2012年06月13日

忘れられた日本人 明治から昭和初期の農村の生活

2012年6月12日追記

焼き肉料理店などでレバ刺しを出すことが7月から禁止されることになった。昨年の4月のユッケによる焼肉店チェーンでの死亡事故の影響と、厚生労働省(農林水産省にあらず)が検査したところ、200余りのサンプルで3件ほどO157が検出されたことが原因のようだ。

筆者は一度レバ刺しを食べたことはあるが、好きにはなれなかった。しかし焼肉店のメニューとしてはポピュラーなので、生の肝臓は滋養に良いと信じて食べる人も多いのだと思う。

この話を聞いて、不謹慎かもしれないが、「忘れられた日本人」で無法者が、重病を治す特効薬として子どもの生き肝を食べたという話が載っているのを思い出した。その地方では行方不明になった子どもが何十人もいたという。

ひどい話だが、それほど肝臓は薬としても効果があると民間信仰では思われていたということだと思う。

アマゾンの売れ行きランキングで、2位以下は変動があって、今は「遠野物語」が2位となっているが、依然としてこの本は文化人類学のベストセラー第1位を堅持している。まさに知る人ぞ知るベストセラーである。


2012年6月6日初掲:

忘れられた日本人 (岩波文庫)忘れられた日本人 (岩波文庫)
著者:宮本 常一
岩波書店(1984-05-16)
販売元:Amazon.co.jp
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柳田国男とともに日本を代表する民俗学者・宮本常一さんの代表作。アマゾンで文化人類学のベストセラーを見るとこのブログでも紹介した「銃・病原菌・鉄」を抑えて、1位にランクされている。

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
著者:ジャレド・ダイアモンド
草思社(2012-02-02)
販売元:Amazon.co.jp
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たしか成毛眞さんの「実践!多読術」に紹介されていたのだと思うが、はっきり覚えていない。

実践! 多読術  本は「組み合わせ」で読みこなせ (角川oneテーマ21)実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ (角川oneテーマ21)
著者:成毛 眞
角川書店(角川グループパブリッシング)(2010-07-10)
販売元:Amazon.co.jp
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著者の宮本常一さんは、戦前から日本各地をくまなく歩き、各地の古老に話を聞いて、膨大な作品を残している。

日本の民俗学の最高権威の柳田国男さんは貴族院書記官長までつとめたあと、初代の日本民俗学会長になった民俗学のエリートで創始者、宮本さんはもともと小学校教員出身で、フィールドワークを大切にした民間民俗学者というようなおおざっぱな区別ができる。

柳田さんは多くの中学校などの教科書に取り上げられている「遠野物語」をはじめとして民間伝承や民話の研究が中心だが、宮本さんは、この「忘れられた日本人」のような名もない人からの話から昔の日本人の姿を構成している。

遠野物語 (集英社文庫)遠野物語 (集英社文庫)
著者:柳田 国男
集英社(1991-12-13)
販売元:Amazon.co.jp
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詳しく紹介すると読んだときに興ざめなので、簡単にだけ紹介しておく。この本では宮本さんが訪ねた日本各地のまさに「寒村」というべき僻地の村の古老の話から、明治時代から昭和にかけての日本の農村の生活風景が描かれている。

なかには橋の下の小屋で暮らす乞食老人から聞いた話などもあり、宮本さんのフットワークの軽さには脱帽する。

この本のなかには、エロチックな話もでてくる。農村の「夜這い」の話や、「太子の一夜ぼぼ」(南河内郡の明治初期まで続いた行事で、聖徳太子の祠のお祭りの日には、誰とでも一夜を共にしてよいという日)などが語られている。

その日に生まれた子供は父なし子でも大事に育てたものだという。昔の日本人(農民?)の性意識は開放的だったのだ。

老人から聞いた話なので、「夜這い」の自慢話や、いわゆる「お医者さんごっこ」的な遊びも紹介されている。

たぶん農村の楽しみといったら、こんなイベントとなるのだろう。そんな古老の話をありのまま紹介しているところが、正統派民俗学である柳田学派からは疎んぜられるということになったようだ。

文章は平易で、古老の話を再構成しているので、地域性あふれて読んでいて面白い。豆狸(まめだ)や天狗などの妖怪譚(ようかいたん)も興味深い。

300ページほどの本だが、すぐに読めるので、宮本常一民俗学の入門書としておすすめの本である。


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Posted by yaori at 00:02│Comments(0)TrackBack(0) 趣味・生活に役立つ情報 | 歴史

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