2011年10月17日

北野武 超思考 たけしはやはりタダモノではない

超思考超思考
著者:北野 武
幻冬舎(2011-02)
販売元:Amazon.co.jp
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たけしの本を初めて読んでみた。2011年2月発刊の本で、2007年から2010年までの雑誌「パピレス」の「劇薬!」というコラムに書いたものを加筆修正したものだ。

たけしの本を読むのは初めてだが、さすがたけし、タダモノではない。


たけしの最大の能力は状況判断能力ーいわばメタ認知

たけしの最大の能力は状況判断能力だという。先が読める能力といってもよい。まだ漫才をやっていた時に、自分の能力が落ちたと感じた瞬間にやめようと思ったという。漫才もスポーツと同じで、反射神経が衰えればダメになるのだと。

電車を乗り継ぐような感覚だ。だからいつも今の自分が一番好きだという。

映画の仕事でもそうで、どこかに必ず醒めた自分がいるのだと。映画を撮っている自分の頭の斜め上あたりに、もう一人の自分がいて、いつも自分のやっていることを俯瞰しているような感じなのだと。

だからセックスも酒も心から楽しんだことはない。一瞬夢中になっても、次の瞬間にはもう白けている。車も最初にポルシェを買って、フェラーリもランボルギーニも買ったが、楽しめなかったと。

いわゆるメタ認知で、自分のことを常に客観的に見られるのだと思う。だからドーランやハデな着ぐるみなどバカなことを平気でできるのだろう。これが出来る人は強い。


子どもの時のトラウマが原因?

このような常に醒めているようになったのは、子供自体のトラウマが原因だという。たけしのお母さんは、とにかくはしゃいだりすることが大嫌いな人で、食事もうまいというと叱られたという。まずいとかうまいとかいうこと自体が下品なのだと。

殺生して食べているのに、浮かれて喜んでいるバカがあるか。食えるだけありがたいと思えと、よく言われたものだという。

単に家が貧乏で、明日は食えるかわからなかったので、そういうお母さんの教育方針になったのだろうとたけしは言っているが、そんなはずはない。すごいお母さんである。


死ぬことが最後の最後の最大の楽しみ

筆者がこの本で一番気に入ったのは次の言葉だ。

「なんと言っても、最後の最後に、最大の楽しみが待っている。死んだらどうなるか。魂はあるのかないのか。神はいるのかいないのか。死ねば、人生最大の疑問の答えが出るのだ。」

「もちろん単に肉体と精神が分子レベルでバラバラに分解して、無に帰るのに過ぎないかもしれない。そうなったら、疑問の答えどころではないけれど、それでも死の直前までワクワクしながら生きられるわけだ。」

さすがメタ認知能力者だ。ここまで自分を客観的に見られるとはたいしたものだ。

いままでこういうことを言う人を見たことがないが、たしかにその通りだと思う。こういう心境でいられることは、お母さんに感謝しなければならないのかな、とたけしは語っているが、その通りだと思う。

たけしのお母さんはすでに亡くなり、それからたけしは毎朝毎晩仏壇を拝んでいる。たけしの家の仏壇には8人くらい祀っているという、父母、祖母、浅草時代の師匠、黒澤明監督、淀川長治さん、鈴木その子さんとか、たけしにとって大切な人をまつっているのだと。


たけしの映画

たけしの本業はテレビタレントだと。監督として映画は撮ったが、観客がどう思うかを考えず、常に自分の好き勝手に撮ったのだと。

「ソナチネ」などは、日本国内では1週間で上映打ち切りになったが、海外で有名になり、BBCの21世紀に残したい映画100本に選ばれたり、カンヌで候補になったりした。たけし自身は海外でウケるなんて全く予想していなかったので、逆に驚いたという。

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もし本職の映画監督なら、映画が失敗したらダメージも大きいが、たけしは全然問題ないという。


政治感覚もするどい

たけしはレギュラー番組のなかで政治について、ジョークのような独特の見解を言うことがあるが、この本のなかでもするどい状況分析を見せている。

民主党が政権を取る前に、こんなことを書いている。

「俺としては民主党に政権を取ってもらって、誰がやっても同じだというのを見せてほしいわけだ。天下りを全部なくすというのだって、絶対に嘘だと思っている。嘘が言い過ぎなら、無理だ。」

「税金の問題も社会保険の問題も、海外派兵の問題にしても、民主党が政権を採れたらどれだけやれるか、日本が変わるかといったら、全然できないし何も変わらないと思っている。」

「無責任極まりない考え方だが、『やっぱり駄目だったな』と確認したいのだ」と。

「民主主義なんてものは、効くか効かないかよくわからない怪しげな薬みたいなものだ。飲み続けなければ死んでしまうと言われて飲んではいるけれど、『ほんとに、この薬のおかげで生きているんだろうか?』という疑念は消えない。」

「そのうち民主主義なんてまやかしは、もううんざりだと本気で言う人間が増えてくるんじゃないか。何百人もの政治家を養うよりは、一人の独裁者を養う方が経済的だという考え方もある。独裁者だろうが何だろうが、その人間が上手く政治をやってくれればそれでいいのだ。」

たけしらしい過激な言い方だが、たしかに独裁者かマッカーサーのような外人がIMFから送り込まれるとかしないと、日本の長期低落傾向は今の政治家では止められないように最近、筆者も感じている。

野田総理の「民主の敵」という2009年6月の衆議院議員選挙の直前に出した本を読んだので、今度あらすじを紹介する。これなど、いくつか具体的提案はあるものの、日本の国をどうするのかという将来像が全く見えてこない。

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普通の人が総理にまで上り詰めたので、世襲政治家に比べてよっぽとましとは思うが、総理になる前にビジョンを出せない人が、総理になってビジョンを持てるとは思えない。野田さんはブレーンもいない様だし、日本のヘッドレスチキン状態は続くだろう。


独特のたけし節

★朝青龍のサッカー事件の時に、モンゴルでヒデとサッカーをしているビデオを見てなるほどと感心したという。あんな体をして、サッカーのうまいこと。オーバー・ヘッドキックまでやろうとしていた。あの足腰と、運動神経があるから朝青龍は強いわけだと納得したという。

けれども他にはそんなことをいう人はおらず、世論がズル休みだと非難した。たけしは朝青龍がいいとか悪いとか言っているわけでななく、世の中が右を向いたら全員右、左を向いたら左という風潮がどうにも気持ちが悪いのだと。

テレビ局にしても、コメンテーターにしても、みんなと同じでないと世の中を生き抜けないということなのだろうと。


平成教育委員会の起源

たけしがフライデー殴り込み事件を起こして、仕事を休んでいた半年間、やることがないから、ひたすら小学生の勉強をやっていた。小学生の問題集が面白いのだと。それで逸見政孝さんと「平成教育委員会」という番組を立ち上げた。

最初テレビ局に「タレントを集めて小学校の入試問題をやる」という案を持ち込んだら、「どこが面白いんですか?」と聞かれたという。実際に番組をスタートさせたら、視聴率は30%を超えて、他局でも似たような番組をやりだした。

最近漢字の問題を出すクイズ番組がやたら増えているが、辞書を引けば分かるような問題をだしてどうするのかと思うが、考える必要がないから人気なのだろうと。

東大や京大に行ったのは、漢字の勉強をするためだったのかと突っ込みたくなるという。それもそうだと思う。漢字を覚えたいなら東大に行く必要はないし、東大に行ったからといってずば抜けて漢字ができるわけでもない。もっともな指摘である。

この本の帯にも、最初にも「意図的な暴言であり、(中略)暴言の裏が読みとれない、冗談の意味がわからない、無性に腹が立つなどの症状があるときは、ただちに読書を中止することをお勧めします」という注意書きがある。

たしかに大脳皮質を刺激する本である。しっかりとした考えがあり、天皇の園遊会に招かれるような価値のある仕事をしているたけしに、これからも注目してみる。




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Posted by yaori at 23:02│Comments(0)TrackBack(0) エッセー | 趣味・生活に役立つ情報

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