2012年09月03日

孫正義 危機克服の極意 孫さん自身の講演もUstreamで公開中

孫正義 危機克服の極意 (光文社新書)孫正義 危機克服の極意 (光文社新書)
光文社(2012-06-15)
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「孫さんの後継者を育成する」という目的で2年前に設立されたソフトバンク・アカデミア(経営者育成塾)での孫正義さんの講義とツイッターなどの発言を集めた名言集。

この講義に先立つ孫さんの2回の特別講義は「孫正義 リーダーのための意思決定の極意」という本になっている。こちらは「意思決定の極意」と「孫の二乗の兵法」を取り上げている。

孫正義 リーダーのための意思決定の極意孫正義 リーダーのための意思決定の極意
光文社(2011-06-17)
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ソフトバンクアカデミアのウェブサイトで、これらの特別講義の映像が公開されているので、興味のある人は視聴をおすすめする。この本の危機克服の極意の講義はこちらだ。

それぞれ2時間半前後なので、筆者はこのあらすじを書きながら聞いている。本には載っていない東電の社長・会長宅にはなぜマスコミは押しかけないかなど、オフレコの部分もあって面白い。また原発ミニマムについても力強く持論を語っている。

ソフトバンクアカデミアに入学した人の課題は、ソフトバンクの企業価値を10年で5倍にするための具体的なビジョンと戦略を考えることだという。

この本では最初に「孫の二乗の兵法」の略図があり、そのあとで「危機克服の極意」の講義がある。ソフトバンクアカデミアの開校式と「孫の二乗の兵法」の講義はこちらだ。これは孫子X孫正義の兵法ということで、孫の二乗の兵法と呼んでいる。孫さんが創業してすぐに、大病して入院していた27歳の時に考えたものだという。

孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学 (PHP文庫)孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学 (PHP文庫)
著者:板垣 英憲
PHP研究所(2011-04-09)
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孫さんは孫子の兵法の本は30種類以上読み込んだという。

いくつか参考になった点を紹介しておく。


経営に向いていない人

「いままでは悪かったから、今度はよくなる確率が高いはずだ」と考える人がいる。サイコロの奇数ばかり出ていても、今度は偶数がくるはずだというのは、数学的に完全に間違いだ。次に偶数が出るのは5割の確率でしかない。

そこに波を見てしまって、偶数に一生懸命頑張ろうとする人は経営者には向いていない。波とか”アナログチックな表現”で判断する人、占いに頼る人、誰かの予言に頼る人、これらは経営者としての才覚はゼロ、科学的に正しくない。

自分の判断でものを考えるのでなく、星占いとかゲン担ぎとかに頼る人は経営者として才覚ゼロだと。


ヤフー!BBの個人情報流出

派遣社員の一人が450万人もの顧客情報を持って暴力団に売り、暴力団がソフトバンクを脅しに来た。20億円払わないとマスコミにばらすぞ、顧客情報を外に出すと言ってきた。

警察に届けないで交渉して2億円に負けてもらうという選択肢もあるかもしれないが、孫さんは即刻警察に通報した。そうしたら、次のような答えが来たという。

「相手からの最初の連絡は『盗んだ』ということだけで、その段階では窃盗罪にはならない」

「会社のフロッピーを持ち出したならともかく、自分のフロッピーを持ち込んでコピーとしていれば窃盗罪にはならない」

警察は「事件になったら連絡してくれ」つまり、「具体的に何か脅されたら言ってきてくれ」と言っていたという。

日本の法律では情報を盗んだだけでは窃盗罪にはならない。いずれは「情報窃盗罪」が刑法に含まれると思うが、これはいまだに同じ状況なのだ。

金品の要求があったので、警察は動きだしたが、警察がマスコミに漏らして大問題となり、ソフトバンクの株価は大幅に下落した。いまだに情報漏えい事故が起こったら、ヤフー!BBの例が出される。ソフトバンクのブランドイメージは傷ついた。

NTTもKDDIもその後数か月で情報漏えい事故が起こったが、調査中ということで発表をずらし、1年後に発表した。その時は個人情報漏えいに対する世間の関心が薄れ、ほとんど問題にならなかった。


ヤフー!ジャパンがグーグル検索を導入

ヤフー!USがグーグルとの戦いに敗れて、マイクロソフトに検索部門を身売りして業務提携をして、マイクロソフトのBINGを検索エンジンに導入した。

日本においてもヤフー!ジャパンはマイクロソフトの検索エンジンを使うとほとんどの人が思ったが、孫さんはグーグルと直接交渉して、グーグルの検索エンジンを取り入れた。

日本ではヤフー!ジャパンが5割、グーグルが3割というマーケットシェアだが、もしヤフー!ジャパンがBINGを採用すれば、いずれシェアは落ちる。その時にグーグルと契約しても、有利な契約はできない。

だから孫さんはシェア下落は絶対防ぐということで、グーグルに乗り込んで自らトップ交渉し有利な条件で契約した。

筆者もポータルはヤフーを従来から使っている。ヤフー検索はグーグル検索と同じものなので、グーグルサイトに行く必要ないために、グーグルサイトはほとんど使ったことがない。

もしヤフー!ジャパンがBINGに変えていれば、孫さんが予想したように、筆者もグーグルに切り替えていたかもしれない。


99%の人が登るべき山を決めていない

みんな一生懸命生きているが、実は99%が登りたい山を決めていない。

自分自身のために、自分の人生って何だ?自分は何の事を成したいんだ。このことだけは決めてほしいと孫さんは語る。


孫さんの戸籍

孫さんの戸籍には「佐賀県鳥栖市五軒道路無番地」と書いてあるという。

「無番地」なら「無番地」と書かなければよいのに、国鉄の線路脇の空き地にトタン屋根で板を張って住んでいるわけだから、正式に戸籍を認めるわけにいかないということだったのだろうと。


ソフトバンクのこれからの最大の危機

孫さんが19歳の時に人生50年計画、5段階のステップを作ったときから、継承を最大の問題と考えてきたという。

孫さんは向こう10数年で後継者を決めると公言してきたが、これが一番問題である。だからこの講義をUstreamで公開して、広く後継者候補を募集しているのだと。

ソフトバンクアカデミアは定期的に下10%を入れ替えるが、何度でも再チャレンジできる。是非チャレンジしてくれと言って、Ustreamの講義を終了している。

講義は2時間半と長いが、やはり孫さん自身の講義だけに印象に強く残る。映像を常に見る必要はなく、何かをパソコンでやりながら聞くき流すことでもよいと思うので、ここをクリックしてどんなものか見てみることをおすすめする


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Posted by yaori at 12:40│Comments(0) ビジネス | 企業経営