2012年12月24日

就活生の親が今、知っておくべきこと 日経ウーマン編集長の体験記

就活生の親が今、知っておくべきこと (日経プレミアシリーズ)就活生の親が今、知っておくべきこと (日経プレミアシリーズ)
著者:麓 幸子
日本経済新聞出版社(2011-11-10)
販売元:Amazon.co.jp

2012年度の新卒採用は、2011年から2か月遅らせて12月1日スタートとなった。毎日のようにリクルートスーツを着て会社訪問に行っている息子さん、娘さんがいる人もいると思う。

40代、50代の親が経験した昔の就職活動と、現在のインターネットの就職サイトを使った就職活動は全く異なる。また子供の数は減っているのに、大学生の数は増えているので、景気低迷で採用者数が減少している現状では競争は比べものにならないほど厳しい。

だから名前を知らない会社に内定しても、いい大学に行っているのだから、もっと有名な会社にトライしろなどとケチをつけてはいけない。

これは、そんな親への日経ウーマン編集長の長男の就活を踏まえた体験記である。

元々は日経新聞電子版に2011年3〜4月に連載された「母と子の444日就活戦争」を再構成したものだ。


麓さんの長男の就活体験

著者の麓さんの長男は、超上位校ではないが、2番手グループに入る私立大学にいて真面目に大学に通っており、見た目も悪くないから、面接官にも好まれるのではないか、「まあ、なんとかなるんじゃないか」と思っていたという。

今から思えば、親バカの極みだという。

結論から言うと、麓さんの長男は2011年春に都内の私立高校の教員として就職した。内定したのが2010年の12月。就活を始めてから実に444日めの内定だった。

就活を通じて、長男は子どもが好きなことに気が付き、教職を目指すこととなったという。東京都の教職員採用試験ではいいところまでいったが、結果は不合格だった。ちなみに応募者は2万人、倍率8.1倍だったという。


就活に親が”丸腰”で臨んではいけない

麓さんは「就活は子どもに任せて親は暖かく見守るべし」などといって、ゆめゆめ子どもの就活に、親が”丸腰”で臨んではいけないと力説する。

子どもたちが就活時に体験する困難さや混乱は、子どもたちのせいではなく、国の雇用政策、産業構造、グローバル化を背景にした企業の事業戦略や人事施策などの大きな変化によってもたらされている。

親がすべきことは、単なる見守りだけでなく、自らの経験を生かして働くことの意味を伝え、適切なアドバイスをし、「大丈夫できるよ」といってポンと背中を押す。よきサポーターやアドバイザーになることだという。


親の世代の就活と現在の就活とは全く異なる

この本の前半で麓さんは、親の世代の就活と現在の就活とは全く異なることを、数々のデータを挙げて説明している。「昭和の就活」と今の「就活」が違う点を簡単に紹介しておく。

1.大学進学率は倍となり、少子化にもかかわらず大学生の数は増えているのに求人総数は増えていない。

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出典:本書83ページ

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出典:本書23ページ

2.非正規雇用が3割に達し、正社員の枠はますます狭き門になり、さらにグローバル採用という外国人との競争もでてきた。

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出典:本書126ページ

上記の通り、男性で非正規雇用者は2000年の12%から2010年には19%に増加した。女性では2003年ごろに正規雇用と非正規雇用が逆転し、2010年には、非正規雇用が54%で正規雇用の46%を上回るという状態になっている。

グローバル採用については、トム・フリードマンが「フラット化する世界」で書いていることが当てはまる。

「いいか、私は子供の頃、よく親に『トム、ご飯をちゃんと食べなさい ー 中国やインドの人たちは、食べるものもないのよ』といわれた。

おまえたちへのアドバイスはこうだ、『宿題をすませなさい ー 中国とインドの人たちが、おまえたちの仕事を食べようとしているぞ』。」


フラット化する世界〔普及版〕上フラット化する世界〔普及版〕上
著者:トーマス・フリードマン
日本経済新聞出版社(2010-07-21)
販売元:Amazon.co.jp


3.指定校制がなくなり、自由に応募できる就職情報サイトが主流となるにつれ、応募者が激増した。企業はひそかに「大学別ターゲット採用枠」という事実上の「学歴フィルター」を導入して自衛した。

東証一部上場の人気企業では万を超えるエントリーシートが寄せられる。エントリーシートとは次のようなものだ。

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出典:本書36−37ページ

このうち”自己PR=学生時代に頑張ったこと”(通称「ガクチカ」)で、企業側がどういう人材を求めているかを考えずに、自分の基準で的外れなことを書く学生が多いという。

麓さんは、面倒見の良い知人から長男がアドバイスを受けて、ガクチカを書き換えた話を紹介している。

長男が最も強調したかった「自分のサークルを廃部の危機から救った」という話ではなく、「サークルで学生のみならず、社会人OB・OGや子供も参加したイベントを企画して成功させた」というエピソードを取り上げるようにしたという。

これなら幅広い世代の人と話せるというコミュニケーション能力の高さを証明する事柄なので、企業側はオッと思うだろうと。


4.大企業を目指しての就活は、下位大学出身者だとやっても無駄(採用枠がない)。上位大学出身者では同じ大学同士で争うことになる。

大学は少子化にもかかわらず、学生を確保しなければならない必要に迫られ、学力試験なしのAO入試や女子学生を増加させて、学生数を増やし続けてきた。そのツケが大学生の学力低下だ。

就活生は45万人いるが、人気上位100社の新卒採用数は合計3万人弱。旧帝大、早慶上智、MARCH、関関同立といわれる関東・関西の上位校の就活生を全部足すと4−5万人になるという。

海老原嗣生さんの「就職に強い大学・学部」にあるように、人気上位100社への就職に強いのは慶應、早稲田、上智まで。それも経済・法学部・商学部など偏差値の高い学部に限られるというのが現実なのだ。

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出典:「就職に強い大学・学部」71&75ページ


企業が本当に求める人材はズバリ「商社マンタイプ」

経団連の2011年新卒採用に関するアンケート調査(545社回答)によると、企業が選考にあたって特に重視した点は次の通りだ。

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出典:本書111ページ

第1位が8年連続で「コミュニケーション能力」、2位の「主体性」は4年連続で上昇、「協調性」、「チャレンジ精神」などが続き、「専門性」や「語学力」なども上昇しているという。

ひと言で言うと、企業が採用活動で重視するのは、ビジネスの基本となるコミュニケーション能力や熱意、バイタリティなどで、誰かの指示を待つ受け身な姿勢はダメで、積極的に自ら考えて動ける人材が求められているという。

つまり企業の欲しがる人材は「商社マンタイプ」なのだと。

「パワフルでコミュニケーション能力が高く、やり手で気が利いていてプレゼンもうまく、人をまとめられる、人を動かせる人」が求められているのだという。

筆者も商社で長年働いているので、「商社マンタイプ」という言葉には若干抵抗を感じるが、いずれにせよ上記のような人物像が、企業が最も求めているタイプであることは間違いない。


「人を動かす」から学ぶ

筆者の長男も麓さんの長男の一年後に就活を経験し、2012年4月に社会人になったばかりだ。筆者の出身クラブの後輩も時々相談に来る。

横道にそれるが、筆者の就活生に対するアドバイスは、カーネギーの「人を動かす」から学べというものだ。クラブの後輩だけでなく、会社の後輩や米国駐在の時はアメリカ人の部下にもこの本をプレゼントしてきた。

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10-31)
販売元:Amazon.co.jp

How To Win Friends And Influence PeopleHow To Win Friends And Influence People
著者:Dale Carnegie
Pocket(2010-04-27)
販売元:Amazon.co.jp

「人を動かす」の中には、運送会社が顧客に出したレターの添削や、アリゾナに転勤する女性銀行支店長の例が紹介されている。これらの文には人を動かすエッセンスが含まれている。

英文版の「なか見!検索」だと、目次の章題にリンクがついていて、それぞれの章題にジャンプできるようになっている。日本の「なか見!検索」もいずれこのような機能が追加されるのかもしれない。

上記の企業が重視している能力を参考に、採用担当者の立場に立って考えることができれば、「ガクチカ」や採用面接も克服できるだろう。

このブログではいろいろな人がカーネギーについて語っていることを紹介している。その層の厚さに驚くだろう。

法政大学では、「もし法大生が『デール・カーネギー』の原則を身につけたら」という特別講座を開講している。筆者と同じ考えの人がいるのだと思う。

人間関係の基本はいつの時代でもどの国でも変わらない。相手の立場で考えるという態度を身につけることができれば、その人はどこへ行っても成功すること間違いない。

永遠の名著「人を動かす」を参考にして、就活を勝ち抜いてほしい。


なお、このブログでは前述の海老原 嗣生(つぐお)さんの「就職に強い大学・学部」や、「学歴の耐えられない軽さ」のあらすじを紹介している。

偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)
著者:海老原 嗣生
朝日新聞出版(2012-03-13)
販売元:Amazon.co.jp

学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識
著者:海老原 嗣生
朝日新聞出版(2009-12-18)
販売元:Amazon.co.jp

また、東大生でも就活に苦労することを、「内定取れない東大生」のあらすじで紹介している。

内定とれない東大生 〜「新」学歴社会の就活ぶっちゃけ話 (扶桑社新書)内定とれない東大生 〜「新」学歴社会の就活ぶっちゃけ話 (扶桑社新書)
著者:東大就職研究所
扶桑社(2012-03-01)
販売元:Amazon.co.jp

海老原嗣生(つぐお)さんは、転職エージェントマンガ・エンゼルバンクのモデルとなったリクルートワークス編集長で人材コンサルティング会社(株)ニッチモ社長。ときどきテレビなどにも登場している。

就活に興味のある人は、海老原さんの「就職に強い大学・学部」や、「学歴の耐えられない軽さ」、「内定取れない東大生」のあらすじも参考にしてほしい。


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Posted by yaori at 12:09│Comments(0) 教育論 | ビジネス