2018年10月07日

近大革命 4年連続志願者数日本1 マーケティング思考だ

2018年10月7日追記

以前紹介した近畿大学の2018年正月の「謝罪広告」が新聞広告賞2018広告主部門・新聞広告賞(第38回)
第71回 広告電通賞 新聞  サービス・文化部門 優秀賞を受賞した。

たしかに、「お詫び広告」という形で、近畿大学の優れた点をアピールしたよくできた広告だと思う。追記しておく。


2018年7月13日初掲:
近大革命
世耕石弘
産経新聞出版
2017-10-27


4年連続志願者数日本1。10年で志願者数が2倍になった近畿大学の改革を、創設ファミリーの広報マン(現総務部長)が語った本

著者の世耕石弘さんの祖父の世耕弘一さんは、和歌山県の貧しい村に生まれ、15歳で和歌山県新宮市の材木所に丁稚奉公し、ビジネスで頭角を現した。東京の材木商社に引き抜かれ、旧満州で材木商売を始めるなど、いろいろな職業を転々とし、東京で人力車の車夫をしながら、神田の英語学校で学び、27歳で日大に入学、その後朝日新聞社に勤めた。

日大の勧めで第1次世界大戦での敗戦国ドイツに5年間留学、帰国後日大教授となり、1932年に衆議院議員に当選、終戦時は内務政務次官として、旧日本軍がため込んだ隠退蔵物資の摘発を主導した。

1949年に新制大学制度ができた時に、理工学部と商学部から成る近畿大学を創設して初代理事長となったが、お金には一切縁のない清貧の暮らしを貫いたという。

経済産業大臣で参議院議員、近畿大学第4代理事長だった世耕弘成(ひろしげ)さんは、著者の世耕石弘さんのお兄さんだ。

筆者の友人には近畿大学出身の人はいないので、あまり近畿大学に対して接点がない。しいて言えば、学生時代に全日本学生ボディビル選手権の試合が関西であった時に、応援のために近畿大学の講堂に行ったことぐらいだ。

その時の近畿大学のボディビル部?の学生の応援の仕方には驚いた。関東では、選手個人を応援するということはまずない。単にポージングが終わって拍手するくらいだ。

ところが、関西の応援は全然違う。近畿大学の選手がポージングすると、応援の学生が「ごっつい腕!」とか、「ごっつい脚!」とかいって声を出して、選手個人を応援するのだ。

関西風の応援が関東でも広まったということはないが、関西では今でも同じような応援をしているのだろうか。 閑話休題。

著者の世耕石弘さんは、1992年に大学(ネットで調べたら同志社大学だった)を卒業。近鉄に入り、近鉄の広報担当課長から、2007年に祖父の創設した近畿大学の入試広報課長に転職した。転職当時、理事長だったお父さんの世耕弘昭さんからは、志願者数を減らしたらクビと言われていたという。

近畿大学の志願者数は1993年のピーク時には13万人を超えていたのが、2006年度は7万人強に落ち込んでいた。

日本の18歳人口は、1992年の205万人をピークに、減り続けており、2017年は120万人に減少している。そんな影響もあって、志願者数が減り続けていたのだ。

世耕さんが予備校や高校を訪問して調べてみると、「関関同立」という予備校がつくった語呂がいいだけのフレーズが、そのまま定着して近畿大学の壁となっており、これを打ち破る戦略が必要なことがわかった。

そこで、出願方法も紙の願書をやめて、「完全ネット出願」とするなど、学生の負担減にも配慮する一方、ユニークな広告を出し、年間500本弱のニュースリリースを出しすなど広報にも力を入れた。

その結果、近大マグロのブランド化も相俟って、志願者数は2010年から増え始め、2011年には関西でトップ、2014年からは全国でトップを5年連続で続けており、2018年度でも近畿大学が志願者数を伸ばして、トップの座を不動のものにしている。

この本では、近畿大学躍進の立役者の広報・広告戦略がわかって参考になる。

近畿大学はこれまでの広告を広告アーカイブとして大学のサイトに公開している。以下の広告の出典はすべて、この広告アーカイブだ。

この中で、2018年年初の「謹んで新年のお詫びを申し上げます。」という広告が、この本のエッセンスを「お詫び文」という形で紹介していて、大変面白い。

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また、2015年の広告は、大阪で開かれた第68回新聞大会に向けて電通の5チームが、広告主は口出ししないことという条件で、違った新聞に公告を出し、いわば社内コンペした作品で、大変面白い広告ばかりだ。

日経新聞に載せた広告が面白い。「近大生 勉強中」というコピーも絶妙だ。

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凝っているのは、産経新聞に載せた広告。よく見ると女性の歯に青のりが挟まっている。だからコピーが「オレはいま、世界から試されている」となっているのだ。英語でどう注意したら、彼女に恥をかかさずにすますことができるのか?

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これらの競作とは別のタイミングで出した次の広告も面白い。今や近大マグロはブランドとなっているが、近畿大学では次はウナギ味のナマズの研究中だ。ちなみに、ナマズのかば焼きは、イオンが商品化して、土用の丑の日に売り出している。パチモンとは偽物のことだ。

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近畿大学の入学式は、近畿大学出身のつんく♂がプロデュースするド派手な入学式だ。



KINDAI GIRLSが出演する。


ガンのため声帯を失ったつんく♂の祝辞。


ド派手な入学式は、深い意味があるという。近畿大学の入学者の約3割は、志望校に落ちた不本意入学者だ。彼らの大学生活のモチベーションを上げるため、ド派手な入学式は役に立っているのだ。

最後にこの本で発見した英単語を一つ紹介しておこう。

KINKYという単語は、「変態の」という意味がある。これまで近畿大学出身者は、国際会議などで失笑を買うことがあったという。英文名が、KINKI UNIVERSITYだったからだ。

そこで、国際学部開設にあわせて英文名をKINDAI UNIVERSITYに変更したのだと。

関係者にしかわからない悩みで、なるほどと感心した。

近畿大学躍進は、近大マグロの商業的成功や、付属病院を含む医学部、薬学部、農学部など14学部、48学科を持つ総合私立大学であること、実学教育を建学の精神とし、それを実践していること、ド派手な入学式などで話題性のあることなど、複合的な要素があると思うが、広報も間違いなく成功の要因だと思う。

そんなことが実感できる本である。


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Posted by yaori at 21:55│Comments(0) 趣味・生活に役立つ情報 | 企業経営