2014年10月12日

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 やっとタイトルの意味がわかった



全世界で作品が売れており、毎年ノーベル文学賞受賞者発表の時期になると話題に上る村上春樹さんの2013年の作品。今年(2014年)も最有力候補に挙がりながら、結局受賞を逸した。

村上さんの作品は、一時大ベストセラーになり、書店でも売り切れていた1Q84を、このブログで紹介している。




タイトルから、色盲の人が巡礼に出る話かと思ったら全然違った。

色彩を持たないというのは、主人公の多崎つくるが属していた高校時代の仲良し5人組のうち、多崎つくるだけが名前に色がついていなかったからだ。

他の4人(男女二人ずつ)はそれぞれ、アカ、アオ(以上男性)、シロ、クロ(以上女性)という風に、色を表す漢字が名前についていた。

また、巡礼に出るわけでもない。

「巡礼の年」は、楽曲の名前だ。1Q84はヤナーチェックの「シンフォニエッタ」が、作品の構成に重要な役割を果たしていた。



この作品では、リストの「巡礼の年」の中の「ル・マル・デュ・ペイ」が作品に重要な意味づけを与えている。



作品に登場するラザール・ベルマンのレコード(LP)は、今はCD3枚組で売られている。これの第1年「スイス」の8曲目が、「ル・マル・デュ・ペイ」(Le Mal du Pays)だ。

リスト:巡礼の年(全曲)
ユニバーサルクラシック
2013-05-15



小説のあらすじはいつも通り詳しく紹介しない。名古屋出身で、東京の工科大学を卒業して新宿に本社のある私鉄会社の駅舎を設計管理する部署に勤める36歳の独身の多崎つくるが主人公だ。

多崎つくるは名古屋の高校時代、名前に色の文字がつく男女2名ずつと5人で仲良しグループをつくっていたが、つくるだけ東京に出てきて2年目の20歳の夏に、名古屋に住む他のメンバーから突然理由もわからず絶交を言い渡される。

理由は「自分に聞いてみろよ」と。

それからつくるは自殺も考えたが、結局理由がわからないままに会社に就職し、親の買ってくれたマンションに住んで36歳まで独身で過ごす。

ある時たまたま深い仲となった2歳年上の女性から、つくるの心の傷となっている20歳の時の出来事の真相を明かすべきだと言われ、真相究明に乗り出すと、驚いたことに旧友4人は……。

というような感じだ。

途中で「小説のトゲ」と大沢在昌が言う、気になる部分がいくつもちりばめられている。6本指の奇形の話とか、「ラウンド・ミッドナイト」を弾くジャズピアニストの話等々。



引き込まれるストーリーで、筆者は一日で読んでしまった。

しかし、この人はノーベル文学賞は取れないのではないかという気がする。作風は全然違うが、昔、アルゼンチンに住んでいた時に、毎年ホルヘ・ボルヘスが候補に挙げられながら、結局ノーベル文学賞は取れなかったことを思いだす。

伝奇集 (岩波文庫)
J.L. ボルヘス
岩波書店
1993-11-16



筆者の見込み違いであればよいのだが…。


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Posted by yaori at 01:50│Comments(0)TrackBack(0) 小説 | 村上春樹

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