2014年09月06日

村上海賊の娘 マンガか

村上海賊の娘 上巻
和田 竜
新潮社
2013-10-22


週刊新潮に約2年間にわったって連載された小説。人気のある本なので読んでみた。

著者の和田竜(りょう)さんは、「のぼうの城」で小説家デビューしている。




「のぼうの城」は映画化され、和田竜さんが脚本を書いている。戦国時代、秀吉に攻められる小田原北条氏の傘下の城の攻防戦を取り上げた物語だ。



この「村上海賊の娘」は上下1,000ページ弱の本で、上巻は陸戦、下巻は海戦の場面が続き、それぞれ数日かかるが、一気に読める。

驚かされるのは、そこここに資料を引用して、あたかもノンフィクションのようなテイストを与えていることだ。

この種の歴史小説としてはすごい量の参考文献が巻末に紹介されている。こんな具合だ:

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出典:本書下巻巻末

小説のあらすじはいつも通り詳しく紹介しない。戦国時代、天下統一を目指す織田信長は、浄土真宗の総本山で大阪で絶大な権力を握る大坂本願寺(石山本願寺)を攻め、本願寺を包囲し、兵糧攻めを行った

大坂本願寺は諸国の大名に支援を求め、毛利氏がこれに応じ、10万石もの大量のコメを送った。このコメの輸送を担当したのが、毛利氏に味方した村上水軍だった。

織田信長は、毛利・村上水軍に対抗するため、真鍋氏を中心とする水軍で迎え撃った。これがこの本が描く第一次木津川口の戦いだ。

村上水軍の娘、村上景(きょう)は、この第一次木津川口の戦いで活躍する。

ちなみに、信長の秘密兵器としてよく知られている鉄甲船が登場するのは、この2年後の第二次木津川口の戦いで、この本には鉄甲船は登場しない。その後、大坂本願寺は火災で焼失し、そのあとに秀吉が築城したのが大阪城だ。

まるでマンガ、あるいはアクション映画、というストーリーだ。

敵でも味方でも、中心人物はどれだけ敵が多くて、矢や鉄砲を浴びても、何十人もの敵を切り倒して生き延びる。

敵(かたき)役は敵役で、死んだように見えても必ず復活する。

戦闘の場面は息も尽かさぬ展開ではあるが、食事や恋愛、操船や剣術の訓練など、普通の生活の場面の描写がほとんどないことが、マンガか?という平板な印象を与えている。

ともあれ、速い展開で、一気に読めるエンターテインメント作品である。


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Posted by yaori at 00:13│Comments(0)TrackBack(0) 小説 | 歴史

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