2012年12月12日

世界で勝たなければ意味がない 36歳の日本ラグビー代表GMの決意

世界で勝たなければ意味がない―日本ラグビー再燃のシナリオ (NHK出版新書 392)世界で勝たなければ意味がない―日本ラグビー再燃のシナリオ (NHK出版新書 392)
著者:岩渕 健輔
NHK出版(2012-11-07)
販売元:Amazon.co.jp

最近出版されたラグビー日本代表GMの岩渕さんの本を読んでみた。岩渕さんは現役時代「天才スタンドオフ」と呼ばれたスター選手で、青山学院2年生の時に全日本入りし、ケンブリッジ大学に留学して卒業後、イギリスとフランスのプロチームでもプレイした経験がある。

アマゾンの表紙写真だと味気ないが、書店で売っている本には次のような帯がついている。

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筆者も昔会社のチームでラグビーをやっていた。昨年のワールドカップを除いて、最近はラグビーの試合を見ることも少なくなっていたので、この本は現在のラグビー日本代表がどういう立場にいるかわかって参考になった。

最近のラグビー界の世界ランキングは次の通りで、日本は16位にいる。地図は世界の主なプロリーグだ。

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出典:本書 25ページ

トップは「ハカ」と呼ばれるアボリジニのWar cryで有名なニュージーランドのオールブラックスだ。



日本代表の過去7回のワールドカップでの戦績は次の通りだ。

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出典:本書 28ページ

つまり日本代表は1991年の第2回大会でジンバブエに勝って以来、一度も勝ったことがない。2011年の第7回大会では、カナダに勝っていたが、終了直前に追いつかれてドローに終わったことは以前このブログで書いた通りだ


岩渕さんの経歴

岩渕さんは1975年生まれ。ラグビーをやっていたお父さんの影響で、ラグビーに親しみを感じていた。通っていた青山学院初等部にはラグビー部しかなかったので、生徒たちはみんなラグビーをする環境にあったという。

小学校4年生のころ、お父さんに連れられて香港で7人制ラグビーの香港セブンスの大会を見て、自分も将来世界で戦ってみたいと思ったことが、ラグビーを本格的に始めるきっかけとなった。

中学・高校と青山学院大学の付属校でラグビーをして、都大会では國學院久我山とぶつかって2年、3年と連続して優勝はできなかった。

青山学院大学に進学してもラグビーを続けたが、授業の関係で土日しかグラウンドにいけないこともあり、それを補う意味でジムでトレーニングをしたという。大学2年で日本代表に呼ばれ、控えのスタンドオフとしていくつかの試合に出場した。

7人制ラグビーの日本代表にも呼ばれ、1995年の香港セブンスにも出場した。大学卒業時には英国ケンブリッジ大学への留学が決まっていたが、神戸製鋼に短期間入社してから、ケンブリッジに留学した。

ケンブリッジでもラグビー部に所属し、卒業後2000年にサラセンズというプロチームに入団した。ケガの関係で、実質2年半くらいしかプレイできなかったが、Aチームで2試合程度、他はBチームで20試合くらい年間でプレイしていた。Aチームに出られない理由として、実力もさることながら、外国人枠がリザーブを含めて2名のみということで、枠が限られていたこともあるという。

入団当時のサラセンズの監督は、南アフリカ人のフランソワ・ピナールだった。1995年のワールドカップ南アフリカ大会で、南アフリカが優勝した時のキャプテンで、映画「インビクタス」でマット・デイモンが演じている。



フィジカル面での強化のために、ウェイトリフティングのスナッチやクリーン&ジャークをトレーニングに取り入れ、全身のバネを鍛え、瞬発力をつけていたという。

2005年にサラセンズを退団し、フランスのプロチームで1年過ごし、2006年に帰国してトップリーグに次ぐリーグに属するセコムラガッツにコーチ兼選手として加わった。

2007年から7人制日本代表チームのコーチとなり、2008年には香港セブンスに臨んだ。2009年にはセブンスのコーチを務めながら、日本代表ハイパフォーマンスマネージャーとして日本代表チームの強化にもかかわることになる。

そして2012年1月に日本代表GMに就任した。


日本代表GMの役割

GMの役割は、ヘッドコーチやチームマネージャーと連携して、各世代の日本代表の強化計画を打ち出し、それにしたがってプランを実行し、成果を随時チェックしていくことで、日本ラグビー界全体のレベルアップを達成することだ。

日本代表には、年齢制限のない15人制代表チームのほかに、若手育成プロジェクトの「ジュニア・ジャパン」、年齢制限のあるU20、U17(ユース)、U18(高校代表)、7人制日本代表、「セブンズ・アカデミー」、そして女子の15人制と7人制の代表チームがある。

代表チームにはヘッドコーチをはじめとするコーチ、トレーナー、ドクター、チームマネージャーなど11人のスタッフがいる。そのほかの代表チームも5〜8人のスタッフがいるので、全体で50名程度のスタッフがいる。

これらのスタッフの任命、合宿や遠征などの強化スケジュール策定、そして予算決定がGMの仕事だ。


2019年日本ワールドカップまで時間がない

いままで2019年の日本でのラグビーワールドカップ開催まで、だいぶ時間があると思っていたが、この本を読んで、それほど時間の余裕はないことがわかった。

ラグビーのワールドカップはオリンピックとFIFAワールドカップに次ぐ、世界第3位のスポーツイベントだ。2011年のニュージーランドワールドカップは、観客135万人、世界207の国と地域でテレビ放映され、視聴者は述べ39億人というビッグイベントだ。

2015年のイングランドで行われるワールドカップへの日本の出場権はまだ決まっていないし、2019年の自国開催のワールドカップ自体も日本の出場権は決まっていないのだ。

一方、7人制ラグビーが2016年リオ・オリンピックから正式種目になった。リオ・オリンピックの前に、2013年にワールドカップセブンスが開催されるので、男女とも出場すれば、オリンピックの前に人気を盛り上げることができるだろう。


日本代表の強化

代表チームの活動期間は合宿やテストマッチで4−6月と11月の合計100日程度だという。残りの250日を選手にどう過ごしてもらうのかが、日本代表が勝つために最も重要な点であると岩渕さんは語る。

日本の場合は、大学ラグビーの人気が依然として高く、数万人の観客が動員できるが、代表チームのテストマッチでは観客が5,000人ということもある。だから大学ラグビーのトップスターなどは、代表になることにあまりインセンティブがない。

トップリーグでも一時期は、選手を出してケガでもされたら困るということで、代表に選ばれても辞退するということがあったが、岩渕さんはヘッドコーチのエディ・ジョーンズと一緒に各チームとコミュニケーションを取っているので、現在はサポートが得られているという。

サッカーと違い、ラグビーの代表チームでは戦術・技術面のみならず、体力強化のためのフィットネストレーニングも取り入れる必要がある。スクラムの強さや、フィジカルの強さという世界との差を縮める努力が不可欠なのだ。

相手チームも、サモアやトンガ、フィジーなどは、ヨーロッパで活躍している選手もいるので、パシフィック・ネーションズカップなどで対戦する選手と、ワールドカップ本番で当たる選手とは全く異なる陣容となっているという。

ワールドカップ前の試合の戦績は判断材料にならないのだ。

マッチメーキングについても問題がある。ラグビーのテストマッチ(国際試合)はIRB主導で決める試合があり、何年か先まですでに決まっているという。特にトップレベルのニュージーランドやオーストラリアは、すでに2019年の日本ワールドカップまで試合日程は決定済みだ。

かつてのようにオールブラックスが日本に来日するということは、2019年までないことが決定している。

とはいえ、岩渕さんもIRBへの働きかけを通して、2013年にはウェールズ来日、2016−2018年には強豪チームとのテストマッチを組んでいるという。

日本代表が自信を持つために、具体的な目標として2015年のイングランド大会ではトップ10、2019年の日本大会ではトップ8を掲げている。


トップ8入りを目指して

順位を上げるためのターゲットは、現在9〜14位にいるイタリア、スコットランド、トンガ、フィジー、サモアの5か国だ。これらの国とワールドカップの年に必ず開かれるパシフィックネーションズカップやワールドカップ本番で勝つことが、日本の順位アップにつながる。

逆にいうと、テストマッチの予定がすでに組まれているので、これらの国とテストマッチを組むことは難しいのだ。

ランキングが上がれば、上位国と対戦できるが、ランキングが下のままでは、強いチームとは戦えない。だから2015年のワールドカップでトップ10に入ることが、2019年日本大会への準備という意味でも重要なのだ。

その意味では2012年に来日し、また2013年にも来日するフランスの各チーム選抜のフレンチ・バーバリアンズは、各国の代表選手が含まれており、強化試合として重要なのだという。



つい先日2015年のワールドカップの組み合わせが発表されたところだ。これによると、アジア一位になれば、南アフリカ、サモア 、スコットランド、米州2位のプールBに入れるが、もしアジア一位になれず、 敗者復活戦勝者で参加するなると、オーストラリア、イングランド、ウェールズ、オセアニア一位との死のAプールとなる。

2019年日本ワールドカップ開催までの準備期間は始まっている。まずは2015年イングランドワールドカップ、2016年のリオ・オリンピックでの7人制ラグビーにあわせて盛り上げることが必要だ。


日本代表ヘッドコーチのエディ・ジョーンズの戦略

日本代表ヘッド・コーチのエディー・ジョーンズについて書いた「エディー・ジョーンズの監督学」を今読んでいるので、近々あらすじを紹介する。

エディー・ジョーンズの監督学 日本ラグビー再建を託される理由エディー・ジョーンズの監督学 日本ラグビー再建を託される理由
著者:大友 信彦
東邦出版(2012-08-23)
販売元:Amazon.co.jp

エディ・ジョーンズは、南アフリカ代表の副コーチや、オーストラリア代表のワラビーズのヘッドコーチもつとめた経験豊富な指導者で、お母さんが日系人で日系のハーフだ。

岩渕さんもエディ・ジョーンズの「日本ラグビーは世界一のアタッキング・ラグビーを目指す」という方針を支持している。

フィジカルで劣っている人間が勝とうと思えば、1対1になる局面を増やすしかない。相手がラインで待ち構えているところに突っ込んで行っては、すぐに1対2以上となり負けてしまう。そこで、フィットネスを使って、早くポジショニングして、相手よりもいい状況をつくって、個々の状況判断で、1対1の局面をいかに有利に進めるかが課題となるのだ。

エディ・ジョーンズは2012年6月のフレンチ・バーバリアンズとの試合で若手中心の日本代表が負けたときに、すごい剣幕で怒ったという。フランス代表ですらないプロリーグ選抜チームに日本代表が負けることは、我慢ならないことだったという。

勝つメンタリティを持たず、「そこそこやれたな」ではダメなのだ。次のワールドカップまでにメンタルな部分をどう変えていくかが日本代表の大きな課題なのだ。


岩渕さんだけの力では限界が当然ある。ラグビー協会関係者やラグビー経験者も含めて、みんなが日本でのラグビーワールドカップ開催の成功を目指して、まずは直近のゲームから応援しよう!


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。




Posted by yaori at 12:58│Comments(0)TrackBack(0) スポーツ | 趣味・生活に役立つ情報

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