2012年03月27日

仕事をしたつもり マンガ「エンゼルバンク」のモデル・海老原嗣生さんの新刊

仕事をしたつもり (星海社新書)仕事をしたつもり (星海社新書)
著者:海老原 嗣生
講談社(2011-09-22)
販売元:Amazon.co.jp
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このブログで「学歴の耐えられない軽さ」「課長になったらクビにはならない」を紹介したリクルート出身で、マンガ「エンゼルバンク」のモデルにもなった海老原嗣生(つぐお)さんの新刊。海老原さんは、リクルートエージェントの転職誌「HRmics」編集長で、HRコンサル会社ニッチモ社長だ。

エンゼルバンク ドラゴン桜外伝(1) (モーニングKC)エンゼルバンク ドラゴン桜外伝(1) (モーニングKC)
著者:三田 紀房
講談社(2008-01-23)
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いつも一生懸命遅くまで働いて、周りもハードワーカーとして評価しているのに、全く結果が出ない人がいる。その人たちを海老原さんは「仕事をしたつもリーマン」と呼ぶ。この本ではそんな「仕事をしたつもり」の気づき方、それとうまく付き合う方法を解説している。


仕事をしたつもりの典型的パターン

仕事をしたつもりの典型的パターンは次の5つだ。

1.「量の神話」
 ・何十枚ものパワーポイントを徹夜で作る
 ・資料を読み上げるだけの会議
 ・一冊のビジネス書を10分で読む速読術
  
すべてが海老原さんが「量の神話」と呼ぶ誤解だ。これらは仕事の成果とほとんど結びつかない。

2.「ハコモノ志向」
 ・「がんばろう!日本。」は何をどうがんばるのか?
 ・やたら凝っている企業のホームページ
 ・一日200件電話するというノルマ
 ・児童相談員が訪問しているのに、見抜けない幼児虐待

このような意味を考えず、とりあえず形だけはやっておこうというタイプの仕事をしたつもりのことを、海老原さんは「ハコモノ」と呼ぶ。

これの対局としてトヨタユニバーシティでのトヨタの情報開示を紹介している。海老原さんが、ここまですべてを見せて大丈夫かと質問したのに対して、トヨタの人は「トヨタでは「教え合い」、「競い合い」、「助け合う」風土があるから、トヨタではこの仕組みが生きるのであり、トヨタユニバーシティを真似た教育プログラムをつくっても意味はない」と語ったという。

ビジネスモデルという「ハコモノ」ではなく、人・モノ・サービスという「中身」を交えてはじめて勝負ができる。以前、ホリモンや三木谷さんの「インターネットとテレビの融合による新しいビジネスモデル」がまさにその例だという。コンテンツ抜きのビジネスモデル論は片手落ちである。

3.「本末転倒」
 ・タクシーでワンメーター5分で行くところを、経費節減で地下鉄で40分かけて行く
 ・裏紙コピーやマイ箸は意味がない、割りばしを使うのをやめても間伐材の廃棄が増えるだけ
 ・すぐに「みんなで考えよう」と言いだすバカ上司 
 ・この延長が、失敗すると「みんなで決めたことだから、しょうがないじゃないか」と言う上司だ
 ・「オレの仕事はお偉いさんと飲むことだ」と、毎晩交際費を使う上司
 ・「とにかくなんでもいいから客に会いに行け」という先輩
 ・「近くに来たので寄らせてもらいました」という営業

すべてが目的と手段のはき違え。本末転倒だ。何も考えていない営業の典型だ。

海老原さんは、考えることの例題として日本の労働市場についての定説を疑うことを紹介している。たとえば「日本の年収200万円以下のワーキングプアがついに1,100万人を超えた」というニュースがある、これによると、日本の労働力6,500万人の6人に一人がワーキングプアとなる計算となる。

しかし、実は学生、主婦などの扶養家族と家族専従者を足しただけで600万人いる。そして年金をもらいながら稼いでいる高齢者のうち、おそらく200万人が年収200万円以下だという。

つまり1,100万人のうち、800万人は扶養家族、高齢者のセミリタイア組なので、いわゆるワーキングプアなるものは300万人以下なのだ。

4.「横並び意識」
 ・形だけの年賀状を送る
 ・ニュース番組にウェブサイトはいらない
 ・「社員一丸となって」、「全社一律」、「一糸乱れぬ方針」などは何も考えない危険ワード
 ・業界トップ企業の施策をまねる
 ・「上の人が決めたことだから」と考えずに実施する

5.「過剰サービス」
 ・客を怒鳴るラーメン屋はアリか?
 ・「お客様は神様です」の誤解
 ・「カスタマーハラスメント」には断固たる態度を

カスタマーハラスメントとは、たとえばファーストクラスの客が、CAが毛布を掛けてくれなかったといって「客の顔を覚えてサービスしろ!」などと怒る例。

このような5パターンで「仕事をしたつもり」になる原因を分析している。


最近の学生の就職面接での受け答え

最後に最近の就職面接で海老原さんが感じたことを書いている。最近の学生は、「自分の長所を話してください」と聞くと、たいていの学生は次のように答えるという。

「結論から申しますと、ポイントは3つあります。一つは…、続いてその理由は…。」

最近の学生は面接指導で、「最初に要点の数などを具体的な数字で示す」、「ワンセンテンスは短く」、「サンドイッチ方式で、まず結論、次に理由を述べ、最後に再び結論を」などと教え込まれているためだろうと。

筆者は最近は新卒者の就職面接を行っていないので、このような受け答えを聞いたことはないが、いかにもありうる話だ。

最近読んだ「松下政経塾憂論」という本によると、松下幸之助は「ひと言で言ったらどういうことや?」というのが口癖だったという。まさにこの例の学生の応対と対極にある応対だ。

松下政経塾憂論松下政経塾憂論
著者:江口 克彦(参議院議員)
宝島社(2011-12-14)
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頭がすっきり整理されていないと、「ひと言」で言えない。

このブログは、自分の考えを整理するために書いている。「頭にスッと入る」というのは、松下幸之助の言う「ひと言」と同じ意味だ。

海老原さんが指摘するように、ビジネス書を1冊・10分で読んでも、また年間何百冊読んでも意味がない。

読書「量」の問題ではないのだ。

筆者は年間300冊程度本を読むが、読書量は自慢でもなんでもない。問題は読んだ本をどれだけ自分のものにできるかどうかだ。そのための不可欠のツールがこのあらすじブログなのだ。

世の中にはロクでもない本が多い。筆者が読む300冊はそれなりに厳選したつもりだが、それでもあらすじを書くにも値しない本が2−3割はある。

たとえば上記の「松下政経塾憂論」だ。

元PHP社長の江口克彦さんと東海由紀子さんという松下政経塾中退の人の共著のような体裁になっているので読んでみた。江口さんはあとがきを書いているが、東海さんとは面識はあるものの、この本の内容については3回インタビューを受けただけだという。

たとえば現塾頭の古山さんの批判を「ある人が、古山さんの選挙浪人時代に、彼の話を聞く機会があったそうです」という伝聞でやっている。

現塾頭の古山さんはその「伝聞証拠」だと「いやぁ、松下幸之助さんの本は、あんまり読んだこともないんですよ」、「塾生たちも、松下幸之助さんの本なんて、読んでないですよ」と言ったことになっている。

海老原さんがこの「仕事をしたつもり」で紹介している著者につねに難癖をつけながら読む「ケンカ読(書)法」の出番だ。

このブログでも松下幸之助の本を何冊か紹介している。、松下幸之助の主要著書を10冊読むのにどれだけの時間がかかるというのか?

その気になればせいぜい1週間あれば読めるだろう。就任前はともかく、塾頭に就任した人が、松下幸之助の本を読んでいないとは、あり得ない話だ。

「松下政経塾憂論」では、民主党の政経塾出身の代議士をのきなみ批判し、たとえば前原さんを「人の話を聞かない『ええかっこしい』だから起きたメール事件」と批判しているが、人のことが言えるのか?という感じだ。


横道にそれたが、海老原さんの本は、具体例や根拠となる統計データが多く紹介されていて参考になる。ところどころイラスト入りで、筆者は帰りの電車の中で1時間半程度で読み終えた。

簡単に読めて参考になる本である。



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Posted by yaori at 19:53│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 趣味・生活に役立つ情報

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