2012年08月27日

たかが英語 楽天三木谷さんの英語社内公用語化論

たかが英語!たかが英語!
著者:三木谷 浩史
講談社(2012-06-28)
販売元:Amazon.co.jp
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楽天社長兼会長の三木谷さんの英語社内公用語化論。自分で作った造語で、英語社内公用語化のことを"Englishnization"と呼んでいる。アマゾンのデフォルトの表紙は味気ないので、三木谷さんの写真とキャッチコピーが載っている帯を紹介しておく。

たかが英語








三木谷さんのお父さんの三木谷良一さんは神戸大学名誉教授で、三木谷さんが小学校2年生から4年生の時に、エール大学に研究員として赴任したため、三木谷さんもコネチカットのニューヘブンで過ごした。

筆者は三木谷さんは英語がネイティブ並みの帰国子女なので、楽天の英語公用語化などを推進しているものだと思っていたが、なんのことはない三木谷さんは向こうにいたときは頭は英語化していたが、帰国して3か月で英語をすっかり忘れてしまったという。

筆者の息子二人も同様な状況で、ピッツバーグで3年間生活した後、小学校5年生と1年生で帰国した。

小学校5年生の長男は向こうで覚えた英語力を残すことがきたが(維持は無理。忘れないという程度)、小学校1年の次男は帰国して3年ほどYMCAの英語教室に週1回通わせるなどの努力をしたが、4年生から塾に行くようになってYMCA通いを辞めると、ほとんど英語を忘れてしまった。

深層心理であるいは残っているのかもしれないが、ピッツバーグ時代は当然ネイティブの発音で、「お父さんの英語の発音はおかしい」とか言っていたのだから、息子たちの英語力が低下してしまうことを、なかば驚きを持って見ていた。

閑話休題。

ネイティブ並とはいかないが、三木谷さんはハーバード留学帰りなので、もちろん英語がうまい。社員に英語公用語化を強いることになったので、三木谷さん自身は中国語を勉強しているという。もっとも英語公用語化の次は中国語でなく、プログラミング言語を社員に学ばせるつもりだという。


世界企業は英語を話す

三木谷さんは、楽天の英語公用語化の理由を、ひと言で言うと世界企業は英語を話すからだと語っている。

これからの日本企業は世界企業にならなければ生き残れないし、日本企業が世界企業への脱皮に成功すれば、日本はもう一度繁栄できる。だから日本の復活、繁栄のために楽天の試みが役に立つと信じていると語る。

楽天やユニクロの英語社内公用語化に対する批判の多くは、たとえば某大手自動車メーカー社長が言っていたように、「従業員がほとんど日本人で、しかも日本にある会社なのに、英語しか使わないなんて愚かだ」というものだろうが、三木谷さんはそれに対して、「たかが英語じゃないか」と考えていたという。できない理由を並べる前に、ともかくやってみなければわからないじゃないかと。

楽天が英語社内公用語化を発表した2010年から、部署別にTOEICスコアを競わせたこともあり、楽天の社員のTOEIC平均スコアは、2010年10月の526点から、2012年5月には687点になった。2011年の新入社員にはTOEIC650点を取るまでは配属せず、英語の勉強をさせて全員650点をクリアーした。

社内でやり取りする書類、会議での使用言語を英語とする正式な社内公用語化は2012年7月に正式にスタートした。


商社は昔から社内連絡は英語が多かった

筆者は商社に30年以上勤めているが、電子メールが普及するまでは、海外店とのやりとりに使っていたテレックスは基本的に英語で書いていた。

よほどニュアンスが必要な案件は、日本語のローマ字でテレックスを打つ場合もあったが、日本人同士でも英語でテレックスを打つのが普通だったし、筆者以外の社員でも普通に英語でテレックスを打っていた(ローマ字派だった人ももちろんいた)。

電子メールが入って、逆に社内で日本人同士で英語でメールを入れることはほとんどなくなったので、商社に関しては社員の英語力が落ちてきたかもしれない。

伊藤忠などでは日本での会議を英語でやっていると聞くし、他社でも部によっては英語で会議しているところもあると思う。海外店とのテレビ会議は英語なので、その意味では英語で会議することは日常業務だと思う。

もちろん商社マンは英語力が要求される職業だし、楽天と同列には比較はできないが、それでも筆者は楽天の英語社内公用語化は意義があると思う。


日本でだけ商売していては先細り

日本企業は、日本だけ商売していては先細りとなるという三木谷さんの認識は正しく、世界企業は英語を話すというのも正しい認識だと思う。

三木谷さんは「逆説的だが、楽天社員のほぼ全員が(サムスンやLGの社員のように)英語で仕事ができたなら、社内公用語を英語に変える必要はなかった」というのもその通りだと思う。「できるけどやらない」というのと、「できないからやらない」とは違うのだ。

楽天がさきがけとなった英語を社内公用語化する動きは、ぜひほかの日本企業にも広まってほしいと思う。

楽天では2011年3月以来、開発系の執行役員6人中3人は日本語を話せない外国人だという。日本語の縛りを取り払ったおかげで、国籍に関係なく専門知識とノウハウを持った人材を雇うことが可能となった。

外国人枠を取り払ったメジャーリーグのようなもので、外国人枠がある日本のプロ野球とメジャーリーグの球団だったら、どっちが強いか答えは明らかだろうと。

楽天の社内SNSで使っているYammerでも、英語にしてから議論が活発化した。また英語で話すことによって、自然と社員が論理的に話すようになったという効果もある。

筆者もこのブログを英語版でも出そうと思っているが、いまのところ実現していない。たとえば茂木健一郎さんなどは、英語日本語の両方でブログを書いている。


楽天が取り入れようとしているのはグロービシュ

楽天が取り入れようとしているのは「グロービッシュ」であり、グロービッシュを話すことは、英語による文化侵略から自分たちの言語や文化を守ることにもなるという。

楽天の英語化は、西欧化ではなく、日本文化や日本人の良い点を世界に広げるきっかけにしたいと三木谷さんは語る。

英会話において重要なことは、頭の言語モードを切り替えることだと三木谷さんは語る。その意味で英語教育は英語でやるべきだし、翻訳せず英語を英語のまま理解できるようにすることが重要だ。

三木谷さんは役員会議のなかで、「ここは日本語でもいいですか?」と弱音を吐く役員がいても、絶対に認めなかった。それは頭の言語モードの切り替えを徹底するためだと語る。

ある部族が使う言語には青と緑の差がないので、日本人には簡単に区別ができる青と緑をなかなか区別できないという。概念が言語に縛られているのだ。だから言語を変えることで、概念を多角的にとらえ、オリジナルなビジネスを生みだす上でも役に立つだろう。

これはサピア=ウォーフの仮説である。


日本の英語教育改革

三木谷さんは受験英語はすべてTOEFLかそれに近いものにすべきと語る。日本人がつくった英語の教材がベストとは限らないし、受験英語は日本でしか存在しない特殊な英語なので、英語圏で通用する英語を学ぶには英語圏の大学への留学を希望する人が受ける英語力判定試験のTOEFLが適しているという。

日本政府は、英語を長時間勉強していながらも、英語を話せない人ばかりつくる受験英語教育による「言語鎖国」をやめよと三木谷さんはいう。


誰かが成功しないと次に続かない

野茂がメジャーに移籍するまで、日本人の野球選手はメジャーでは通用しないと思われていた。その後野手でも通用すると証明したのは、イチローや松井秀喜だった。結局は楽天が実際に世界で成功しなければ、世間の人は、グローバル化が正しい道であることを納得しないだろう。

グローバル化した楽天が世界で成功を収めること。日本人の意識が変わり、日本の英語教育が変わること。そうして日本人の競争力が上がり、日本が繁栄すること。それが三木谷さんの究極のゴールだといって結んでいる。

ポイントを良くとらえた大変参考になる英語社内公用語化論である。


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2010年02月20日

成功の法則92ヶ条 三木谷楽天教の教典

+++今回のあらすじは長いです+++

成功の法則92ヶ条成功の法則92ヶ条
著者:三木谷 浩史
販売元:幻冬舎
発売日:2009-06
おすすめ度:4.5
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楽天グループを率いる三木谷さんの仕事哲学92ヶ条。

アマゾンの表紙写真だと味気ないが、本屋に並んでいる本は三木谷さんの顔写真入りカバーがついて、こんな感じになる。
三木谷本












筆者が読んでから買った2010年最初の本である。

三木谷楽天教というのは、決して悪い意味ではない。楽天は三木谷さんの同志で主要なメンバーはほとんど去っており、三木谷色がいよいよ強い会社となっているので、そう呼んでいるだけだ。

以前の「成功のコンセプト」のあらすじは別ブログで再掲しているので、こちらも参照願いたいが、その最後でもコメントした通り、三木谷さんのワガママぶりは相変わらずだ。楽天の仲間が一人としてこの本に登場することはなく、謝辞もなにもない。こんなところが傍目には傲慢に見える。

同じ努力をしても最後の0.5%が大きな差になって現れるという「三木谷曲線」と呼ぶグラフを紹介している。曲線以外にも他にもいろいろ「三木谷○○」があるのでだろう。

三木谷曲線












出典:本書280ページ


楽天で唯一の「経営者」なのだろう。


出だしが強烈だ。

「夢を見るのは若者の特権だという。

美しい言葉ではあるけれど、僕は間違っていると思う。」


夢を抱くだけでは意味がない。夢を具体的な目標に組み立て直し、達成するためには具体的に何をしなければならないかを考え抜き、自分の能力、才能、体力、忍耐力をすべてをかけて実際にひとつずつ成し遂げる。

何年かかるかは別として、それで実現できない夢はないし、そこまでやってはじめて、夢を見る意味があるのだ。

夢と現実とは違うなどとは、夢を現実に変える努力を怠った人間の苦し紛れの言い訳に過ぎないと三木谷さんは語る。


夢を実現するための技術を書いた本

夢を実現するためには技術が必要だ。だから三木谷さんは自分の夢や目標を実現する方法を楽天グループ5,000人はじめ、日本のビジネスマンに伝えるためにこの本を書いたのだと。

三木谷さんの「成功のコンセプト」のあらすじは詳細にわたって紹介したが、「成功のコンセプト」はいわば総論で、この本はそれで示した三木谷経営の神髄を92の具体的テーマについて語った各論だ。

成功のコンセプト (幻冬舎文庫)成功のコンセプト (幻冬舎文庫)
著者:三木谷 浩史
販売元:幻冬舎
発売日:2009-12
おすすめ度:4.5
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なぜ92ヶ条なのか?

この本にはなんで92ヶ条なのか書いていないが、筆者の推測では、三木谷さんは読者が座右の書として毎日1ヶ条づつ、3ヶ月で1冊すべて、1年に4回繰り返して読むように、この本を92ヶ条にしたのではないかと思う。

つまり92 x 4 ≒ 365 だ。

ハードカバーのゴツい本だが、座右の書とするという意味では松下幸之助の「道をひらく」のようなビニールのソフトカバーが最適だと思う。

道をひらく道をひらく
著者:松下 幸之助
販売元:PHP研究所
発売日:1968-05
おすすめ度:5.0
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体育会系経営

リッツカールトンホテルでは”モーニングラインアップ”と呼んで職場全員が集まって15分ほどその日の順番に当たった人からの発表と、ミーティングを行っているという。

楽天の月曜日の全体朝会は有名だが、各部署でも毎日朝会をやっているという。この本は、その朝会で毎回発表者をきめ、一つのテーマについて発表させたりして、三木谷流経営を社員5,000人となった楽天グループに浸透させるために書かれたのではないかと思う。

ソフトボールの宇津木妙子さんの本のあらすじでも紹介した通り、重要なことは毎日リマインドして覚えることが、ベタではあるが間違いなく最も効果的だ。

だから野球やソフトボールなどのスポーツでは最も重要な走守攻は毎日練習する。そして統率が取れたチームは毎日練習の前にやるべき事と目標をみんなで確認する。

そんな体育会系の反復練習を思い起こさせる。

全部で92の三木谷教の教えの内容を一つ3ページにまとめ、初めにその章のタイトルページをつけて、4ページセットとして、ひとつひとつがあたかも本の一つの章のような体裁となっている。

松下幸之助の「道をひらく」は、全てのテーマが見開き2ページに収まっているので読みやすく、筆者は1テーマ見開き2ページの方が良いのではないかと思うが、本文3ページ+タイトルページというのは、三木谷さんなりの考えがあっての構成なのかもしれない。


この本の目次 なんちゃって中見!検索

アマゾンの中見!検索のように目次を紹介しておく。

成功の法則目次2成功の法則目次1













成功の法則目次4成功の法則目次3













成功の法則5













なにせ92もあるので、いっぺんに全部頭に入れるのは難しいが、毎日1ヶ条づつ、年4回繰り返し読んで少しずつ覚えれば良い。その意味でも、この本は教典である。

この本を読むと三木谷さんが自分の考えをどのように部下に伝えているのか、よく分かる。自分の教えを簡潔な言葉でまとめて、強い印象を与える本だ。

いくつか参考になったものを紹介しておく。

15.人生一生勉強。すべて勉強。
大学時代の恩師の言葉だという。なによりも自分自身への戒めであると。たしかに、この言葉は筆者の戒めでもある。

プロのスポーツ選手で、自分はプロになれたからもう練習しないなどという人はいない。

成長こそが人生の喜びだ。人は何かを学ぶために、この世に生まれてくるのだと。

26.精神的エネルギーレベルを下げるな。
スティーブン・スピルバーグは、自分が撮影に入る前に黒沢明監督の「七人の侍」を見るという。スピルバーグは「七人の侍」を初めて見たとき、これが映画だと思ったそうだ。その感動を思い出しているのだろう。



七人の侍(2枚組)<普及版> [DVD]七人の侍(2枚組)<普及版> [DVD]
出演:三船敏郎;志村喬;稲葉義男;宮口精二;千秋実
販売元:東宝
発売日:2007-11-09
おすすめ度:5.0
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精神的なエネルギーレベルをいつも高く保ち、前向きな気持ちで仕事に取り組むために、三木谷さんは週2〜3回ジムに行くという。。テンションが下がったまま仕事をするのは、敗北への道を進むのと同じだと知るべきだと。

28.他人の立場になって考える。
これは小学校4年生の時におばあさんに言われたことだと。ものすごく大きな衝撃を受けて、それ以来、ずっと心の底に秘めている教訓だという。

他人の立場になって考えるというのは、カーネギーの「人を動かす」の最も重要な教訓である。

サイバーエージェントの藤田さんは「渋谷ではたらく社長の告白」でカーネギーの本について書いているが、三木谷さんも「カーネギー信者」かもしれない。

29.物事の本質を見極めろ。(なぜ人はものを買うのか?)
これの答は、ショッピングはエンターテイメントだからというものだ。

遠回りのようだけど、結局は物事の本質を見極める作業を繰り返すことが、問題の本当の解決法へと辿り着く、最善にして唯一の方法なのだと。

全く同感だ。しかしこれは筆者の意見だが、eコマースシステムサービスを提供する楽天なら、その答えで良いかもしれないが、消費者相手の小売り業ではそれだけでは不十分だろう。

なぜ人はそのものを買うのか?

これを経験を使ったり、科学的に割り出したりして、同じパターンを再現させるために、日夜世界中の商人が研究している訳だ。

その一つの方向性は、このブログでも紹介した世界第3位の小売業英国のスーパーマーケットTESCOのポイントカード(クラブカード)による徹底的な購買履歴分析、属性・類型分析に基づく割引クーポン付きのパーソナライズされたダイレクトメールであり、もう一つは、こちらもブログで紹介したアマゾンの”この本を買った人はこちらも買っています”というリコメンドだ。

「なぜ」がわかれば、無敵の小売業になれる。

楽天が取扱高を公表しているので、なんとなく小売業のように勘違いしていたが、この章の答えで楽天は小売業ではなく、小売業向けサービス提供者であることがはっきりわかった。

31.身近なベストプラクティスを探せ。
三木谷さんが考案したという「2ミニッツ・コール」が紹介されている。インターネットで資料請求したら、楽天の担当者が2分以内に電話を掛けることだ。コンピューターのプログラムが自動的に動いているだけでなく、しっかり人間がサポートしていることを実感してもらえるという。

楽天の他の子会社ではあまり広がらなかったが、アメリカの楽天子会社では広がっているという。たしかに新鮮なサプライズを与え差別化できる良いプラクティスだと思う。

43.リーダーとは指揮官であり、教育者であり、戦略家である。
バッティングのコツを聞かれて、「来たボールを、ひっぱたくだけです」と言った人がいるが、これはまさに天才の言葉で、凡人に理解できる単位にまで分解しなければならない。直感の内容を言語化しなければ他人に伝わらない。

三木谷さんがこの本を書いている最大の理由がそこにあるという。

能力のある個人が集まるだけでは、いい会社はつくれない。個人が辞めたら会社からその能力が失われるからだ。能力を伝える仕組みを構築する必要がある。社員の能力を高める社内教育のシステムがなければ、会社は長続きしない。

リーダーは自分がやると、なぜ上手くいくのかそれを徹底的に分析し、もう一度自分で理解した上で、部下に伝えることのできる教育者でなければならない。

チームを成長させ、目標を達成し、さらに高い目標に挑む。この幸福のスパイラルを作り上げることができるのがが、真のリーダーなのだと。

44.組織を生かし、物事を達成せよ。やる気になれば、10倍のスピードで組織は動く。
個人にはできないことをするために組織はある。組織は道具だ。その道具を使いこなせないでどうすると言いたいと。

組織は複雑な道具なので、組織を動かす工夫や努力を怠ったら、動かなくなるのは当たり前だ。だからいつも組織を動かす工夫と努力を続けよう。

三木谷さんは、どんな組織でも現在の10倍の速度で動かせると思っていると語る。

楽天では2時間の会議を12分にしたという。事前に紙の説明を配っておいて、参加者はそれを読み込んで質疑応答で5分、判断に5分で2分余るという。

45.競争原理を働かせる。
楽天はかなり厳しい競争社会だという。優れた業績には賞を与え、マイナス評価もする。しかしチャレンジして失敗することにはマイナス評価はつかない。

肉体をベストのコンディションに保ち、学習翌・向上心を満たすための環境整備として本社内に学習スペースのある図書館、社員教育のための「学校」、ジムを作った。どんなに忙しくても専門書を調べ、トレーニングできるのだ。

成長の努力を続けた人としなかった人との差は残酷なくらいはっきりしている。

与えられた問題を解くことしか知らない現代の多くの若者には厳しい環境だろが、そういう厳しい環境で自分の成長を実感できることが、人生の喜びだと三木谷さんは鼓舞する。

49.朝会がしっかりしている部署は成功する。
楽天ではそれぞれの部署で毎日朝会をやっている。一日の始まりに、今日の仕事のテーマを具体的に明確にするのだ。これが上手くできている部署は例外なく成功しているという。

人間は怠惰な生き物だ。僕自身がそうだからよくわかるという。隙あらば楽をしようとする。その隙を作らないためにも毎日の始まりに節目を作って、仕事をする意欲をかき立てることが必要なのだ。

一日の仕事の始めに、今日の行動目標をきちんと整理する。そして、その目標を達成するための段取りをする。

そういう毎日の積み重ねが大きな成功につながる。

52.社内での信頼を勝ち取れ
「どうせ僕が話しても、みんな聞いてくれないんです」そういうことを言う人がいる。それは誰のせいでもない、自分のせいなのだ。

周囲の人間が話しを聞かないのは、話を聞かないだけの理由があるはずだ。

仲間に信頼されなければ、いい仕事はできない。

「あいつに任せておけば間違いない。あいつがやって駄目ならもう仕方がない」と思われるような存在になることを目指すべきだと。

53.象徴的な儀式を作れ。
人間は弱くて、忘れやすい。だから、誓いや目標を立てる。しかしその熱い気持ちもそのままではいつか冷めてしまう。

どんなに高い志や、理想を胸に抱いていても、それを繰り返し胸に刻む努力を怠れば、いつかは忘れてしまう。

だから楽天は創業時から続けている月曜日の全社朝会と社員全員による掃除を、儀式として、そして全員の心を一つにするために、いつまでも続けていくのだと。

58.仮説を立て、「仕組み化」する。
仮説を立て、仕組み化する。ビジネスでも何でも成長のすべては、これだけのことで成し遂げられる。

三木谷さんは最近週2回10階分階段を歩いて上がるという。そして万歩計機能付きの携帯電話を使っている。

この仕組み化によって、トレーニングを日常生活の習慣として組み込めば、確実に効果が出る。

きちんとした仕組み化が大切だ。

59.世の中には2つのタイプの人間しかいない。できる方策を探す人と、できない言い訳を考える人。

これは読んで字の如くだ。「成功のコンセプト」でも三木谷さんが繰り返し説いていることである。

英語だと、"Get things done"と、"Best effort basis"となる。

筆者が常々思っていることだが、人生は無為に過ごすには短すぎる。つねにthings doneをめざそう。

自戒の言葉として常に覚えておく必要のある言葉だ。

72.数字からトレンドを読む。
数字に強いことは、経営者の絶対条件だ。数字を正しく読むには、その数字と現実を結びつける能力が必要だ。

数字を読む能力を鍛えるには数字の変化を追いかけるといい。

楽天には日報がある。それぞれのセクションからの日報で、1日の厚さが5センチ以上になるという。数字を見ているだけで、仕事の現場で今何が起きていて、世の中がどいう動いているかまで、ある程度想像することができる。

79.圧倒的なコスト差を創造した企業は必ず勝利する。
コストリダクションは新しいビジネスモデルを作るのに匹敵する創造的な作業だ。

楽天では月15億円、年間180億円のコスト削減を出来る見通しだという。開発コストやコーポレート費用削減のみでなく、文書を縮小してA3一枚にA4を8ページコピーするとかもやっている。

新規参入案件も、実験フェーズでは投入資金をできるだけ少なくする。英語のagile(アジャイル)は俊敏なという意味だが、鈍重な恐竜は亡び、すばしこいねずみのようなほ乳類は生き残った。

体重は軽い方がよい。一つの実験フェーズにかける資金を減らして、実験の回数を多くする。実験が成功すれば、一気にスピードを上げる。

コストリダクションは企業にとって、さなぎから蝶への脱皮だという。圧倒的なコスト差を創造した企業は必ず勝利するのだ。

81.インターネットショップは自動販売機ではない。コミュニケーションこそが、最大のエンターテインメントである。

これも読んで字のごとしだ。楽天市場の最大の特徴は、それがインターネットというツールを使った、対面販売だということだと。

90.過去の成功例を徹底的に分析せよ。
意味もない自己顕示欲や、思い上がりは捨てた方が良い。

結局のところ、最終的に成功するのは謙虚に学べる人だ。それもまた歴史が僕に教えてくれたことだという。

92.Never too late.
ファーストムーバーになれなければ、ベスト・ムーバーを目指せばよい。Never to late. 人生に遅すぎるということはない。

今この瞬間から始めれば、この世に不可能ということはない。僕は心の底からそう思っているという言葉で締めくくっている。


次に紹介する稲盛和夫さんの「働き方」など、他の経営者の書いた本との共通点も多い。稲盛さんは”ベンチャー経営者”で、三木谷さんの大先輩となる。

具体例が多く、大変参考になる本だ。冒頭で記したように、筆者が読んでから買った今年最初の本である。

ハードカバーでは、毎日1ヶ条づつ読むのにはかさばる。座右の書として毎日読むのに適したハンディな文庫版にして欲しいものだ。


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2009年01月09日

楽天の研究 これぞホントの楽天研究(山田善久さんの消息)

2009年1月9日追記:

12月に山田さんの経営するネインを訪問したときに名刺にメッセージを書いて残していったら、山田さんより次のメールを頂いた。


元楽天の山田善久と申します。

ブログで私のことを取り上げて頂いたり、また先日はお店にもお越し頂いたそうで、ありがとうございます。

ブログにも書いておられる通り、昨年の12月14日にフジテレビの「新報道2001」という番組で私がドーナツショップを始めたことが13〜14分ほど取り上げられ、それ以降、お店のお客様もかなり増えています。また、AERAにも同様の記事が掲載されました。

このように周囲からは不思議なことを始めたと見られていますが、自分としてはさほど違和感もなく、結構楽しく仕事をしています。

またお近くにお越しの際にはお店にお立ち寄り頂ければ幸いです。

今後ともよろしくお願い致します。簡単ながら、お礼まで。

山田



ネインは年中無休なので大変だと思うが、大人気のドーナッツショップになっているので、山田さんには体に気をつけて是非頑張って欲しい。

ケーキ一個が400円前後もする時代なので、スペシャルティドーナッツの200−300円のほうがいろいろなバラエティもあって楽しめると思う。筆者も今度は事前に電話で予約して、持ち帰りで家族用にネインのドーナッツを買おうと思う。

首都圏に住んでおられる方は、地下鉄の赤坂駅の4番出口からすぐのネインのドーナッツをためされることを是非おすすめする。



2008年12月25日追記:

12月14日(日)にこのブログへのアクセスが急増した。朝8時に一挙に1時間400人以上がアクセスし、「山田善久」で検索して訪問する人がその日は1、000人以上にも達した。

実はGoogleで「山田善久」で検索すると、このブログがトップに表示されるのだ。

たぶん日曜日朝8時のテレビで紹介されたのだろうと思っていたが、このブログでも紹介している山田さんのドーナッツショップ ネインに一度行って見なければならないと感じていた。

本日赤坂の取引先に行く機会があったので、朝ネインに行って、ドーナッツを食べてみた。山田さんはおられなかったが、毎日朝一と昼には店にいるとのこと。

12月14日(日)08:00のフジテレビの新報道2001で元楽天の山田さんがドーナッツショップを開いたことが報道されたため、お客さんも問い合わせも急増しているとのことだった。

これがお店の外見だ。中にイートインのテーブルといすもある。

neynmaccha and montblanc

左が抹茶あん、右がモンブラン。抹茶あんはドーナッツの中にあずきあんが入っている。

mont blancberry

左がモンブラン。筆者はこれが一番気に入った。上には栗ペーストとくるみなどが載っており、大変おいしい。右がベリーノエルだ。各種ベリーとカシスも加えているという。

ネインのホームページに載っていたマンゴーのドーナッツを食べたかったが、これは期間限定で現在はフィッグに変わっているとのこと。

ドーナッツもおいしいが、コーヒーが大変気に入った。朝食を抜いていったので、ドーナッツを3個食べてコーヒーも2杯飲んでしまった。ドーナッツ3個とコーヒーで1,000円ちょっとだった。毎日食べるわけにはいかないが、たまには良いと思う。

朝から注文が殺到しており、販売量は一人12個までと制限しているそうだ。

地下鉄赤坂駅の4番出口からすぐ。是非ネインのドーナッツをためすことをおすすめする。


2008年9月16日追記:

たにたけしさんから次のコメントを頂いた。

2008/09/15 22:36 投稿者:たにたけし
こんにちは、初めて拝見させていただきました。
山田さんの新しい事業はこちらです。
9月からスタートされたので検索件数が増えたのではないかと思います。

http://www.neyn.com/

美味しいですよ。


前楽天の山田善久さんが赤坂でスペシャルティドーナッツショップNeyn(ネイン)を経営されていたとは知らなかった。

楽天の中村晃一さんのブログにも紹介されている。

ドーナッツショップとは三木谷さんの楽天創業時のエピソードを思い出させる。

三木谷さんと創業メンバーの本城さんはECモールの他、スペシャルティベーカリー(アメリカで有名なAu Bon Pain?)、地ビールチェーンなどのビジネスを検討したという。

東京ではKrispy Kremeドーナッツが買うのに約1時間待ちと異常な人気だが、英国ではスーパーのTESCOでも売っている普通のドーナッツだ。アメリカがオリジンだが、アメリカでも特に人気だったわけではない。

その意味では山田さん達の目の付け所は良いと思う。

ドーナッツはダンキンとミスタードーナッツの2つのチェーンがダントツで、その他は追従できていないので、Krispy Kremeなどが人気が出ているが、ネインの様なさらに高級なスペシェルティドーナッツの可能性もあるかもしれない。

ネインのサイトはユニークな作りのサイトだ。ドーナッツショップとしては、一個250−300円と高いが、ドーナッツも大変凝っている。

Neyn





たしかにおいしそうだ。

山田さんの消息がわかってよかった。ドーナッツもおいしそうなので、是非近々ネインも行ってみようと思う。

たにたけしさん有り難うございました。


2008年9月15日追記:

「山田善久」で検索して当ブログを訪問する人が急増して、毎日百人以上にのぼっている。Googleで「山田善久」で検索すると、当ブログがトップ表示されるからだ。

楽天の三木谷さんのいわば右腕であった山田善久前楽天トラベル社長が、今どこにおられるのか知らないが、急に1日百人以上の訪問者があるということは、何か次の活動を始めているのかもしれない。

筆者も一度まだ楽天が中目黒にいたころに山田さんにお会いしたことがある。たしか三木谷さんの興銀の1年先輩で、ハーバードのMBA仲間だったはずだ。当時は楽天のNo.2というポジションだった。

紳士的で物静かな人という印象を受けたが、あるいは第一印象が間違っているのかもしれない。

現在どこにおられるのかわからないが、まだ若いので、新しい事業を仕込んでいるところなのだろう。

その山田さんも含めて、六本木ヒルズにいた頃の楽天の様子がよくわかるので、「楽天の研究」を再掲する。


2005年8月20日初掲:

楽天の研究―なぜ彼らは勝ち続けるのか楽天の研究―なぜ彼らは勝ち続けるのか
著者:山口 敦雄
販売元:毎日新聞社
発売日:2004-12
おすすめ度:4.0
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今回のあらすじは長いです。要点は次の通りです:

1.楽天は三木谷さんのワンマン会社ではなく、それぞれ専門を持つメンバーの集合として見るべきである
2.楽天は単なるIT企業ではなく、日本でトップクラスのM&Aのプロ集団
3.楽天の営業はドブ板から始まった。今は問い合わせ中心だが、2分以内に電話が来るのが特徴
4.楽天のシステムは自前主義で、案件毎にプロデューサーが企画、システム開発から運営まで担当する
5.M&Aを成功確率を上げる手段として使い、利益1,000億円、会員6,000万人を目指す

“教祖”降臨―楽天・三木谷浩史の真実“教祖”降臨―楽天・三木谷浩史の真実
著者:児玉 博
販売元:日経BP社
発売日:2005-07
おすすめ度:3.5
クチコミを見る


この前の教祖降臨が三木谷さんの経歴中心だったので、もっと楽天のビジネスの研究をするために2004年12月発刊のこの本を読んだ。

この本は毎日新聞の『週刊エコノミスト』の記者が書いているが、次の楽天観に基づき主要メンバーへきっちり取材し、それぞれのメンバーのストーリーを通じて楽天の強さがよくわかる構成となっている。

1.楽天を、三木谷氏のワンマン企業とみるのではなく、それぞれ専門分野を持つ複数の人たちの集団として見ること。

2.現在の楽天を、単なるIT企業というよりM&A(企業買収)のプロ集団と見ること。

いくら三木谷さんが傑出した経営者とはいえ、あれだけの会社を一人で経営できるはずはない。経営システムの強さが楽天の強みである。

この本で取り上げられている主要メンバーは次の通り。

楽天の創業メンバー6名。三木谷さんの他、三木谷夫人(下山晴子氏、創業時は経理・広報担当)、本城慎之介氏(システム開発担当)、増田和悦氏(システム開発担当)、杉原章郎氏(営業担当)、小林正忠氏(営業担当)。

三木谷夫人は興銀時代に三木谷氏と社内結婚、楽天創業前はリーマンブラザース証券に転職していた。

本城氏、杉原氏、小林氏は慶応湘南出身で、楽天には20代で参加。増田氏は技術畑で三木谷氏と同年齢。

M&Aプロ集団として後からのメンバー3名。興銀時代の1年先輩山田善久氏、興銀での同期高山健氏、社外取締役としてM&A弁護士の草野耕一氏。

さらにDLJディレクト証券から國重惇史氏。東大法学部卒ながらリクルートでISIZEを立ち上げ、システム開発プログラマーとして楽天に入社し頭角を現した吉田敬氏。

この本では取り上げられていないが、ポータル・メディアカンパニー担当取締役の森学氏。社外取締役はUSENの宇野社長、CCCの増田社長、エイベックスの依田氏という豪華な顔ぶれである。

楽天の朝会

この本のストーリーは楽天グループの月曜8時の朝会から始まる。2004年11月8日の朝会で三木谷社長は全部署で対前年比100%の成長目標と、各事業部の格付けを行うこと、野球参入を発表。

その後各事業部の責任者が入れ替わり立ち替わり事業報告を行う。これは最大90秒と決められており、時間が過ぎると「チン」とベルが鳴り、時間の無駄が全くない。
楽天らしい朝会だ。

成功のコンセプト

それにもまして楽天らしいのが、オフィスの至る所に貼られている成功のコンセプト5箇条だ。

世界1のインターネット・サービス企業

1.常に改善、常に前進
人間には2つのタイプしかいない。
「GET THINGS DONE」様々な手段をこらして何が何でも物事を達成する人間
「BEST EFFORT BASIS」現状に満足し、ここまでやったからと自分自身に言い訳する人間。
一人一人が物事を達成する強い意志を持つことが重要。

2.Professionalismの徹底
楽天はプロ意識を持ったビジネス集団である。勝つために人の100倍考え、自己管理の元に成長していこうとする姿勢が必要。

3.仮説→実行→検証→仕組化
仕事を進める上では具体的なアクション・プランを立てることが大切。

4.顧客満足の最大化
楽天はあくまで「サービス会社」である。傲慢にならず、常に誇りをもって「顧客満足度を高める」ことを念頭に置く。

5.スピード!!スピード!!スピード!!
重要なのは他社が1年かかることを1ヶ月でやり遂げるスピード。勝負はこの2〜3年で分かれる。

三木谷さんは2000年の毎日新聞のインタビューに答えて、「ビジネスで失敗したことがない」と答えたそうだが、よくわかる。変な話で、結果論のようだが、実は強運はビジネスマンの成功の最大の要因だと思う。

楽天のジャスダック上場はITバブル崩壊直前の2000年4月。サイバーエージェントは3月、ライブドアは同じ4月の上場だ。株価は急上昇して時価総額6000億円となったあと急落し年末までに10分の1となる。

上場して得た500億円という資金を使ってM&Aを展開し、Infoseek、ライコス、旅の窓口やDLJディレクト証券を買収してワンオブゼムから抜き出し、時価総額も1兆円を越えた。

楽天のシステム:本城慎之介氏の証言

創業メンバーの本城慎之介氏は、慶応湘南の大学院の時に三木谷氏と出会い、行動を一緒にする。

小説 日本興業銀行〈第1部〉 (講談社文庫)小説 日本興業銀行〈第1部〉 (講談社文庫)
著者:高杉 良
販売元:講談社
発売日:1990-10
おすすめ度:4.0
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高杉良の『小説 日本興業銀行』を読んで「興銀に入って、日本の産業を元気にしたい」と思っていたところ、三木谷氏に会って「もう興銀とか、銀行、商社が日本をつくる時代は終わった。むしろ個人や中小企業が既成事実をつくることで日本を変えていくのだ」と説得され、コンサルをしていた三木谷氏のクリムゾングループに入社する。

クリムゾンは深紅であり、ハーバードのスクールカラーである。

逆転の発想

しかし4名いた従業員は独立し、三木谷氏と本城氏の2名となってしまう。コンサル業は2名では続けられないので、事業を起こすことを決め、次の3つの事業プランを検討する:

1.地ビールレストランのフランチャイズ展開
2.天然酵母のパン屋の全国展開
3.インターネットモール

当時はIBMがモール事業から撤退したところで、日本では大日本印刷とか、凸版印刷とかがやっていたが、インターネットモールは儲からないと思われていた。

しかし、みんな失敗しているからこそ、参入する余地があり、失敗の原因を分析しさえすれば、勝てると逆転の発想で進出を決意した。

1997年2月にMDM(Magical Digital Market)設立、1997年5月より開業。

失敗の原因は、みんな片手間でやっていることと、簡単にネット上でショップを開設できるシステムがないことだった。楽天はモール事業専業で、システムは自分たちでつくった。

楽天マーチャントサーバー

そのシステムをつくったのが、本城氏だ。

システムを開発しなければならないとなったときに、慶応の大学院生にシステム開発をやらせたが、ダメだった。そこで三木谷氏から「この本を読んでお前がつくれ」と言われ、『初めてのSQL』という本を読んで、1週間だけシステムの家庭教師をつけてもらい、あとは自分だけでシステム開発を始めた。

むちゃくちゃな話だが、結局完成し、ものを売る人が、ホームページ作りから受注発注まで、一人ですべてできるシステムがはじめてできた。専門家でない本城氏がつくったから、普通のユーザーが使いやすいシステムができたのだ。

ここにエキスパートとして加わったのが、理系参考書出版社にいた増田和悦氏だ。

本城氏と増田氏がシステム担当だったが、三木谷氏もふくめ創業メンバーのほとんどはUNIXサーバーが使えて、HTMLを書けた。だからシステムに関して全員で知恵を出し合えた。これが強みだったと。

本城氏は楽天の副社長になったあと、三木谷氏にならって30歳になった時に楽天をやめ、いまは教育関係の事業を始めるかたわら(公募で横浜の港北ニュータウンにある山田中学校の校長になった)、楽天の社外取締役となっている。

なぜ教育かというと、日本をもっと元気にしたいからだと。

本城氏の目から見て楽天の今後の課題は、マネジメント層をもっと育てていくことだ。

万が一なんらかの事故で三木谷氏が執務できなくなったときも、楽天として変わりなく、経営をしていけるようにしなければならない。カリスマ的で、非常に優秀な社長なので、どうしても頼ってしまう面があるが、これからはそれをしてはならないと。

楽天の営業:小林正忠氏、杉原章郎氏

システムと並んで創業時のもう一つの関門の営業はドブ板営業でこなした。そのときに活躍したのが、三木谷氏と、本城氏の慶応の1年先輩の杉原氏と小林氏だ。破格の出店料の月5万円だが、6ヶ月前払いという条件で、キャッシュフローも確保するという優れた作戦だった。

小林正忠氏は慶応大学卒業後、大日本印刷に就職したが、同期の杉原章郎氏が起業したホームページ制作のアールシーエー(有)で三木谷氏を手伝っているうちに、杉原氏とともに営業として引っ張られる。

三木谷氏より「絶対に出資しろ」と言われて、資本金の2,000万円の一部を貯金をはたいて出資した6人のうちの2人だ。

最初は日経流通新聞の新製品の売れ筋欄を見てアポイント取りの電話をしていたが、その後、メインバンクの住友銀行の協力を得て、取引先を紹介してもらうようになって成果が上がるようになった。銀行の協力は絶大であったと。

そのうち問い合わせが増えたので、飛び込み営業はやめ、興味のある人に対応する営業に変え、資料請求のフォローアップをしている。

楽天では今でもツー・ミニッツ・コールをやっている。ウェブ経由で資料請求がくると、2分以内に電話をかけて営業するのだ。現在ではよく請求がくるから10秒以内では電話していると。

すぐに電話が掛かってくるから、お客は驚き、テンションが上がった状態で営業ができるのだと。ドブ板のマインドが生きている。

スピード!!スピード!!スピード!!

小林氏は三木谷氏を『ビッグトーカー』だという。夢や希望を絶妙な大きさで表現できる才能を持った人であると。三木谷氏の目標設定能力こそ、楽天の成功の秘訣であると。

たとえば楽天カードを始めたとき、カード会社の常識では万人単位の会員を集めるには何ヶ月もかかると言われたが、他社が1年でやることを楽天では数ヶ月でやる手法を考えろと社内キャンペーンをはり、わずか1〜2ヶ月で1万人以上を獲得した。

社内でよく使われている言葉に「いすの足をふく」、つまり徹底的にやるということと、「Make mistake early(早めに失敗せよ)」というのがある。机上で議論するくらいなら、まず行動して誰よりも早く失敗し、その結果から解決策を考えろという意味だそうだ。

杉原章郎氏は政治家志望だったが、ホームページ制作会社アールシーエーを起業、三木谷氏と知りあう。本城氏と増田氏がつくったRMS(楽天マーチャントサーバー)を見て驚き、楽天に入社を決意する。

もともと政治家志望だったので、ドブ板は性に合っていると。

現在杉原氏は楽天ブックス担当。楽天ブックスは日販と組んだ本の直販。自前で在庫を持たず、日販の在庫をフルに利用できるので、高価な専門書でもすぐ手にはいるのが特徴である。

日本の書籍販売サイトではAmazonがダントツの月間利用者数11百万人以上。二位グループのESブックスYahoo!Shopping、紀伊国屋、楽天ブックスいずれも2百万人前後で圧倒的な差がついていて、いまのところ差が縮まる見込みはない。

楽天のM&Aプロ集団:山田善久氏、草野耕一氏、高山健氏

次にM&Aプロ集団を見てみよう。楽天は2000年4月のジャスダック上場以来、M&Aを繰り返している。Infoseek, Lycos, 旅の窓口、DLJディレクト証券、あおぞらカード、国内信販、中国の旅行予約サイト シートリップなど、まさに怒濤のM&Aラッシュである。

これを可能にしているのが元々興銀のM&Aバンカーだった三木谷社長と、上場直前に楽天に参加した山田善久氏、高山健氏、社外取締役で弁護士の草野耕一氏である。

楽天のM&Aの考え方は「企業拡大の道具で、成功確率を上げるための手段」で、次の2つの基準で判断していると:
1.買うことにより楽天グループのサービスの質的向上につながるかどうか。
2.楽天市場の顧客データベースと統合して、相乗効果が見込めるかどうか。

買収した先は基本的に在庫を持たないマーケットプレース型が多い。トラベルや金融は情報のやりとりなので、ネットとの親和性はよく、米国のネット企業の成功例でも金融・トラベルは多い。

株式交換でもキャッシュでも経済原則から言えば同じだが、楽天の株は将来的に上がっていくので、株ではなくキャッシュの方が安いという考えであると。

M&A戦略の右腕山田善久常務は興銀/ハーバードの1年先輩で、興銀をやめゴールドマンサックスに転職、IPOやM&Aを担当した時に、楽天のビジネスの将来性をいかに投資家に伝えるかというプレゼンを三木谷社長に行い、楽天入りを勧められる。

投資銀行の立場からも楽天は将来必ず成功すると思い転職を決め、ディズニーからのInfoseek買収を手始めにライコス買収などを手がける。

上場準備していた旅の窓口を323億円で買収、さらに中国のシートリップネット、格安航空券のワールドトラベルにそれぞれ21%出資して着々と体制を整えている。現在山田氏は楽天トラベルの社長で、3〜4年後は楽天トラベルをJTBにとならぶ総合旅行会社にしたいと語る。

今三木谷氏がもっとも注目しているのは中国市場だそうで、山田善久氏によると「米国のナンバーワンを買うことは難しいが、中国のナンバーワンを120億円で買えるのは決して高い買い物ではない。」

もう一人の興銀出身者の高山健氏は、一橋大学、興銀の同期。テキサス大学でMBAを取得、三木谷氏と同じ企業投資情報部に配属される。三木谷氏より「株式公開を考えているが、財務を見てくれないか」と誘われ、一時期銀行と楽天の2足のわらじをはき、楽天を手伝う。

社外取締役の草野耕一氏は西村ときわ法律事務所パートナーである。M&A専門の弁護士であり、三菱自動車=クライスラー、ロシュ=中外製薬などの大型案件を手がける。

ハーバード・ロースクール留学から戻って、T・ブーン・ピケンズの小糸製作所買収をうち負かしたという輝かしい経歴の持ち主である。

楽天証券:國重惇史氏

國重惇史氏は楽天が買収したDLJディレクト証券の社長で、入札を経て楽天が買収後も楽天証券社長として残る。

株に興味のない人にいくら株を勧めてもダメという調査結果をもとに、株の好きな人に徹底的にアプローチした方が良いとして、個人投資家向けのリアルタイム株価自動更新機能のあるマーケットスピードのサービスを開始、信用取引も始めてアクティブトレーダーを取り込むことに成功した。

楽天証券の取締役会には三井住友銀行の西川頭取も社外取締役として参加している。

楽天証券はアニメファンド、REITなどのファンドマネージャー、IPOの主幹業務、M&A案件の紹介などリテールとホールセール両方ができるネット証券を目指し、将来楽天が経常利益1,000億円を達成する際には、金融事業だけで300億円を達成することを目標としている。

楽天プロデューサー集団のトップ:吉田敬氏

新設の楽天球団の初代社長を務めたのが、吉田敬常務だ。吉田氏はリクルートでイサイズの立ち上げに加わるが、リクルートのスピード感のなさに落ち込んでいた時期に、三木谷氏より2度目の誘いが来て、プログラマーとして楽天入社。

開発のエンジニアでありながら広告などのシステムをつくって、営業の仕方とか営業企画の建て方までシステム化して頭角を現し、営業本部長になった。

たとえばバナー広告の営業で大変なのは、売る段階よりも、売った後の入稿とか、請求とかである。当初は営業マンの負担であったものを、顧客にIDとパスワードを与え、セルフサービスで入稿、広告枠を買ったり、レポートを見たりできるようにした。

それまで500万円くらいの売上だったものが一挙に3,000万円となった。その結果セールスに関係ない人件費を削減し、コスト削減を行い、さらにアグレッシブな広告単価設定をしてそれまで10万円の広告枠を2万円にして裾野を広げた。

楽天にはシステム開発から、サービスの企画、運営までを担うプロデューサーという役職があり、吉田氏はプロデューサー集団のトップである。

楽天のウェブ作成、メルマガ配信システム、広告配信システム、楽天フリマ、楽天ブックス、楽天会員システム、楽天ゴーラ、楽天スーパーポイント、楽天アフィリエイトなど楽天トラベル、楽天証券以外のサービスはすべてプロデューサーにより作成・管理されている。

システムは基本的には全部自社開発。顧客に一番近いところに最終の開発者が居る方がコミュニケーションロスがなくなり素早く開発できる。作り出すより、作ったものをどう改善していくかに重点を置く。それが楽天のこだわりである。

吉田氏はヒューマンリソースを動かすのが得意である。

楽天では三木谷氏の発案で、毎月一回誕生会をやっている。コミュニケーションをどう取るかは非常に重要で、これが吉田氏の仕事である。単にお金だけ与えれば済むという問題では絶対にない。

目標はYahoo!を越えることである。

三木谷社長

最後に三木谷社長のインタービューである。時節柄野球の話題が多いが、「インターネットはすべてのビジネスにつながるので、展開しようと思えばいくらでもできる。」と語る。

「ポイントはむしろなにをやらないかを決めることだ。」アマゾンのような在庫リスクを抱えるビジネスはやらず、マーケットプレイスモデルだと。

世界でネットモールで成功しているのは楽天だけであり、ネットショッピング市場は4〜5年で今の10倍になるだろう。1回ものを買った人は習慣化し、年に5〜10回は買い物をする。

筆者の場合でも楽天市場では購入したことがなかったが、一旦買ってみるとたしかに習慣化した。

現在2,800万人いる楽天グループ会員を同じIDですべてのサービスを受けられる様にすることが目標で、サービス利用者にポイントを付与するしくみを拡大し、最終的には楽天グループ会員を日本の人口の半分の6,000万人まで伸ばしたいと語っている。

三木谷社長のリーダーシップもすごいが、勝つしくみつくりが絶妙。是非close watchして見習いたい強い会社である。


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Posted by yaori at 23:53Comments(2)TrackBack(1)

2007年12月10日

成功のコンセプト 楽天三木谷さんの最初の本

+++今回のあらすじは長いです+++

成功のコンセプト


楽天三木谷浩史さんが出した最初の本。

いままで楽天については、このブログで「楽天の研究」、「教祖降臨」など数冊のあらすじを紹介してきた。特に「楽天の研究」は、この本に書いていない楽天を支える様々な群像が紹介されており、参考になるので、是非ご覧戴きたい。

三木谷さん自身の本は初めてでもあり、非常に期待していた。

この本を読んで、楽天のオフィスにポスターとして貼られている「成功のコンセプト」が、よく理解できた。

たぶん三木谷さんが、いろいろなところで講演やスピーチしているものなのだろう。内容がよく練れていてわかりやすい。

三木谷さんは、神戸出身で、一橋大学を卒業後、当時の興銀(現在のみずほコーポレート銀行)に入社する。

最初は外国為替部というルーティンワークの典型のような職場に配属されたが、仕事を一生懸命にこなし、効率を上げる努力をした結果、MBA留学生に選ばれ、ハーバードで起業家を重視する風土に触れる。

帰国後、M&Aコンサルなどを興銀でやっていたが、阪神淡路大震災で叔父夫婦がなくなったことを契機に興銀をやめ、人生を起業に賭ける決心をする。

友人とコンサルをやる傍ら、起業プランを練り、1.インターネットのショッピングモール、2.地ビールレストランチェーン、3.天然酵母ベーカリーレストランチェーンの3業種に絞り、結局インターネットショッピングモールで1997年にサービス開始する。

当時はNTT,NEC、富士通、三井物産などの大企業のショッピングモールが、既に事業展開していたが、他社が数百万円の費用が掛かるのに対して、楽天は5万円/月という格安料金で参入する。

インターネットではファースト・ムーバー・アドバンテージと言われ、最初に手がけた人が圧倒的に有利と言われていたが、楽天はショッピングモール事業ではレイトカマーだった。

最近でこそベスト・ムーバー・アドバンテージとも言われるが、当時の常識に反するレイトカマーの成功例であり、これが楽天の成功を「改善モデル」と三木谷さんが呼ぶ理由だ。


成功のコンセプト

筆者は楽天が中目黒のオフィスに居たときから訪問しているが、当時からポスターとして楽天のオフィスに掲げられていた「成功のコンセプト」は次の5点だ。

1.常に改善、常に前進
2.Professionalismの徹底
3.仮説→実行→検証→仕組化
4.顧客満足の最大化
5.スピード!!スピード!!スピード!!


楽天のサービス開始は1997年5月1日。最初は三木谷さんの知人中心の13店舗。1年後は100店舗。2年目の1998年末には320店、1999年末には1,800店に拡大し、その後は二次曲線的に増え、現在は20,000店を超えた。

その成長を支えた戦略がこの成功のコンセプトだ。

まずは1.の改善だ。不安定な未来に対する戦略は2つあると三木谷さんは語る。

一つはダーウィニアンアプローチといわれるグーグルなどが取っている戦略だ。天才的な博士級の技術者を集め、数多く世に出し、種をばらまき、成長したものだけ刈り取るという戦略だ。

もう一つのアプローチはマイクロソフトと同じ改善アプローチだ。マイクロソフトが最初に出したインターネット・エクスプローラーは、ネットスケープには全く太刀打ちできない不出来のものだった。

それをマイクロソフトは長い時間を掛けて、徐々に改善し、最後はネットスケープを葬った。

三木谷さんは楽天のビジネスモデルをマイクロソフトと同じ改善モデルと呼ぶ。改善は絶対的に成長する方法なのだと。

1日1%の改善でも、一年365日続けると1.01の365乗は37倍となる。現在に満足せず、常に改善をし続けたことが楽天の成功の秘訣だ。


人間の力には実力、能力と潜在能力の3つがある

人間の力には実力、能力と潜在能力の3つがあると三木谷さんは語る。

スポーツは弱肉強食の世界だから、たぶんトップアスリートになれば潜在能力の8割くらいは引き出しているのだろうが、ビジネスの世界では潜在能力の10%程度しか使っていない人がほとんだろう。

そもそも潜在能力を引き出そうなどと、考えたこともない人の方が多いのではないだろうかと。

潜在能力でどれだけの差があっても、勝てるチャンスがあるのだ。

潜在能力の10%しか使っていない人が、もう10%能力を引き出すのはそれほど難しいことではないだろうが、誰もそれをしようとしていない。

もったいないと思うと。

楽天は社員の能力をもう10%引き出す企業のモデルとなり、その文化を他の企業にも伝播させたいと。

世の中には天才ばかりではないが、改善は誰にでもできるし、改善は凡人を天才にする方法なのだと三木谷さんは語る。

筆者の友人で大学時代の三木谷さんを知る人がいるが、大学時代の三木谷さんは、決して傑出していた訳ではないという。「あの三木谷が…」という感じだと。

この友人の言葉も、三木谷さんの言葉を裏付ける。三木谷さんは決して優等生ではない。一浪して一橋大学に入学するが、大学時代はテニスに明け暮れた様だ。

成功するためには、潜在能力の差など問題ではないのだ。いかに能力の多くを引き出して、利用できるか。それがその人の実力となるのだ。

筆者もこの「実力、能力、潜在能力説」にはガーンとやられた。まさに三木谷さんの言う通りだと思う。いくら能力が高くても、引き出さなければ実力にならない。三木谷さんの様にガッツがあり、なんでも積極的に挑戦し、能力開発した人が成功するのだ。


成功している時こそ自分を否定する勇気を持つ

成功している時こそ、自分を否定する勇気を持つ。思いこみが成長を阻害している可能性はないだろうかと。

仕事のやり方でも、本当にその方法論が効率的なのか、それが必要なのか、常に考え続けることが必要だ。

たとえば会議だ。普通の会議は説明に59分、判断に1分だが、楽天の会議は資料は前日の5時までにすべて提出することにしたので、1時間の会議が10分で終わる。

会議の目的は説明することでなく、決断することなのだと。

身の回りには不合理・不条理がいくらでもある。三木谷さんはそういう不条理が大嫌いだったという。

三木谷さんはテニスで身を立てようと思ったこともあるくらい、テニスに熱中していた。高校では一年でレギュラーになったが、新入生なので延々と球拾いをやらされたから、あまりにも馬鹿らしい練習にあきれて、テニス部をやめ、テニスクラブに通ったという。

大学三年でテニス部主将になった時に最初にやったのは、新入生の球拾いの義務を廃止することだ。何の意味もない球拾いに費やす時間は不条理だと。

三木谷さんの反骨精神というか合理性を追求する姿勢が、楽天のベンチャー精神の源だ。


改善には目標がなくてはならない

日々改善することは極めて重要だが、改善にははっきりとした目標がなければならない。そして目標を立てた以上は、絶対にその目標を達成しなければならない。

良い例がNASAだと三木谷さんは語る。

ケネディが月に人間を送り込むと宣言したのが1961年、それからわずか8年で人類を月面に着陸させた。

ここには改善についての大事な教訓が含まれている。

飛行機を改善した結果として、月まで飛べる宇宙船を完成させた訳ではなく、月に人類を送り込むという目標があったから、人類が月まで到達できたのだ。

スポーツでは勝ち負けははっきりするが、ビジネスでは曖昧だ。

たとえば30%売上を増やすという目標のところ、27%しかのばせなかった時、スポーツの世界では敗北だが、ビジネスでは3%足りなくても、さほど問題にはならない。

そんな27%増えたからOKという考えを、三木谷さんは"Best effort basis"と呼び、否定する。

それでは、本当の意味の勝者にはなれず、本当の意味の仕事を楽しむことはできないと。

これとははっきり違うモノの考え方をする人がいる。その姿勢を"Get things done"と三木谷さんは表現する。

あらゆる手段を使って、何が何でも目標を達成する人間の姿勢だ。

不可能と思える目標を可能にしてこそ仕事の質は飛躍的に高まり、はじめてブレークスルーが生まれる。

何が何でも目標を達成するという姿勢がなかったために、10階に辿りつきたかったのに、結局のところ2階にすら達することができなかったというのは、ビジネスではよくある話なのだと。

筆者は、一時インターネット企業に出向していたので、三木谷さんの"Best effort basis"と、"Get things done"の違いを身をもって経験した。

自分で反省するに、所詮自分は"Best effort basis"メンタリティだったと思う。

大企業メンタリティなら、プロセスも評価対象になるが、成功、失敗のはっきりしているベンチャービジネスに、試験の様に「評価点」などない。過程がいくら正しくても、結果が出せなければ失敗だ。

三木谷さんは、ケネディの偉大さは、月という目標を設定したからだという。月はたしかに遠かったが、絶対に攻略不能という目標ではなかった。

三木谷さん達にとっての「月」は、世界一のインターネット企業だ。三木谷さんはいつも「月」のことを考えていると。


第2のコンセプト Professionalismの徹底

ビジネスで成功するかどうかの鍵は、仕事を人生最大の遊びにできるかどうかだと。

三木谷さんのいうProfessionalとは、仕事を人生最大の遊びと考え、24時間、365日どこにいても仕事のことを考えている人のことだ。

仕事中毒といってもいいかもしれない、人生にこれ以上の楽しみはないと思っていると。

例として、楽天の社員No. 2の慶応大学の大学院生だった本城慎之介氏が紹介されている。本城氏は、楽天退社後、横浜市の中学校長になったが、今年退任してまたビジネスに戻るという。

彼は1996年当時から、自分のホームページに就職活動の日記を書いていたほどのインターネット通だった。

楽天のショッピングモールのエンジンは当初外注していたが、うまくできなかったので、本城氏に「はじめてのSQL」という本を渡し、プログラミングの家庭教師を10日間つけて、最初の楽天のRMS(楽天マーチャントサーバー)をつくり1997年4月に楽天市場をオープンさせた。

本城さんは、ぼぼ一人で楽天市場のエンジンを完成させたのだ。これもProfessionalの典型である。くろうとがプロ、しろうとがアマという区別ではない。面白い仕事はない。仕事を面白くする人間がいるだけだ、そしてそれがProfessionalだという。

いい加減な仕事をして、サボって給料貰えるなら楽だという意識は間違っていると。人生で限りある自分の時間を、ドブに捨てているからだと。


第3のコンセプト 仮説⇒実行⇒検証⇒仕組化

ビジネスでは試験と違って、問題に対する正解は用意されていない。だから、仮説を立てて、実行し、結果を検証して、仕組化して、全体に適用するPDCA(Plan-Do-Check-Action)が問題解決策として有効なのだ。

仮説の中にも良い仮説と、悪い仮説があると三木谷さんは語る。

良い仮説を立てるためには、三木谷さんは、「そもそも論」を考えるべきであると。

おもしろい例を三木谷さんは挙げている。

長嶋茂雄さんは、空振り三振した時にヘルメットが派手に飛ぶ様に練習していたという。

長嶋さんはそもそも何のために野球をやるのかを考え、プロである以上、究極は観客を喜ばすためだから、そんなヘルメットを飛ばす練習をしたのだろう。

仕事も同じように、そもそもこの仕事は、何のためにあるのかを考えるべきなのだと。

このそもそも論から、楽天ではユーザーからの問い合わせなどを扱うカスタマーサービスは自社でやらず、すべてお店に直接つないだ。

お店とユーザーが直接コミュニケーションできる様にしたのだ。

あまり指摘されていないが、このお店とのダイレクトコミュニケーションが楽天市場のいちばん革新的なポイントで、急激な成長の理由の一つだったと三木谷さんは語る。

無機質のスクリーンに向かい合うディスコミュニケーションの典型のインターネットの世界だからこそ、コミュニケーションを取り戻したいという人々の潜在的欲求に答えたことが、楽天の急成長の秘密なのだと。

このPDCAサイクルをきちんと回せる会社が強いことは、「会社は頭から腐る」で冨山和彦さんが述べている通りだ。なかなかできないが、本当に重要な経営手法である。


第4のコンセプト 顧客満足の最大化

すべてはお客さまのために。

このコンセプトをビジネスの中で100%実現できたら、そのビジネスは100%成功するだろうと。

インターネットを使ってエンパワーメントを行う

楽天はインターネットの力を使って、情報格差社会を破壊する。

地方と都会の情報差を破壊する。地方の中小商店を元気づけ、エンパワーメントするのだ。地方のお店が、日本全国の消費者とダイレクトコミュニケーションを取る。そして売り手も買い手も満足を得るのだ。

広島県の山間の村に三代続いたコメ屋がある。ご主人はコメを知り尽くした人だが、コメ屋の商売に夢を抱いていなかった。

息子さんも後を継ぐ気はなく、都会で就職していた。ところが楽天市場で出店し、パソコンと格闘してネット販売を続けた結果、八年目の今年は楽天での売上が月1,000万円となり、拡大したビジネスを手伝うために息子さんが帰郷したという。

息子が戻ってきてくれたのが一番嬉しいとご主人が言ってくれたのが、三木谷さんには何より嬉しかったと。

このようなエンパワーメントの例が日本中にたくさん広がっており、村の人しか来なかった店が、いきなり銀座四丁目に出店した様な例が起きている。

古来市場には空間的制約があり、最も売れる場所は限られていた。それがインターネットで空間的制約がなくなり、かつ店の大きさという物理的な制約も関係なくなったのだ。

エンパワーメントは、インターネット企業のブレない中心軸になるのだ。

中小の企業や個人商店は「地の塩」だと。この軸をはずさない限り楽天というコマはいつまでも安定して回り続けることができるのだと。


ビジネスには戦争型と戦闘型の2通りのスタイルがある

ビジネスには戦争型と戦闘型の2通りのスタイルがあると、三木谷さんは語る。

戦争型は世界地図を広げ、大きな戦略を考えながら展開しているスタイルだ。マイクロソフトのOSや、グーグルの検索エンジン、アマゾンもこのタイプだ。

一方戦闘型ビジネスとは、一つ一つの局面での戦闘の勝利を積み上げていくやり方だ。

楽天はまずは戦闘的ビジネスで業績を伸ばし、限界点を超えた時に戦争型ビジネスに切り替えるという。

楽天は世界一のインターネット企業を目指しているので、戦闘もやりながら、2005年にはアメリカのアフィリエイト大手のリンクシェア社を417百万ドルで買収するなど、思い切った戦争型ビジネスもやっていると。

三木谷さんは何もふれていないが、TBSの買収劇も楽天にとっての大きな戦争だと思う。もはやTBS株は簿価割れとなっており、含み損は楽天の1年分の純利益が吹っ飛ぶくらいの規模になっているはずだが、こちらの戦争では出口が見えない様だ。


テレビとインターネット

三木谷さんが語るテレビとインターネットとのシナジーは、次のようなものだ。

日本の広告市場は6兆円といわれている。その40%がテレビで、インターネットは急速に伸びて6%にまでなってきており、さらに伸びることが予想されている。

地上波アナログ放送が終了すると、いよいよテレビは録画して見ることが主流となる。そうなると、番組と一緒にCMを流しても効果が上がらないことになる。

CMとコンテンツは別々に流すことになり、行動ターゲティング広告というユーザーの嗜好にあわせた広告を流すことが主流になってくる。

インターネット広告と、テレビ広告は融合してくるのだ。そこで民間の放送局とインターネット企業は、同じ土俵でビジネスをすることになり、協力関係も生まれてくるのだと。


楽天では掃除人は雇わない

楽天では掃除業者を雇っていない。掃除は自分たちでやるのだ。テニスの球拾いと同じように、自分の仕事場くらい自分で掃除をすれば良いのだと。

アメリカではゴミはゴミ掃除のおばさんが拾うのは当たり前かもしれないが、日本では、おばさんがゴミを拾うのを、黙ってみていられない。それが日本人なのだと。

アメリカでは住んでいる町が社会(コミュニティ)だが、日本では会社が社会(コミュニティ)だ。そういう日本人独特の感覚を大事にして、会社という組織を育てれば良い。

そこから生まれる会社の個性が、日本の企業が世界で戦うための武器となるのだと。

楽天は2007年8月に六本木から北品川の楽天タワーに本社を移した。

おしゃれな無料で利用できる社員食堂があり、寿しバーもある。アスレチックジムもある。どうやらGoogleがオフィスをキャンパスと呼び、同じ様なフリンジベネフィットを与えていることを意識しているようだ。

楽天という会社は社員にとっての家であり、全力をかけて戦うフィールドでもあると。

従業員が3,000人を超えた今もやっているのかどうかわからないが、年始に全員で愛宕神社に詣でることなど、いくつか伝説となっている行事が、楽天にはある。体育会系会社と言われるゆえんだ。


第5のコンセプト スピード!!スピード!!スピード!!

ビジネスの現場で、ある意味で一番重要なこのコンセプトを最後に持ってきたのは、この本を読んだら、明日からと言わず、今すぐにでも実行して欲しいからだと。

スピードはビジネスの勝敗をわける重要なファクターになる。仕事のスピードを速くすることは、仕事そのものの質を高めることにもつながる。

仕事を速くやればやるほど成功の確率は高まるのだが、実はそれくらい切実な問題と考えている人は少ないと。

当事者意識を持って仕事をすればスピードは自然と上がる。モノゴトを3次元でなく、時間も含めた4次元で俯瞰できるのだ。

仕事のスピードを挙げるには、目標を設定することだ。以前紹介したレバレッジ・リーディングで著者の本田さんも、ビジネス書を1〜2時間で読むために、目的を持って読むことをすすめていたのと同じ考えだ。

目標を達成するのに掛ける時間は、常識から計算してはいけないと三木谷さんは忠告する。

常識を忘れて、最終目標をいつまでに達成するかを決めてしまう。それから逆算して、途中のマイルストーンを達成する時間を割り出すのだ。

ビジネスにおける常識的なタイムスケジュールは、三木谷さんが言うところの本当のプロフェッショナルでない普通のサラリーマンのタイムスケジュールだ。

普通のサラリーマンのやっている仕事の8割が無駄、と言ったら怒られるだろうかと。

社会にはあまりにも無駄な仕事が多い。

3ヶ月の目標なら、無駄な部分を省くと1週間くらいでできてしまうことが多い。

仕事を成功させようとすると、上手くやろうと考えてしまうが、それと同じくらい速くやることが大切だ。

秀吉もナポレオンも軍隊の進軍の早さが身上だった。

スピード感を持って仕事をすることは、今という一瞬をどれだけ大切にして仕事をするかということでもあると。

先に紹介した星野仙一さんが「星野流」のなかで、ジャック・ニクラウスの言葉として同様の言葉を紹介している。「わたしはいつも『今日しかない』わたしの人生には、今日しかないと思っていつもプレーしている」と。


楽天グループの「月」

三木谷さんの目標は楽天を世界一のインターネット企業に育てることだ。20年後にはインターネット企業が、世界最大の企業になっているはずなので、世界一の企業をつくるのだと。

現在の楽天のインターネットにおけるポジションは世界6位。楽天は日本だけなので、1億2千8百万人相手だが、世界には65億から70億の人がいる。まだまだ伸びる可能性は大きい。

三木谷さんは、誰とは名指ししないが、現在の楽天を一人で切り盛りできる人材を、5人見つけたという。しかしまだ不足なので世界一になるには、そういう人間が200人から300人必要だと。

人材は企業にとって最大の財産で、お金で買えるものではない。上記のGoogleの様な新しいオフィスといい、楽天が人材育成のために、力を注いでいる理由だ。

楽天で今苦楽をともにしている社員の中から、どれだけの人材を育てられるか。楽天が世界で成功できるか否かはそこに掛かってくる。

20年あれば楽天は世界一の企業へと成長できると信じている。そのために全力で突っ走らなければならない。

インターネットはバーチャルな空間に存在するが、インターネットが変える世界はリアルそのものだ。今後も絶対に変わらない「人と人のつながり」をベースとしたインターネット企業を創り上げたいと。

リアルな世界のあるべき姿をしっかりと心に描き、自分の信じる人類の未来に貢献するためにビジネスに全身全霊で取り組む。

それが三木谷さんだけではなく、楽天で一緒に仕事をしている仲間全員の信念なのだと。



この本のあらすじは以上だ。今回は特に感じた事があるので、次に筆者のコメントを記すので、ご興味あれば続けて読んで頂きたい。


atamanisutto主人コメント

この本を読んで、なんとなく不安を抱いた。

楽天には非常に優れたスタッフがそろっており、三木谷さんは次代の楽天を担う五人と言っているが、名前を挙げていないし、三木谷さん以外に楽天を動かしている顔が見えない。

また楽天のショッピングモール事業についてしか書いていない。インターネットを通じての金融事業が楽天の目指すビジネスのはずだが、トラベル、クレジット、証券、球団など他の事業には一切触れていない。

この本は楽天市場の営業売り込みツールとしても使われる本なので、三木谷さんのカリスマ性を出すために、意図的に三木谷さんだけを登場人物にしたのかもしれない。

そうはいっても「俺についてこい」式の体育会系のノリというか、ワンマン体制の脆弱性を感じてしまうのは、筆者だけだろうか。

どの本の冒頭に書かれていたか記憶がはっきりしないが(あるいは日経ビジネスかもしれない)、三木谷さんのお父さん、神戸大学名誉教授の三木谷良一さんが、シドニー・フィンケルシュタイン教授の「名経営者が、なぜ失敗するのか?」を三木谷さんに贈ったという話を思い出した。

名経営者が、なぜ失敗するのか?


この「名経営者が、なぜ失敗するのか?」の著者のフィンケルシュタイン教授はダートマス大学大学院タックスクールの教授だ。

筆者の知人のMonotaROの瀬戸社長も、ダートマスでの留学時代に授業を受けたことがあり、まじめでコツコツと研究成果を積み重ねていくタイプの教授だそうだ。

筆者も非常に感銘を受け、英語の原書まで買ってしまった。

Why Smart Executives Fail: What you can Learn From Their Mistakes


三木谷さんのお父さんも、三木谷さんの性格をよく知っているから、戒めの意味を込めて、この本を三木谷さんに贈ったのではないかと思う。

三木谷さん以外は、社員ナンバーツーで退社して今年3月まで横浜市の中学校長をしていた本城慎之介さんが少し出てくる他は、他の人は一切この本には登場しない。

三木谷さんの奥さんの三木谷晴子さんや前楽天トラベル社長山田善久氏、草野耕一氏、高山健氏、副社長國重惇史氏、小林正忠氏、杉原章郎氏吉田敬氏楽天球団社長、島田亨氏など、筆者でもすぐ頭に浮かぶ重要人物が一切登場しない。

たぶん考えがあってのことだろうが、さらに言うと普通なら出版社の人や他のスタッフを、謝辞とかあとがきにも、登場させるところを、三木谷さんは一切登場させない。

不条理を排す三木谷さんだから、儀礼的な謝辞を排すということなのだろうか。

あるいは間違っているのかもしれないが、運動部のキャプテンが突っ走ってしまい、マネージャーも他のみんなも、ついてきて居ないような印象を受ける。

三木谷さんは良い意味でも悪い意味でも「ワガママ」な社長らしいが、もし唯我独尊の傾向があるなら、おこがましいようではあるが、三木谷さんのお父さんのアドバイスに従って、この本を参考にして、引き続き強い指導力を維持して、本当に世界一を目指して欲しいものだ。



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2006年03月02日

楽天の三木谷社長夫人の三木谷晴子さんとは?

2006年3月2日追記:

楽天『三木谷社長夫人』あるいは『三木谷晴子さん』で検索して、このブログを訪問される方がまたも急増している。

今回の1,000億円もの楽天の公募増資に際して、三木谷社長と三木谷晴子さんの両方が10万株ずつ市場で売却するという発表があったためだと思う。

現在の楽天株の相場が9万円前後で、創業者として取得価格はほとんどゼロなので、それぞれ90億円の株式売却利益が出ることになる。

莫大な利益が上がるので、たぶんご夫妻でビルゲイツ夫妻の様に、慈善事業とかに社会貢献をされるのではないかと思うが、今後どういったニュースが出てくるのか楽しみだ。

さすが三木谷さんと言わせるような発表を期待したい。

楽天グループの株主構成等は次の記事が詳しいので、再掲します。




2005年12月1日追記:

依然として楽天三木谷社長夫人の三木谷晴子さんで検索してこのブログを訪問される方が多い。

評論家の山崎宏之さんが三木谷夫人のことを書いておられるので、追加でご紹介しておく。

筆者は山崎さんのブログの内容については全く知らないし、三木谷夫妻の私生活には全く興味がない。真偽のほどは読者にてご判断願いたい。

私生活がどうであれ、楽天=三木谷夫妻が日本でも希な盤石の経営体制を持っていることに対する筆者の驚きと尊敬は変わらない。

ちなみにこの盤石の経営=所有体制は前例がある。西武グループの堤康次郎が実は確立していたのだ。




依然としてこのブログへのアクセスが急増している。

検索キーワードで見ると三木谷夫人、三木谷晴子さん、(旧姓)下山晴子さんというキーワードで検索して、このブログを見る方が多い。

実はYahoo!で『三木谷夫人』や『三木谷晴子』で検索するとこのブログがトップで表示されるのだ。

Yahoo!の検索エンジンの威力を思いしったところである。

楽天のTBSとの経営統合提案の関係で、三木谷浩史社長が「無一文になってもやり遂げる」と、三木谷夫人に言ったというマスコミ報道がなされているので、三木谷晴子さんとはどういう人かと興味を持った人が多い様だ。

このブログでは今回の楽天、TBSの関係では次のタイトルでアップしてある。

東洋経済の『IT・ネット業界地図』 楽天とTBSどっちが大きい?全体像を知るには最適のハンドブック

楽天の研究 これぞホントの楽天研究

これらを見て頂くと同時に、訪問者の方の参考の為に2004年度の楽天のホームーページで公開されている事業報告書の楽天の株主構成を紹介する。

三木谷浩史          19.34%
クリムゾングループ     19.11%(三木谷社長の投資会社)
三木谷晴子          13.20%
マスダアンドパートナーズ  4.53%(CCCの増田社長の投資会社?)
信託2口             6.25%
本城慎之介           2.11%
増田和悦             1.91%
ゴールドマン・サックス    1.47%
杉原章郎             0.97%

三木谷夫妻以外で個人名が出ている人はすべて楽天の創業メンバーだ。

クリムゾングループを入れると三木谷社長自身で38.45%、これに三木谷晴子夫人の持ち株を加えると51.65%となり三木谷夫妻で過半数を抑えている。

つまり三木谷社長は自分だけでも拒否権があり、夫人と意見が異ならない限り楽天の経営を思う存分できる盤石の資本構成なのだ。

楽天の時価総額は約1兆円なので、三木谷夫妻の資産は楽天株だけでも5,000億円、三木谷社長は他のIT企業の多くにも投資しているので、さらに数千億の資産はあるだろう。

実際には大量に楽天株を売ると、株価は急落するだろうが、それでも「たとえ一文無しになっても」というのは並々ならぬ決意表明なのだ。

赤坂の土地とかの不動産資産価値は別にして、本業で民放4位に転落のおそれがあるTBSが最適なのか?という気もしないでもない。起死回生のTBSターンアラウンド策はどういうものがあるのだろうか?

その意味で『踊る大捜査線』などのコンテンツもあり、民放トップのフジテレビに目を付けたホリエモンは、目の付け所が良いが、経営統合の実現可能な相手ということではTBSしかないということかもしれない。

いずれにせよ三木谷氏が本当に自分の財産を売ってでも、TBSとの経営統合を強硬に推し進めるのか、それともお茶を濁したような和解的な解決となるのか、目が離せないところである。

エンターテインメントの王者ながら、業績としては長期伸び悩みの民放業界の再生がいかなる手法で可能なのか?注目される。


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2006年01月03日

97敗、黒字。 楽天イーグルスの1年 野球本にあらず ビジネス書です

97敗、黒字。―楽天イーグルスの一年


楽天イーグルスの2005年の球団経営レポート。

著者の神田憲行氏はノンフィクションライターで、野球関係の著作はない様だが、高校野球の取材を10年以上続けているとのこと。

この本は楽天イーグルスの2005年の戦績を載せているが、野球の本ではない。


登場する楽天イーグルスの選手

この本で紹介されている選手は次の通りである:

平石洋介外野手
藤崎紘範投手
金田政彦投手
根市寛貴投手
坂克彦内野手
岩隈久志投手
一場靖弘投手

このうち、どのくらい名前をご存じだろうか?Who?と言いたいところだろう。

実は根市投手と坂野手は1軍登録はなかった選手だ。

これを見てもわかるとおり、楽天イーグルスのプレイヤーの中から、スターを選んで紹介しているわけではなく、球団ビジネスのレポートとのサイドストーリーとして選手を紹介している。

それにしてもこの本の巻末の全選手の成績を見てうなってしまう。

なんと投手では岩隈のみが規定投球回数(136回)を越えており、野手では磯部、山崎、吉岡の3人だけが規定打席(421打席)を越えているのだ。

いくら寄せ集めのベテランと、近鉄の2軍で結成したチームとはいえ、こんなとっかえひっかえで使われていては、やっているプレイヤーもやる気にならないだろう。どんな戦略を持って球団誕生1年めを戦おうとしていたのか、さっぱりわからない。

ちなみに日本プロ野球機構のホームページに、2005年のプロ野球選手の記録が載っているので興味のある人はチェックして頂きたい。

他球団はもっと打線のオーダーが固定されて、当然レギュラークラスは規定数を超えている。

楽天球団のキーパーソン

楽天球団のキーパーソンで紹介されているのは次の通りだ。彼らがこの本の主役である。

島田亨(とおる)球団社長(40歳)

人材派遣業のインテリジェンスをUSENの宇野さんとともに創業した後、投資家としてセミリタイアの生活をしていたところ、起業家仲間としてのつきあいだった三木谷社長より請われて楽天球団の社長となった。

就任のいきさつや、楽天球団経営については日経BPのレポートに紹介されているので、詳しくはそちらを参照して頂きたいが、「消去法で、短期間に組織と事業を立ち上げた経験があって、フリーで引っ張りやすい三木谷氏の友人を考えたら自分しかいなかった」ということだと就任の理由を語る。

楽天の経営が初年度黒字を達成したことは、島田社長の経営手腕によるところが大きい。

楽天球団では島田社長の方針で、社長以下職員全員が球場に行くときは、軍手持参を義務づけられている。球場のゴミをいつでも拾うためであると。まずは心がけが違うのである。

米田純球団代表(41歳)

西武百貨店出身で、営業企画や販売促進などのマーケティングを担当。40歳前に楽天に転職して、顧客管理を担当する部長だった。

楽天球団では社長の下で、GMのマーティ・キーナート(開幕1ヶ月で解任)と球団代表の米田氏が並列である。

米田氏は、他のチームではルーズに管理されているタクシー券の全廃とか、食べない選手もいるのに全員にバイキング形式で食事を用意する試合後の夕食の食事券化など、当たり前のビジネス感覚で球団のコスト削減にも成果を上げた。


小澤隆生楽天球団取締役事業本部長(33歳)

自分でネットオークションの会社を起業したが、楽天と合併したので、楽天のオークションを担当する執行役員となる。

楽天球団設立後は球団の金儲け全般を担当する事業本部長に就任し、グッズ販売、チケット販売、放映権販売を担当する。

いわば楽天ブランドの総責任者だ。

南壮一郎ファン・エンターテイメント部長(29歳)

カナダとアメリカで学び、アメリカの大学を卒業後、帰国して外資系証券会社でM&Aなどを担当。その後独立してスポーツマネージメント会社を起業。

楽天球団設立のニュースを聞いて、三木谷社長に直接談判して楽天球団社員第1号となった熱血漢。

海外経験が長いので、プロスポーツにおけるエンターテイメント性を重要視し、様々なイベントを催す。

「サッカーの試合を見ればわかるとおり、応援は観客がスタジアムに足を運んでくれる一番のキラーコンテンツである」と。

堀江隆治球場長(37歳)

ファーストフード出身者で、ここだけのオリジナルな弁当などを考案した。

石井哲也楽天球団営業本部法人営業部員(33歳)

フルキャスト宮城スタジアムの看板を中心に、ドブ板営業で広告営業を担当。初年度で計画の18億円を上回る22億円以上を売上、楽天球団の黒字化に貢献した。

平野岳史フルキャスト社長

ネーミングライトを年2億円X3年間で購入した東証1部上場の人材派遣業フルキャストの社長。

三木谷社長のゴルフ仲間だが、楽天がプロ野球参入を表明したときから、ネーミングライトの購入を申し入れていたと。

「人材派遣業で知名度をあげることは絶対必要で、ネーミングライト購入のモトは既にとれた」と。


楽天黒字化の理由

この本の主題である楽天球団黒字化の理由については三木谷オーナーが語っている。一つはスタジアムの経営権を持っていることで、スタジアムを中心に、広告、飲食、グッズなどで収益をあげている。

しかしたとえスタジアムの経営権がなくとも、スタジアムオーナーとのタフネゴシエーションで、黒字化はできる自信があると。

「すべてのビジネスにおいて、経営者の手腕は非常に大事で、結局はリーダーなのだと思う」と三木谷さんは語っている。

たぶん三木谷さんの発言が結論だと思うが、数字を見てみよう。

2005年度楽天イーグルスの戦績 : 38勝97敗1引き分け
主催試合での観客動員数      : 97万人
総売上                  : 64億4千万円

売上の内訳(内はシーズン前の計画)
入場料収入               : 22億円(21億円)
スポンサー広告収入         : 22億円(18億円)
テレビ放映権              :  8億円(12億円)
スタジアム収入(飲食、貸し料)   :  6億円
グッズその他の収入         :  6億円(4億円)

収支                   :  5千万円の黒字
 
注:1億円以下は四捨五入

上記収入を見ると10億円の赤字を見込んだ初年度計画とあまり違いがないので、選手補強にカネをケチってコストを削減して黒字を達成した様にも見えるかもしれないが、実際には放映権を除くすべての収入を計画以上に上げたことが大きい。

たとえば入場料収入は観客一人あたりに直すと2,338円/人となり、実はパリーグの他の人気球団の倍近いと。

スタジアムが狭く、収容人数が2万人と限られているだけに、無料チケットなどをチャリティなどに限り、計画を達成したのだ。

地方球場のスタジアムという限られたスペースの広告を、計画以上に販売できた営業力や、グッズ直販で収益を最大化していることも黒字化の要因だ。

球団全体の人件費の低さも初年度黒字化の理由の大きな要因である。

ちなみに楽天球団で最も年俸が高い岩隈が1億8千万円、磯部が1億3千万円で、この2人のみが1億円プレーヤーである。1億円プレーヤーがごろごろいる他球団とは大違いだ。


田尾監督解任と楽天球団の2006年

フレッシュな球団にフレッシュな監督というイメージを狙った人選だったが、コーチ経験のない田尾監督に、設備も揃わず、寄せ集めの選手ばかりの新球団の采配を任せる事自体がマネージメントの誤りだったと。

開幕戦こそ楽天はロッテに勝利したが、開幕2試合めでは渡辺俊介にやられ0−26で負けた。

この時に監督の采配にフロントが疑問を感じ、その後のホークスとの3連戦3連敗で疑問が確信に変わっていったと

8月末には田尾監督が現状の分析と来季の展望を田尾レポートとして提出するが、球団フロントの考えを変えるに至らず、結局シーズン終了前に解任となった。

2005年は田尾監督の他にベイスターズの牛島監督がコーチ経験のない監督として就任した。

2004年の中日の落合監督もコーチ経験がなかったが、落合監督の成功で指導者経験のない監督でもイメージ先行で起用する傾向があり、田尾監督や牛島監督が実現した。

しかし本ブログでも紹介した落合監督の書いた『超野球学』や『コーチング』を読めば、理論と指導力は抜群なことがよくわかる。

落合監督は2,000本安打以上打っているが(2,371本)名球会の会員ではない。プロ野球のなかよしサークル入りを拒否しているだけなのだ。


近々『野村ノート』のあらすじを紹介するが、今シーズンから楽天の指揮を執る野村監督は、全然目の付け所が違うことがよくわかる。

さすがプロは違うなと感心する。

野村監督になっても、「補強は青天井」(三木谷オーナー談)と言っている割には、大した補強をしない楽天が、勝率5割以上達成できるのかどうかわからないが、少なくとも規定打席に達した野手が3人しかいないという様な結果にはならないだろう。

収容人数2万人の宮城スタジアムでは、スタジアムを大幅拡張しないと入場料収入アップも見込めないので、オリックスみたいに清原、中村、ローズを獲得という様な芸当はできないのかもしれないが、昨年のような戦力ではいかに野村監督とはいっても、どうしようもないだろう。

楽天の知名度を飛躍的に上げ、球団経営も黒字化し、楽天球団の島田社長の経営手腕はわかった。

しかしこのまま行っても、負け続けても応援し続けるタイガースファンの様なファンが仙台に生まれるのか、そんなに物事は簡単ではないだろう。

縮小策でコストを削減して黒字は達成できたので、今年は補強で多少コストアップしても、それを上回る入場料収入アップを達成して黒字を達成する拡大方策を考えるべきだろう。

それが本当の球団経営のプロの手腕だろう。

2006年の野村楽天を期待して見守りたい。


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2005年07月14日

”教祖”降臨 楽天・三木谷浩史の真実 名前負け?


“教祖”降臨―楽天・三木谷浩史の真実

サイバーの藤田さんやホリエモンの本を多く紹介しているので、やはり次は三木谷さんだろうということで、最近発売されたばかりの本を図書館にリクエストして買ってもらい、一番で読んだ。

読んでみてほとんどなにも頭に残らないのは残念。

しいていえば三木谷さんの少年時代や一橋のテニス部キャプテン時代のエピソードと、つたやの増田さんは昭和57年に貸しレコードLOFTを一店で開店させ、一代でTSUTAYA-CCCをつくったことがわかったくらいか。

日経ビジネスアソシエの連載を本にしたものだそうだが、雑誌の連載記事ならともかく、日経ビジネスが出す本なら単行本にする段階でさらに取材をして内容を補強して欲しい。

普通はまず表紙に惹かれ、本を手に取る。

目次をパラパラとめくり、序文(この本の場合はプロローグ)に目を通し、良さそうだと思って買うわけだが、タイトルも良いし、三木谷氏の写真を使った表紙も印象的でこの本は魅力的に見える。

序文は読ませる:

ソフトバンク孫さんと三木谷さんの比較。成り上がりを見事に体現してみせた孫。エスタブリッシュメントの服をまとった起業家と言われる三木谷。

『ベンチャーっぽくないかな?ちょっとやりすぎたかな?』奥田経団連会長、西川三井住友銀行頭取、みずほコーポレート銀行齋藤頭取他のきら星のような財界ビッグショットで新球団の経営諮問委員会をつくった時に言った言葉。

『頭がいいわけではないけど、やり始めたらしつこいからかな』、楽天が成功した理由を陳腐な言葉で語る三木谷。



だが三木谷さんの生い立ちとか、学生時代とかのエピソードは面白いが、そんなものを知るために三木谷さんのことを書いた本を読むのではない。

三木谷さんのビジネスに対する戦略、考え方、人の集め方・使い方、人脈のつくりかた等々、三木谷さん自身の言葉を聞きたいのだ。

肝心な楽天のビジネス展開の部分が弱い。ストーリーがない。これでは本当に知りたい三木谷像はわからない。

最後に付け足しで入れてあるライブドアのニッポン放送買収エピソードの中での孫さんとホリエモンの発言が一番の収穫とはなんとも皮肉である。

孫さん:『あのバランス感覚を真似ろといってもできないな。そこが彼の強みかな』

ホリエモン:『うち(ライブドア)とか、他のITベンチャーもそうだけど、みんなバブルなんですよ。そのバブルもあと持って1年ですよ。だから、バブルが続いているうちに実体のあるものを取りに行くんです。』

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2005年05月28日

ネット業界儲けのしくみ 思わず読み直したネット業界概観

ヤフー、楽天、アマゾン、ソフトバンク、ライブドアなど代表的なネット企業の特徴を簡潔に説明した業界ハンドブック的な好著。

普通の本は読後感があり、なにか印象深いことがあるのだが、この本については不思議なことに、一度読んだだけでは内容を思い出せなかった。読んだときは良く理解できたのだが、本当にあたまにスッと入ってしまい、右から左に抜けてしまった。

野球オーナーになりたがるのはなぜ?―――知名度を上げ、集客力を上げるのがねらい。

無料サービスを提供しているのはなぜ?―――客寄せのエサ。

ネット企業は、なぜM&Aが好き?―――先行メリットを生かし、後続企業を引き離す。等々明快な切り口でよくわかる。

1999年のインターネットバブル再来の様なネット企業の株価だが、この本でネット業界を俯瞰してみると、ソフトバンクが仕掛けた急速なブロードバンド普及がネット業界を花開かせたことに大きく貢献したのだなと、納得できる。

楽天の特徴は利用者のこころをとらえるしかけが満載(楽天スーパーポイントと会員のランクわけ)、楽天広場(アフィリエイトとブログ)、RMS(Rakuten Merchant Server)システム、出店者教育の楽天大学など。

アマゾンの特徴は驚異の顧客管理法、リピーターを増やすリコメンド、マーケットプレース(ユーズド市場)、アマゾンアソシエイトなど。

Yahoo!は集客力を生かした広告収入(粗利益率54%!)、オークション会費と出品料収入(粗利益率74%!Yahoo!オークションは金のなる木)、ショッピングモールのテナント料などが主な収入で、オークションが半分、広告が1/3、残りが出店料等のビジネスサービスだ。

ライブドアの収入の半分以上はライブドア証券などのイーファイナンス事業で、他の部門は収益は大きく見劣りするが、今後の強化のカギはブログ。

検索エンジンで有名なグーグルの収益はほとんどが広告収入で、54%はアドワーズ、43%はアドセンスだと。

ネット代理店のサイバーエージェントは自社媒体としてギャザリングのネットプライスやメルマガ配信のメルマなど新しいサイトを開発しながら、その媒体の広告収入を得るというビジネスモデル。セプテーニもワラウジェーピー(旧笑う懸賞生活)を持ち、オプトはネット広告の効果判定のアドプランで有名。

その他、ソフトバンク、ネットレイティングス、2ちゃんねる、ネット証券、ネットバンク、出会い系、オンラインゲーム等々幅広い分野を簡潔に説明していてわかりやすい。



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図解ネット業界「儲け」のしくみ  
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