2012年04月22日

私たちがつくる食と農のあした 農水省がつくった子供向けパンフレット

これから何回か農業に関する本を取り上げていくので、その前に2010年3月に民主党政権下で閣議決定された、現在の国策である「食料・農業・農村基本計画」について農林水産省が子ども向けにつくったパンフレットで問題点を整理しておく。

次が「私たちがつくる食と農のあした」という農林水産省がつくった子ども向けパンフレットの表紙だ。農林水産省のホームページでも何部かに分けてダウンロードできる

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目次は次のようになっている。全部で50ページのマンガ入りのパンフレットで、全国の図書館には必ず置いていると思うので、最寄りの図書館の「産業:農業」コーナーをチェックしてみて欲しい。たぶん全国の小学校にも配布されたのだと思う。

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いま、食に起こっていることとして、あまり食とは関係のないような生活習慣病の増加も指摘されており、さらに朝ごはんを食べない若者の比率が3割にも上ることが指摘されている。

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日本の農業を取り巻く問題点についてもわかりやすく整理されている。

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日本の農業・農村の再生のために、2020年に食料自給率5割(カロリーベース)をめざし、次のような政策を打ち出している。

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この政策が実現すると、2020年には小麦、飼料用作物(コメ)、大豆の国際生産が飛躍的に拡大し、朝食を食べる人が増えて、コメの消費も増加するという将来像を打ち出している。

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食品自給率が5割を超えると、何が変わるのかを示したのがこの図だ。国産小麦と食用大豆の国産品が増える比率が大幅にアップする他は、あまり目立った変化は内容に思える。

油の摂りすぎの抑制というのは、たぶん輸入大豆の多くは、食用油生産用に使われることから、輸入の大豆が減る効果という意味なのだろうが、なぜ食料自給率がアップする効果として挙げられているのかよくわからない。あるいは逆に油の摂りすぎを抑制して、輸入大豆を減らそうということなのかもしれない。

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食品自給率については、日本の農林水産省が創り出した独自の「カロリーベースの自給率」という指標をつかって、各国の食料自給率を比較し、主要国では日本が最低の食料自給率であることを示している。

「国内の農地を有効利用しないで、大量輸入して大量に捨てるなんて、国際的にも許されない状況になってきているのだよ」というコメントがついている。

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農林水産省は、公式の発表の際には、農水省がつくっていながら計算根拠も公表せず、日本しか使っていないカロリーベースの自給率と、公表されている統計から計算した生産金額ベースの自給率を両方発表するが、この子ども向けの本では、カロリーベースしか記載していない。

たぶん生産金額ベースでは自給率が69%となり、インパクトがなく、予算も取れないからだろう。うがった見方をすれば、子どもが小さいうちから、日本独自のカロリーベースの自給率の低さを刷り込もうとしているように思える。

自給率
















肝心の、「なぜ自給率を上げないといけないのか」については、次の様に説明しているが、要は「我が国の輸入食料の確保が厳しくなる可能性」しか理由として挙げていない。

バーチャルウォーターや二酸化炭素排出量なども付け加えて、「地球のために」とか「日本はたくさんの国に助けてもらっているのね」とかコメントを入れているが、なぜ自給率を上げなければならないのかの、理由になっていない。

日本は石油・石炭などのエネルギー、そして鉄鉱石や銅などの非鉄地金、レアアースなど産業用原料も、ほとんど100%海外に依存している。

堺屋太一さんが通産省の官僚だった時に書いた「油断」で描かれていたように、石油がなければ農業機械も温室もビニールハウスも使えず、日本の農業生産は成り立たない状況にあるのに、なぜ無理矢理食料自給率だけ上げなければならないのかがわからない。

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著者:堺屋 太一
日本経済新聞社(2005-12)
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「食料輸出国もいざという時は自国民を優先」という説明をして、過去輸出規制を実施したことがある国をピックアップしているが、日本の主要な輸入先であるアメリカとオーストラリアはこれに入っていない(もっともアメリカはニクソン大統領の時に、大豆の輸出規制をした前科はある)。

またこのリストは輸出規制を実施した国ということで、輸出税を賦課した国も含まれているが、たとえば筆者が駐在した1980年ころのアルゼンチンは、自国内では到底消費できない量の小麦を生産していたが、税金を取る一つの財源として小麦に輸出税を掛けていたのであり、自国民を優先していたということではない。

輸出規制国






















「食料需給は逼迫し、食料価格は高止まり」というページでは、穀物相場は一本調子で上昇するような予測を建てている。

価格予想























実際の穀物市況は、乱高下している。傾向的にはたしかに昔の低い価格レベルとは違う水準となっているが、需給が逼迫しているわけではなく、世界の貿易額は大幅に拡大している。

農業がこれだけ巨大な貿易産業になると、将来日本が他の国に「買い負ける」ということはありえても、金を出しても買えないという事態になることは到底考えられない。

というのは農業は一度限りの商売ではない。毎年ほぼ自動的に一定量の生産物を売らなければならないので、たとえある年が不作で、相場が高騰しても、輸出には一切回さないなどという、売り手と買い手の信頼関係を根底から壊すようなことは生産者はやらないからだ。

穀物市況


















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出典:農林水産省 平成22年度食料・農業・農村白書

農業の多角的機能としては、洪水を防ぎ暮らしを守るとか、土砂崩れを防ぐとか、安らぎをもたらすといったものが挙げられている。これらを金額で評価すると、年間約6兆円の効果があると、日本学術会議が評価したという。

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食料自給率をカロリーベースでしか記載しておらず、しかもその基準が日本のみでしか使われていないことを一切説明していないので、40%という食料自給率のみが独り歩きして、子どもに誤解を与えるような内容だが、農林水産省の主張がよくわかるという面では役立つ資料だ。


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Posted by yaori at 01:37│Comments(0) 趣味・生活に役立つ情報 | 農業