2013年07月16日

僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話

僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話
著者:本田 亮
大和書房(2013-04-20)
販売元:Amazon.co.jp

元電通のエクゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターの本田亮さんの本。

本田さんが、「望月衛介の音楽と広告」というラジオ番組に出演した時の話も公開されているので、こちらも参照願いたい。

アマゾンの表紙写真は、本田さんの手書きメモを紹介したものだが、本屋に並んでいる本には、次のようなカバーがついている。

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エクゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターというのがどういう役職なのかわからないが、電通のクエイエイティブ職のトップクラスなのだろう。本田さん自身の作品としては、「ピッカピカの小学生」や「こだまでしょうか?(AC)」などがある。





この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次を見ていただきたい。

肩ひじ張らない内容で、仕事の上での「気づき」を与えてくれると思う。


日本のクリエイターを代表する知人

筆者は以前、博報堂とのIT関係の合弁会社に居た関係で、博報堂のクリエイティブの人は何人か知っている。そのなかでも特に有名なのが、宮崎晋(顧問)チーフクリエイティブオフィサーだ。

きさくな人で、たまたま筆者のいた会社の博報堂側の担当役員だった関係で、社員向けに講演していただいた。

「入社以来定期券は持ったことない」とか、「通勤に使っている山手線は、その時の気分で内回りに乗ったり、外回りに乗ったりする」とかいった話が記憶に残っている。

毎日新しいことを探して町をほっつき歩いているから、定期券は持たない。また山手線の内回り・外回りにこだわらないのも、一つの見方に執着せず、常に違う見方がないか探すという心構えなのだ。

宮崎さんの作品はいくつもカンヌの国際広告賞を受賞している。たとえばカップヌードルの「ハングリー?」というシリーズだ。





そのほか、宮沢りえの「Santa Fe」という写真集の表紙で使ったドアを持ってきて撮影した豊島園のCMもある。

Santa Fe 宮沢りえSanta Fe 宮沢りえ [大型本]
著者:篠山 紀信
出版:朝日出版社
(1991-11)


雑誌の「ナンバー」も宮崎さんの作品だ。「ナンバー??」と毎号タイトルが変わるので、雑誌を認可している文部省(?)が難色を示したという話をされていた。ちなみに「ナンバー4」の表紙は、パンチを受けて腫れ上がった試合翌日の具志堅用高の写真だったのを覚えている。

具志堅用高










出典:ウェブ画像検索

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 7/11号 [雑誌]Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 7/11号 [雑誌] [雑誌]
出版:文藝春秋
(2013-06-27)


宮崎さんは、博報堂の役員を務めながらクリエイティブの現場にも復帰された。復帰作が黄桜の有名な江川と小林が出演するCMと、全日空のロマンあふれるCMだ。






話が博報堂にそれたが、この本で参考になった点をいくつか紹介しておこう。

02 プレゼンはかっこよくなくていい

電通に入って一番意外だったことは、「おもしろい企画」を出せば誰もが「おもしろい!」と言ってくれるのだと思ったら、そうではなかったことだ。「おもしろい企画」を出すことは仕事の半分だけで、残りは「おもしろい企画だと相手にわかってもらうこと」だとわかったという。

「みっともないくらいでもいいから、全身全霊で説明すること。それ以上のものでも、それ以下のものでもない」

10 人間臭さを前面にさらけ出す

クライアントに広告企画のプレゼンが終わった。女性プランナーは淡いブルーのスーツに身を包み、スマートにプレゼンして、大したものだと思っていると、クライアントの宣伝部長から突っ込みが入った。

「そんなことを言ってもね、そんなに簡単に番組が取り上げてくれるわけはないよ。われわれは、いつもそこで苦労しているんだ。」

「大丈夫です。私たちには秘策があります!」

(「大丈夫か!?、うちにそんな秘策あるのかよ?」)

「土下座です!」「最後はこの手しかありません。私が土下座してお願いしてきます!」

この思わぬ超アナログ兵器に会場中が大爆笑となり、仕事も勝ち取ったという。

18 企画は必ず、冷蔵庫に入れる

アイデアは考えるときは頭がホットなほうがいいけど、チェックするときは頭がクールなほうがよい。自分の手を離れたアイデアは、時間とともに他人のアイデアになっていく。

自分の企画に冷たく接することができるようになったときに、初めていい企画を作れるようになるのだと。

なお、どうでもよいことながら、28などで出てくる「決済」は「決裁」だ。やや誤字が多いのが気になる。

38 人生はジグザグに歩いたほうが長い
「直線の人生よりジグザグ人生のほうがはるかに長い線になる」。

39 努力できる才能を持つ宮里藍さん

宮里藍は非常に忙しいので、CM撮影のための時間は、1年のうちでもほんの数時間しかもらえないという。この時もオーストラリアのゴルフ場で、なんとか3時間もらって2本のCMを撮影した。

「午後はどんな予定が入っているんですか?」

「練習です」。 毎日毎日が練習ばかりなのだ。

藍ちゃんの凄いところは、「努力できる心」を持っていることなのだと。

このブログで紹介した「不動心」で、松井が言っている「努力できることが才能だ」という、言葉そのものだ。

不動心 (新潮新書)不動心 (新潮新書) [新書]
著者:松井 秀喜
出版:新潮社
(2007-02-16)


43 どんなときも、他人は見ている

仕事の評価は上司やクライアントの間だけで成り立っているとは思ってはいけない。まったく関係ない人に対してどう接しているかということが、意外とその人の仕事の評価にもつながっている。

44 マイク・ベルナルドに見た礼儀正しさ

あるときK1格闘家のマイク・ベルナルドをキャラクターに起用して、ニュージーランドでロケを行った。マイクのカットは順調に撮影が終わったが、商品カットに時間がかかりすぎてレストランに着いたのは10時近くだった。

マイクは先にホテルに帰るので、夕食の時に声をかけてくれと言っていた。コーディネーターが迎えに行くと、5時間も前にホテルに帰っていたマイクは食事をせずにじっと待っていた。

「みなさんの仕事が終わらないのに、食べることなんてできません」。

「えっ……本当に!?」その一言でスタッフ全員がマイクのファンになってしまった。

有名だったり地位が高かったり立場の強い人が謙虚に行動すると、すごく大きなインパクトを与える。マイクの礼儀正しさと優しさに「謙虚でいること」「頭を下げること」ってカッコいいことだと教えられたという。



49 一目置かれる営業マン

仕事で同じ能力のある2人の人間がいたとしたら、おもしろそうな人と仕事がしたいと思うのは当たり前のことだと思う。遊びも自分のセールスポイントにしたほうがいい。


50 自分が聞かれたことは、自分の口で返す

本田さんは、今や社長や専務になってしまった人の平社員だったころを知っている。

ひと言で言うと「矢面」だと。クライアントからも社内からも集中攻撃されて、全身に矢が刺さっているというイメージだ。

仕事の最前線にいると、ストレスも大きいけど、「矢面」に立つ姿が、クライアントからも社内からも信頼される存在になる。サラリーマンの仕事のだいご味が味わえるのだと。

本田さんは、自分にかかってきた電話や質問は、他人に振らないで自分の口で返すようにしている。情報が集中してくると、その人が仕事のハブとなり、その人なしでは仕事は進まなくなってくる。

55 遠距離通勤オフィス

本田さんは会社の仕事がものすごく忙しく、いくつかの雑誌に連載を抱えていたため、毎日が地獄のように忙しかったという。そんな本田さんの時間の作り方は、「電車企画室」だ。

通勤時間の1時間半を使って企画する。電車は意外と企画に向いている空間なのだ。雑誌の見出しを見れば、世の中の動きがわかる。中吊り広告には表現のヒントがある。乗客は企画の登場人物に見立て、窓の風景はシチュエーションのヒントになる。情報がたくさんあるのに、誰も干渉してこないところは、図書館にも似ている。

今でも本田さんは、企画に詰まると、「ちょっと電車に乗ってくる」といって、山手線一周して帰ると、仕事の5つや6つは片付いているのだと。

上記で紹介した博報堂の宮崎さんと似た発想だ。毎日通勤時間を「電車読書室」にしている筆者も、わが意を得たりという気がする。

長くなりすぎるので、この程度にしておく。気軽に読めて、仕事の「気づき」を与えてくれる、参考になる本である。


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Posted by yaori at 23:16│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 広告

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