2013年07月25日

ブレイクアウト・ネーションズ BRICSは終わった? 次はどこだ?

ブレイクアウト・ネーションズブレイクアウト・ネーションズ [単行本]
著者:ルチル シャルマ
出版:早川書房
(2013-02-22)

モーガン・スタンレーで新興国・グローバルマクロ担当ディレクターで、250億ドルを運用するというルチル・シャルマさんの本。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で、目次タイトルだけ紹介しておく。

第1章 長い目で見れば何でも正しい?
第2章 宴の後ー中国
第3章 誰もが驚く魔法のロープーインド
第4章 神様はきっとブラジル人ーブラジル
第5章 「大立て者(タイクーン)」経済ーメキシコ
第6章 天上にしかスペースがないーロシア
第7章 ヨーロッパのスイート・スポットーポーランドとチェコ(含ハンガリー)
第8章 中東に響く単旋律ートルコ
第9章 虎への道ー東南アジア(インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア)
第10章 金メダリストー韓国と台湾
第11章 エンドレス・ハネムーンー南アフリカ
第12章 第四世界ースリランカからナイジェリアまで(含ベトナム、ペルシャ湾岸諸国)
第13章 宴の後の後片付けーコモディティ・ドットコムを超えて
第14章 「第三の降臨」−次なるブレイクアウト・ネーションズ

世界各国を網羅的に紹介していることがわかると思う。

付録として新興国一覧とフロンティア諸国一覧が載っている。

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出典:いずれも本書352〜355ページ

ブレイクアウト・ネーションとは、これから突出して成長する国のことで、次のブレイクアウト・ネーションズになる可能性のある国は次の通りだ。

一人当たり国民所得が:

2.5〜2万ドルで成長率が3%を超えそうなのは、チェコと、第三次産業人口が増えず、製造業の常識をぶち破っている韓国。

1.5〜1万ドルではトルコとポルトガル。ちなみにトルコは、「エルドアン首相の強力なリーダーシップ」と褒めているが、もちろんトルコの政情不安が勃発する前の2012年発刊の本なので、致し方ないところだろう。

1〜0.5万ドルでは、タイ。ただし、新政権が誕生したばかりで、これから何ができるのかがまだ見えていないという。

0.5万ドル前後では中国が高い成長率を示すことが見込まれるほか、インドネシア、フィリピン(アキノ新政権に期待)、スリランカ(平和の配当)、ナイジェリア(誠実なリーダーが腐敗した政府に終止符を打つ)、さらに経済同盟が成立しようとしている東アフリカ諸国を挙げている。


いくつか印象に残った話を紹介しておく。

★中国の外貨準備は2兆5000億ドルあり、米国の主要債権国でもある。中国が債務問題を抱えていると思う人は誰もいないが、現実は違う。政府の発表している債務残高はGDPの30%だが、企業(多くは政府所有)と家計の債務残高はGDPの130%、しかもこれは公式発表数字の話だ。

シャドウバンキングと呼ばれる2008年から急増した、銀行を介さない融資残高は公式統計には含まれず、これを入れると中国の債務残高はGDPの200%を超えると見られるという。

★メキシコの10大ファミリーは、電話からメディアまでほぼあらゆる産業を支配しているので、ほどんど労せず値上げを断行でき、ほかの国では考えられないほどの高収益を享受できる。有名な企業としては、世界最大の通信会社・アメリカン・モービル、世界第3位のセメント会社・セメックス、世界最大のコカコーラ販売会社・フェムサ、食品会社のグルマなどだ。

★中国とメキシコは製造業で競合している。しかし、2002年の賃金格差は240%あったのが、最近は13%になっており、メキシコに有利になっている。

★ロシアには中間層は存在しない。中小企業の割合はほかのどの主要国よりも低く、起業家精神に満ちた企業はロシアにはほとんどない。ロシアは十分に保護された巨大国営企業と、誰も耳にしたことがない零細企業で成り立っている。

★モスクワ証券取引所には世界的な製造企業が一社も上場されていない。ウォッカの世界トップブランドにロシア企業は登場しない。ノーベル賞受賞者を27人も生んだ国としてはさびしい現実である。

★ロシアは世界でも最も人口密度の低い20か国のうちの一つで、わずか800しか都市がなく、そのうち人口100万人を超えるのは12都市だけだ。

★世界の10億ドル以上の資産がある資産家の数では、1位米国412人、2位中国115人の次にロシア100人が入っている。経済規模は中国の1/4なのに、ロシアの億万長者の資産総額は中国の億万長者の資産総額の倍であり、中国ほど厳しい競争にさらされていない。

★ポーランドとチェコなどがユーロを敬遠する理由は、共通通貨を採用すると自分の政策に手錠をかけるのと同じことになるからだ。危機の時に、自国通貨を切り下げられない国は、賃金を下げて競争力を保たないと、輸出が崩壊してしまう。これが2009年にギリシャやほかのユーロ圏小国に起こったことだ。

★南アフリカでは各種の社会手当を受けている人の数は1.600万人で、1998年の7倍だ。納税者一人当たり、3人の受給者がいる計算だ。

★モザンビークが大躍進を遂げたのは、ジョアキン・シサノ前大統領の神がかり的な指導力によるところが大きい。シサノ前大統領は、社会主義政策を放棄し、2期目の任期終了とともに、後進に道をゆずった。シサノ前大統領と後継者のすすめた改革で、モザンビークはこの10年で年率7%の成長を遂げた。

★フセイン亡きあとのイラク経済は石油生産の回復で、成長率が5%を超えている。2011年後半には9%を超えており、カムバック経済の代表となった。

★ベトナムの河川港の老朽化はひどく、ベトナムの港に入る船のコンテナーの平均数は169本で、コンテナーを1,000本運べるフィーダー船すら入港できない。現在は1万5千本を運べる超大型コンテナー船まで就航しているのに、ベトナムの後進性は際立つ。

★ベトナムは統制経済の典型的な経路をたどっており、投資額の配分も政治的理由で決まる。

Mペサはケニアで普及している携帯電話を使った少額決済サービスだ。Mペサが始まった2007年以降、銀行にお金を預けるケニア人の数は5人に一人から2人に一人になった。銀行預金が増加すれば、インフラ投資の資金源ともなる。

★カタールの天然ガス資源は膨大で、今のペースで生産を続けていても今後100〜200年は生産を続けられるだけの埋蔵量がある。2010年までの5年間の平均成長率は17.5%で、一人当たりの国民所得は10万ドルと米国の2倍である。

★ボストン・コンサルティング・グループは、2011年に発表した「メイド・イン・アメリカ再び」というレポートのなかで、なぜアメリカの製造業が復活するのかについて説得力ある議論を展開している。低コストのサウスカロライナ、アラバマ、テネシーを中心に製造業が復活すると予測している。


大前研一さんの一連の著書のように、インパクトある実話をもっと織り込めば、もっと良かったと思う。

国や地域にはプラスの評価もマイナスの評価も両方あり、この本ではマイナスの評価ばかり集めているが、もちろんこれらの指摘は一面の真実であって、その国をこれらの指摘だけで評価するわけにはいかない。

判断材料でなく、参考情報として読むべき本だと思う。


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Posted by yaori at 12:30│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 経済

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