名を招いて、メトロポリタン・クラブで定例ディナーパーティを開催した。

シャトー・オー・ブリオンシャトー・マルゴーシャトー・ムートン・ロートシルトなど超一流フランスワインがふるまわれ、元FRB議長のアラン・グリーンスパンがポールソン&カンパニーの顧問に就任したことが発表された。


目立たない生活

年間40億ドルも稼ぎ、世界トップのトレーダーとなったポールソンだが、運転手付きの車を使わず、タクシーや電車・バスで通勤しているという。豪邸に住んではいるが、スーパーで買い物するのも以前と同じだ。

この本と同じようなテーマで、この本にも登場する元医者の投資家マイケル・バリーや会社に巨額の損失を与えながら、高額のボーナスを受け取ったモルガン・スタンレーのチームなどを取り上げた「世紀の空売り」という本もある。

こちらは今度紹介する「マネーボール」や「ライアーズポーカー」を書いた人気作家のマイケル・ルイスが書いている。

世紀の空売り世紀の空売り
著者:マイケル・ルイス
文藝春秋(2010-09-14)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


著者のグレゴリー・ザッカーマンはウォールストリートジャーナルの記者で、CNBCの番組にもレギュラー出演しているという。

200時間にもおよぶ関係者のインタビューを通してまとめた作品で、サブプライム破綻直後の有力ヘッジファンドの動きがよくわかる優れた作品である。


参考になれば投票ボタンをクリックして頂きたい。






Posted by yaori at 12:56│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 投資

この記事へのトラックバックURL