2014年04月23日

破綻する中国、繁栄する日本 長谷川慶太郎さんの近著

破綻する中国、繁栄する日本
長谷川 慶太郎
実業之日本社
2014-01-31


評論家長谷川慶太郎さんのシャドウバンキングの実態とバブル崩壊に向かう中国の行方を予想する本。さらに最近出た最新作はもっと刺激的なタイトルになっている。

中国崩壊前夜: 北朝鮮は韓国に統合される
長谷川 慶太郎
東洋経済新報社
2014-04-18



この本はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、ここをクリックして目次を見てもらいたい。目次を読むだけでもだいたいの内容がわかると思う。

章・節のタイトルを紹介しておく。

序章 迷走する中国
 北朝鮮の衝撃
 防空識別圏設定の誤算
 シャドウバンキングが中国崩壊のトリガー

第1章 日本に屈服するか中国
 窮地に追い込まれた中国
 激しさを増す人民解放軍との攻防
 人民解放軍の急所、「シャドウバンキング」
 リーマン・ショック後の経済対策4兆元の功罪
 不良債権処理に苦しむ銀行
 決定したシャドウバンキングの処理
 中国経済の行方

第2章 揺らぐ中国国内
 冬が山場に
 テロが頻繁化する
 怪しげな不動産ブーム
 工場シャッター街と中国製品
 世界の工場でなくなった中国
 共産党が恐れる弱腰外交批判
 人民解放軍に困る習近平

第3章 国際常識を逸脱した国家
 中国が勝利するのか
 レアアースで躓いた共産党に焦り
 国際条約を守らない中韓
 苦境に陥る韓国経済

第4章 シェール革命で勢力地図が塗り替わる
 運のいい安倍首相
 技術に対するトップの認識と理解度が焦点

第5章 繁栄する日本
 消費増税で景気は中折れせず
 日本の独自技術が世界で注目
 メタンハイドレートの実用化に本腰

第6章 21世紀中に共産主義と民族主義は消滅する
 共産主義は人を幸せにしない
 情報化社会に負ける共産主義
 民族主義は消滅の運命
 イランにみる日本技術の素晴らしさ
 歴史が証明する日本人の素晴らしさ


シャドウバンキングの実態

リーマンショックの時の4兆元(約60兆円)の経済刺激策のうち、3兆元を地方政府に資金負担させて高速道路や鉄道などのインフラ整備に充てた。

地方政府は原則起債は禁止されているので、「融資平台」というプラットホーム会社を設立して、金融商品を銀行に売らせて資金を集めた。その金額が30兆元(約450兆円)に拡大した。これがシャドウバンキングだ。経営者は人民解放軍の幹部たちで、シャドウバンキングで融資を受けた会社は300万社にも上るという。

その金で中国各地に高層マンションなどを建設して経済は急回復した。しかし、建設しても入居者がないので、ゴーストタウン(鬼城)化している。有名なのは、江蘇省常州市や貴州省貴陽市、内モンゴル自治区オルドス市などで、中国全土でゴーストタウンは200以上あるといわれている。



オルドス市は、石炭価格が上昇した時には、好景気に酔いしれたが、石炭価格が下がると炭鉱が閉山して失業が急増した。高層マンションなどに入居できる人が少なくなったのだ。中国の地方政府は、我が世の春をエンジョイしてきたが、シャドウバンキングが崩壊し、ゴールドマンサックスの推計では約300兆円の不良債権が発生するとみられている。

日本のバブルの時の不良債権の総額が100兆円と言われているので、いかに中国のシャドウバンキング崩壊のインパクトが大きいかわかると思う。

こうした事情から、ゴールドマンは2013年5月に中国最大の国有銀行の中国工商銀行の持ち株を全株売却し、バンクオブアメリカも2013年9月に中国建設銀行の持ち株を売却した。


習近平の権力闘争

人民解放軍を押さえつけるために、シャドウバンキングをつぶして大損を解放軍の幹部に経験させて息の根を止めるというのが習近平主席や李克強首相のシナリオだという。国民の生活より、人民解放軍に勝つことを優先するという政治問題なのだと。

習近平は江沢民の牙城の石油閥にもメスを入れている。

中国を代表する石油会社・中国石油天然気集団(CNPC)と子会社のペトロチャイナの元幹部4人が南スーダンの石油利権をめぐる汚職で摘発された。

石油閥は前共産党政治局常務委員の周永康がボスで、周は党内順位9位だった。周まで汚職追及の手が伸びるかどうか注目されている。周は無期懲役となった元重慶市書記の薄熙来と関係が深く、薄の失脚に反対したといわれている。

周は江沢民派で、習近平は江沢民派との権力闘争に勝利するために、石油閥の汚職を追及しているのだという。


せっせと海外蓄財する幹部たち

中国共産党の幹部たちは海外で蓄財している。習近平自身も、姪を通じて香港でオフィスビルなどに投資しているといわれ、中国のバブル崩壊で不動産価格が下落することは避けたいと思っているはずだと長谷川さんは語る。

ちなみに、中国共産党中央規律委員会が把握した中国から不法に海外に流出した資金は、2011年6千億ドル、2012年1兆ドル、2013年は1兆5千億ドルだという。資金の行き先はカナダのバンクーバーや、米国西海岸のサンフランシスコやロスアンジェルスで、資金の移転先では不動産ブームが起こっている。


尖閣列島周辺には石油資源はない

長谷川さんは尖閣列島周辺に海底石油資源があると言われているが、実際には商業ベースで開発可能な油田やガス田はないと語る。

オイルメジャーのロイヤル・ダッチ・シェルとエクソン・モービルは、この地域には商業ベースに乗るような資源はないと言っており、日本側の石油開発業者の試掘計画もない。

中国が開発しているガス田の試掘用パイプから炎が出ているが、たとえ天然ガスが出ても、それを中国本土に運ぶ手段がない。400キロもの海底パイプラインは現実的でなく、LNG化するにはLNGプラントやLNG船が必要で、到底巨大なインフラ投資には引き合わない。

だから中国も本気で開発していない。中国は日本に屈しないという宣伝が目的なのだ。

それでも中国が尖閣列島に対して領土権を主張している理由は、尖閣付近は海が深く、中国のミサイル潜水艦の格好の隠れ場所になるからだ。中国は「最小限核抑止」を狙っている。相手からの第一波の核攻撃に生き残り、最小限の核で報復をするという戦略だ。そのために最も重要なのがミサイル潜水艦なのだ。

東シナ海は海底が浅いので、日本のP3C哨戒機に捕捉されてしまう。ところが、尖閣付近の海は深く、簡単には捕捉できない。人民解放軍はそれを狙っているのだと。

たしかに次の地図を見ると、中国側の大陸棚には潜水艦の隠れ場所はないが。尖閣付近には沖縄トラフがあり、潜水艦の絶好の隠れ場所となりそうだ。

尖閣付近地図







































出典:海洋情報特報掲載論文

最近中国は、米国のヘーゲル国防長官にウクライナから買って改修した空母「遼寧」を案内して、米国とは敵対関係になりたくないという、いわば恭順の姿勢を示している。

中国には米国と軍事的に衝突する自信はない。「本当は、遼寧なんてたいした脅威にはなりませんよ。」と米国に伝えたいのだろう。





その他の話題も参考になる

情報通の長谷川さんらしく、その他の話題も参考になる。いくつか例を挙げておく。

★シェールガス開発に伴う、汚水問題は採掘方式を「ドライ方式」(水の代わりにLPGガスをシェール層に注入して、破砕する方式)に変えたことで、環境汚染の問題は解決している。

★北海道の夕張では露天掘りの炭鉱が操業を続けている。400トンの無人ダンプをはじめ、建設機械が大型化して、地表から80メートルの深さまで経済的に採掘できるようになったからだという。




★カジノ解禁で日本の景気は盛り上がる。超党派の「国際観光産業振興議員連盟」はカジノ法案を議員立法で国会に提出して、2014年中の成立を目指している。カジノを国による免許制にしようというものだ。


この本をうのみにせず、情報が正しいかどうかは自分で確認する必要があると思うが、いずれにせよ痛快かつ刺激的な本である。


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Posted by yaori at 23:43│Comments(0)TrackBack(0) 政治・外交 | 中国

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