2012年03月08日

祝!なでしこジャパン対米初勝利! サッカーという名の戦争

2012年3月8日追記:

結局なでしこジャパンは、アルガルベカップ決勝でドイツに破れ、2位に終わった。



筆者は今回は試合終了までテレビで観戦した。

すごい試合だった。前半早々に2点立て続けに点を取られた時は、今回はダメかと思ったが、よく追いついた。そして後半43分くらいにPKで3点目を取られた時も、あきらめずにすぐに点を取ってタイにして、ロスタイムに入った。

ロスタイムタイムアップ寸前に、ドイツのセンターフォワード、アフリカ出身のエムバビにハットトリックとなる4点目を押し込まれて、負けた訳だが、試合内容は決して悪くなかった。

たぶん佐々木監督は、今回をロンドン・オリンピックの強化試合と位置づけているのだと思う。後半で岩清水や鮫島など中心選手を交代させた。若手の力を伸ばそうとする戦略なのだと思う。

結局エムバビのみに3点やられた。身体能力バツグンのアフリカ系ストライカーであはあるが、守る手だてはあったと思う。

是非次のキリンカップでも国際試合の経験を積み、ロンドンオリンピックに100%の力で臨んで欲しいものだ。


2012年3月7日初掲:



現在行われている女子サッカーのアルガルベカップの予選リーグで、なでしこジャパンがとうとう米国に勝った。これで対米戦の連敗を止め、対戦成績は1勝、4分、21敗となった。次は3月7日にドイツと決勝戦だ。ぜひこの勢いで優勝してほしいものだ。

筆者は後半の最初まで試合を見ていたが、眠くなって途中で寝てしまった。起きたらなでしこが勝っていた。

前半ではゴールポストにあたる米国のモーガンの鮮やかなシュートとか、あぶない場面もあったので、よく守り切って勝ったものだと思う。

知名度が低い時代からなでしこジャパンを支援してきたのが、現・早稲田大学教授の平田竹男さんだ。平田さんは通産省官僚から日本サッカー協会・専務理事に転職し、現在は早稲田大学大学院スポーツ科学研究科教授を務めている。

その平田さんが日本サッカー協会専務理事時代に出した本が、「サッカーという名の戦争」だ。

サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台 (新潮文庫)サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台 (新潮文庫)
著者:平田 竹男
新潮社(2011-08-28)
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平田さんは、元巨人軍の桑田と一緒にこのブログで紹介した「野球を学問する」という本を書いている。

野球を学問する野球を学問する
著者:桑田 真澄
新潮社(2010-03)
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この本ではサッカーのもう一つの舞台として、外交交渉の様なマッチメーキングの実態と面白さを紹介している。


なでしこジャパンを支援

平田さんはなでしこジャパンの知名度を上げるために、いろいろな努力をしてきたことを紹介している。

たとえばアテネ五輪の女子サッカーでは、はじめて地上波での生中継が実現した。本来人気番組「新婚さんいらっしゃい」の枠を、女子サッカーの生中継にテレビ局が編成替えしてくれたのだ。

平田さんは今でも桂三枝さんと時々会うそうだが、そのたびにこのことを思い出すという。

日本対北朝鮮の試合は平均視聴率16.3%(同日の巨人ー阪神戦の視聴率は11.3%)、最大瞬間視聴率が31.1%を記録したときは本当にうれしかったという。

平田さんは、男子サッカーのスポンサーのキリンに呼びかけ、女子のキリンカップをつくってもらったり、通産省時代から付き合いのあるアップフロント・エージェンシーの山崎会長に頼んで、所属するタレントの松浦亜弥、吉澤ひとみ、辻希美などに女子サッカーの応援に来てもらったという。

”ハロプロ”の協力もあって、マスコミの注目度も上がり、女子サッカーがテレビで報道される機会が増えた。

2011年に女子ワールドカップでなでしこジャパンが優勝して、女子サッカーの人気は今日の極みに至るわけだが、それまでは平田さんなどの地道な知名度アップの努力があったのだ。


「中東の笛」ならぬ中東のゴール取り消し

サッカーのワールドカップで一旦ゴールと認定された得点が、取り消されたことが一度だけ起こった。

1982年のワールドカップでのフランス対クウェート戦の時に、観客の笛をオフサイドの笛と勘違いしたクウェートの選手がプレーを止めた後にゴールが決まった。そうするとスタンドからクウェートの王子がグラウンドに下りて、猛烈に抗議を始めると、ゴールが取り消されたのだ。

ワールドカップ本大会で得点が取り消されたのはこれが唯一のケースだ。中東の国との交渉がどれほど難しいかを象徴する事件だ。


マッチメーキングで少しでも有利な環境をつくる

ドーハの悲劇と呼ばれる1993年10月のワールドカップアメリカ大会のアジア最終予選では、最終予選に残った6チームがカタールの首都ドーハに集まって総当たりのリーグ戦で戦った。



日本は2週間で5試合を戦い、最後の5試合めのロスタイムでイラクに同点にされて力尽きた。この試合で時間稼ぎをすべき時間帯に、攻めなくてもよいのにイラクゴールまで攻め上がって結局イラクにボールを渡して失点のきっかけをつくった選手がいたことは、前回の「武器としての決断思考」で瀧本哲史さんが指摘していた通りだ

上のビデオではわからないが、次のビデオだとそれがはっきりわかる。



得失点差で3位となり、日本は本大会には出られなかった。しかしあのようなコンディションで戦わなければならなかったのは、協会も含めて日本サッカー界全体に国際競争を勝ち抜けるだけの自力が付いていなかったのだと平田さんは語る。

その12年後の2005年のアジア最終予選は、4か国ずつ2グループに分かれ、6か月かけて各国ホームアンドアウェーで戦った。どちらが困難か明らかだろう。

2002年から2006年まで平田さんは、日本サッカー協会の専務理事としてあらゆる年代の代表戦のマッチメイクを担当した。

たとえばアテネオリンピックの日本代表のアジア最終予選は、日本とUAEの2か所集中開催。しかもUAEが先、日本ラウンドが後という最良の開催方式を勝ち取った。

基本はホーム・アンド・アウェーだが、対戦相手が決定してから24時間以内に交渉で合意すれば、開催方法を変えられる。しかし十分な準備がないと、24時間以内には交渉をまとめられない。事実、韓国が属する別のグループは交渉がまとまらず、ホームアンドアウェーとなった。

この時は通産省時代のカタールの石油大臣とのコネが生きて、ベストマッチメーキングができた裏側も紹介していて興味深い。


通産官僚時代に築いた人脈

平田さんは通産官僚時代にハーバード大学に留学し、ケネディスクールの自治会の役員としてアジア人でトップ当選したり、ケネディスクールのサッカー部を創設したりして、世界的な人脈を築いた。ケネディスクール時代の恩師が、その後労働長官となったロバート・ライシュ教授だ。

留学から帰って1989年4月に通産省産業政策局サービス産業室の課長補佐となり、J−リーグ設立やTOTO創設に尽力し、それが縁で日本サッカー協会の専務理事に就任した。

日本サッカー協会の専務理事になってからは、冒頭のなでしこジャパンの支援やマッチメーキング改善、それまで開催が止まっていた日韓戦の継続開催、日韓戦のテレビ放映権の平等化にとりくんだ。中東勢とは日韓が一緒になって交渉するというサッカーにおける日韓新時代を迎えることになった。

日韓共催ワールドカップでは、大分県の中津江村など各国のキャンプ地となった日本のホスピタリティ精神が世界に報道された。

また中村俊輔が2005年のコンフェデレーションカップで決めたロングシュートは世界中で語り草になり、日本のサッカーの国際認知度を上げる効果があった。



この本で平田さんは中村俊輔のゴールに代表される他国のファンまで魅了するサッカーと、中津江村に代表される日本のホスピタリティ能力という「ソフトパワー」で、日本が国際関係を改善することを提唱している。

2018年あるいは2022年のワールドカップで日本の単独開催を目指すことは、平田さんも従来主張してきたことだが、妥協するとすればロシアとのワールドカップ共催だろうと。

もちろん共同開催は原則として認められず、ロシアとは北方領土問題もある。ロシアはまさに近くて遠い国である。そんな日ロ関係を改善し、お互いがお互いを知る絶好のチャンスになるだろうと。

ロシアと協調することには反対の人も多いと思うが、筆者はロシアとの関係を深めることには賛成だ。ロシアと日本そして米国には中国という共通のライバルがある。このブログで紹介した大前研一さんが「ロシアショック」で提案しているように、ロシアカードはうまく使えれば21世紀の日本外交と日本経済に多大な貢献をすることになるだろう。

ロシア・ショックロシア・ショック
著者:大前 研一
講談社(2008-11-11)
販売元:Amazon.co.jp
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現在の政治家でロシアと関係を深めるという戦略思考ができる人がいるのかどうか定かではないが、柔道大好きプーチンが大統領に返り咲き、第2期プーチン時代が当分続くと見込まれる現状では、北方領土問題を解決して日ロ関係を改善する大チャンスと言えると思う。

平田さんの父親はシベリア抑留者だという。ロシアとの共同開催が実現したら、お父さんは何と言うだろうかという言葉で結んでいる。

サッカーの男女・日本代表の対外試合のマッチメーキングの裏側や苦労について、ここまで詳しく書いた本はほかにないと思う。

大変参考になる本である。


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Posted by yaori at 22:47│Comments(0) スポーツ | 政治・外交