2013年10月20日

64(ロクヨン) 横山秀夫さんのベストセラー警察小説

64(ロクヨン)
横山 秀夫
文藝春秋
2012-10-26


このブログで「震度0」を紹介した横山秀夫さんのベストセラー。「64(ロクヨン)」も「震度0」も警察小説だ。

震度0 (朝日文庫 よ 15-1)
横山 秀夫
朝日新聞出版
2008-04-04


「64」は単行本で650ページ弱の大作だが、予想もできない展開につい引き込まれる。

小説のあらすじはいつも通り詳しく紹介しない。D県警で長年刑事畑にいた三上義信は46歳にして、2度目の広報室勤務を命ぜられる。今回は広報室トップの広報官だ。

前回は刑事3年目で広報室勤務を命ぜられ、1年で刑事部に戻された。以来、20年以上、刑事としてキャリアを積んできた。捜査1課の強行犯、盗犯、特殊犯で実績を挙げ、捜査2課に移ってからは知能犯の捜査でD県警でも一目置かれる存在となった。それが青天の霹靂の広報官就任だ。

三上の家族は元ミス県警の妻・美那子と、父親に似ているルックスを嫌い、親と衝突して家出している高校生の娘・あゆみの2人だ。

以前紹介した大沢在昌さんの「売れる作家の全技術」に出てくる、「小説のとげ(あとで伏線となる話)」が、あちこちに仕込まれている。その一つが無言電話だ。家出した娘からの無言電話だと、三上と美那子は思い込んでいたが…。

小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない
大沢 在昌
角川書店(角川グループパブリッシング)
2012-08-01


もう一つの「小説のとげ」がこの本の冒頭の電話ボックスの写真だ。

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この電話ボックスがなぜ「小説のとげ」なのかは、最後まで読むとわかる。

D県警には時効直前の未解決事件があった。通称「64(ロクヨン)」と呼ばれる雨宮翔子ちゃん誘拐殺人事件だ。昭和64年1月5日に発生したので、64(ロクヨン)と呼ばれている。昭和最後の年・昭和64年は1月7日に昭和天皇が崩御したので、わずか7日しかない。

その短い昭和64年に起こり、犯人を逮捕して絶対に昭和の時代に連れ戻すという強い警察の意志から、「64(ロクヨン)」と呼ばれているのだ。

しかしその「64」も時効まで1年の14年を経過し、捜査本部は依然として設けられているものの、新しい証拠はなく、手詰まり状態だった。

そんな中で、全国26万人の警察官のトップ・警察庁長官がD県を訪問する際に、雨宮さん宅を訪問して事件解決に対する強い意気込みを被害者に伝え、その場で記者会見するという話が持ち上がった。

警察庁長官訪問を機に、警察庁につながる刑務部と、代々県警のたたき上げがトップを務める刑事部の対立が激化する。本庁はD県警刑事部トップにキャリア警察官僚を送り込み、「天領」とするつもりなのか?

一方、被害者の父親・雨宮さんからは、長官訪問は遠慮すると言われる。

このとき三上は別件の自動車事故で被疑者の名前を言う言わないで、記者クラブともめ、記者から取材ボイコットを受けていた。弱り目に祟り(たたり)目。

広報室の部下と一緒に、12社+アルファの報道機関対策に手を焼きながらも、三上は警察庁長官の遺族訪問を実現すべく、雨宮さんの翻意を促すために、あらためて「64」の捜査関係者から話を聞きまわる。

犯人からの脅迫電話を録音する「自宅班」4人のうち、2人が事件後、ほどなく警察を辞めていた。三上は歴代の刑事部長をはじめ、関係者から話を聞くうちに、刑事部が代々隠匿していた秘密がある事を知る。

そして警察庁長官の訪問の直前に、急に刑事部が大捜査体制をつくって、部外者を締め出す。「64」の手口を全くコピーした新たな誘拐事件が発生したのだ。三上はマスコミが要求する追加情報を求めて、敬愛する刑事部の松岡参事官・捜査1課長の捜査指揮車に同乗する。

すると松岡は、「お前がもたらした情報が端緒となった。この車は今、ロクヨンの捜査指揮を執っている」と言い出す。なぜ?…。

電話ボックスがどのように使われたのか、これがこの小説の一番のポイントだ。思いもよらない展開に驚くとともに、横山さんの発想力に感心する。

650ページの大作だが、読み始めたら止まらない。最後まで楽しめる作品である。


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Posted by yaori at 21:01│Comments(0)TrackBack(0) 小説 

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