2012年10月01日

人生の途上にて 孤高のメスやどくとるマンボウをインスパイアした本

人生の途上にて
著者:A.J.クローニン
三笠書房(1983-01)
販売元:Amazon.co.jp
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このブログで紹介した「孤高のメス」で、主人公の当麻鉄彦が高校時代に読んで、医者を目指す動機となったとされている本。

孤高のメス―外科医当麻鉄彦〈第1巻〉 (幻冬舎文庫)孤高のメス―外科医当麻鉄彦〈第1巻〉 (幻冬舎文庫)
著者:大鐘 稔彦
幻冬舎(2007-02)
販売元:Amazon.co.jp
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クローニンはスコットランド出身で、もともとグラスゴー大学を主席で卒業した医者だ。スコットランドの僻地の代診としてスタートして、船医や炭鉱の勤務医を経て、英国医学会の会員となる。ロンドンで開業して、医者として成功した忙しい毎日を過ごしていた。

ところが、子供の時からの夢を実現させるために30代半ばで医者を辞め、家族とともにスコットランドの田舎に引き移って、半年かけて処女作の長編小説、「帽子屋の城」を書き上げる。

クローニン全集〈第2〉帽子屋の城 (1965年)
三笠書房(1965)
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タイプアップされた原稿を見て失望し、一度は暖炉の灰に投げ込んだクローニンだったが、思い直して原稿を拾い集め、さらに数か月かけて完成し、出版社に郵便で投稿する。

その処女作が奇跡的に出版社の社長の目に留まり、出版されることになった。そして出版されると世界21か国語に翻訳され、全部で3百万部を超える大ヒットとなり、クローニンは医者から正式に足を洗い、小説家として成功する。「帽子屋の城」は映画化もされている。

クローニンの代表作の「城塞」、英文名"The Citadel"も1938年に映画化され、アカデミー賞にもノミネートされている。



この本は、クローニンの貧乏学生時代からの自伝的小説で、船医になったり、僻地で数々の患者を治した経験や、ロンドンでの成功、医者をやめて小説書きに専念した生活、思いがけない処女作の成功、第二次世界大戦後のヨーロッパへの旅などを描いている。

英語の原文は"Adventures in two worlds"という名前で、医者と作家という二つの世界の経験を書いている。

Adventures in Two WorldsAdventures in Two Worlds
著者:A. J. Cronin
Kessinger Publishing(2010-09-10)
販売元:Amazon.co.jp
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この本は「孤高のメス」の当麻鉄彦(ということは著者の大鐘稔彦さん)をインスパイアしたとともに、クローニンが船医として過ごした経験などは、たぶん北杜夫さんの「どくとるマンボウ航海記」などのシリーズもインスパイアしているのではないかと思う。

どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)
著者:北 杜夫
新潮社(1965-02)
販売元:Amazon.co.jp
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翻訳は「風と共に去りぬ」などを手掛けた翻訳家で、三笠書房創立者の竹内道之助さんで、翻訳の出来も非常に良い。竹内道之助さんはクローニンにほれ込み、「クローン全集」を三笠書房で出版しているほどだ。

風と共に去りぬ (1) (新潮文庫)風と共に去りぬ (1) (新潮文庫)
著者:マーガレット・ミッチェル
新潮社(1977-06)
販売元:Amazon.co.jp
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当麻鉄彦ならずとも、引き込まれてしまうこと請け合いだ。

「どくとるマンボウ」シリーズのように楽しめるノンフィクション小説である。


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Posted by yaori at 23:00│Comments(0)TrackBack(0) 自叙伝・人物伝 | 医療

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