2011年11月10日

あぁ、監督 野村克也元監督の名将、奇将、珍将 メッタ切り

あぁ、監督    ――名将、奇将、珍将 (角川oneテーマ21)あぁ、監督 ――名将、奇将、珍将 (角川oneテーマ21)
著者:野村 克也
角川グループパブリッシング(2009-02-10)
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現役時代は南海で三冠王を達成し、南海、ヤクルト、阪神、楽天で監督を務めた「生涯一捕手」を信条とする野村克也氏(ノムさん)の監督メッタ切り。「名将、奇将、珍将」という副題がついているが、手放しで名将としてほめているのは川上哲治さんくらいで、ほかはすべて何かしらケチをつけている。

2009年2月の第2回WBC開幕直前に出版された本なので、その当時の話も紹介している。


落合WBC監督?

落合がノムさんをWBCの監督に推薦したのだという。ノムさんは、逆に落合の名前はなぜ出ないのかとWBCの体制検討会議で発言したが、結局誰も落合の名前を出す人はいなかった。

結果は前年西武に負けて日本一を取れなかった巨人の原辰則監督に決まったわけだが、ノムさんは落合監督を一番評価しているという。

落合が評論家時代、ノムさんの率いる阪神のキャンプに来て、3−4時間も野球論議をしていったという。「野球界広しといえども、野球の話ができる人はほかにいないんですよね」と言っていた。落合のこの発言がいまのプロ野球界の状況を物語っているという。


プロは終着駅という選手が大多数

現役のときからノムさんは「素質を見込まれてプロに入ったのに、どうして努力しないのだろう」とよく思ったという。プロになるのが終着駅で、プロに入ったらホッとして向上心をなくしてしまい、持てる素質すら開花させられないで終わってしまう選手が大多数なのだと。

落合も同じことを「超・野球論2」で語っていたが、ノムさんもだれにも負けないくらい練習したと語る。それでもいくら練習をしても打率が伸びないという技術的限界にぶちあたったという。

要は相手ピッチャーのマークがきつくなったのだ。そのままでは2割5分しか打てない。3割を打つための残りの5分を埋めるのが、データの導入だった。

本当のプロの戦いは技術的限界の先にある。技術的限界を超えた「知力」の戦いなのだ。


監督代えたらチームは強くなる病

阪神は真弓監督を更迭し、またもや「監督を代えるだけでチームは強くなる」病が出てきそうな感じだ。

ノムさんが阪神の監督1年目の時に先日亡くなった久万オーナーに、球団の心臓部は編成部であり、10年近く低迷した理由は編成部にあると直談判したという。

オーナーはノムさんの訴えを聞き入れ、補強に力を入れて現場が野球に集中できるような環境をつくってくれた。だからノムさんの後の星野監督の1年目でセリーグ優勝できたのだと。


それにしても監督を神格化していないか?

この本では監督はあたかも補強、選手起用、試合の指揮のすべてに絶対的権力を持つような存在に書かれているが、今週ブラッド・ピット主演の映画が公開される「マネー・ボール」を読んだところなので、「本当にそうか?」という疑問がわいてくる。

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大リーグではゼネラルマネージャー(GM=日本でいえば球団社長か?)がいて、編成には絶対の権力を持っている。

監督は選手起用と試合の采配、つまり雇った選手をどう使うかが役目で、補強や新人獲得、つまりどの選手を雇うかはGMの役目と分担ができている。

新人獲得の場面に、監督が出て行って、最後の一押しをするというのはあるのかもしれないが、少なくとも誰を獲得するかという議論で監督が決断を下すべきではないと思う。

監督は自分の意見は言えるかもしれないが、数年で変わる監督が将来の戦力となる新人選手獲得の決定権を持っているというのは考えずらい。その意味で、この本には違和感を感じた。

ドラフト会議で指名が重なって監督がくじを引く場面が報道されるが、だからといって監督が決定権を持っているわけではないだろう。あまりにも監督を神格化しているのではないかと思う。

特に今回の日本ハムの栗山新監督就任や、中日の高木守道監督就任にも、軽さを感じてしまうところだ。


中日落合監督

監督の敵は、選手、ファン、オーナー、メディア。いずれもうまく使うという発想が大事だ。

その意味で落合監督は勘違いしているのではないかとノムさんは語る。

「どうも落合は勘違いしているのではないか。彼はグラウンドで結果を出せばいいと考えているようだが、それだけではプロ野球の監督として失格なのだ。いくら強くても、実際にファンが球場に足を運んでくれなければ、商売は成り立たないのである。

誰のおかげで自分が存在できるのか。ファンあってのプロ野球ということをいま一度考えてもらいたいのである。」


落合監督はセリーグで優勝し、CSも勝ち抜き、日本シリーズでも優勝する可能性があるにもかかわらず、今年で中日のユニフォームを脱ぐ。落合監督になって中日の人気が落ちて、観客動員数が減っていることがその理由だ。

ノムさんの懸念通りの展開となった。


ヤクルト古田前監督

古田が監督としてダメだったのは、プレーイングマネージャーとなる道を選択したことと、ヘッドコーチに投手出身で自分と親しい伊藤昭光を起用して、お友達内閣を作ってしまったたからだという。

スター選手だから自分中心の考え方をするので、周囲に感謝の念がない。野村さんに年賀状一枚送ってこないことがそれを象徴しているという。

まさに名選手、名監督ならずだ。


監督メッタ切り

この本でノムさんは多くの監督を批評している。詳しく書くと本を読んだときに興ざめなので、対象としている監督の名前だけ挙げておく。

三原脩(巨人、西鉄ライオンズ(現西武)、横浜をいずれも日本一にした)

鶴岡一人(南海ホークスで20年間監督。ただしノムさんは鶴岡組には入れてもらえなかった)

土井正三(オリックス監督時代にイチローを飼い殺し)

・恐怖と情感にあふれていた星野仙一

・財布を持ち歩かない絶対的指揮官・広岡達朗

・揃った戦力を使うのに卓越していた森祇晶

・人格者・王貞治

・監督して必要な6つのファクターをすべて持っていた川上哲治

ノムさんが本を読むきっかけとなった本


ノムさんの本は色々読んだが、ノムさんは本当に勉強家だと思う。そのノムさんが評論家となった時、多くの本を読むきっかけとなった本は、安岡正篤(まさひろ)の「活眼活学」だったという。

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この本は筆者も読んだ。平易でわかりやすい。手軽な安岡正篤入門書である。


データ野球はどこを見るか?

最後にノムさんがどういったデータを見ているのか、さわりを紹介している。今週映画「マネーボール」を見るので、比較してみるのが楽しみだ。

たとえば:

・あるピッチャーはストレートを何球続けて投げるか

・ボールカウントごとの配球はどうなっているのか

・こういうアウトカウント、ボールカウント、ランナー位置ではどういう球種を投げてくるのか

・どういう状況でキャッチャーのサインに首を振ったか

・このバッターは空振りしたあと、どのようなスイングをしたのか


野球は心理戦でもある。ノムさんの放談が楽しめる本だった。


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Posted by yaori at 00:04│Comments(0)TrackBack(0) スポーツ | 野村克也

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