2013年06月24日

日本が震えた皇室の肉声 文芸春秋90周年記念誌

日本が震えた皇室の肉声 (文春MOOK)日本が震えた皇室の肉声 (文春MOOK) [ムック]
出版:文藝春秋
(2013-03-01)

文芸春秋に掲載された皇室関係の記事の特集号。

この本は、おおざっぱに分けると、次のような構成になっている。

1.東日本大震災と皇室
冒頭に東日本大震災に際しての2011年3月26日に発表された天皇の御言葉が掲載されている。
地震、津波、原発事故の被災地の国民を励まされる天皇・皇后両陛下や、皇太子殿下・妃殿下他の皇族の献身的な活動を伝える川島侍従長の一文が、写真とともに紹介されている。

2.嫁ぐ娘を送る父の気持ち
皇后陛下の実父・正田英三郎(元日清製粉社長)と、小和田国際司法裁判所判事夫妻の文が紹介されている。皇后陛下が平民として天皇に嫁いだ最初の例だ。当時の写真を見ても、この本のいろいろなところに紹介されている皇后陛下のエピソードを読んでも、畏れおおいことながら、今上天皇陛下は、本当に良い決断をされたと思う。

表紙写真も本当にいい写真だし、皇后陛下のご結婚前の写真や、皇太子殿下がご幼少の時のご一家の写真なども多く紹介されていて、興味深い。

皇后陛下のエピソードとしては、東日本大震災の時は、地震直後にガラスの引き戸をすぐに少し開けて、外への出口を確保されるなど、ゆがみで戸が開かなくなることを危惧しての実家のお母様の教えをいつも守られていることが紹介されている。

また、津波の被害を受けた奥尻島を訪問した時に、皇后様が子どもの頃読んだ教科書の「稲むらの火」のことを語られたこともあり、その後小学校の教科書には「稲むらの火」が取り上げられているとのことだ。

津波!!命を救った稲むらの火津波!!命を救った稲むらの火 [大型本]
著者:小泉 八雲
出版:汐文社
(2005-04)

この本の半分くらいは皇后陛下に捧げられたものと言ってもよい内容である。

3.大きなコンテンツとしてはこのブログでも紹介した単行本になっている「昭和天皇独白録」が収録されている。

昭和天皇独白録 (文春文庫)昭和天皇独白録 (文春文庫) [文庫]
著者:寺崎 英成
出版:文藝春秋
(1995-07)

4.皇族同士(高松宮殿下・妃殿下、三笠宮寛仁殿下、秩父宮妃殿下)のざっくばらんな座談会や、三笠宮寛仁殿下の女系天皇反対論、三笠宮寛仁親王家の二人の女王姉妹のインタビュー、故・高円宮憲仁殿下の韓国公式訪問記などは、貴重な資料だ。

皇室の系図は次の通りだ。

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出典:Wikipedia

女系天皇反対論

この本を読んで、女系天皇に反対する理由がはっきりわかった。三笠宮寛仁殿下は天皇家の尊さは、2,600年も男系で継続してきたファミリーという事実にあると主張されている。

これは、このブログで紹介した旧・竹田宮家出身の竹田恒泰さんの「語られなかった皇族たちの真実」や、生物学者の竹内久美子さんの「万世一系のひみつ」と同様の議論だ。

語られなかった 皇族たちの真実 (小学館文庫)語られなかった 皇族たちの真実 (小学館文庫) [文庫]
著者:竹田 恒泰
出版:小学館
(2011-02-04)

遺伝子が解く!万世一系のひみつ (文春文庫)遺伝子が解く!万世一系のひみつ (文春文庫) [文庫]
著者:竹内 久美子
出版:文藝春秋
(2009-05-08)

三笠宮家の女王姉妹は、「お前たちは結婚したら民間に行く身だから」と小さい時から教育を受けてきたと語り、皇族に選択権はないことながら、皇族として残るなら子供のころから、そのように教育すべきだと語っている。

三笠宮寛仁殿下は昨年ガンで亡くなったが、この本での櫻井よしこさんのインタビューでは、「高校生の頃、はたと気がついたら我々には同業者が16人しかいなかった」と語っている。

三笠宮寛仁殿下、高円宮憲仁殿下など、既に多くの男系皇族がなくなっており、それぞれの家には男系の皇族はいないので、これから女王がどんどん結婚されていくと思うので、今は同業者は16人もいないだろう。

三笠宮寛仁殿下は、学習院の初等科の時のクラスメートに、「お前たちは俺たちの税金で食わせてやっているんだ」と言われたというが、皇族は皇族資産から支給される歳費(櫻井よしこさんは3,000万円程度と語っている)で暮らしているが、営利事業には関与できない。苗字もなく、医療保険もなく、選挙権も被選挙権もない。皇族の基本的人権は認められていないのだ。


女系天皇反対の例示

女系天皇については、三笠宮寛仁殿下は次の様な例を出している。

「畏れおおいたとえですが、愛子様がたとえば鈴木さんという男性と結婚されて、そこから玉の様なお子様が生まれれば、その方が次の天皇様になられるわけです」。

「そのお子様が女のお子様でいらした場合、さらにたとえば佐藤さんという方と結婚されてーーーというふうに繰り返していけば、百年もたたないうちに天皇家の家系というのは、一般の家と変わらなくなってしまいます」。

「その時、はたして国民の多くが、天皇というものを尊崇の念で見てくれるのでしょうか。『私の家系とどこが違うの』という人が出てこないとは限らないわけです」。

「天子様を戴くシステムを突き詰めて考えれば、先ほども言いましたように連綿と続く男系による血のつながりそもののなのですから」。

「この女系天皇容認という方向は、日本という国の終わりの始まりではないかと、私は深く心配するのです」。

「せっかくサミュエル・ハンチントン教授が、『文明の衝突』で、日本は世界でも独自の文明を持つひとつだと書いてくれたのに、それを台無しにしてしまうのは、いかにも残念なことです」。

文明の衝突文明の衝突 [単行本]
著者:サミュエル・ハンチントン
出版:集英社
(1998-06-26)


5.その他資料
たとえば天皇陛下の「サイエンス」誌に掲載された「日本の科学を育てた人々」という論文が掲載されている。

これでは「解体新書」、「蘭学事始」などの蘭学研究から、日本に医者として来日したツェンベリー(植物学者)や、シーボルトなどの影響を紹介している。

故・高円宮殿下は、日韓ワールドカップの際の今上天皇の発言「桓武天皇の生母が百済の寧王の子孫であると続日本紀に記されている ことに韓国とのゆかりを感じています」という発言は、日韓関係を戦後の50年というスパンでなく、1,000年を超える古いつきあいがあったことを忘れてはならないというメッセージだと語っている。

これについては、YouTubeに、冒頭に天皇の発言そのものを含んでいる、メッセージ・ビデオを紹介しておく。



文芸春秋には貴重な作品が多く掲載されているが、このように皇室関係だけを集めて特集本とすると、まとまった作品になる。

大変参考になる本である。


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Posted by yaori at 12:07│Comments(0)TrackBack(0) 歴史 | 趣味・生活に役立つ情報

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