2014年08月13日

再掲  「零の遺伝子」 国産ステルス戦闘機 試験飛行決定

2014年8月13日再掲:

夏休みや冬休みが終わりに近くになると、このブログのランキングは上がる。
休み中の課題図書となっている本の感想文を書くために、小中学生がこのブログを参考にしているのだと思う。

「助かりました」という感謝のコメントをもらうこともある。小中学生はあらすじを読んだら、律儀に文末の「このブログに投票する」をクリックしてくれるから、ランキングが上がるのだろう。

現在のこのブログの人気記事ランキングは次の様になっている。

1.「海賊と呼ばれた男」 百田尚樹

2.「ホームレス中学生」 田村裕

3.「零の遺伝子」 春原剛

4.「日本男児」 長友佑都

5.「心を整える。」 長谷部誠

たぶん3.を除いて、他は課題図書になっているのだと思う。

3.は、このブログの人気記事のランキングにずっと入っている。たぶんあまり他のブログ等で紹介されていないからなのだろう。

その国産ステルス戦闘機開発に関して、新しいニュースがあった。開発者の三菱重工がステルス戦闘機「心神」の試作機の初飛行を2015年1月に行うと報じられたのだ。

国産ステルス機配備計画は、エンジン調達など、まだまだ課題があるが、予定通り進められているようだ。

来年1月の初飛行を期待して、「零の遺伝子」のあらすじを再掲する。


2012年11月22日初掲:
零の遺伝子: 21世紀の「日の丸戦闘機」と日本の国防 (新潮文庫)零の遺伝子: 21世紀の「日の丸戦闘機」と日本の国防 (新潮文庫)
著者:春原 剛
新潮社(2012-07-28)
販売元:Amazon.co.jp

日経新聞編集委員の春原 剛(すのはら つよし)さんの本。春原さんは先日の日経・CSISシンポジウムでアーミテージ・ナイ鼎談の進行役を務めていた。

1990年代の次期支援戦闘機FSX商戦では、自主開発を求める自衛隊の制服組や三菱重工業などの産業界を、米国との外交関係を重視した日本政府が押し切り、F16をベースとした共同開発に決着した経緯がある。

たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)
著者:手嶋 龍一
新潮社(2006-06)
販売元:Amazon.co.jp




これにより、日本の開発したアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー技術と炭素複合材を使った軽量主要成型技術が米国に召し上げられ、生産分担分も米国に持って行かれるという結果となり、日本の航空エンジニアは2重の屈辱を味わった。

FSXをトラウマとして抱える防衛省・自衛隊の関係者は、いつしか日本の独自開発で戦闘機を作る夢を持ち続けた。それが現在も開発が進められている先進技術実証機ATD−X、コードネーム「心神(しんしん)」と呼ばれる国産ステルス戦闘機で、これを支援したのが「防衛庁の天皇」と呼ばれ、事務次官を異例の4年も続けた守屋事務次官だった。


守屋次官の政治力

山田洋行の過剰接待を受けた収賄罪で起訴され、現在は懲役刑で服役している「防衛庁の天皇」と言われた守屋武昌次官は、かつて「日米キャデラック・カローラ論」を掲げていたという。第5世代戦闘機としてはF22がキャデラックであり、カローラに相当するのが、日本の「心神」である。

実際、F22が推力15トンのF119エンジン2基を搭載するのに対して、推力5トンのIHI製のXF5エンジンを2基使った「心神」はたしかにカローラのようなコンパクト機となる。日本にも推力10トン以上の自主開発エンジンの計画があるが、費用は1兆円を超えるので、なかなか踏み切れないのだ。

セロ戦もライバルF6Fヘルキャットのエンジンが2,000馬力超に対し、当初の栄エンジンは1,000馬力以下だった。非力なエンジンを使ったので、軽量で敏捷な戦闘機ができたことから、この本ではセロ戦と「心神」の類似性をタイトルに使っている。

ちなみに、このブログで守屋さんの「普天間交渉秘録」のあらすじを紹介しているので、興味ある方は参照してほしい。淡々と事実を説明しており、わかりやすい本だった。

守屋次官は、小泉純一郎首相に気に入られていたので、米軍再編問題で外務省が打ち出していた「スモール・パッケージ」(横田基地の米軍司令部のグアム移転だけ受け入れて、米陸軍第1軍司令部の座間移転は拒否する)に対抗して、米軍のグローバル再編に協力する「トータル・パッケージ」として小泉首相に説明し、「トータル・パッケージはおもしろいじゃないか」という言葉を引き出すことに成功する。

「トータル・パッケージ」とは、1.米海軍厚木基地の艦載機部隊を海兵隊岩国基地へ移転、2.普天間飛行場の移転、3.相模補給廠や牧港補給地区など使用頻度の低い遊休施設の返還などを含んだ防衛省の独自プランだ。

2004年9月の小泉・ブッシュ会談のために、小泉首相は守屋次官に発言要旨メモをまとめるよう指示し、ここで日米交渉の主導権は外務省から防衛省に移った。


「機体はつくるな」という指令

防衛庁幹部には、米国の印象を悪くするような「新・国産戦闘機プロジェクト」を声高に進めるのは賢明でないという考えがあったので、「心神」開発は「高運動飛行制御システム」という名目で始められた。2004年前後に130億円の予算を確保したが、「機体はつくるな」とクギを刺されていたという。

そこで防衛省の技術開発本部は「心神」の実物大のモックアップ模型をつくって、フランスの仏国防整備庁の設備でステルス性能を試した。このことはYouTubeの次の映像で報じられている。




もともとF22が欲しかった防衛庁

防衛庁は国産開発の「心神」をもとから欲しかったわけではない。第5世代戦闘機のトップに位置する米軍のF22が導入希望のトップだった。F22のステルス性能は、自動車ぐらいの大きさのものが、レーダーではゴルフボールくらいにしか映らないという驚異的なものだ。

フランスでの「心神」のステルス性能テスト結果は、上記のビデオでは「中型の鳥よりは小さいが、虫よりは大きい」と防衛庁幹部が語っている。「せいぜいサッカーボールぐらい」だったという。



現代の戦闘機は戦闘機だけで行動するわけではない。強力なレーダーを持つ早期警戒機や地上・海上のレーダーと一体化した高速データリンクの中で、敵を攻撃する役割が与えられている。だから敵の「脳」ともいえる早期警戒機を撃墜できる能力があり、また「敵地深くに入り込み、爆撃する能力」を持つステルス戦闘爆撃機は、「核にも匹敵する戦略兵器」と言われるのだ。

F22は燃料を大量に消費するアフターバーナーを使わず超音速飛行ができるので航続距離も長く、グアム島から北朝鮮に侵入して、電撃爆撃し、北朝鮮軍機とドッグファイトをしてグアム島に帰還することが可能という。航空自衛隊のF15だと、日本から北朝鮮の往復飛行がやっとで、ドッグファイトすると「片道切符」になるという。

F15があれば、F22は要らない」と言っていた航空自衛隊は、2007年に沖縄で行われた航空自衛隊のF15対米軍F22の共同訓練で、双方が早期警戒機を導入していたにもかかわらず、完全に「お手上げ」の状態だったことから、F22導入希望に変わったという。

これに先立ち2004年に行われたインドと米軍の合同軍事演習で、F15がSU30に惨敗したという情報を自衛隊は得ていた。この時は、早期警戒機なしのデータリンク抜き、自動追尾ミサイルなしのドッグファイトだった。

次のビデオを見れば、SU30の驚異的な運動性能がわかると思う。まるで風に舞う木の葉のようだ。



2009年5月に自民党の新・国防族を代表する浜田靖一防衛大臣は、ワシントンを訪問して当時のゲーツ国防長官と面談した時に、次期主力戦闘機にF22を有力候補として位置付けていることを強調した。しかし、ゲーツ長官はF35を「良い戦闘機」だと勧める発言をした。




F22は打ち切り、F35は大増産

F22は1983年にコンセプトをつくり、2005年に実戦配備が始まった。ところがあまりにカネがかかり、しかも飛ぶごとに毎回お化粧直しが必要ということもあり、メインテナンスもバカにならない。

このため米国では183機で生産中止が決まっている。米国議会の輸出禁止決議もあり、日本がF22を購入することは不可能となった。

一方F35は、同じ生産ラインから空軍仕様、海軍仕様、海兵隊のSTOVL仕様が一括生産でき、米空軍1,800機、米海軍400機、米海兵隊600機、英国空軍150機に加え、NATO諸国、イスラエルも導入し、日本も2011年末にF35を導入決定した戦闘機のベストセラーだ。

F22,F35と並ぶ第5世代戦闘機としては、ロシアのPAK FAと呼ばれるSU50や中国の殲20がある。






第6世代戦闘機

米軍の中では、第6世代戦闘機は、いよいよ無人機になると言われている。映画「ステルス」もAIを搭載した無人機が、隊長を自らの意思で救出するというストーリーだ。同じようなことが次世代の戦闘機では起こる可能性があるという。



次世代戦闘機の特性は"morphing”(変形)というコンセプトだという。なにやら映画「ターミネーター2」のT−1000のような印象があるが、「しなり」に近いものを機体に持たせるものとみられているという。



ちなみに航空自衛隊は、早くから無人飛行機の研究を続けており、F104の無人機を10機以上生産した。

パイロット訓練用の逃げ回るターゲットとして考えられていたが、運輸省との論争で航路が限定されたため、すぐに撃ち落とされるようになり、結局岐阜県の航空自衛隊第2補給処に死蔵されているという。


F35は空軍、海軍、海兵隊が同じ戦闘機を使う初めてのケースで、その意味ではいままで米軍戦闘機が抱えていたインターオペラビリティの問題を抜本的に解決した戦闘機である。(いままでの米軍の戦闘機はF15、F−16は空軍だけ、F14、F−18は海軍だけ、ハリヤーは主に海兵隊が使っており、ミサイル、弾薬、燃料、潤滑油、レーダー、タイヤに至るまで装備品の仕様が異なっていた)。

平和の配当で、どの国も防衛予算を削減している流れのなかで、F35は世界各国が参加した文字通りの"Joint Strike Force"といえる共同開発機種である。

日本もライセンス生産という形で、その開発に加わることになるので、いまさら日本独自で「心神」戦闘機を開発するということになるとは考えにくい。それゆえ「心神」はせいぜい試作機にとどまるのではないかと思うが、今後の動きに注目したい。

問題点がよく整理された本である。もともと2009年に単行本として出版され、2012年に文庫化された。春原さんの本をいろいろ読んでみて、この本が一番よくまとまっていると思う。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。



Posted by yaori at 22:11│Comments(2)TrackBack(0) ビジネス | 自衛隊・安全保障

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この記事へのコメント
心神が開発されて日本の国防を担ってもらいたいですね。
Posted by よしお at 2012年12月16日 03:01
最新鋭の戦闘機は格段に性能が向上しているから、
敵機の機銃掃射やミサイルを、蝶のようにヒラヒラとかわしていたら、
パイロットは物凄いGに振り回されて確実にムチ打ち症になるね。
大半はブラックアウトしてしまうかも・・・「パイロットって辛いよなぁ」
Posted by ムクの郵便やさん at 2013年01月17日 02:27