東大法学部を首席で卒業、財務省勤務を経て、現在は弁護士として活躍するという山口真由さんの本。
山口さんは「東大首席弁護士」ということで、この本を出版した後、同じような本を違う出版社から数カ月おきに何冊も出している。
以前、「ビジネス書の9割はゴーストライター」という本のあらすじで紹介した通り、出版不況の折、ちょっとでも売れる著者がいれば、様々な出版社がゴーストライターを用意して群がってくる。それの典型のような出版ぶりに思える。
東大法学部出身で、成績抜群というと、現在はライフネット生命保険の社長となっている岩瀬大輔さんを思いおこさせる。
このブログでも岩瀬さんの「入社一年目の教科書」や「超凡思考」を紹介しているので、参照願いたいが、岩瀬さんは在学中に司法試験に合格したところは山口さんと同じだが、首席卒業とは言っていない。
どちらも秀才であることは間違いないが、山口さんは平成17年に法学部における成績優秀者として「東大総長賞」を受賞している。
しかし、当たり前のことだが、よしんば東大法学部での成績が全優であっても、それが社会での成功を約束するものではない。
山口さんは財務省に入省後、2年間で財務省を辞めて、弁護士になっている。
最近読んだ「東大VS京大」という橘木俊詔(たちばなき・としあき)京都大学名誉教授の本では、次のように弁護士と学歴について次のように語っている。
「弁護士を自営業稼業と理解すると、学歴(特に学校名)の果たす役割はかなり小さくなることは明らかである。
どれだけ顧客をとるかとか、裁判で勝者になるといったことは、その弁護士のコミュニケーション能力や人柄などにかなり依存するからである。
もとより法律や過去の判例の知識、あるいは論理的な思考力や洞察力も無視はできないので優秀な大学を出た人が多少は有利だろうが、その弁護士の個性と仕事ぶりが決め手になる世界である。
学歴がほとんど無用な世界が弁護士であるといっても誇張ではない。」(「東大VS京大」P194)
最近は東大法学部出身者がほとんどを占めるということはなくなってきたが、官僚、特に財務省こそ東大法学部卒というブランドが、いまだに生きている職場ではないかと思う。
それを2年で辞めて、裁判官になるというなら、まだわかるが、上記の橘木さんのいうような学歴無用の弁護士になるとは、正直何を考えているのだろうというのが筆者の印象だ。
山口さんは現在は、勤めていた弁護士事務所を辞めて、ハーバードのロースクールに留学中ということで、今度は米国のどこかの州の弁護士資格を取って、いずれは国際弁護士として活躍すべく勉強しているようだ。
しかし、コミュニケーション能力が問われる弁護士の世界では、ハーバードビジネススクールを出たとしても、弁論で勝てなければクライアントもついてこないだろう。
テレビタレントとしては、これだけハクがある弁護士は他にいないので、強みとなるだろうが、当意即妙、その場にあった受け答えができることが、タレントとしての価値であり、それには学歴や留学歴は関係ないだろう。
ともあれ、山口さんが努力の人で、大変な勉強家であることは間違いない。試験前は睡眠時間も3時間にしたり、眠らないように足を水に漬けたりしたという。
この本で紹介されている方法論をいくつか紹介しておく。
まずは素通しで7回読むというのが紹介されている。
7回も繰り返し読むよりは、もっと効率的な読書法があるのではないかと思うが、単にページをめくるだけだったら、苦痛ではないので、読むことへの負担を軽くするのだと。
7回も読めば、見慣れた記述にどんどん親近感が涌いてきて、読書が楽なものになっていくという。
スケジュールは外圧で管理するという方法が紹介されている。
何かの資格を取るための勉強をする際には、手帳でこまめにスケジュールを決めて勉強するよりは、勉強する前に受けられる模試をすべて申し込む。
模試を受けて、結果を見て、欠点を補強、再度また模試を受けて、欠点を補強という具合に外圧の模試でスケジュールを管理するのだと。
努力をする際にもっともやってはいけないことは、「自分との戦い」にもっていくことだ。
普通の人は、「自分との戦い」に持っていくと、たいていはうまくいかない。孤独な戦いに挑むよりも、ライバルと一緒に頑張るほうが続けることができる。
ダイエットでも、ランニングでもライバルを見つけ「まわりの人より頑張ろう」で続くのだと。
山口さんは、大変頭の良い人であることは間違いない。
しかし、取れる資格はいくつでも取ってハクをつけても、ビジネスではコミュニケーション能力が重要で、それは資格を取ったり、本を読んでも身につくものではない。
思うようにいかないから転職を繰り返しているのか、それともある目指す姿に向かってキャリアを積み上げているのかよくわからないが、タレントとしてではなく、本業でぜひ成功してほしいものである。
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