インフレ目標政策
著者:伊藤 隆敏
日本経済新聞出版社(2013-02-26)
販売元:Amazon.co.jp
インフレターゲット政策の提唱者の一人、東大公共政策大学院院長・伊藤隆敏教授のインフレターゲットの教科書。
2001年に同じ表紙デザインで出版された本を改訂したものだ。
インフレ・ターゲティング―物価安定数値目標政策
著者:伊藤 隆敏
日本経済新聞社(2001-11)
販売元:Amazon.co.jp
伊藤さんは福田内閣の時に日銀副総裁として指名されたが、参議院で多数を占めていた民主党の反対で実現しなかった経緯がある。
この本ではインフレターゲットの基本をわかりやすく説明している。部分によっては2001年の本のオリジナルな記述をそのまま残しているが、それらはほとんど現在実現している。
長い間、少数意見だったインフレターゲット論が、突如主流派になったことがわかる。
次がインフレターゲット政策を採用している主要国一覧だ。
出典:本書36〜37ページ
これに2012年から米国、そしてついに2013年から日本が加わった。
上記の表の主要国がインフレターゲット政策を採用したのは、インフレを止めるためだったが、日本の場合はデフレを止めるためで、ほかの国とは異なる。
日本のこれまでの状況はデフレスパイラルに陥っていて、そのありさまは次の図のようになっていた。
出典:本書88ページ
具体的な方策としては、長期国債の買い増し、ETF購入、REIT購入を提案している。この本では2001年のオリジナルな部分は「旧版のまま」という注釈をつけている。
これらは、いずれも「旧版のまま」の部分だ。このような具体策を2001年の段階で提言しているのだから、まさに先見性があるといえるだろう。
この本の最後に「反論に対する反論」ということで、次のような想定問答が紹介されている。
★インフレが止まらなくなるのではないか?
★年金生活者など国民に負担を強いるものではないか?
★長期金利が上昇して、銀行のバランスシート、実体経済に悪影響があるのではないか?
★インフレターゲティングの採用国は小国であり、大国は採用していないのでは?
★デフレはユニクロ現象のような良い物価下落で深刻な問題ではない。
★デフレは少子高齢化・人口減少のせいだ。
簡単に読めるインフレターゲティングの教科書である。
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