2012年07月18日

サイバーテロ 漂流少女 情報セキュリティの専門家が書いた小説

サイバーテロ 漂流少女サイバーテロ 漂流少女
著者:一田和樹
原書房(2012-02-16)
販売元:Amazon.co.jp
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情報セキュリティの専門家で、情報セキュリティ専門サイトScanNetSecurity「工藤伸次のセキュリティ事件簿」という連載を書いている一田和樹さんの小説。

一田さんは、バンクーバー在住の作家で、サイバーセキュリティコンサルタントをやっており、ブログを開設している

筆者も情報セキュリティの専門家なので、楽しく読めた。日本の情報セキュリティの専門会社(株)ラック(株)ネットセキュリティ総合研究所の専門家たちが、査読をしたそうなので、小説とはいえ実際に起こりうるリスクを取り上げていて参考になる。

読んだときに興ざめなので、小説のあらすじは詳しくは紹介しない。

最初に街頭に立つ少女が、パソコンを操ってBluetooth通信で、主人公の乗るタクシーを制御不能に追い込んで事故を起こさせるシーンが出てくる。

日本では半信半疑に思う人が多いかもしれないが、米国に駐在していた筆者はエンジンが止まってハンドルがロックされた経験があるので、これはありうると感じた。

日本では聞かないが、これは「ストーリング」といって、20年ほど前までは米国車では非常に多いトラブルだった。

自動車はパワーステアリング、パワーブレーキが多いので、エンジンが急に止まるとハンドルがロックされ、ブレーキも効かず、運転不能に陥る。急いでシフトをニュートラルに戻し、再度エンジンをかけなる必要がある。

筆者が最初の米国駐在の時にかったGMのビュイック・センチュリーは、調子の悪いときは、会社に行くほんの30分の間に何度もエンジンが止まったことがある。それが夕方帰宅するときは、一度もエンジンが止まらず、全く問題ないという不思議な現象だった。

安全性に問題があり、修理してもまた同じ問題が発生したので、結局本田(アキュラ)レジェンドに変えたら、問題がなくなった。

最近の自動車はECUという電子制御ユニットが搭載されており、マイコンで様々なコントロールを行っている。各パーツ同士の通信は無線化されているのだという。

米国のワシントン大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校は、共同研究でフォード車を使って、時速45キロで走行中の車をハッキングできることを実演したという。電波の届く範囲は40メートルだった。

この小説では、単なるウェブサイトの不正アクセスや改ざんなどではなく、産業システムに組み込まれた工場や発電・送電等プログラムへの攻撃や、金融システムの混乱を誘引するサイバーテロを描いている。

ひそかに入手した個人情報と最新のアンチウィルスソフトを偽装したスパイウェアを用いて、何百万人ものオンラインバンキング口座から金を引き出すことなど、日本社会全体がマルファンクション(誤操作)に追い込まれる危険性を描いている。

主人公が日本のNISC(内閣官房情報セキュリティセンター)にも一目置かれているフリーランスの情報セキュリティ専門家で、ストーリーも日本のセキュリティ専門家たちの子供たちがからんでくるという、ちょっとありえないような設定ではあるが、サイバーテロの描写や手口は真に迫っており、楽しく読める。

ベストセラーになるような小説ではないが、情報セキュリティに関心のある人には参考になり、楽しく読めると思う。


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Posted by yaori at 08:52│Comments(0)TrackBack(0) インターネット | 小説

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