2012年11月27日

ヘルマン・ヘッセ 荒野のオオカミ 青春でなく初老を描くヘッセの作品

荒野のおおかみ (新潮文庫)荒野のおおかみ (新潮文庫)
著者:ヘッセ
新潮社(1971-02)
販売元:Amazon.co.jp

ヘルマン・ヘッセの後期の代表作。今度あらすじを紹介するスティーブン・コヴィーの「第3の案」のキーワードである”魔術劇場”が登場する作品として紹介されていたので読んでみた。

”魔術劇場”とは、「入場は狂人だけ。入場料として知性を支払うこと」と書かれた入口を通ると、中には無数の扉と魔法の鏡が取り囲んでいる秘密の場所だ。「第3の案」では、そのような”魔術劇場”はどんなアイデアも許され、第3の案を生み出すのに理想的な環境として紹介されている。

第3の案 成功者の選択第3の案 成功者の選択
著者:スティーブン・R.コヴィー
キングベアー出版(2012-02-25)
販売元:Amazon.co.jp

この作品はヘッセが50歳の時の作品で、筆者が好きなヘッセの代表作の「車輪の下」や「ペーター・カーメンチント」、「デミアン」などの青春ものとは全く異なる作風だ。ヘッセの作風は知っているつもりだったが、自分が読んだ本の範囲など本当に狭いということを痛感させられる。

車輪の下で (光文社古典新訳文庫)車輪の下で (光文社古典新訳文庫)
著者:ヘッセ
光文社(2007-12-06)
販売元:Amazon.co.jp

ハリー・ハラーというヘルマン・ヘッセ自身を思わせる自称「荒野のオオカミ」作家が、とある下宿屋に住みつくようになる。ほどなくして下宿を引き払う時に、大家のおいに作品を預けるというストーリーだ。

まるで、夏目漱石の「こころ」の「先生」が手紙を預けるような展開である。

こころ (新潮文庫)こころ (新潮文庫)
著者:夏目 漱石
新潮社(2004-03)
販売元:Amazon.co.jp

その作品の中に登場するのが、ハリー・ハラーにダンスを強要するヘルミーネ(ヘルマンの女性形)とヘルミーネの女友達マリーアや愛人のサクソフォニスト・パブロだ。

ハリーはたまたま見かけた”魔術劇場”という電光掲示板に気が付いて探すが、なかなか見つからない。やっと”魔術劇場”を見つけて中に入ると、不思議の国のアリスならぬ、無限のドアと鏡の世界だった。ドアには様々なシナリオが描かれており、そのドアを潜り抜けると、ドアに書いてある場面に出会えるのだ。

不思議の国のアリス (角川文庫)不思議の国のアリス (角川文庫)
著者:ルイス・キャロル
角川書店(角川グループパブリッシング)(2010-02-25)
販売元:Amazon.co.jp

幻想的な場面の描写が続き、最後はハリーがナイフを持って…。ということで、いつも通り小説のあらすじは詳しくは紹介しない。

筆者はヘッセなら「車輪の下」のような青春ものが好きだが、この「荒野のおおかみ」に違った魅力を感じる人もいると思う。

「荒野のおおかみ」はドイツ語ではDer Steppenwolfだ。映画「イージー・ライダー」の主題歌の"Born to be wild"というヒット曲を持つアメリカのSteppenwolfというバンドは、この作品の名前を取っている。筆者が高校生くらいの時から好きなバンドだが、バンドの名前の由来を今回初めて知った。

Steppenwolf (BORN TO BE WILD)Steppenwolf (BORN TO BE WILD)
アーティスト:Steppenwolf
MCA(1987-06-01)
販売元:Amazon.co.jp



映画「イージー・ライダー」の衝撃的なエンディングを思い出す。



この作品は筆者が学生時代に読んだコリン・ウィルソンの「アウトサイダー」では、1章をさいて論じられ、ドイツ人として約千年ぶりにローマ法王になったベネディクト16世は、この作品を愛読書に挙げているという。

アウトサイダー (集英社文庫)アウトサイダー (集英社文庫)
著者:コリン・ウィルソン
集英社(1988-02-19)
販売元:Amazon.co.jp


こんなヘッセの代表作もあったんだと、再発見できるスピリチュアルかつファンタジックな作品である。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。




Posted by yaori at 12:28│Comments(0)TrackBack(0) 小説 

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