2013年04月18日

日本経済の真相 アベノミクスの中心的論者 高橋洋一さんの本

日本経済の真相日本経済の真相
著者:高橋 洋一
中経出版(2012-02-15)
販売元:Amazon.co.jp

いまや浜田宏一イェール大学名誉教授と並んで、アベノミクスの中心的な論者となった高橋洋一嘉悦大学教授(元・大蔵省)の本。

高橋さんの「さらば財務省!」のあらすじは以前紹介した。

さらば財務省! 政権交代を嗤う官僚たちとの訣別 (講談社プラスアルファ文庫)さらば財務省! 政権交代を嗤う官僚たちとの訣別 (講談社プラスアルファ文庫)
著者:高橋 洋一
講談社(2010-06-21)
販売元:Amazon.co.jp
高橋さんは、アベノミクス論者としてマスコミにも頻繁に取り上げられるようになってきている。



アベノミクス人脈









出典:日経新聞電子版(2013年4月14日付け)の山本幸三議員に関する記事

この本はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、ここをクリックして目次を見てもらいたい。、なんちゃってなか見!検索でも紹介しておく。高橋さんは、俗論と真相を対比して説明している。


第1章 円高、デフレ、不況、電力、企業不正 これが日本経済の真相だ!

1. 俗論 : 異常なまでの円高、打つ手なし
   真相 : 解決は簡単。円を刷れば円安になる

2. 俗論 : 日本のデフレ、原因は人口減少
   真相 : 人口は無関係。デフレはお金不足で起こる

3. 俗論 : 景気が悪い以上、株価低迷はやむなし
   真相 : 円安にすれば日経平均1万3千円も可

4. 俗論 : オリンパス、大王製紙、2社の不正は深刻
   真相 : 不正経理は2社に限らない。まだ隠れている

5. 俗論 : 原発再稼働がないと日本の電力は不足する 
   真相 : 需給データに疑いあり。電力会社の利潤独占

第2章 TPP,ユーロ危機、QE3,中国バブル これが世界経済の真相だ!

6. 俗論 : TPPで日本の産業はダメージを受ける
   真相 : プラスの経済効果あり。参加しないと損

7. 俗論 : ユーロ崩壊を防ぐにはギリシャを救済すべし
   真相 : 破綻は当然。ユーロ離脱が立て直しの条件

8. 俗論 : 米国QE3が日本に打撃を与える
   真相 : 量的緩和で債券価格が下落。影響は小さい

9. 俗論 : 中国はバブル経済。崩壊まで秒読み段階
   真相 : 中国では日本のバブルが研究されている

第3章 財政赤字、国債暴落、復興増税、格付け これが国家財政の真相だ!

10.俗論 : 日本は財政赤字で破綻寸前
   真相 : 資産は世界一。実質の借金は350兆円

11.俗論 : 日本国債がデフォルト、暴落する
   真相 : CDSを見よ。10%の下落は十分あり得る

12.俗論 : 復興財源の確保には増税もやむなし
   真相 : 増税は愚策。100年国債を発行せよ

13.俗論 : 日銀による復興債の引き受けは「禁じ手」
   真相 : その禁じ手、実は毎年行われている

14.俗論 : 国による産業振興で日本経済は復活する
   真相 : 成功した「産業政策」など存在しない

15.俗論 : 格付けの見直しは経済に影響を与える
   真相 : 格下げは増税の道具。分析は不十分

第4章 年金、税制、雇用、空洞化、格差 これが社会保障の真相だ!

16.俗論 : 年金は破たん確実。増税で積立金を補え
   真相 : 国民の不安が利用されている。膨大な未収あり

17.俗論 : 雇用不安・空洞化、原因は海外の安い労働力
   真相 : 空洞化と円高を黙認している政府の無策が根源

18.俗論 : 格差の拡大は深刻。不正受給も増加中
   真相 : 格差是正にまさる良策あり。まず所得底上げを

第5章 公務員改革、大阪府構想、地方分権、失言報道 これが日本政治と報道の真相だ!

19.俗論 : 公務員改革、大阪都構想には高い壁
   真相 : 改革は大阪から始まる

20.俗論 : 決めるのは中央官庁。地方分権は絵に描いた餅
   真相 : 地方分権なら不公平を減らせる

21.俗論 : 新聞は有用な情報源。読めば真実がわかる
   真相 : 新聞にも既得権益。信じ過ぎると目がくもる

22.俗論 : 失言した大臣は即刻辞任すべきだ
   真相 : 問われるのは政策。無知な記者ほど揚げ足をとる

総論 2012年以降をどう生きるべきか?

★ メディアにダマされず真実を見抜く
★ 組織に縛られずすっきりと考える
★ 別の方法で豊かになる


マスコミの脳は「小鳥の脳」

この本のはじめで高橋さんは非常に刺激的な言葉を紹介している。官僚は「マスコミの脳は『小鳥の脳』だから、これくらいの情報をくわせておけばいい」と言っているという。

たとえば日本政府の予算はもともと2,000ページくらいあるものを、50ページの「役所の側でつくった要約資料」をマスコミに配っている。官僚に都合の悪い情報はすべてそぎ落とされ、ごく一部のわかりやすい部分だけが記者たちに手渡される。記者はこのわずか3%程度の「情報」をもとに記事を書いている。

高橋さんはいまでも2,000ページに目を通し、何よりもかつては財務官僚として残り97%の情報を隠す側にいた。だから高橋さんはもう15年以上まともに新聞を読んでいないという。


特記事項

上記の目次で大体の感じはつかめると思うので、印象に残った点をいくつか紹介しておく。

★日銀に60兆円刷らせれば、株価は1万3千円を超える
日銀はまだ60兆円もマネタリーバランスを拡大していないと思うが、株価はまさにぴったり、現状では1万3千円を超えている。

この本ではソロスチャートを紹介していないが、ソロスと同じ考え方で米国のマネタリーベースは2兆ドルなので、円を200兆円まで増やせば、為替は1ドル=100円程度になると語っている。「簡単すぎると思うかもしれないが、計算すればわかることである」。

★オリンパスの損失隠しが「氷山の一角」と言える理由は、バブル後の「飛ばし」をやっていた証券会社の担当者が、別の証券会社に転職し、客の弱みを握って、それをネタに商売しているのだと。

「損失を持ち続けて転々としている人たちが証券業界からいなくならない限り、損失隠しはこれからも続く」。

★CDSを見れば、日本国債の信用の高さがわかる
金融派生商品のCDS(Credit Default Swap)の保険料を見ると、破綻可能性の客観的な指標がわかる。

この本の出版時点で日本国債の保険料は1.4%、フランス国債が2.2%、ドイツや英国が1%。日本国債の破綻保険料は世界でも低い方に属する。

高橋さんがテレビ出演した時に、日本国債は3年から5年で破綻すると言っていた人に向かって「どうしてCDS取引をしないのですか?3年で4.2%払って100%返ってくるということは25倍の高収入です。取引したらどうですか?」と持ちかけると、黙ってしまったという。

★成功者の体験を一般論として取り上げ、簡単に儲けられるかのように書かれた本や雑誌記事はまずウソだと思った方が良い。書籍の印税を10%とすれば、1,000円の本が1万部売れても、印税は100万円。本当に何百万円も儲けられるのなら、本を書かずに、自分でも儲けるだろう。それが経済原則である。

★デフレが人口減少と関係がないことを、世界100カ国以上の数字を使って、次の相関図を導いている。さすが東大数学科出身だ。

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出典:本書

★日本国のバランスシート。次が高橋さんがつくった日本国のバランスシートだ。これにより、実質の借金(債務超過額)は350兆円だと割り出している。

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出典:本書


非常にわかりやすい「真相」の解説である。もちろん「真相」が必ずしも真実かどうかわからないが、少なくとも2012年1月の時点で、株価13,000円代を予想していたことなど、現在起こっている事象を言い当てている。

次に紹介する2008年の「この金融政策が日本経済を救う」も、浜田宏一教授の推薦書のひとつで大変参考になった。

この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)
著者:高橋洋一
光文社(2008-12-16)
販売元:Amazon.co.jp

やや得体が知れない感じはあるが、高橋さんは、アベノミクスを考える上で、欠くことのできない経済論者だと思う。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


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Posted by yaori at 12:45│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 経済

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