2014年06月08日

イッシューからはじめよ 問題解決のハンドブック



元マッキンゼーで、脳神経学の博士号を持つ安宅和人さんの本。

安宅さんは現在はYahoo!のCOO室長、CSO(Chief Security Officer)として活躍している。安宅さんのツイッターのアカウントもある。

問題解決では、以前元BCGの内田さんの「仮説思考」を紹介した

仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法
内田 和成
東洋経済新報社
2006-03-31


「仮説思考」は筆者が読んでから買った数少ない本の一つで、大変参考になった。

「仮説思考」と同様に、この本も大変参考になる。

ほぼ日で糸井重里さんと安宅和人さんの対談が紹介されている。糸井さんはこの本を読んで、「一人ひとりが読み、チームで共有したい本」だと感じたという。

新刊.jpというサイトに、この本に関する安宅さんへのインタビューが載っており、この本のエッセンスが簡潔に紹介されているので、参考にしてほしい。

最初に、この本の主張が次のように整理されている。

★「問題を解く」より「問題を見極める」

★「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」

★「知れば知るほど知識が湧く」より「知り過ぎるとバカになる」

★「一つひとつを速くやる」より「やることを削る」

★「数字のケタ数にこだわる」より「答えがだせるかにこだわる」


「犬の道」には踏み込むな

バリューのある仕事とは、安宅さんの定義だと、イシュー度が高く、解の質も高い仕事だという。

バリューのある仕事をやるためには、「根性」で一心不乱に大量の仕事をしてはいけない。それを安宅さんは「犬の道」と呼んでいる。

問題かもしれないという問題が100あるとしたら、そのうち2つか3つが本当に白黒つけるべき問題なのだと。理系の研究者の研究テーマは、このような考えで絞り込むのではないかと思う。

直観でこれが解決につながりそうだとか目星をつけてはいけない。じっくり考えて、なにが問題解決につながるイシューなのかを見極める。

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出典:本書32ページ

このようなアプローチをとれる人と取れない人では、一週間の仕事の進め方に次のような差がでる。

犬の道の人

月曜 やり方がわからずに途方にくれる
火曜 まだ途方にくれている
水曜 ひとまず役立ちそうな情報・資料をかき集める
木曜 引き続きかき集める
金曜 山のような資料に埋もれ、再び途方にくれる

イシューからはじめる人

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出典:本書34ページ


もっと前にこの本を知っていれば…

この本には上記の全体図のように図が多く使われ、コンサルなどの専門家でなくとも、わかりやすくイシュードリブンの問題解決法が理解できるようになっている。

またイシュードリブン、仮説ドリブンなどのステップではさらにいろいろな図が使われている。

たとえば、イシューを見極めるコツとして、1.一次情報に触れる、2.基本情報をスキャンする、3.集め過ぎない・知り過ぎないの3つが紹介されているが、次が2.の基本情報をスキャンする場合の図だ。

真ん中の四角で囲んだ部分がマイケル・ポーターの「ファイブ・フォース」であり、それに6.技術・イノベーション、7.法制・規則を加えたFAW(Forces at Work)である。

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出典:本書82ページ

惜しむらくは、事例があまり少なく、具体的でないことだが、現在会社に勤めていたり、研究に携わっている人は、経営者でなくても、自分の業務に当てはめて応用してみるとよいだろう。

たとえば、次の図は、イシューを分解するうえで、意味のある分解と意味のない分解を図示したものだ。これがMECEだと言われれば、納得できるだろう。

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出典:本書109ページ

筆者も2002年から2007年まで、子会社のネット企業を代表取締役副社長として経営していたことがある。今思えば、業界の全体図、伸びる分野、自社の占めるポジション、SWOTなどのビッグピクチャーをよく理解せずに、ただ日々の問題を解決するのに手いっぱいという感じで経営していた。全く汗顔の至りだ。

もっと前にこの本を知っていれば…と思う。

筆者の読んだものは、第10版で、本の帯には8万部突破と書いてある。

アマゾンの売り上げランキングでも全体の1,210位で、このブログで紹介した内田さんの「仮説思考」が1,718位、必読書「ロジカル・シンキング」が668位、バーバラ・ミントの「考える技術・書く技術」は1,464位だ。






つまり、これらの名著と同じくらい売れているということだ。

ハンドブックとしても役に立つ。この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次に続く、コンテンツをパラパラめくってほしい。

仕事の役に立ちそうなことがわかると思う。


参考になったら、投票ボタンをクリック願いたい。



Posted by yaori at 03:13│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 企業経営

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