ゴーマニズム宣言スペシャル 反TPP論
著者:小林 よしのり
幻冬舎(2012-02-24)
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マンガ家小林よしのりのゴーマニズム宣言最新版。今度は反TPP論だ。以前紹介した「TPPを考える」に続いて、TPPに関する賛否両論を研究するために読んでみた。
TPPを考える―「開国」は日本農業と地域社会を壊滅させる
著者:石田 信隆
家の光協会(2011-02)
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目立つ赤の表紙な上に、次のような過激な帯がついている。
そして後の帯に小林よしのりのTPPに反対する主張がまとめられている。ひと言で言うと”TPPはアメリカが仕掛けた逃げ道なき過酷な経済戦争であり、日本はTPPに参加してはならない。経済鎖国・攘夷をしろ”というものだ。
TPPは日本を経済侵略する米国の陰謀で、日本は明治時代の40年を掛けて回復した関税自主権の回復と治外法権の解消をTPPにより失うと説く。
グローバリズムが弱肉強食を促進し、世界中に貧富の差を拡大させている。だから今必要なのは「攘夷」なのだと。マンガ家の中にもネットで雇った誰かにトーンからベタぬりまでやらせている人がおり、これなら世界中から絵のうまいアシスタントを雇えるという。
そして「攘夷」の代表として明治22年に大隈重信に爆弾を投げつけて暗殺を謀ったテロリストの玄洋社の来島恒喜(くるしまつねき)を国士であり、”忠臣蔵四十七士、桜田門外十八士に匹敵する明治の壮挙である”と礼賛している。
まさに開いた口が塞がらないとはこのことだ。だいたい忠臣蔵四十七士、桜田門外十八士など、テロリストやリンチ=私刑に走った暗殺者がなぜ国士なのか?
「天皇論」など大変参考になる本も多く、小林よしのりは大変勉強家だと思うが、「学問のすすめ」は読んだことがないように思える。
学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)
著者:福澤 諭吉
筑摩書房(2009-02-09)
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福沢諭吉は「学問のすすめ」の第6編(文明社会と法の精神)で、国法はなぜ必要なのかを説き、忠臣蔵などの暗殺や「天誅」をはなはだしい勘違いとして厳しく非難している。
福沢諭吉の「学問のすすめ」は明治5年から9年にわたって、17編出版され、当時の日本の人口が3千万人に対し、300万部売れたということは、10人に一人が買った超ベストセラーである。
現在もそうだが、テロリストを国士などと呼ぶ人はアルカイダとかの一部の過激派のみだろう。
ともかく要点を紹介しておく。小林よしのりを血迷ったマンガ家と見るのか、「国士」あるいは国士気取りと見るのかは自分で判断して欲しい。
TPPの農業分野については、輸入米が増え、日本農業は大打撃を受け、日本の田園風景も一変してしまうという。
それ以外の様々な分野で外国労働者が日本に殺到し、外国人が増え、日本人はあぶれて社会問題化するという。
もともとTPPは2006年シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの四カ国で始まった協定を、アメリカが輸出拡大を狙って2010年に乗っ取ったものだという。
そして日本に必要なのは開国でなく鎖国だと。
TPPは日本に非関税障壁撤廃と治外法権を押しつけるもので、ISD条項(国際投資紛争仲裁センター)は、いままでアメリカ企業に不利な決定をしたためしはなく、事実上の治外法権だという。日本はいまや不平等条約を自ら進んで締結しようとしているのだと。
最後に参考文献が載っている。以前から思っていたが、小林よしのりの場合、誰か考えを吹き込む人がいて、その人の推薦する本のみを読んでマンガを描いているのではないか?TPPにしても、賛否両論を読んで、自分で判断するのではなく、TPP反対論の本を参考文献として5冊挙げているだけだ。
マンガなので過激でなければ面白くないという面もあり、学者のように賛成でも反対でもないというものは売れないのだろうが、それにしても影響力のあるマンガ家だけに、偏った意見はかえってマイナスだろう。
筆者には小林よしのりは、ヤキがまわったように思えるが、本を立ち読みするなりして判断して欲しい。
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