2012年08月27日

たかが英語 楽天三木谷さんの英語社内公用語化論

たかが英語!たかが英語!
著者:三木谷 浩史
講談社(2012-06-28)
販売元:Amazon.co.jp
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楽天社長兼会長の三木谷さんの英語社内公用語化論。自分で作った造語で、英語社内公用語化のことを"Englishnization"と呼んでいる。アマゾンのデフォルトの表紙は味気ないので、三木谷さんの写真とキャッチコピーが載っている帯を紹介しておく。

たかが英語








三木谷さんのお父さんの三木谷良一さんは神戸大学名誉教授で、三木谷さんが小学校2年生から4年生の時に、エール大学に研究員として赴任したため、三木谷さんもコネチカットのニューヘブンで過ごした。

筆者は三木谷さんは英語がネイティブ並みの帰国子女なので、楽天の英語公用語化などを推進しているものだと思っていたが、なんのことはない三木谷さんは向こうにいたときは頭は英語化していたが、帰国して3か月で英語をすっかり忘れてしまったという。

筆者の息子二人も同様な状況で、ピッツバーグで3年間生活した後、小学校5年生と1年生で帰国した。

小学校5年生の長男は向こうで覚えた英語力を残すことがきたが(維持は無理。忘れないという程度)、小学校1年の次男は帰国して3年ほどYMCAの英語教室に週1回通わせるなどの努力をしたが、4年生から塾に行くようになってYMCA通いを辞めると、ほとんど英語を忘れてしまった。

深層心理であるいは残っているのかもしれないが、ピッツバーグ時代は当然ネイティブの発音で、「お父さんの英語の発音はおかしい」とか言っていたのだから、息子たちの英語力が低下してしまうことを、なかば驚きを持って見ていた。

閑話休題。

ネイティブ並とはいかないが、三木谷さんはハーバード留学帰りなので、もちろん英語がうまい。社員に英語公用語化を強いることになったので、三木谷さん自身は中国語を勉強しているという。もっとも英語公用語化の次は中国語でなく、プログラミング言語を社員に学ばせるつもりだという。


世界企業は英語を話す

三木谷さんは、楽天の英語公用語化の理由を、ひと言で言うと世界企業は英語を話すからだと語っている。

これからの日本企業は世界企業にならなければ生き残れないし、日本企業が世界企業への脱皮に成功すれば、日本はもう一度繁栄できる。だから日本の復活、繁栄のために楽天の試みが役に立つと信じていると語る。

楽天やユニクロの英語社内公用語化に対する批判の多くは、たとえば某大手自動車メーカー社長が言っていたように、「従業員がほとんど日本人で、しかも日本にある会社なのに、英語しか使わないなんて愚かだ」というものだろうが、三木谷さんはそれに対して、「たかが英語じゃないか」と考えていたという。できない理由を並べる前に、ともかくやってみなければわからないじゃないかと。

楽天が英語社内公用語化を発表した2010年から、部署別にTOEICスコアを競わせたこともあり、楽天の社員のTOEIC平均スコアは、2010年10月の526点から、2012年5月には687点になった。2011年の新入社員にはTOEIC650点を取るまでは配属せず、英語の勉強をさせて全員650点をクリアーした。

社内でやり取りする書類、会議での使用言語を英語とする正式な社内公用語化は2012年7月に正式にスタートした。


商社は昔から社内連絡は英語が多かった

筆者は商社に30年以上勤めているが、電子メールが普及するまでは、海外店とのやりとりに使っていたテレックスは基本的に英語で書いていた。

よほどニュアンスが必要な案件は、日本語のローマ字でテレックスを打つ場合もあったが、日本人同士でも英語でテレックスを打つのが普通だったし、筆者以外の社員でも普通に英語でテレックスを打っていた(ローマ字派だった人ももちろんいた)。

電子メールが入って、逆に社内で日本人同士で英語でメールを入れることはほとんどなくなったので、商社に関しては社員の英語力が落ちてきたかもしれない。

伊藤忠などでは日本での会議を英語でやっていると聞くし、他社でも部によっては英語で会議しているところもあると思う。海外店とのテレビ会議は英語なので、その意味では英語で会議することは日常業務だと思う。

もちろん商社マンは英語力が要求される職業だし、楽天と同列には比較はできないが、それでも筆者は楽天の英語社内公用語化は意義があると思う。


日本でだけ商売していては先細り

日本企業は、日本だけ商売していては先細りとなるという三木谷さんの認識は正しく、世界企業は英語を話すというのも正しい認識だと思う。

三木谷さんは「逆説的だが、楽天社員のほぼ全員が(サムスンやLGの社員のように)英語で仕事ができたなら、社内公用語を英語に変える必要はなかった」というのもその通りだと思う。「できるけどやらない」というのと、「できないからやらない」とは違うのだ。

楽天がさきがけとなった英語を社内公用語化する動きは、ぜひほかの日本企業にも広まってほしいと思う。

楽天では2011年3月以来、開発系の執行役員6人中3人は日本語を話せない外国人だという。日本語の縛りを取り払ったおかげで、国籍に関係なく専門知識とノウハウを持った人材を雇うことが可能となった。

外国人枠を取り払ったメジャーリーグのようなもので、外国人枠がある日本のプロ野球とメジャーリーグの球団だったら、どっちが強いか答えは明らかだろうと。

楽天の社内SNSで使っているYammerでも、英語にしてから議論が活発化した。また英語で話すことによって、自然と社員が論理的に話すようになったという効果もある。

筆者もこのブログを英語版でも出そうと思っているが、いまのところ実現していない。たとえば茂木健一郎さんなどは、英語日本語の両方でブログを書いている。


楽天が取り入れようとしているのはグロービシュ

楽天が取り入れようとしているのは「グロービッシュ」であり、グロービッシュを話すことは、英語による文化侵略から自分たちの言語や文化を守ることにもなるという。

楽天の英語化は、西欧化ではなく、日本文化や日本人の良い点を世界に広げるきっかけにしたいと三木谷さんは語る。

英会話において重要なことは、頭の言語モードを切り替えることだと三木谷さんは語る。その意味で英語教育は英語でやるべきだし、翻訳せず英語を英語のまま理解できるようにすることが重要だ。

三木谷さんは役員会議のなかで、「ここは日本語でもいいですか?」と弱音を吐く役員がいても、絶対に認めなかった。それは頭の言語モードの切り替えを徹底するためだと語る。

ある部族が使う言語には青と緑の差がないので、日本人には簡単に区別ができる青と緑をなかなか区別できないという。概念が言語に縛られているのだ。だから言語を変えることで、概念を多角的にとらえ、オリジナルなビジネスを生みだす上でも役に立つだろう。

これはサピア=ウォーフの仮説である。


日本の英語教育改革

三木谷さんは受験英語はすべてTOEFLかそれに近いものにすべきと語る。日本人がつくった英語の教材がベストとは限らないし、受験英語は日本でしか存在しない特殊な英語なので、英語圏で通用する英語を学ぶには英語圏の大学への留学を希望する人が受ける英語力判定試験のTOEFLが適しているという。

日本政府は、英語を長時間勉強していながらも、英語を話せない人ばかりつくる受験英語教育による「言語鎖国」をやめよと三木谷さんはいう。


誰かが成功しないと次に続かない

野茂がメジャーに移籍するまで、日本人の野球選手はメジャーでは通用しないと思われていた。その後野手でも通用すると証明したのは、イチローや松井秀喜だった。結局は楽天が実際に世界で成功しなければ、世間の人は、グローバル化が正しい道であることを納得しないだろう。

グローバル化した楽天が世界で成功を収めること。日本人の意識が変わり、日本の英語教育が変わること。そうして日本人の競争力が上がり、日本が繁栄すること。それが三木谷さんの究極のゴールだといって結んでいる。

ポイントを良くとらえた大変参考になる英語社内公用語化論である。


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Posted by yaori at 13:01│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 楽天

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