2013年05月30日

米韓FTAの真実 TPPの正しい理解に役立つ韓国の事情

TPPの正しい議論にかかせない米韓FTAの真実TPPの正しい議論にかかせない米韓FTAの真実
著者:高安雄一
学文社(2012-11-22)
販売元:Amazon.co.jp

TPP交渉への日本の参加が正式決定した。

TPPに関しては、「考えてみよう!TPPのこと」というサイト、「現代農業絵ときTPP反対」など、様々な反対論が出ているが、中には誤解に基づくものもある。

このブログで紹介した「隣の国の真実」など韓国に関する著書が多い高安雄一さんが、米韓FTA批判への韓国政府の反論を紹介することで、日本のTPP論議での同様の誤解に回答している。

隣りの国の真実 韓国・北朝鮮篇隣りの国の真実 韓国・北朝鮮篇
著者:高安雄一
日経BP社(2012-11-22)
販売元:Amazon.co.jp

ちなみに「みんなの党」のホームページでも「TPP反対論に対する反対論」を公開している。

最初にTPPの論議で、なぜ米韓FTAを題材として取り上げたかの説明をしている。TPPとFTAは次の表のように、非常に似通った内容の条約だ。

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出典:本書2ページ

また日本と韓国とは農業の国際競争力がなく、貿易立国であるという意味で、経済構造が似ているので、韓国の例が日本の参考にもなる。


韓国はFTA先進国

韓国がFTA先進国であることはよく知られている。この本で紹介する米韓FTAのほかに、EUともFTAを結んでいるので、工業製品の関税については、日本と比べると韓国製品の方が圧倒的に有利なポジションにいる。


対米国貿易      日本製品に対する関税率    韓国製品に対する関税率

自動車        2.5%                    0%
トラック        25%                     0%
カラーテレビ     5%                      0%

対EU貿易      
乗用車        10%                     0%
薄型テレビ      14%                     0%
液晶モニター     14%                     0%
電子レンジ      5%                      0%

これが日本もTPPに加盟して、「バスに乗り遅れるな」という根拠となっている韓国製品との競争力の差だ。

TPPでもよく言われる問題の整理をいくつか紹介しておく。


ISDS(Investor-State Dispute Settlement)条項

★アメリカ企業は日本政府を提訴できるが、日本企業はアメリカ政府を提訴できない?
これは条約がそのまま国内でも効力がある国と、条約を履行するために国内法が必要な国の差だ。

つまりアメリカは条約がそのまま国内では効力がない。外国企業はFTAなりTPPなりの条約を根拠としては提訴できない。

しかし、アメリカは条約を履行するための国内法を作っているので、その法律を根拠にアメリカ政府を訴えることができる。

★国際仲裁機関はアメリカ寄り?
国際仲裁機関で裁定が終わった200件余りのうち、投資家勝訴は30%。しかし公開されていない和解をあわせると推定60%を超えているといわれており、必ずしも国家有利ではない。

国際投資紛争解決センターは世界銀行の下部組織だが、世銀総裁は裁定には関与しない。裁定者は紛争当事者から各1名、双方が合意した第三者1名である。アメリカ寄りという事実はない。

★アメリカ企業による濫訴
アメリカ企業が提訴するケースは相対的に多い。しかし、法制度が未整備の国を提訴するケースが多く、法制度が整備している国が提訴されるリスクは少ない。


食の安全と農業

★ラチェット条項は「毒素条項」でBSE(狂牛病)が発生しても禁止措置を取れない

「ラチェット条項」とは、一度開放された水準は、いかなる場合でも反自由化の方向には戻せないというものだ。しかし「ラチェット条項」は投資、国境間のサービス貿易、金融サービスの一部にしか適用されない。

★未来最恵国待遇で、将来米国より高い水準の市場開放を別の国と合意すると、米国も同じ待遇にしなければならない?
未来最恵国待遇も、投資、サービス貿易のみに適用され、物品貿易には適用されない。

★農業壊滅 コメは守ったが、畜産などその他の農産品は関税撤廃で壊滅する?
たしかに牛肉をはじめ自由化される農産品の生産額は減少するという試算があるが、韓国では牛肉の生産量は増加している。

国産牛を好むという消費者のトレンドが国産品増加の要因で、自由化による生産減少を国産品選好が上回ることが予想される。

日本でも同じことが起こった。BSEによる輸入禁止期間もあったが、日本における輸入牛肉のシェアは一定に留まっているのが実情だ。

その他、次の様な誤解・疑問点についても丁寧に説明している。

★国のエネルギー政策が崩壊する

★国民皆保険が崩壊する

★金融市場が国際資本の草刈り場になる

★ジェネリック薬品が製造不可になる

★著作権侵害が非親告罪になり、誰でも告訴できる

★著作権の保護期間が70年に延びて、一般利用者に負担が掛る


FTAもTPPもほぼ同様の分野についての交渉となるので、米韓FTAについての考察が参考になる。正しいTPP/FTA理解に役立つ本である。


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Posted by yaori at 12:19│Comments(0)TrackBack(0) 政治・外交 | 経済

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