2014年03月22日

不格好経営 特に不格好とは思わないけど…

不格好経営―チームDeNAの挑戦
南場 智子
日本経済新聞出版社
2013-06-11


元マッキンゼーのパートナー(役員)で、DeNAの創業者の南場智子さんの最初の著書。

南場さんの生い立ちと経歴、DeNA創業に至った経緯から、最近のDeNAのモバイル事業展開まで、創業者の目から見た事業の立ち上げ担当者の舞台裏の努力が描かれている。


不格好というよりは、筋書きのないストーリーがIT業界なのでは?

本の帯に「経営とは、こんなにも不格好なものなのか。だけどそのぶん、おもしろい。最高に。」という南場さん自身の言葉が書いてある。

南場さん自身は「不格好経営」と言うが、特に不格好と思える点はない。

「コンサルタントが頭の中で考えるストーリーのようなスマートな展開は、実際の経営ではできないよ。」という意味で、「不格好」と言っているのではないかと思う。

筆者も2007年まで5年弱、IT企業経営をしていたので、後で思い返せば、「もっとうまくできたのに…」、「なんでわからなかったんだろう…」と感じることが多々ある。その意味では「不格好」そのものである。

しかしIT企業の成功ストーリーに筋書きはない。楽天だって、泥臭く地道に営業に励むことと、体育系のノリ、金融業界出身の三木谷さんの金融業シフトで、ここまで大きくなった。

アマゾンもここまで大きくなるとは、誰も予想しなかっただろう。さらに、アップルがマイクロソフトを時価総額で凌駕するとは、だれも予想していなかったはずだ。

DeNAも、インターネットオークションでは、ヤフオクに大きく差をつけられた第2位だったが、いち早く携帯電話向けサービスを開始し、モバオク、そしてゲームに進出しモバゲーで急成長した。

筋書きのないストーリーがIT業界そのものの歴史だ。


社員の顔が見える本

IT企業のトップが書いた本は、このブログでもいくつか紹介している。楽天の三木谷さんや、サイバーエージェントの藤田さん最近、刑期を終えたホリエモン倒産したインデックス会長の落合さんなどだ。

IT業界ではないがワタミの渡邉美樹さんの本も紹介している。

これらの本のほぼすべてに共通していえるのが、本人以外に登場する社員が少ないことだ。特に三木谷さんの最近の本と、ワタミの渡邉さんの本に至っては、本人以外にはほとんど誰も社員が登場しない。

南場さんの本は、これらの本と対照的だ。この本には多くの社員が登場する。実際に社員の写真も載っていて、まさに社員の顔が見える本だ。

筆者もピッツバーグから帰任した2000年末に、新規ビジネスの相談に幡ヶ谷のフロスビルにあるDeNAオフィスを訪問して、守安さん、春田さんから意見をお聞きした経験もあり、大変興味深く読めた。春田さんは「取締役 総合企画グループ担当ディレクター」、守安さんは「システム開発グループ」という肩書のない名刺だった時代だ。

南場さんは、最初はもっと多くの社員の名前を紹介していたが、社外の人には読みづらいものになってしまったので、減らしたのだと語る。

しかし、本書に登場していない社員のひとりでも欠けてしまったら今のDeNAはないという。

気配りの人、社員を第一に考える経営者、それが南場さんなのだと思う。

この本では「読者が『DeNA』号に乗ってジェットコースターのような展開をともに体験できるよう、事実をそのまま伝えることを重視した」という。

たしかに、面白い。南場さんの生い立ちや、旦那さんのがんの治療のために、DeNAの社長を退任した事情なども紹介されていて、南場さんの人となりや考え方がわかる。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次をみてほしい。

第9章の「人と組織」の、「コンサルタントと事業リーダーの違い」も納得できるし、「MBAは役立つか」では、「学びがゼロかというと、そうではないが、そのために2年間も使うのか、を問いたいところ」と語っている。

自分がMBAに行っていないだけに(その代わり2年間の語学研修でスペイン語はペラペラだが)、MBA信仰のある筆者にとっては、警鐘となった。


DeNAクオリティ

楽天の成長のコンセプトは次の5点だ。

1.常に改善、常に前進
2.Professionalismの徹底
3.仮説→実行→検証→仕組化
4.顧客満足の最大化
5.スピード!!スピード!!スピード!!

これに対して、DeNAクオリティは次の5点だ。

1.デライト (Delight) 顧客のことを第一に考え、感謝の気持ちを持って顧客の期待を超える努力をする
2.球の表面積 (Surface of Sphere) 常に最後の砦として高いプロフェッショナル意識を持ち、DeNAを代表する気概と責任感を持って仕事をする
3.全力コミット(Be the best I can be) 2ランクアップの目線で、組織と個人の成長のために全力を尽くす
4.透明性 (Transparency & Honesty) チームワークとコミュニケーションを大切にし、仲間への責任を果たす
5.発言責任 (Speak Up) 階層にこだわらず、のびのびしっかりと自分の考えを示す

楽天と似ている部分もあるが、DeNAらしさがでていると思う。

筆者は個人的にはDeNAに大変感謝している。というのは、DeNAが横浜ベイスターズを買ってくれたので、郷土の球団としてずっと応援してきたベイスターズファンから卒業するきっかけができたからだ。

今は野球のひいきチームはない。ベイスターズファン時代は、長年不満がうっ積していたが、きれいさっぱりファンを卒業して、いまの気持ちは棋士の羽生さんではないが、「玲瓏」(れいろう)(もとは「八面玲瓏」)、あるいは「明鏡止水」である。


南場さんは文才もあり、ストリーも面白い。三木谷さんのように「夢を見るのは若者の特権だという。美しい言葉ではあるけれど、僕は間違っていると思う。」というような鋭いツッコミもない。

楽しく読める本である。



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Posted by yaori at 23:10│Comments(0)TrackBack(0) 自叙伝・人物伝 | 企業経営

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