2015年12月06日

百田尚樹の「殉愛」と暴露本「百田尚樹『殉愛』の真実」

2015年12月05日22時26分45秒 1










































殉愛
百田 尚樹
幻冬舎
2014-11-07


人気作家・百田尚樹さんが、”すべてのスケジュールを半年ずらして”、書き上げた”ノンフィクション”小説。

2014年1月に亡くなった関西の視聴率王、やしきたかじんの最後の2年間の闘病生活と三番目の妻・さくらさんの献身的看病を描いた本。

以前紹介した「たった一人の熱狂」の著者幻冬舎見城社長の755(有名人とやりとりできるツイッターのようなSNSサービス)が閉鎖された原因となったと思われるこの本を読んでみた。



あわせて「殉愛」の疑問点を検証した「百田尚樹『殉愛』の真実」という暴露本も読んでみた。

百田尚樹『殉愛』の真実
角岡 伸彦
宝島社
2015-02-23


百田さんが、”読者はにわかに信じられないかもしれないが、この物語はすべて真実である”とエピローグで書かなければ、また悪者としてイニシャルで登場するたかじんのマネージャーK、たかじんの実子H、音楽プロデューサーのUなどのことをボロクソに書かなければ、実話を元にした小説ということで、これほどまで問題にはならなかったのではないかと思う。

この本ではさくらさんは、ヴェネチアでネイルサロンを経営しており、イタリア人とつきあってはいるが、まだ結婚はしていないと書かれている。しかし、本が出版されて、ネット民がさくらさんの3度の結婚歴を暴き出して炎上。

さらに、元夫のアメリカ人、イタリア人からもコメントが寄せられ、いよいよ炎上は広がった。

「百田尚樹『殉愛』の真実」には、次の相関図が載っている。

抽出したページ 1





















出典:百田尚樹『殉愛』の真実

「殉愛」に1,100件も寄せられているアマゾンのカスタマーレビューは、☆一つが9割という異常事態となっている。

「殉愛 騒動」で検索すると、いろいろな情報が出てくるので、興味がある人はそちらで調べていただきたい。

炎上騒動はともかく、筆者は「殉愛」のたかじんの看病に関する話は、真実に基づいた記述がほとんどだと思う。克明に記録を残していたという、さくらさんの献身的看病は、結婚もしていない相手に対して何か強い気持ちを持っていたことは間違いない。

それが「愛」なのか、あるいはたかじんの財産を狙った「打算」なのかは、誰にもわからない。

「百田尚樹『殉愛』の真実 」では、たかじんの死後、さくらさんが自分の意のままに動かないたかじんの遺言執行人の弁護士を解任したり、たかじんが遺言書で遺贈を決めていた「桃山学院高等学校」や、「OSAKAあかるクラブ」に遺贈を取り消せないか交渉したりしたことを暴露し、さくらさんはたかじんの財産を狙っているような印象を与えている。

さくらさんが示した、たかじんが書いたとされている桃山学院高等学校の温井校長宛ての温井メモも、偽造の疑いがかけられている。

たしかに疑惑を招く行動もある。

しかし、62歳でガンになって不安にさいなまれているたかじんが、献身的に看病してくれたさくらさんに惹かれたのは当然のなりゆきで、ガンの転移による腹膜播種が見つかり、余命数ヶ月と宣告されたタイミングで入籍したことも、さくらさんに最後を看取ってもらいたいという気持ちの表れなのだろう。

さくらさんに隠れて時々会っていた愛人に看病を任せられるわけでもなく、さらには見舞いに来たこともないという実子には、死を迎えるにあたって、遺産などやるものかという気持ちになるのも理解できる。

ただ、”この物語はすべて真実である”というからには、作品の中で登場する重要人物を、いくらイニシャルにしているとはいえ、直接取材もしないで、他の人からの伝聞に基づいてボロクソにけなしていては、炎上のような結果を招くことはやむを得ないと思う。

ノンフィクションというなら、少なくとも、取材申し込みをしたという事実だけは残しておくべきだっただろう。

フェイスブックの犬紹介で、たまたま知り合った62歳のたかじんが、さくらさんと会って数日後に、”昔すごく好きやった女がいて、その人にそっくりなんよ”という理由でプロポーズしたという話も、唐突過ぎる印象がある。

さくらさんのバックグラウンドも調査不足があったのではないか。

ともあれ、筆者にとって、この作品の最大のメリットは、いままで名前しか知らなかった、やしきたかじんという人物を知ったことだ。

たかじん やっぱ好きやねん ‐シングル・コレクション‐
やしきたかじん
ビクターエンタテインメント
2014-03-19



出身高校への1億円の寄付、この騒動が起こっているので大阪府が受け取りを保留している3億円の寄付、たかじんが会長、キャプテンを務めていたOSAKAあかるクラブへの2億円の寄付(たかじんAWARDをつくるための基金)。

遺産10億円とも言われているが、大阪のためにお礼したいというたかじんの強い気持ちが表れる行動だ。なかなかできることではない。

百田さんの筆はなめらかで、病気や治療薬・治療施設の説明も適確だ。ノンフィクションとしては落第点かもしれないが、ガンのこわさを知り、たかじんを知ったことだけでも、読む価値はあったと思う。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。





Posted by yaori at 03:34│Comments(0)TrackBack(0) 小説 | 百田尚樹

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/yaori/51983357