2020年07月11日

東京ブラックアウト 原発ホワイトアウトの続編

東京ブラックアウト
若杉 冽
講談社
2014-12-05


2014年にあらすじを紹介した「原発ホワイトアウト」の続編。



小説のあらすじは詳しく紹介しない主義なので、前回のあらすじでは、はっきり書かなかったが、「原発ホワイトアウト」では、北朝鮮の秘密工作員と元関東電力社員の不満分子が、爆弾低気圧の猛吹雪の中で、「新崎県」にある「新崎原発」からの高圧送電線の鉄塔を爆破する。

新崎原発は緊急停止するが、福島第1原発の時と同様、非常用電源が吹雪のため稼働せず、バックアップ用の電源車も積雪と道が凍って動かせず、結局最新鋭の6号炉と7号炉が、メルトダウンを起こし、燃料プールの使用済み核燃料も巻き込んで爆発する。

フクシマ50の様に、爆発前に決死隊が冷却用電源を動かすべく現場に向かうが、爆発に巻き込まれてしまう。



格納容器爆発の結果、半径170キロ圏内は年間50ミリシーベルトの強制移住レベルとなり、関東を中心とした地域は人が住めなくなり、混乱で多くの人命が失われ、首都は京都へ移転するというストーリーだ。

この本の中心は、電力業界の団体がつくりあげた、電力業界が外部に発注する年間5兆円から、上前をはねて、年間2000億円という規模とした「電力モンスター・システム」だ。

「モンスター・システム」は、与党と野党の代議士、落選した代議士、地方の首長、地方議会議員、はては町の自治会長や町内会長に至るまで、電力業界が有利になるように、政治資金として幅広くばらまく。

さらに、テレビやマスコミでは電力業界に有利な広告を大量に流し、反原発のタレントは干し、多数の元検針員に「市民の声」としてネットやマスコミに投稿させ、電力業界が有利なように世論を誘導しているという構図だ。

国からも、原発歓迎の地元には、巨額の電源立地交付金も、新幹線も、高速道路も来るというのが日本の政治のお作法だという。

電力業界の目標は、仝業再稼働、∩配電網分離阻止、E杜肋売り自由化の骨抜きだ。そして、新崎原発爆発事故の後も、電力業界は次のメモの様な政策の実現を目指すというストーリーだ。

東京ブラックアウト










































出典:本書217ページ

最終的に、日本はゴーストタウン・無法地帯と化した関東地方で、世界の核廃棄物の中間貯蔵施設(50年間保存)をつくって外貨収入を獲得するのだと。

2度の原発事故を憂慮された天皇や安倍首相夫人と思われる人物、小泉元総理の反原発運動などもプロットとして描かれている。

山本太郎元議員が園遊会の時に、天皇に請願書を渡したことをふまえ、そんなことをしなくても、内閣官房宛に送れば、憲法16条に基づく天皇への正式な請願は可能だとして、今上天皇への請願の正式な送付先を、この本の最後に記載している。

〒100−8968 東京都千代田区永田町1−6−1 内閣官房内閣総務官室

筆者は、たまたま原子力規制委員会が入っている六本木ファーストビルで仕事をしている。そんなこともあって、この小説はフィクションではあるが、すごく現実に近いと感じた。

現在稼働中の原発は次の通りだ。

稼働中原発





















出典:ウェブ

この本を読む前に池上さんの、「池上彰が読む小泉元首相の『原発ゼロ』宣言」も読んで勉強した。




原発がなくても、日本はやっていけるということは、既に3.11以降の何年かで証明されている。現在は安全基準に達した9基(うち4基は裁判で停止中)の原発だけ動いている。原発を動かせば、電力会社には1000億円単位の利益が出るので、電力会社は原発稼働に積極的だが、この小説や、池上さんの本を読むと、本当に日本で原発が必要なのか考えさせられる。

この本の後半は、原発メルトダウン・爆発後の、人が住めなくなった関東での大混乱と多数の死者発生を描くホラーとなっている。現実に起こらないと言えないところが怖いところだ。

著者の若杉冽さんは、現役の官僚で、国会議員、高級官僚、電力業界の業界団体の代表など、登場人物は、いかにも本当にいそうなリアルなキャラクターに描かれている。

娯楽小説というわけではないが、もしフクシマ級の事故が再度起こったら日本はどうなるかをシミュレーションした小説として大変参考になった。

このブログで紹介した「原発ホワイトアウト」のあらすじも参考にして、原発問題を再度考えてみることをお勧めする。

参考になれば、次を応援クリックしていただければ、ありがたい。


書評・レビューランキング



Posted by yaori at 00:00│Comments(0) 小説 | 原発問題