2012年07月31日

人工光型植物工場 千葉大学元学長・古在名誉教授の植物工場紹介

人工光型植物工場人工光型植物工場
著者:古在 豊樹
オーム社(2012-03-24)
販売元:Amazon.co.jp
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先日会社で千葉大学元学長で植物工場の権威の古在名誉教授の講演を聞いたので、著書を読んでみた。

古在教授は中田英寿の所属しているプロダクションのサニーサイドアップ社長の次原さんと、"All you need is green"という本も出しており、こちらも読んでみた。

ALL YOU NEED IS GREEN コザイ教授とツギハラ社長が考える「環境と貧困」ALL YOU NEED IS GREEN コザイ教授とツギハラ社長が考える「環境と貧困」
著者:古在 豊樹
講談社(2008-07-01)
販売元:Amazon.co.jp
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古在教授は昔の東京帝大学総長の古在由直(よしなお)さんの孫で、マルクス主義哲学者の古在由重(よししげ)さんの息子だ。

お父さんの古在由重さんは、犯罪者(治安維持法違反で2回逮捕)なのでろくな職業にもつけず、家族は貧困にあえぎ、古在教授自身も差別を受けたという。幣原家とも姻戚関係があり、学者の名門の古在家出身で、千葉大学元学長という経歴からは想像もできない過去の体験だ。

お母さんは通信教育の添削で家族の収入を得て、古在教授も子供の時に造花づくりや、封筒貼りの内職、クズ鉄拾いもやったという。そんな体験があるから、「貧しいが目標を持って困難に立ち向かっている農家」は世界中どこであれ、支援したくなるのだと言って、中国には1986年から、ベトナムにも1993年から出かけて行って植物の苗を作る技術を支援している。

次原さんとの出会いは、古在教授が千葉大学学長となって、千葉大学の知名度を上げるためにサニーサイドアップに相談したことがきっかけだ。たまたま新聞記事などでサニーサイドアップのことを知り、古在教授自らが電話して訪ねてきたという。

サニーサイドアップの社是は「たのしいさわぎをおこしたい。」だという。

サニーサイドアップ所属の中田英寿が世界的な貧困撲滅のためのホワイトバンドキャンペーンを日本に紹介し、キャンペーンは成功した。しかし、集まったお金は貧困国支援のために使われるのでなく、支援活動・政治活動に使われる「アドボカシー」という使い方だったために、日本では誤解されてバッシングを受けた。

ホワイトバンドのキャンペーン自体はG8によるアフリカへの500億ドルの援助決定や、世銀とIMFによる最貧国への550億ドルの債務放棄などの呼び水となり、ある程度の効果はあげている。

しかし貧困問題解決にはまだ道は遠いので、ホワイトバンドキャンペーンの後、サニーサイドアップと協力して、千葉大学では「世界の貧困問題をいかに解決できるか」という授業科目と自主ゼミが設けられたという。


「植物工場」

別の本の紹介で脱線したが、本書に戻って、古在教授の植物工場の講演を聞いた第一印象は、これはスゴイというものだった。

この本の表紙の写真のように植物工場は、多層構造のため、丈の高い植物の生産には向かないが、その生産性は露地ものや農場産品の比ではない。苗やレタスなどの葉物野菜の生産に適しており、無農薬なので、収穫して洗わずにそのまま食べられる。

日本各地に植物工場があり、レタスなどを生産しているが、これらのレタスは一切家庭用には出回らない。すべて中食や外食産業に販売されている。

というのは普通のレタスだと、外側に農薬がついているので、何枚かは捨てなければならず、畑で採れたものは虫が混入しているかもしれないので、外食産業では洗って、一枚一枚人手で裏表を調べて虫がいないことを確認するという手間をかけている。レタスの芯も捨てているので、廃棄率は30〜40%だという。

ところが植物工場でつくったレタスは、葉っぱを捨てる必要がなく、洗う必要もないので下準備の工程が不要となり、人件費を削減できる。芯も小さいので、捨てる部分は5%程度だという。

天然の野菜だと、次の表のとおり旬の時以外は、栄養的に食味的にも落ちるが、植物工場だと1年中、旬の野菜を生産でき、栄養価、食味ともに高い。ちなみに講演で使ったスライドでは、次の表に横に一本の線が引いてあった。それが植物工場の野菜の栄養価だ。

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出典:本書61ページ

水や養分も極限まで減らすことができるので、永田農法のように植物にストレスを感じさせ、糖度を上げた野菜が生産できる。

植物生産には適切な温度と、光、CO2,水と若干の必須無機成分だけが必要だ。

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出典:本書5ページ

植物工場の内部の写真は、MKVドリームという会社のホームページで紹介されている。植物工場の構造図は次のようなものだ。多段棚+光源、それと循環する養液とヒートポンプエアコンがあればよい。

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出典:本書27ページ

ヒートポンプ技術により、エアコンを使えば水利用効率は97%まで上がる。砂漠でも十分操業可能だ。

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出典:本書28ページ

各種の苗を生産するために必要な電気代は、大体1円/本以下である。

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出典:本書34ページ

この本では、中国、韓国、台湾やオランダなどの植物工場の例が紹介されている。日本でも経産省または農水省の支援を受けて、各地で植物工場が稼働して、商業生産を開始している。

太陽光型植物工場―先進的植物工場のサステナブル・デザイン太陽光型植物工場―先進的植物工場のサステナブル・デザイン
著者:古在 豊樹
オーム社(2009-12)
販売元:Amazon.co.jp
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この本の他に、古在教授は「太陽光型植物工場」という本も出版している。太陽光による植物工場は、太陽光自体は無料だが、電気の安定供給という面では難があり、結局は売電と一緒に組み合わせる必要がある。

その意味では人工光型植物工場の方がオールマイティだ。


このブログでも「日本農業が必ず復活する45の理由」のあらすじで、砂漠農業を紹介したが、砂漠にかぎらず植物工場は様々な場所で展開可能だと思う。

日本の農業が必ず復活する45の理由日本の農業が必ず復活する45の理由
著者:浅川 芳裕
文藝春秋(2011-06-28)
販売元:Amazon.co.jp
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非常に参考になる本だった。


参考になれば投票ボタンをクリックして頂きたい。




Posted by yaori at 12:38│Comments(0)TrackBack(0) スポーツ | 環境問題

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