2012年05月25日

あなたも翻訳家になれる 翻訳ってカンタンではない センスが必要

あなたも翻訳家になれる!―エダヒロ式 [英語→日本語]力の 磨き方あなたも翻訳家になれる!―エダヒロ式 [英語→日本語]力の 磨き方
著者:枝廣 淳子
ダイヤモンド社(2009-04-17)
販売元:Amazon.co.jp
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このブログで紹介した「不都合な真実」などを翻訳した翻訳家・枝廣さんの翻訳入門書。

不都合な真実不都合な真実
著者:アル・ゴア
ランダムハウス講談社(2007-01-06)
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本のタイトルの「あなたも翻訳家になれる!」とは違い、やはり翻訳でメシを食っていくのは相当大変だということを思い知らされる本である。

枝廣さんは、旦那さんの留学のためアメリカで2年間生活した。向こうではじめた同時通訳になるためも勉強を日本帰国後も続けようと思ったが、通訳学校の学費が高いので断念し、翻訳のアルバイトをしたり、レターの英訳の仕事をしていた。


最初の翻訳本がベストセラーに

そんな時にたまたま知った心理学の本を訳して出版社に持ち込んだら、それが採用されてベストセラーとなったという経験の持ち主だ。

もっとも枝廣さんは実績がなかったので、企画を枝博さんが持ち込んだにもかかわらず、編集者からは翻訳者は別の人に頼むと言われた。そこを紹介者の力もかりて押し切り、なんとか自分の最初の翻訳書を出すことができたという。それが次の本だ。

人生に必要な荷物 いらない荷物人生に必要な荷物 いらない荷物
著者:リチャード・J. ライダー
サンマーク出版(1995-11)
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読んでみたが、翻訳もイマイチで、ピンとこなかった。10万部売れたベストセラーになったという。

枝廣さんは、翻訳本を出すかたわら、翻訳道場で翻訳者育成にも力をいれている。「Next Stage」という和訳力を鍛える通信教育講座も開設したり、出版翻訳セミナーを開催したりしているという。


やはりプロとアマの差は大きい

この本を読んで痛感したのは、やはりプロとアマでは相当な差があるということだ。枝廣さんは、それは「持久力」だと語る。アマがたまたまうまく翻訳したというのとは違い、プロは決まった時間にかなりの分量をこなさなければならない。アマの場合には、最初は良くても、途中でガクッとレベルが落ちてしまうという。

翻訳のレベルの推移をイラストで示してみると、最初の翻訳は次の図のDのように直訳だが、だんだんに読解力がついてくるとCのレベルになる。

翻訳





しかし慢心して意訳してしまうと、誤訳につながり、Bのレベルに落ちてしまう。最高のAのレベルに到達するためには、「日本語の表現力」と誤訳や読みにくいところを見つけることができる「自己チェック力」が必要なのだと語る。


翻訳では創作はご法度

翻訳とは「筆者が差し出したものを一つも落とさずにじょうずに受け取って、何も足さず、何も引かずに、大事に読み手に渡す作業」であると枝廣さんは語る。だから、意訳し過ぎの「創作」をする翻訳者には二度と出版社から注文が来ない。

枝廣さんは、訳文をつくる5〜6倍の時間を文章のブラッシュアップ、練り上げに使っているという。最初の翻訳をつくるのは、原著を見ながら訳文を口頭で読み上げ、それをテープに録音し、テープ起こしをしてもらって最初の訳文としているのだという。

これだと時間も短縮できる。また「書いた原稿は必ず声に出して読め」と語る。これは環境ジャーナリストの三橋規宏千葉商科大学教授の教えだという。

日本経済復活、最後のチャンス 変化恐怖症を脱して「3K立国」へ (朝日新書)日本経済復活、最後のチャンス 変化恐怖症を脱して「3K立国」へ (朝日新書)
著者:三橋規宏
朝日新聞出版(2012-05-11)
販売元:Amazon.co.jp
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ちなみにアル・ゴアの「不都合な真実」はゴアの来日にあわせて、25日間で翻訳してほしいというオーダーだったという。

そんな仕事をやっているから、ランダムハウスはこのブログで紹介した「アインシュタイン」のような出版事故をおこすのだと、言いたくなるところだ。

最後にこの本で取り上げられている翻訳道場の翻訳テクニックが参考になるので、いくつか紹介しておく。

最初は声に出して訳文を読み上げてブラッシュアップするというやり方だ。声に出して読み上げるとリズムの良い構文となるという。

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次は翻訳者のテクニックを感じられる例だ。擬音を入れて、軽妙な感じに仕上げている。小説などは、このような訳し方が向いていると思う。

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主語を省略するというのも翻訳テクニックの一つだ。

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翻訳家をめざす人に懇切丁寧に自分のノウハウを教えている。別に翻訳家をめざさなくとも、和訳文によってこれだけ印象が違うのかという点は興味深い。


翻訳する原著を見つけるには

翻訳する原著を見つけるのは、最も多いのがタトル・モリエイジェンシーなどのエージェントが出版社に翻訳を持ちかけるケースで、これが7割くらいだという。

あとは出版社の担当者が10月にフランクフルトで開かれるブックフェアーとか、ロンドン、児童書ならイタリアのボローニャで開かれるフェアーに行って、よさそうな本を見つけてきて翻訳家に頼むケース。

比率は最も少ないが、翻訳家から出版社に原著と自分による翻訳を持ち込むケースだという。

平易で翻訳のコツがわかって参考になる本である。


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Posted by yaori at 12:36│Comments(0) 趣味・生活に役立つ情報 | ビジネス