2015年11月22日

Q&A共通番号 ここが問題 マイナンバーはプラスにもマイナスにもなる



この本の著者の黒田さんが、先日テレビでそもそも総研という「マイナンバーにあたる制度は海外ではうまくいっているのだろうか?」という番組に出ていたので読んでみた。

テレビ番組では、マイナンバーのような国民共通番号制度は、OECD先進国では例外なく取り入れられていると政府は説明するが、実際にはイギリスは国民ID制度はやめている、ドイツは憲法違反の疑いがあるので共通番号はない、フランス、イタリアもない。米国とカナダは社会保障番号はあるが任意加入で、日本のような強制ではないと説明していた。

そもそも総研















番組の最後では、大臣が番組に出てきて釈明しろというような口調だった。

一方、政府広報資料の各国比較は次の通りだ。上記のテレビの表と全然違うことがわかると思う。たしかに、ドイツだけは番号の用途を税務に限定しているが、その他の国ではすべて社会保険と税務や年金、医療などの共通番号が導入されている。

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出典:内閣官房マイナンバー広報資料

また、テレビでは、米国、カナダは「任意」で日本のように「強制」ではないと言っていた。

しかし、米国に住んだ経験のある人はみんな知っていると思うが、この番号がないと社会保障が受けられず、銀行口座も開けないので、米国及びカナダの国民ほぼすべてが取得しているのが現実だ。

かなりミスリーディングな番組だったが、その番組で、マイナンバー反対論を展開していたのがこの本の著者の黒田充さんだ。

黒田さんは大阪市立大学工学部を卒業後、松原市役所に17年間勤めた後、立命館大学の大学院で学び、現在は自治体情報政策研究所の代表となっている。自治体情報政策研究所は黒田さんが設立したもので、所員は他にはいないという。

黒田さんはマイナンバー制度導入中止を現在も呼びかけている。

自治体情報政策研究所サイト自治体情報政策研究所ブログでマイナンバー制度の問題点を呼びかけ、この本に収録されているマイナンバーに関するQ&Aもサイトで一部公開している。

この本の結論として、黒田さんは次の様に最後に書いている。

「高齢化が急速に進む日本において、いま必要とされているのは、国が国民等に共通番号を付け、個々の国民等への社会保障を直接管理し、そのための個人情報を中央集権的にコントロールするようなシステム なのでしょうか。

住民としての国民等にとってより身近な市町村が、 住民の困りごとを具体的に把握しながら必要な社会保障を提供してい く、そのために必要な個人情報は個々の市町村が責任を持って管理する、国は市町村の必要に応じて制度を整え、財源を保障するといった 地方自治に則したシステムではないでしょうか。

こうしたシステムの方が、個人が本当に必要とする社会保障サービ スをよりきめ細かく、かつ的確に提供できるという意味での効率性の点でも、社会保障にまつわるセンシテイブな個人情報が大規模に流出するなどの危険性を避ける点でも、有効ではないでしょうか。」

この本を読んで考えさせられたのは、国と地方自治体のあり方だ。

マイナンバーは国が国民の個人情報を管理することを可能とする。まずは税務(つまり収入)と社会保障(年金、雇用保険、健康保険)だが、今後は銀行口座などの金融資産(とりあえずは任意)、株式資産(配当の源泉徴収のため)とどんどん広がっていく。

健康保険証としても利用可能となり、公務員の共通身分証明書としての利用も可能となる。

民間利用としては、スマホに載せられるようにするとか、クレジットカード機能を持たせるとか、デビットカード、ポイントカード、診察券等の機能を載せるという話もある。

スマホに載せることや、戸籍やパスポート、海外在留の邦人の選挙制度で利用しようという案もある。

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出典:首相官邸第9回 マイナンバー等分科会議事録

国と地方自治体との二重行政の問題点は、今回のマイナンバー通知カードの配布を見れば明らかだ。

実は筆者の番号通知カードはまだ手元に届いていない。筆者の住む東京都町田市では、11月18日に郵便局差出完了となっているが、簡易書留はまだ届いていない。

もし国が直接国民に配布することにしていたら、こんなことにはなっていないはずだ。

米国では、社会保険は社保庁(Social Security Administration)、税金は歳入庁=IRS(Internal Revenue Service)が直接国民と対応する。

かつてはこのブログで以前紹介したような案内が国民に直接届いていた(現在は郵便は廃止し、ウェブサイトで自分で見に行く形に変更されている)。

地方自治体はセールスタックス(消費税)やスクールタックス(固定資産税)などの市町村税等については、国民に対応するが、所得税や社会保険は連邦政府のファンクションだから、国の機関が直接対応するのだ。

この本の黒田さんの説明では、政府は個人の情報は住民基本台帳で持っているが、世帯の情報は持っていない。地方自治体が世帯情報を持っているので、今回のマイナンバーも地方自治体が世帯単位で通知カードを送付しているのだ。

マイナンバーがあれば国と地方とは同じネットワークを共有することとなり、当然、世帯情報も共有することができるはずだ。

もしマイナンバーを活用することにより、国と地方の二重行政を一本化できたら、地方公共団体の職員は何十万人も削減できるかもしれない。そのことを黒田さんは最も恐れているのだろう。

マイナンバー制度にはもちろんマイナス面もある。マイナス面にも気づきながらも、適正な運用を進めることが重要だと思う。

その意味では、黒田さんのブログは気付きの機会を与えてくれ、役立つ。

マイナンバー制度は、国による国民のフロー(収入)とストック(金融資産、株などの有価証券、不動産)管理を可能とするので、その意味では国による管理強化となる。

一方、全く話題にならないが、やりようによっては国と地方自治体の二重行政が抜本的に簡素化できる可能性も秘めている。

プラスにもマイナスにもなるツールだ。

そんなことを考えさせられる本である。


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Posted by yaori at 03:48│Comments(0)TrackBack(0)ビジネス | 個人情報保護

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