2015年03月22日

税金を払わない巨大企業



国税庁勤務の経験もある中央大学名誉教授の富岡幸雄さんの本。富岡さんは「税務会計学講義」などの、税務会計に関する著書もあり、税務会計研究学会の顧問を務めている。富岡さんは今年90歳の高齢なので、実際には「取材・構成」として名前が出ている河貴一さんがライターだと思う。

税務会計学講義
富岡 幸雄
中央経済社
2013-04


この本の主張は、一言で言って本のタイトル通りだ。

この本はアマゾンの”なか見!検索”に対応していないので、”なんちゃってなか見!検索”で、目次と主要な章題を紹介しておく。大企業批判の、いわば「アジ=アジテーション本」であることがわかるだろう。

第1章 大企業は国に税金を払っていない

日本の法人税は本当に高いのか
マスコミが誤用する「実効税率」
巨大企業の驚くべき実効税負担率

1%未満は三大メガバンクとソフトバンク
5期通期でも三大メガバンク、持ち株会社がランクイン
なぜ商社の実行税負担率は低いのか

受取配当金が巨額でも法人税には関係なし
利益の10倍以上もある受取配当金
子会社、関連会社からであれば申告ゼロに

第2章 企業エゴむき出しの経済界リーダーたち
減税を叫ぶ経済界リーダーの厚顔ぶり
住友化学
みずほフィナンシャルグループ
三菱商事
三井物産

日産自動車
トヨタ自動車
本田技研工業
HOYA
ファーストリテイリング
日本航空

第3章 大企業はどのように法人税を少なくしているのか
巨大企業の負担は法定税率の半分以下
税金逃れの手口と税法上の問題
 ヾ覿箸硫餬彖犧
◆ヾ覿箸侶弍直霾鵑良堝明さ
 受取配当金を課税対象外に 上昇する配当性向 二重課税のケースはまれ

ぁ〜点覇段盟蔀嵋,砲茲詬ザ税制
ァ‘睇留保の増加策
Α.織奪ス・イロージョンとタックス・シェルターの悪用

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─.璽蹇Ε織奪スなどの節税スキーム
 多国籍企業に対する税制の不備と対応の遅れ
企業エゴと経営者の社会的責任

第4章 日本を棄て世界で大儲けしている巨大企業
日本企業もアメリカ発の手口を模倣
海外企業買収の裏には

第5章 激化する世界税金戦争
”企業性善説”が通用しない時代
議会で追及されたグーグルの節税手法
アップルCEOティム・クックの反論

アマゾンジャパンも法人税を払っていない
日本の大企業も税率が低い国へ
アメリカの知財戦略
租税国家を脅かす「国際的二重非課税問題」
「税源浸食と利益移転」を阻止せよ
OECD租税委員会の対応

第6章 富裕層を優遇する巨大ループホール
世界一安い日本の富裕層の税金
何度も延長された証券優遇税制
富裕層もタックス・ヘイブンを悪用
不十分な所得税最高税率の引き上げ

第7章 消費増税は不況を招く
消費増税はデフレ要因
置き去りにされる社会保障
消費税10%でも税制は大赤字
アンバランスな庶民と法人の税負担
中小企業の7割は赤字経営

第8章 崩壊した法人税制を建て直せ!
消費増税より税制の結果を修正すべき
法人税減税効果は果たしてあるか?
苦しい代替財源探し

この本で紹介している2013年3月期の実行税負担率の低い大企業のリストは次のようなものだ。

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出典:本書

連結純利益が1兆円もある三井住友FGが3百万円、同じく純利益が6、500億円のソフトバンクが5百万円の法人税しか払っていないとは、たしかに驚きだ。

同じ時期の11位から20位までのリストは次の通り。

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出典:本書

2008年から2012年3月期までの5期通算での実効性負担率の低いランキングは次の通りだ。

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出典:本書

11位以下、26位までは次の通りだ。

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出典:本書

この本は大企業への課税を強化しろという点にあるが、その中でも中心となるのが、受取配当金への課税を強化しろというものだ。

次が2008年から2013年3月期までの6期の受取配当金の多い企業ランキングだ。

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出典:本書

日本の大手金融グループ、大手商社、自動車メーカーや大手電機メーカーは国内、海外からの子会社からの受取配当金が税引前純利益の多くを占めている。これは日本企業の国際化や、グループ経営強化の流れを反映している。

受取配当金に対する課税は「受取配当金益金不算入制度」により、子会社は課税益金から100%不算入、それ以外は50%が課税益金不算入が認められている。これが大手企業の実効税負担率を軽減している。

この制度が導入された理由は、子会社で課税されて、親会社でもまた課税されるとなると、二重に課税されることになり、子会社を親会社が吸収した方が税負担が軽くなるという事態が生じるからだ。

金融機関や電機メーカーの実行税負担率が低いのは、各種の租税特別措置(研究開発や設備投資、環境やエネルギー対策等)や、欠損金の繰越が認められているからだ。

商社やメーカーの実行税負担率が低いのは、外国で支払った税金を控除できる外国税額控除を使っていることも大きい。外国で支払った税金は二重課税を避けるために、本邦では控除できるのだ。

一方、法人税減税をバランスさせる措置として、次のような代替財源確保策が打ち出し/検討されている。

1.欠損金の繰越控除制度の見直し
  繰越控除期間の延長、控除上限額の引下げ、帳簿書類の保存期間の延長と納税者側の立証責任の発生
2.受取配当等の益金不算入制度の見直し
  益金不算入制度の対象範囲や割合などの見直し
3.減価償却制度の見直し
  定率法を廃止し、定額法に一本化
4.地方税の損金算入の見直し
  法人事業税や固定資産税等の損金不算入化
5.中小法人課税の見直し
  中小法人の範囲見直し(資本金基準の見直し)、軽減税率見直し
6.特例措置の見直し、法人成りによる個人・法人間の税率差の歪みの是正(給与所得控除の見直し、
  留保金課税の中小法人適用)
7.公益法人課税等の見直し
  公益法人等の範囲や収益事業の範囲の見直し(例えば社会福祉法人が実施する介護事業を収益
  事業へ)、軽減税率とみなし寄附金制度の見直し
8.地方法人課税の見直し(法人事業税を中心に)
9.国際課税の見直し(外国子会社配当益金不算入制度の見直し)

この本の主張するように、たしかに法人の実行税負担率は低い。その主因となっている受取配当金の益金への不算入は、いずれにせよ見直されることになるだろう。

グーグルのダブルアイリシュ・ウィズ・ダッチサンドイッチという手法による国際節税手法も紹介されている。

Double_Irish_With_a_Dutch_Sandwich1






















出典:efxcursion.com(ネット検索)

世の中には節税のために、複雑な仕組みを考える人もいるものである。

現在行われている法人税改革の必要性と、法人税負担の実態がわかって参考になる本である。


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Posted by yaori at 02:32│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス 

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