2015年03月12日

生ませない社会 産科医療の実態



読書家の友人に勧められて読んでみた。

日本はいよいよ人口減少時代に入り、出生数も減少している。

日本_出生数と合計特殊出生率の推移














出典: Wikipedia Commons

出生数が減れば、産科の数もそれにしたがって減少するのは、やむを得ないところだが、日本の場合には出生数の減少以上に、産科の数の減少が激しい。

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出典:医療施設(動態)調査・病院報告の概況(全日本病院協会 医療行政情報)

たとえば1990年と2007年を比較すると、出生数は124万人から110万人に14万人、10%強減っている。一方、産婦人科数は一般病院では2、189から1,344に減少している。実に40%弱の減少だ。

ネットで検索してみたら、NTTコムリサーチが出している2007年の「産婦人科医が足りない!」というレポートが見つかったので、リンクで紹介しておく

このレポートによると、産科医の減少は出生数減少によるいわば需要減少を上回るペースで減少している、これは産科は夜間や休日でも対応が必要で、勤務がきついうえに、医療過誤で訴えられるリスクが高いからだ。

この本によると、ある大学病院の40代の産婦人科医の賃金は年間1,000万円程度で、アルバイトしたほうが高い給与が得られるという。

医療過誤保険の料率が高いため、若い医者は到底負担できないことも、産科医の高齢化が目立つ理由の一つだろう。

この本では、異常な産科医の労働条件が改善することが難しいなら、米国のように医療費を「ドクター・フィー」(直接報酬が医師に支払われるシステム)と病院に払うホスピタル・フィーに分ける制度にしなければ、インセンティブにつながらないという意見を紹介している。

この本では医療側の事情を紹介するとともに、産む側の女性の産前産後の休暇が取りづらい状況、職場でのマタニティ・ハラスメント、同僚の冷たい態度、夫の育休の取りづらさなど、この本のタイトル通り、日本がいまだに「生ませない社会」であることをレポートしている。

もちろん中には女性従業員が妊娠し、出産しても働き続けられるように、産前産後の休みと、育休を充実させ、保育面でも企業内保育所など、数々の便宜を提供している大会社もあるが、380万社あるといわれている日本の会社は、ほとんどが中小企業であることを考えれば、このような会社はごく一部と言わざるを得ない。

ちなみに企業内保育所は、そもそもラッシュアワーに子連れで会社まで来ることがきわめて困難なので、時差出勤とセットにしない限り、あまり意味がないと思う。

日本の出産では、帝王切開の比率が上がっている。

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出典:平成22年度我が国の保健統計 35ページ

高年齢出産が増えていることも、帝王切開の増加につながっているが、この本では「医師がうまいことを言って、帝王切開に持ち込む」という助産婦の発言を紹介している。

お産をやってくれる医師不足のためアルバイト医師を使っているが、アルバイト医師には残業させられないからとか、大病院では100人に一人でも異常が起こると、訴訟になるから経験を積めず、無難に帝王切開になってしまうといった病院側の理由なのだと。

帝王切開とならんで、会陰切開も不必要に増えているという。この本では、産科医師不足のため、看護師に施術させたという証言を紹介している。

筆者の長男は米国で生まれ、次男は日本で生まれた。

いずれも大学付属病院で生まれたが、米国の産婦人科の制度は、常日頃妊婦を診ている町の産婦人科が、いざ出産となると、大学病院の出産室を借りて赤ん坊を取り上げるというシステムで、医療設備の整った大学病院で出産するので、妊婦と家族の安心感は高い。

ただし、医療保険が普通分娩では大体出産後1泊程度しか認めないので、生まれるとすぐに退院となる。帝王切開の場合には5日ほど病院にいることになる。

会社の保険でカバーされたが、たしか一泊1、600ドル?程度で、ずいぶん高いと感じた記憶がある。

次男の場合は、妊娠中の診察も大学付属病院で診てもらったので、家から車で30分程度、家内が自分で車を運転していった。いよいよとなったら、タクシーで運び込んだ。

いずれも帝王切開で生まれた。長男の時は、当初は普通分娩で頑張ったが、なかなか生まれないので、心音が弱くなってきているとの医師の判断で、帝王切開に切り替えた。

筆者も消毒を受けて手術服に着替え、分娩室に入って家内の手を握って、励ましていたが、帝王切開となるので分娩室から出され、生まれた時に新生児を抱かせてもらった。

今は日本でも希望すれば、夫も分娩室に入って妻を励ますことができるのかもしれない。

次男のときは、日本で帝王切開だったので、生まれてすぐの処置が済んで新生児室に運ばれてくるのを待つばかりだった。

この本を読んで、昔のことが思い出される。


300ページ余りの本で、具体例をたくさん挙げている。

日本の産科医療にも、また妊婦の職場での処遇や産後の勤務待遇にも改善すべき点が多いことがよくわかる本である。


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Posted by yaori at 23:31│Comments(0)TrackBack(0) ノンフィクション | 医療

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