以前紹介した資生堂名誉会長の福原義春さんが「年を取ってから読んだ本の中で、こんなにも興奮した一冊はなかった」と絶賛していたので読んでみた。
実はこの本を読む前に、たまたま会社の友人からお勧めの本を聞かれたので、まだ読んではいないが、読書家で有名な福原さんがイチオシの小説なので、面白いのではと他人にも紹介していた。
しかし、この本を読んで、本の好みは、人によって相当異なることを痛感した。
物語の舞台は19世紀初頭のドイツだ。ガウスとフンボルトという同時代を生きた偉人のそれぞれの歩みを交互に語る形で物語を展開している。
カール・フィリードリッヒ・ガウスは、偉大な数学者・物理学者・天文学者だ。
ガウスは24歳の時に「整数論」を出版しており、結局これが唯一の著書になった。
この本では、もっぱらガウスの私生活のことを書いている。ガウスはEUになって通貨がユーロで統一される前の、10ドイツ・マルク紙幣に肖像画が載っていた。

出典:Wikipedia
物理学の磁束密度の単位がガウスだった(今はテスラに変わっている)。それでガウスという名前を知っている人も多いと思う。
ちなみに電磁波測定器はガウスメーターと呼ばれている。
もう一人は、アレクサンダー・フォン・フンボルト。貴族出身の偉大な地理学者で、兄のヴィルヘルム・フォン・フンボルトは言語学者でプロイセンの内相にもなった政治家だ。
フンボルトの名前は聞いたことがある人が多いと思う。
まずはフンボルト海流。ペルー沖を北上して、赤道に沿って太平洋を横断する海流がフンボルト海流だ。フンボルトが南アメリカを探検し、オリノコ川とアマゾン川の源流がペルーにあることを発見したので、フンボルトの名前がつけられた。
今年はラニーニャ現象のために夏は暑くなると予想されているが、ラニーニャの起こるペルー沖の海流がフンボルト海流だ。
もう一つはフンボルトペンギンだ。フンボルト海流が流れる南米西岸に暮らしている。

出典:Wikipedia
フンボルトの名前を冠したアレクサンダー・フォン・フンボルト財団は、ドイツの留学生支援財団で、日本のフンボルト留学生経験者の集まりが東日本アレクサンダー・フォン・フンボルト協会などだ。
東大の石井紫郎名誉教授、早稲田の西原春夫元総長、東大の佐々木毅元総長などが、歴代の理事長を務めている。
フンボルトの物語は、北中南米探検の話が中心だ。オリノコ川とアマゾン川の源流がペルーにあることを発見した時の探検などが紹介されている。
この小説はドイツで120万部売れ、全世界でも好評で、40か国語に訳されているが、筆者はこの小説では感情移入できなかったので、あまり強い印象はなかった。
福原さんには何か感情移入できる個人的な経験があったのかもしれない。あるいは好みの問題なのかもしれない。
文庫にもなっていないので、ちょっと勧めにくい本である。
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