2015年11月15日

成りあがり 永ちゃんこと矢沢永吉の激白集 



見城さんの本で、当時の角川春樹社長に言われて、小学館から出ていた矢沢永吉(永ちゃん)の単行本「成りあがり」の文庫化を実現したと書いてあったので読んでみた。

筆者は大体1日1冊のペースで本を読んでいるが、めったに本は買わない。本当に手元に置いておきたい本は限られるからだ。

その筆者が図書館から借りた本を読み終わる前に買ったのがこれだ。

まったくぶっ飛んだ。

「取材構成 糸井重里」と書いてあるので、糸井重里がインタビューをプロデュースしたのだろう。まさに永ちゃんの本音、そのものズバリが書かれている。

永ちゃんの生い立ち(広島生まれだが、実母は3歳の時に出奔、父は2年生の時に病没)、親類をたらいまわしされて、やっかいものとして、なんとか高校を卒業したこと、おばあさんを唯一の肉親として育ったこと、貧乏で小学校6年生くらいから新聞配達や牛乳配達をやって食べていたこと、中学2年くらいからラジオで音楽を聞きだし、映画館のフィルム運びをやりながら発声練習していたこと、高校生のころから独学で音楽を学んで作曲していたことなどが語られている。

そして永ちゃんが「10回くらい、リフレインで読んだよ」という本が、友達のお姉さんが勤めていたキャバレーチェーンの社長がくれたカーネギーの「人を動かす」だ。永ちゃんが高校生の時だ。「えらく気に入ってね、キザに友達の誕生日に贈ったりしたよ」と。

人を動かす 新装版
デール カーネギー
創元社
1999-10-31


「『ああなるほど。なるほど。一理あるな。一理いえるな』と感じたわね。」

「たまに女房に花を買って帰るというのも、カーネギーの影響かもしれないね。多少」。

「ともかく、10回以上も読んだものな」。

なんと永ちゃんもカーネギーに影響受けているんだ。

永ちゃんは、「BIGになる」という強い意志を持って、高校卒業と同時に上京し、横浜で活動し始めた。

いろいろなアルバイトをやりながら、メンバーを集めてバンドを結成、3番目のバンドのヤマトで横浜のディスコやキャバレーで演奏していた。

そしてヤマトを解散し、内海利勝ジョニー・大倉と一緒に始めたのがキャロルだ。キャロルがレコードデビューするときには、ミッキー・カーチスがプロデューサーとしてかかわったが、契約があまりにもキャロルに不利な契約なので、後で永ちゃんはミッキーを切った。

キャロルは1972年7月に横浜市立大学の講堂で練習を始め、その年の冬にレコードデビュー、そしてスターダムにのし上がった後、永ちゃんと他のメンバーの考えが離れ、1975年4月の日比谷野外音楽堂のラストライブで解散した。



その間のことは、この本よりもジョニー・大倉の「キャロル 夜明け前」に詳しいので、これも追って紹介する。永ちゃんとしては、ギャラは4等分。何の文句があるんだというところだろうが、他のメンバーの思いは違う。

キャロル 夜明け前
ジョニー大倉
主婦と生活社
2003-10


キャロル解散後、永ちゃんはソロ活動を始め、この本の単行本が出た当時は、年間150回ステージに立ち、その間にレコーディングしている。

なぜ?150を50にしないのか。その方が楽だし。どんでもない。簡単な理由よ。

ロックはまだまだメジャーじゃない。やっと矢沢永吉という人間が少しずつ頭を持ち上げてきた。日本じゃその程度だ。これは、やっている本人にしかわからない。

フォークは、定着しかけている。でもオレたちばまだまだ、もがいてももがいてもそこまでできていないと思う。

150ヵ所でも少ないと思っている。

本当に引き込まれる本だ。

こんな話も載っている。

キャロル結成前、永ちゃんが金がないときに、親しらずが悪化して1か月くらい口も開けられないことがあった。日大病院に行ったら、1万円取られて、ろくに治療もやってもらえなかった。

それで有り金全部持って、奥さんの肩につかまって、御茶ノ水の医科歯科大に行って、教授に事情を話したら、基本料金だけで治療してもらえた。インターンの研究材料になったけど、ともかく注射代、レントゲン料金とかすべて無料にしてもらった。

永ちゃんはいう。やっぱり、オレ、あの時つくづく思ったね、国立と私立の差だね。

あの時、オレ、倅は私立に入れるのやめようと思ったね…。

この本は昭和53年に小学館から単行本として出版され、昭和55年に角川文庫で文庫化されている。

平成16年には改版され、筆者が買った本は平成27年9月15日発行の改版27刷だ。これだけ売れると角川書店も小学館も、ウハウハだろう。見城さんの置き土産だ。

改版されて無くなったのが、冒頭の永ちゃんの言葉だ。

初版には「すみ子、栄一郎、寛十郎、そして、もうすぐ生まれる子供に、贈る。」となっているが、改版にはない。

永ちゃんの私生活はよく知らないが、再婚しているから、前の奥さんとその子供たちへのメッセージは消したのだろう。

糟糠の妻を棄てた、という見方もできるが、永ちゃんが世界的にビッグになるためには、ハーフだという英語のできる奥さんが必要だったようにも思われる。

100万部以上のベストセラーだけあって、楽しく読める。筆者自身もそうだが、矢沢永吉「食わず嫌い」の人にもおすすめできる本である。


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2012年04月24日

本当に考える力がつく多読術 実践!多読術 結局、拾い読みじゃん

本当に考える力がつく多読術本当に考える力がつく多読術
著者:園 善博
三笠書房(2010-04-03)
販売元:Amazon.co.jp
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実践! 多読術  本は「組み合わせ」で読みこなせ (角川oneテーマ21)実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ (角川oneテーマ21)
著者:成毛 眞
角川書店(角川グループパブリッシング)(2010-07-10)
販売元:Amazon.co.jp
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多読術の本を2冊ほど読んでみた。

推薦本の紹介以外は、あまり得たところはないので、詳しくは紹介しない。いずれも多読=速読=拾い読みである。つまりスキップして読んでいるから速読=多読できるのだ。

筆者はほぼ一日1冊のペースで本を読んでいるが、必ず通読する。ところが、「本当に考える力がつく多読術」という本を書いている園善博さんは、逆に通読は勧めないという。

いわば「合目的読書法」という感じで、まず目次を最初から最後まで読んで、どんな情報が得られるか想像する。その情報を得るメリットを書き出し、本を読み終えた自分がどうなっているのかイメージして書き出し、そのうえで本を読むのだという。

いわゆる「カラーバス効果」のような考え方だ。

筆者も、目次からある程度内容を予測して本を読んでいるが、このように得られる情報のメリットを予測し、それがどう自分に生かせるのかまでイメージして本を読んでいるわけではない。

筆者は通読して印象に残ったところにポストイットを貼って、あとであらすじにまとめてブログに書いている。通読と拾い読みの差はあるが、結果的には同じことをやっているのかもしれない。今度は園さんの方法も参考にして、得られるものをはっきり意識して読んでみる。

もっとも、読書は量が問題ではない。質、つまり本を読んで、本からどれだけのものを得られるかが重要であって、多読しても、それが右から左に流れて、すぐに本の内容を忘れるようであれば意味がない。

実は筆者は大学生の時に一日一冊をノルマにして本を年に300冊ほど読んだことがあるが、書いてある文字を目で追っているだけで、ほとんど本の内容を理解しないままで終わってしまった。

カフカの「変身」やカミュの「異邦人」など、読んだという記憶があるだけで、内容は出だしの部分しか覚えていない。

変身 (新潮文庫)変身 (新潮文庫)
著者:フランツ カフカ
新潮社(1952-07-30)
販売元:Amazon.co.jp
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異邦人 (新潮文庫)異邦人 (新潮文庫)
著者:カミュ
新潮社(1954-09)
販売元:Amazon.co.jp
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サルトルの「実存主義とは何か」などは、単に字面を目で追っただけで、全く内容を覚えていない。

実存主義とは何か実存主義とは何か
著者:J‐P・サルトル
人文書院(1996-02)
販売元:Amazon.co.jp
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この時の反省があるから、通読+ブログ備忘録にこだわるのだ。また、通読すれば、著者は次は何を書くのだろうというわくわく感を維持しながら本を読み切ることができる。

最初から当たりをつけて、拾い読みしては、このわくわく感=期待感が、フルに味わえないと思う。

成毛さん、園さん、松岡正剛さんのような多読本の著者のように、金をもらって本の書評を書いているわけではないので、一般読者はやはり本を読んで知識と感動を得るというのが、正攻法だと思う。

閑話休題。

ちなみに、園さんもカーネギーのことを書いている。「人を動かす」は今出版されている自己啓発本と内容がほとんど変わらない古典なので、園さんはカーネギーの原典しか読まないという。

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10-31)
販売元:Amazon.co.jp
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成毛さんは、買ったり貰ったりで、月に100〜200冊の本を手に取り、最後まで読み通すのはそのうち10〜15%だという。

成毛さんも、本に書き込むをするのではなく、参考になった個所にポストイットを貼っておくという筆者と同じ読み方をしている。

ただお金持ちの成毛さんならともかく、今度紹介する松岡正剛さんの「多読術」も含めて、多読本の著者は図書館の利用について一言も触れていないことが気になった。

多読術 (ちくまプリマー新書)多読術 (ちくまプリマー新書)
著者:松岡 正剛
筑摩書房(2009-04-08)
販売元:Amazon.co.jp
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図書館を利用しないで、一日数冊という多読が可能な人はよっぽど金持ちか、本に埋もれて生活しているような人だろう。著者として自分の本を売らなければならない立場にあり、出版業界や本の流通業界に気兼ねしているのだろうが、図書館利用について何も書かないのは片手落ちのように思える。

成毛さんの「実践、多読術」の1/3は推薦書の紹介で、様々なジャンルの本が紹介されているので、知的好奇心を刺激される。たとえば次のような本だ。

図説 科学で読むイスラム文化図説 科学で読むイスラム文化
著者:ハワード・R. ターナー
青土社(2000-12)
販売元:Amazon.co.jp
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チョコレートの真実 [DIPシリーズ]チョコレートの真実 [DIPシリーズ]
著者:キャロル・オフ
英治出版(2007-08-27)
販売元:Amazon.co.jp
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731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く (新潮文庫)731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く (新潮文庫)
著者:青木 冨貴子
新潮社(2008-01-29)
販売元:Amazon.co.jp
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ノアの洪水ノアの洪水
著者:ウォルター・ピットマン
集英社(2003-08-26)
販売元:Amazon.co.jp
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そのほかにも面白そうな本がいくつも紹介されていて参考になる。


多読家の流儀ではないかもしれないが、自分は通読を続けて行こうという気持ちになる「多読」本だった。



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2011年12月28日

もしも法大生が「デール・カーネギー」の原則を身につけたら

2011年12月28日追記

デール・カーネギー・ジャパンの人から法政大学で開講した「もしも法大生が『デール・カーネギー』の原則を身につけたら」という特別授業の情報をもらった。

なんちゃって「もし〜ドラ」のネーミングではあるが、大変好評だったそうだ。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだらもし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
著者:岩崎 夏海
ダイヤモンド社(2009-12-04)
販売元:Amazon.co.jp
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もし法大生が





筆者の息子も大学3年生の時にデール・カーネギー・トレーニングを受講させた。大学生の時にカーネギーを知っておけば、必ずや将来役に立つと思う。

カーネギーの話題は万国共通で、世界どこに行ってもカーネギーの本を共通の話題にできる。是非、大学生の間でもカーネギーの本が広まってほしいものだ。


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2011年7月8日追記:

ウォレン・バフェットがデール・カーネギー・トレーニングについてニュース番組のなかで語っている映像がYouTubeで公開されているので、追記しておく。




2010年9月2日初掲:

このブログで時々紹介しているデール・カーネギーの「人を動かす」。アマゾンの売上ランキングでも常に50位前後で、日本で450万部売れているという永遠のベストセラーだ。

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
販売元:創元社
発売日:1999-10-31
おすすめ度:5.0
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「人を動かす」などのカーネギーの教えに沿ったトレーニングコースが日本でも開催されているデール・カーネギー・トレーニングで、今回大学生の息子が12週間のデール・カーネギー・トレーニングを終了した。次が修了証だ。
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「スノーボール」によると、これと同じものが、ウォーレン・バフェットのオマハ、ネブラスカの事務所の壁に掲げてあるという。

スノーボール (上) ウォーレン・バフェット伝スノーボール (上) ウォーレン・バフェット伝
著者:アリス シュローダー
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2009-11-20
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


実は息子が大学生になったらカーネギー・トレーニングを受講させようという計画は、かなり以前から考えていた。新さんの「成功する5つの習慣」を読んだ頃だと思うので、たぶん6年前頃だろう。

成功する5つの習慣











カーネギー・トレーニングでは、送り出す方にもCoaching and Communication Sheetという受講前アンケートを用意しており、その最初の質問は「あなたがチームメンバーのために部下に成長してもらいたい・変化させたい点は?」というものだった。

これにはただひとこと「他人の立場になって考える態度を身につけること。それに尽きる。」と書いた。

8月に卒業式があり、これに参加したところ、息子の研修成果発表は、「いままで単なる遊び相手としてしか見ていなかった弟(高校2年生)を、一人の人間として見られるようになった」というものだった。

まさに筆者が望んでいた通りの考え方を身につけることが出来たようで、大変感激するとともに満足した。

息子以外は全員社会人で、エンジニアの人が半分くらいだった。最優秀賞は、臨床に復帰したお医者さんが受賞した。1967年にこのコースを受講し、社員全員に同じコースを受講させているという会社社長とも卒業式でご一緒して、大変参考になった。

クラス専属のアシスタント(トレーニングの卒業生から選抜)も加わってのわきあいあいのクラスの雰囲気、身振り手振りのパフォーマンスを意識した発表の仕方、二人一組になっての事前の打ち合わせ、そしてトレーナーの川田さんのプロフェッショナルな指導、すべてが新鮮な驚きで、大変感銘を受けた。次男もいずれトレーニングを受けさせようと思う。

息子には、このトレーニングコースで学んだことを生かしてカーネギーの本によく登場する初代USスチール社長のチャールズ・シュワブの様なコミュニケーションの達人を目指して欲しいものだ。

デール・カーネギー・トレーニング・ジャパンの個人向け講座は、毎週木曜日又は土曜日に開催されるそれぞれ12週間のトレーニングが主体で、企業向けのカスタマイズトレーニングが主な事業のようだ。

DCトレーニング










興味のある人はデール・カーネギー・トレーニングのウェブサイトを見て、情報を収集してほしい。受講料15万円と決して安くないが、一生を通じて役に立つコミュニケーションの運転免許と思えば、十分価値はあると思う。


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2011年07月03日

心を整える。 アマゾン売り上げ一時トップ! 日本代表ゲームキャプテン・長谷部の本

心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣
著者:長谷部誠
幻冬舎(2011-03-17)
販売元:Amazon.co.jp
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アマゾンで売れ行き一時トップ(2011年6月20日現在)の日本代表ゲームキャプテン・長谷部誠の本。

長谷部は2010年夏のワールドカップの2週間前に岡田監督からゲームキャプテンに指名された。チーム全体のキャプテンは川口能活、長谷部の前のゲームキャプテンは中澤佑二だった。

長谷部は当時26歳。チーム内で年長の選手が多くいた。一度は、チームに対する影響が大きすぎると岡田監督に辞退を申し出る。岡田監督はすぐに中澤を部屋に呼び、話し合った結果、長谷部にやはりゲームキャプテンをやって貰うという決定となった。

「やはりゲームキャプテンはオマエにやってもらう。オマエは誰とでも分け隔てなく話せるし、独特の明るさがある。何か特別なことをやろうとしなくていい。いままでやっていたとおり、普通に振舞ってくれ。」

岡田監督にはこのように言われたという。

この本のタイトルは「心を整える。」だ。試合で実力を出すために、いわばピアノを調律するように。心を調律して良いパフォーマンスを生み出すのだ。そのための56の習慣を紹介している。

長谷部は静岡県出身。藤枝東高校で2001年の国体に準優勝し、浦和レッズにスカウトされる。レッズでは2年目からレギュラーに定着し、2003年のナビスコカップで優勝、2007年にはACLで優勝し、一躍国際スカウトに注目される。

2008年にドイツのヴォルフスブルグに移籍して、翌2009年ブンデスリーガで優勝。



現在もMFとしてブンデスリーガでプレーを続ける。長谷部というとあまり目立たない選手という印象が強い。遠藤の様にフリーキックを蹴るわけでもないし、かつての小野伸二のようなキラーパスがあるわけでもない。

それでいてチームになくてはならないの攻守の要となっているのが、長谷部がブンデスリーガで4年もレギュラーを張っており、日本代表でもゲームキャプテンとなっている理由だろう。

ヴォルフスブルクのディレクターは長谷部の90分間のポジショニングを見て、感心して次のように評しているという。

「長谷部は組織に生まれた穴を常に埋められる選手だ。とても考えてプレーしているし、リーグ全体を見渡しても彼のような選手は貴重だ。」


長谷部の肉声が伝わる本

この本は長谷部の肉声が伝わるような本だ。

高校3年になってやっと藤枝東のレギュラーになれた長谷部にレッズからオファーが来た。両親は大学進学を勧め、高校生からのプロ入りに反対したが、そんな長谷部に、「じいちゃん」が言った。

「マコト、人生は一度しかないんだよ。男なら思いきって挑戦するべきではないのか」

長谷部の名前は誠実の「誠」だ。スパイクにはじいちゃんの「松」と自分の「誠」を刺繍で縫いつけているという。

長谷部のじいちゃんは松太郎という名前で、既に亡くなったが、スパイクの内側に刺繍を縫いつけることで、いつもじいちゃんと一緒だという気持ちでいるという。

試合でサイドラインを超える時に、長谷部は天を見上げているが、いつも「じいちゃん、今日もよろしく」と心の中で言うのだと。

「昔気質(むかしかたぎ)」なところが、長谷部の魅力なのだと思う。


「心を整える」56の習慣

この本ではいかにも誠実で努力家・勉強家の長谷部らしい「習慣」、エピソードが紹介されている。アマゾンのなか見!検索には対応していないので、目次を紹介しておく。

第1章 心を整える。
 01 意識して心を鎮める時間を作る。
 02 決戦へのスイッチは直前に入れる。
 03 整理整頓は心の掃除に通じる。
 04 過度な自意識は必要ない。
 05 マイナス発言は自分を後退させる。
 06 恨み預金はしない。
 07 お酒のチカラを利用しない。
 08 子どもの無垢さに触れる。
 09 好きなものに心をゆだねる。
 10 レストランで裏メニューを頼む。
 11 孤独に浸かるーひとり温泉のススメ

第2章 吸収する。
 12 先輩に学ぶ。
 13 若手と積極的に交流する。
 14 苦しいことは真っ向から立ち向かう。
 15 真のプロフェッショナルに触れる。
 16 頑張っている人の姿を目に焼きつける。
 17 いつも、じいちゃんと一緒。

第3章 絆(きずな)を深める。
 18 集団のバランスや空気を整える。
 19 グループ内の潤滑油になる。
 20 注意は後腐れなく。
 21 偏見を持たず、まず好きになってみる。
 22 仲間の価値観に飛び込んでみる。
 23 常にフラットな目線を持つ。
 24 情報管理を怠らない。
 25 群れない。

第4章 信頼を得る。
 26 組織の穴を埋める。
 27 監督の言葉にしない意図・行間を読む。
 28 競争は、自分の栄養になる。
 29 常に正々堂々と勝負する。
 30 運とは口説くもの。
 31 勇気を持って進言すべきときもある。
 32 努力や我慢はひけらかさない。

第5章 脳に刻む。
 33 読書は自分の考えを進化させてくれる。
 34 読書ノートをつける。
 35 監督の手法を記録する。

第6章 時間を支配する。
 36 夜の時間をマネージする。 
 37 時差ボケは防げる。
 38 遅刻が努力を無駄にする。
 39 音楽の力を活用する。
    コラム ミスター・チルドレン ベスト15
 40 ネットバカではいけない。

第7章 想像する。
 41 常に最悪を想定する。
 42 指揮官の立場を想像する。
 43 勝負所を見極める。
 44 他人の失敗を、自分の教訓にする。
 45 楽な方に流されると、誰かが傷つく。
 
第8章 脱皮する。
 46 変化に対応する。
 47 迷ったときこそ、難しい道を選ぶ。
 48 異文化のメンタリティを取り入れる。
 49 指導者と向き合う。

第9章 誠を意識する。
 50 自分の名前に誇りを持つ。
 51 外見は自分だけのものではない。
 52 目には見えない、土台が肝心。
 53 正論を振りかざさない。
 54 感謝は自分の成長につながる。
 55 日本のサッカーを強くしたい。
 56 笑顔の連鎖を巻き起こす。

最終章 激闘のアジアカップで学んだこと


この目次だけ読んでも、まじめな長谷部の性格が感じられると思う。


勉強家の長谷部

この本のところどころに、長谷部が影響を受けた本の言葉が引用されている。それは京セラ創業者の稲盛和夫さんだったり、松下幸之助だったりする。

たとえば稲盛さんの次のような言葉を引用している。

「判断に迷った時は、人として正しいかどうかを考えるようにしている」

以前読んだ稲盛さんの本では、「動機善なりや、私心なかりしや」と常に自問すると書いてあった。これと同じような言葉だ。

だから長谷部は監督にも進んで進言するという。「自己保身のために言わないことの方こそ、正しくない行動のはずだ」と思うからだという。

2010年ヴォルフスブルクの監督に就任したばかりの英国人マクラーレン監督にもボランチのポジショニングについて意見を言ったという。

こんな時に長谷部が意識しているのは「上から目線」にならないようにすることだと。監督が腹を立てたら考えも聞いてもらえず、干されてしまうかもしてない。チームのために進言しているという思いを伝えなければならないのだ。

この辺の一途さが岡田監督からゲームキャプテンに指名された理由の一つだろう。


33読書は自分の考えを進化させてくれる

この本の33番目の習慣が読書だ。長谷部は当初は東野圭吾とか宮部みゆきとかの人気作家の小説をよく読んでいたが、デール・カーネギーの「人を動かす」を読んでから、哲学系の本が圧倒的に増えたという。

ドイツではひとりでいる時間が増え、よりサッカーや人生のことを深く考えるようになったことも関係している。

読書は人前で話す機会が多いサッカー選手にとって、言葉のセンスを磨く上でも重要だという。

長谷部の推薦するのは次の本だ。このブログでもあらすじを紹介しているので、題名をクリックして参照してほしい。

松下幸之助の「道をひらく」

道をひらく道をひらく
著者:松下 幸之助
PHP研究所(1968-05)
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姜尚中(カン・サンジュン)の「悩む力」

悩む力 (集英社新書 444C)悩む力 (集英社新書 444C)
著者:姜 尚中
集英社(2008-05-16)
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太宰治の「人間失格」(リンクは「人間失格」に触発された押切もえの「モデル失格」)

人間失格 (集英社文庫)人間失格 (集英社文庫)
著者:太宰 治
集英社(1990-11-20)
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「アインシュタインは語る」

アインシュタインは語るアインシュタインは語る
大月書店(2006-08)
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この本はまだ読んでいないが、アインシュタインの伝記の決定版ともいえるものが、翻訳されたので、これをいずれ紹介する。

アインシュタイン その生涯と宇宙 上アインシュタイン その生涯と宇宙 上
著者:ウォルター アイザックソン
武田ランダムハウスジャパン(2011-06-23)
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アインシュタイン その生涯と宇宙 下アインシュタイン その生涯と宇宙 下
著者:ウォルター アイザックソン
武田ランダムハウスジャパン(2011-06-23)
販売元:Amazon.co.jp
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斉藤茂太「幸せを呼ぶ孤独力」

幸せを呼ぶ孤独力―“淋しさ”を「孤独力」に変える人の共通点幸せを呼ぶ孤独力―“淋しさ”を「孤独力」に変える人の共通点
著者:斎藤 茂太
青萠堂(2005-12)
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長谷部は「読書ノート」をつけて、気に入った文を抜き書きしているという。心の点検もしているのだと。

ちなみに本田圭祐も白洲次郎の本を読んでいたという。

白洲次郎 占領を背負った男白洲次郎 占領を背負った男
著者:北 康利
講談社(2005-07-22)
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長谷部の「監督ノート」

長谷部は今は現役選手だが、いずれは引退する。その時のために2年前から「監督ノート」をつけ始めているという。自分が出会った監督が、どのようにチームをマネージしているのかを記録しているという。

また他の選手から聞いた他の監督の練習方法や、本やテレビなどで見たサッカー以外のスポーツの練習方法でも参考になりそうなものは記録しているという。

注目すべき点は多いという。たとえば:

・シーズン前の合宿ではどのようにしてチームの組織を構築するのか
・遅刻したときの罰金の額
・携帯電話やゲーム機の使用制限
・GM(ゼネラルマネージャー)との関係の作り方
・スポンサーへの対応
・ファンやマスコミへの距離感
・どんなスタッフを揃えるか
・試合に向けてどのような練習をするのか
・練習の時間配分
・練習メニュー

この本の38番目の習慣は「遅刻が努力を無駄にする」だ。長谷部は練習の1時間前には着くようにしているという。時差対策も日本への帰国の一週間前から就寝時間を少しずつ早めるという。いかにもまじめな長谷部らしい習慣だ。

ちなみに筆者の時差調整のやり方は、東へ向かう場合は(日本→北米など)機内で眠るが、西へ向かう場合(北米→日本など)は、機内では寝ないで無理矢理時差調整をする。

飛行機に乗ったらすぐに時計を到着地の時間に合わせるというのも、頭の切り替えに役立つと思う。


長谷部はミスチルファン

この本には長谷部によるミスチルベスト15なども載っていて、ミスチルのことが、いろいろなところで出てくる。試合前の移動中のバスの中でもいミスチルは不可欠なのだと。



「ニーチェの言葉」にドキッとする

このブログでも紹介した「ニーチェの言葉」とか、ワタミの渡邉美樹さんの本のこととかも出てくる。

超訳 ニーチェの言葉超訳 ニーチェの言葉
ディスカヴァー・トゥエンティワン(2010-01-12)
販売元:Amazon.co.jp
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きみはなぜ働くか。―渡邉美樹が贈る88の言葉きみはなぜ働くか。―渡邉美樹が贈る88の言葉
著者:渡邉 美樹
日本経済新聞社(2006-09)
販売元:Amazon.co.jp
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「ニーチェの言葉」の中で「脱皮して生きていく」という言葉にドキッとしたという。ワールドカップ直前に、岡田監督の戦術変更を受け入れられない自分に気が付いたという。

2008年のアルゼンチンのボカ・ジュニアーズとの試合では、ボカの選手のワンプレー、ワンプレーに魂がこもった試合態度に圧倒されたという。ボールを失ったら、すごい気迫で奪い返しに来るという。ユニフォームを引っ張るのも当たり前。スタンドに来ているスカウトに必死にアピールして、わずかな可能性も逃さないという真剣な態度だ。

長谷部はボカの選手を見て、自分の未来は自分で勝ち取るのだという単純なことに気づかされたという。長谷部はボカ戦で、海外移籍を本気で考えるようになり、異文化のメンタリティを積極的に自分になかに取り組むことを意識するようになったという。



筆者はブエノスアイレスに2年間住んでいて、トップクラブ「リーベル・プレート」の会員だったので、リーベルとボカの試合も見た。日本でいえば巨人・阪神戦のような感じで、ちょっとハイソなリーベル、下町のボカという立ち位置だ。ブエノスの貧民地区出身のマラドーナもボカに憧れ、一時在籍したこともある。


長谷部の誠実な性格が伝わってくる本だ。正直あまり長谷部のゴールは記憶にない。あまり目立たないが、日本代表の常連としてチームには不可欠な選手なのだろう。

さすが幻冬舎である。著者の誠実さといい、気持ちのこもった内容といい、売れる要素満載の本だ。


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2011年05月14日

こころを動かすマーケティング 日本コカコーラ会長の魚谷さんの本

こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられるこころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる
著者:魚谷 雅彦
ダイヤモンド社(2009-08-07)
販売元:Amazon.co.jp
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日本コカコーラ会長の魚谷さんのコカコーラのマーケティング解説。


魚谷さんの経歴

魚谷さんは留学制度がある会社ということでライオンに入社し、コロンビア大学でマーケティングを学び、MBAを取得。

ニューヨークでコミュニケーションとプレゼンテーションの能力を磨くためにデール・カーネギー・スクールで毎週2回、夜7時から10時まで学んだという。ここにもカーネギーに学んだ人がいた。

帰国後30歳でライオン最年少のプロダクトマネージャーとなる。プロダクトマネージャーの仕事は、机に向かってするものだけではなく、朝から晩まですべての時間が仕事の時間だとライオンの先輩にたたき込まれた。

常に問題意識を持つ、何故だろうと考え、電車に乗る人を観察、テレビコマーシャルを見て、世の中の変化を敏感に感じ取るのだと。最初に入社したライオンには今でも感謝していると。

その後シティ・バンク、欧州食品メーカーからフィリップモリスグループのクラフト・ジャパンの代表取締役副社長、そして1994年に39歳で日本コカコーラにマーケティング担当のシニア・ヴァイスプレジデントとして入社する。

以下に述べるようにマーケティングで鮮烈にデビューし、一度営業を担当した後、マーケティングに戻り、2001年に日本人としては26年ぶりに社長に就任する。

2006年に社長を退き、会長となり、自分の会社のブランドヴィジョンを設立し、現在はNTTドコモの特別顧問も兼務している。


コカコーラのマーケティング

最初に「よく驚かれる事実」として、コカコーラは日本で毎日5,000万人に製品を売っていることを紹介している。

自動販売機で2,000万人(全国で250万台ある自動販売機のうち100万台がコカコーラの自動販売機)。スーパーやコンビニで1,600万人。マクドナルドなどのファーストフードやレストランで900万人。これで合計5,000万人となる。

コカコーラは1886年アトランタの薬局で薬剤師をしていたジョン・ペンバートン博士が発明し、シロップを水に混ぜて「コカ・コーラ」というブランドで売り出した。ある時、間違えて炭酸水を混ぜたら、よりおいしいということで現在のコカ・コーラが誕生した。

120年前から同じ物が、世界200国以上で売られ、世界ナンバーワンのブランド価値を誇っている。

ブランドをintrisic value(基本的な価値)とextrinsic value(付帯的な価値)に分けると、味やボトルなど基本的な価値は100年以上変わっていないが、付帯的情緒的な価値は時代に合わせて大きく変化したという。

現在のコカコーラの企業ビジョンは"Live positively"だ。

コカコーラは世界各地で「ボトラー」と呼ぶディストリビューター/ボトル詰め会社ネットワークを持っており、日本にも有力企業との合弁会社を中心に最大18社のボトラーネットワークを持っていた。

コカコーラ全体では全世界で90万人が働いており、日本でも2万3千人が働いているが、日本コカコーラはマーケティング(広告宣伝)専門の会社なので、社員は550人しかいない。

この本では魚谷さんが担当したコカコーラの様々な製品の広告宣伝が紹介されていて興味深い。


まずはジョージアの立て直し

魚谷さんが入社した当日から課題として出されたのは、コーヒーのジョージアだ。1975年に発売されたジョージアは味の良さに強力な流通網が加わり、一時は40%を超えるトップシェアを持っていたが、次第にシェアを失いつつあった。

認知度調査をしてみると、シェアが10%のサントリーのBOSSが一番で、トップシェアのジョージアは2位という結果が出た。

入社して1週間で(社長のOKを取り付けて)、既に大手広告代理店に決まっていた巨額の撮影費用が掛るアメリカの飛行場でのCM撮影をキャンセル。バックに「ジョージア・オン・マイ・マインド」が流れるマンネリのブルーカラーをターゲットとした広告案だったという。広告代理店社内で、とんでもないヤツがきたと、大変な騒ぎになった。

急遽CMを作り直すことになり、広告代理店をすっとばしてJRエクスプレスのCMを作っていた製作会社TYOの早川和良さんに直接1週間で考えて欲しいと依頼に行く。前職での広告の評判が良く、尾崎豊の"I love you"を使った早川さんのCM作品が心に残っていたからだという。



タレントのダンカンがサラリーマンに扮したCMは好評だった。次にたけし軍団を使ったCMを企画するが、たけしのバイクの交通事故でCMはキャンセル。そこで思い立ったのが、飯島直子を使ったサラリーマンをターゲットとする「男のやすらぎキャンペーン」だった。



ブルゾンをプレゼントするキャンペーンには4,400万通の応募があり、ジョージアのシェアは一挙に53%にアップした。成功できたのは、徹底的にターゲットとなる生活者をイメージしたからだと魚谷さんは語る。


お茶飲料

次にお茶を立て直す。魚谷さんの入社した当時はコカコーラはウーロン茶で「茶流彩彩」というブランドを持っていたが、トップのサントリーに全く勝負にならなかった。

「何をやらないかを決めるのも戦略である」とビジネススクールで教わったことを思い出して、ウーロン茶でなく、健康イメージのある「爽健美茶」で勝負した。市場調査は福岡の3日間だけだったという。2人の若いマーケターが確信を持って進めたマーケティングが成功したのだ。

アカペラのコマーシャルはモデル選びが難航したが、最後の体育大生が全員のイメージと一致したという。



次は紅茶だ。マーケティングで「平均点のマーケティングは失敗する」と学んだので、女性をターゲットにリッチなミルクティーというコンセプトで「紅茶花伝」をつくりだした。

生の牛乳を使うことは技術的に難しかったが、これを克服して、一回り小さい缶にして本格派のミルクティーを売り出した。

ほとんどプロモーションをしなかったにもかかわらず一位となり、紅茶飲料のトップブランドだった「午後の紅茶」がミルクティーを売り出してきても一位は全く揺るがなかったという。

この成功でマーケティングに於ける細分化とセグメンテーションの重要性、そして一旦一位になると簡単には変わらない「一番手の法則」を学んだという。

アメリカの広告代理店の経営者が書いた「ポジショニング戦略」という本が参考になったという。

ポジショニング戦略[新版]ポジショニング戦略[新版]
著者:アル・ライズ
海と月社(2008-04-14)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

この本のなかで、「大西洋を2番目に単独飛行した人は誰でしょう?」という質問がある。誰もが一番めのリンドバーグは知っているが、2番目のバート・ヒンクラーの名前は誰も知らない。

どこか一点訴求できる独自の価値を見つけ、自ら新しいカテゴリーを作って差別化できるポジショニングを作り出す。これがマーケターの腕の見せ所だと。


営業起点のマーケティング

魚谷さんはマーケティングの専門家だが、一時社長の指示でコカコーラの営業を担当した。「リレーションベースの営業」と呼ばれていた営業を、「戦略的な営業」に変えるためだ。

社長には「リレーションベースの営業」と呼ばれて居るぞと営業マンに檄を飛ばし、ドラッカーの「マネジメント」の教えに従い、ビジネスプロセスの起点を「お客様」として、当時17社あったボトラー社と営業が「協働マーケティング」に乗り出し、「お客様は誰か」ということからスタートした。17社全部からそれぞれの地域のマーケティングプランを出し、1週間掛けて日本コカコーラへのプレゼンテーションを行ったという。

その結果、圧倒的なシェアを誇る九州地区でジュースが弱いことがわかり、「お客様」である子どもが楽しく飲めるように、キャラクターをつくり、上手い物を飲んだときに出る「クーッ」という声をブランド名にした「QOO」をつくった。



QOOはあっという間に全国に広まり、今やアジアでも販売されている。

かつて日本コカコーラの社長を務めたことのあるオーストラリア人が2000年にCEOに就任すると、一時は日本のCMでさえアトランタの本社のOKを取る必要があるくらい中央集権的だったコカコーラが日本に学べということで、世界各国のトップが日本を訪問してくることになる。

日本法人の社長もオーストラリアのトップを務めていたアメリカ人女性に代わり、魚谷さんは社長と二人三脚で日本コカコーラの経営を担う。


広告メディアバイイングと広告クリエイティブの分離

魚谷さんが入社してすぐにジョージアを担当した時に、メディア購入とクリエイティブを別々に切り離し、仕事の質・量に応じてフィーを払うというやり方に変えた。日本の広告業界に激震をもたらしたという。

それまではメディア購入のつけたしのような広告クリエイティブの存在を広告クリエイティブとして正当に評価することにしたのだ。

一つ一つの広告をしっかり評価してベンチマーキングする。年に一度代理店やクリエイターとレビューを行い、それぞれの担当者にも評価させる、という透明性を高めたシステムとした。

日本コカコーラでは広告を費用とは考えず、投資と考えているから、投資リターンを正確に把握する必要があるのだ。

このようなメディア購入とクリエイティブ分離、評価システム導入の結果、大幅に取引が減る広告代理店があった。魚谷さんが出向いて先方の社長に伝えた。社長のショックを受けた顔を今でも忘れられないという。

最後に新たにメディ購入を一手に引き受けて貰う広告代理店を訪問した。この代理店がジョージアの「明日があるさキャンペーン」を提案した会社だった。


ジョージアの再・立て直し



実はジョージアのコンペでは、当初この代理店は入っていなかったという。無理矢理追加して入れても、第一回目のコンペでは最低評価だった。魚谷さんが断りを入れると、先方の営業次長は「1週間待ってくれ、プレゼンの時間は他社の半分でいい」ということで食い下がる。「営業は断られたときから始まる」だ。

期待しないでプレゼンを受けてみると、前回とは全く違ったものだった。「明日があるさ」キャンペーンの原形で、出演は吉本興業のオールキャスト、CMに近いビデオ映像まで作ってきたという。

魚谷さんはこのとき人の心は動かせるのだと思ったという。あの代理店の次長は、最初の第1回目の審査で負けて、社内にあきらめムードが出たところを、1週間という短い時間で立て直した。

社内の人の心を変えたからこそ、クライアントの心も変えることができた。これこそマーケティングだと思ったという。

このCMは日本コカコーラの歴史でも初めてACC賞グランプリを獲得し、CMからドラマや映画が生まれ、CD発売、吉本興業のオールキャストがNHKの紅白歌合戦に出場するという企業広告を遙かに超えた幅広い展開ができたという。

缶コーヒーのCMがみんなに元気を与えたと評価されたのだ。


最後はコカコーラ

魚谷さんのマーケター最後の仕事はコカコーラのマーケティングだ。それまでの「スカッとさわやか」から「No Reason」というサザンを使ったコマーシャルを導入した。



"No Reason"という標語はアトランタ本社からクレイムがついたが、女性社長が本社に説明してくれてキャンペーンはスタートした。

担当した広告代理店では社内でもコンペを行い、トップクリエイター達が考えたのもサザンだったという。コカコーラはそれまでサザンを起用したことはなかったが、桑田さんの書き下ろしの曲「波乗りジョニー」も、桑田さん自身のCM出演も大変な盛り上がりとなった。

多くの人、関係者を巻き込んだマーケティングの成功例だ。


日本コカコーラの社長に就任

2001年に"No Reason"キャンペーンが成功すると、10月に魚谷さんは47歳で社長に就任した。同じ外資系の日本IBM会長の椎名武雄さんに乾杯の音頭をお願いしたという。椎名さんの"Sell IBM in Japan. Sell Japan in IBM"という標語は、魚谷さんもまさに同感だからという。

社員には本人の名前入りメッセージ集の「こころざし読本」を配布し、共通の価値観である"Fun & Excitement"を共有した。

新商品の提案はA4の紙一枚。説明は3分を流儀にしたという。

日本全国で250万台ある自動販売機のうち100万台がコカコーラの自動販売機で、ジョージアの販売のために世界に先駆けてホット・コールド切り替え自動販売機を導入した。元々自動販売機網を拡大したのは、1980年代に社長だったオーストラリア人のトップが、ボトラーの意見を聞いて決断したという。

自動販売機をおサイフケータイ対応として会員登録とあわせてマーケティングデータを取得できるようになった。

日本コカコーラの会長となり、ドコモの顧問に就任してからは、One docomoという各組織を代表する300名ほどのブランド推進リーダー組織をつくった。日産のクロスファンクショナルチームと同様の考えだ。

日本企業はもっとマーケティング経営力を高めていくべきだと魚谷さんは語る。最後にマーケティングに絶対の原理はなく、先回りして新しいニーズをつくることも重要だと語っている。

このブログのように実際の広告を振り返りながら読むと大変楽しめる本である。


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2011年02月18日

カーネギー・トレーニングコースの案内

デール・カーネギー・トレーニング・ジャパンより時々メルマガがくる。このブログではカーネギーの本とカーネギーに影響を受けた人の本を数多く紹介しているので、メルマガも紹介しておく。

筆者の大学3年生の長男にも12週間のデール・カーネギー・トレーニングを昨年受講させた。

卒業生の集いも定期的に開催されており、個別の集まりもあるようだ。大変満足度の高いコースである。


"2012年に100周年を迎えます" − デール・カーネギーは人材開発のパイオニア

【デール・カーネギー成功の秘訣】

感謝の気持ちはいくら多くても多すぎることはありません!


事実、長く続く関係を築くために最も強力な方法の一つは、あなたが知っている相手の長所を伝え、それに対して敬意を表することです。感謝の気持ちは惜しみなく十分に表現しましょう。そして見つけた長所は、言葉で表現するようにしましょう。

感謝の気持ちを表現する:4つのキーポイント

1. 率直で誠実な感謝の気持ちを伝えましょう。

  私達はごまかしを見つけることがとても上手です。ですから、偽りのお世辞を言うことは忘れ、私達の本当の感謝の気持ちを伝えましょう。

2. 批判、非難、不平はやめましょう。

  私達は批判を受けた瞬間、言われたことを聞き入れない傾向にあります。ですから、相手の粗探しをし、批判、非難、不平を言うのはやめましょう。もしあなのメッセージを伝えたいのであれば、彼らが行っている良い点、そして彼らの行動のうち、さらに良くなると思われる点の2つのパートに分けて伝えてみてください。
  彼らは一心に耳を傾けてくれることでしょう!

3. 相手が重要な人であると伝えましょう。

  私達は好きな相手の話に耳を傾けます。そして私達は自分のことを好きになってくれる人を好みます。他者に備わっている特性を認めることは、間違いなく彼らの心をひきつけ、たいていの場合は、彼らからのサポートも得ることができます。真価を認めること、承認すること、評価することは、いくら受けても多すぎることはありません。

4. 相手が受けて正当と思われる評価を十分に与えましょう。

  他者をどのように理解するかは、私達がどのように彼らと関わり合うかということに強く結び付いています。もし、私が息子のサッカーコーチに、練習の初日、息子の長所は頭の回転が早く、戦略的な考え方をするタイプだと話したならば、コーチはその事を認識し、息子のプレーにそれらの点を見つけようとするでしょう。これは好循環を作り、息子は認めてもらえたことで、プレーの中でそれらの要素を示し続けることになります。このように、私達の中に埋まっている良い資質を引き出すことにより、あなた自身と他者を成功へ築きあげていきましょう。
  あなたが発見することにきっと驚くのではないでしょうか!




Challenge! - 以下のコースをあなたのキャリアと成功を築くために!


★ 2月 デール・カーネギー・コース(効果的なコミュニケーションと人間関係)
  もっと強い人間関係を築きたい! こちらをクリック
https://f.blayn.jp/bm/p/aa/fw.php?i=dalecarnegie&c=135&n=907

★ 2月24日&3月17日 東京 無料デール・カーネギー・コース説明会 
https://f.blayn.jp/bm/p/aa/fw.php?i=dalecarnegie&c=136&n=907

★ 3月3日 大阪 無料デール・カーネギー・コース説明会
https://f.blayn.jp/bm/p/aa/fw.php?i=dalecarnegie&c=136&n=907


★ 3月4日 熱意の達人−POWERチームビルディング
あなたのチームをより熱く、強くする術を知るセミナーはこちらをクリック 
https://f.blayn.jp/bm/p/aa/fw.php?i=dalecarnegie&c=137&n=907


★ 3月 デール・カーネギー・コース(効果的なコミュニケーションと人間関係)
  もっと強い人間関係を築きたい! こちらをクリック
https://f.blayn.jp/bm/p/aa/fw.php?i=dalecarnegie&c=135&n=907


★ 3月 大阪デール・カーネギー・コース(効果的なコミュニケーションと人間関係)
  もっと強い人間関係を築きたい! こちらをクリック
https://f.blayn.jp/bm/p/aa/fw.php?i=dalecarnegie&c=139&n=907

★ 6月 名古屋デール・カーネギー・コース 開講予定
  詳細は事務局へお問い合わせください。
https://f.blayn.jp/bm/p/aa/fw.php?i=dalecarnegie&c=138&n=907




              Dale Carnegie Training

デール・カーネギー・プログラムは世界86カ国に展開し、99年の歴史と実績があり、世界で延べ800万人以上の卒業生を輩出しております。 

日本でも48年以上の歴史があり、人材開発業界のパイオニアとして、多くの個人・社員様のパフォーマンスを改善することで、企業・組織のパフォーマンスの改善を行ってまいりました。

書籍ではデール・カーネギー著「人を動かす」「道は開ける」は日本でもベストセラーとして880万部以上の売り上げ実績がございます。 弊社では一般公開コース・セミナーの他にも、法人様の課題を解決するカスタマイズ研修も行っております。


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2010年12月19日

一生モノの勉強法 京大人気教授の知的ノウハウ

2010年12月19日追記:

書店に行ったら「週刊東洋経済」で鎌田教授が書いていた「一生モノの古典」が、単行本になって出版されているのに気がついた。

座右の古典 ―賢者の言葉に人生が変わる座右の古典 ―賢者の言葉に人生が変わる
著者:鎌田 浩毅
東洋経済新報社(2010-11-12)
販売元:Amazon.co.jp
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アマゾンのカスタマーレビューで全部の題名を紹介しているものがあったので、それを引用させてもらうと、次のようになる。

1章
『論語』孔子,『幸福論』ヒルティ,『時間と自由』ベルクソン,『荘子』荘周,
『自助論』スマイルズ,『生きがいについて』神谷美恵子
2章
『ソクラテスの弁明』プラトン,『ホモ・ルーデンス』ホイジンガ,『人間性の心理学』マズロー,
『ミケランジェロの生涯』ロマン・ロラン,『神曲』ダンテ,『大衆の反逆』オルテガ,
3章
『風姿花伝』世阿弥,『知的生活』ハマトン,『春宵十話』岡潔,『職業としての学問』マックス・ウェーバー,
『学問のすすめ』福沢諭吉,『民主主義と教育』デューイ,『学問芸術論』ルソー
4章
『方法序説』デカルト,『野生の思考』レヴィ=ストロース,『サイバネティックス』ウィーナー,
『陰翳礼賛』谷崎潤一郎,『プラグマティズム』ウィリアム・ジェイムズ,『からだの知恵』キャノン,『風邪の効用』野口晴哉
5章
『ゲーテとの対話』エッカーマン,『人生の意味の心理学』アドラー,『フランクリン自伝』フランクリン,
『「いき」の構造』九鬼周造,『幸福論』バートランド・ラッセル,『メディア論』マクルーハン
6章
『新科学対話』ガリレイ,『コモン・センス』トーマス・ペイン,『コロンブス航海誌』コロンブス,
『古代への情熱』シュリーマン,『自省録』マルクス・アウレリウス,『バガヴァット・ギーター』ヒンドゥー教聖典,『人生論』トルストイ
第7章
『第二次大戦回顧録 抄』チャーチル,『孫子』孫武,『藁のハンドル』ヘンリー・フォード,
『ローマ帝国衰亡史』ギボン,『君主論』マキアヴェリ,『ジュリアス・シーザー』シェイクスピア,『韓非子』韓非
8章
『啓蒙とは何か』カント,『イタリア・ルネッサンスの文化』プルクハルト,
『森の生活』ソロー,『読書について』ショウペンハウエル

読んだ本が数点あるが、それ以外は読んでない本ばかりで、改めて鎌田教授の教養の広さに感心する。

筆者は「本は読んでから買う」のを通例としているが、この本はひさしぶりの「読む前に買った本」だ。鎌田教授の本を参考にして、紹介されている本も読んでみようと思う。

世の中には自分の読んでいない本ばかりだということを、思いしらされる本である。


2010年12月16日初掲:

一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ
著者:鎌田 浩毅
東洋経済新報社(2009-04-03)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

真っ赤な革ジャンと真っ赤なズボンなどといったドハデな服装で登場する京大の火山学の鎌田浩毅教授の勉強法。

はじめに鎌田教授のドハデ戦略について説明している。専門の火山の話を聞いて貰うにあたり、まず鎌田浩毅という人間に注目して貰うためにファッションに気を配っているという。

鎌田教授は「週刊東洋経済」で以前は「一生モノの古典」、現在は「ビジネスパーソンのための地球科学入門」という2ページもののコーナーを書いている。「一生モノの古典」のまとめかたには感服した。

たとえばシュリーマンの「古代への情熱」を紹介した2010年7月10日号では、音読、作文、毎日1時間というシュリーマンの語学勉強法を紹介するとともに、ビジネスパーソンに役立つ教訓3ヶ条として次を挙げている。

1.大きな目標を立て、完遂するまで忘れない
2.勉強は目的を明確にして始めるべきだ
3.発掘継続のためにおこなった情報開示と広告戦略を学べ

先見の明のある考古学者として、また自意識過剰な俗人として毀誉褒貶(きよほうへん)の多いシュリーマンだが、学問的な高い評価はゆらぐことがないと語る。人に限らず書物も、良い点を見て学べばよいと結んでいる。

非常にコンパクトに要点をまとめた書評で、筆者にも大変参考になった。

この本はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、ぜひ目次を見てほしい。

昼休みの活用法や通勤電車を英語塾として活用する方法など、実際的なアドバイスが並んでいることがわかると思う。


この本の構成

この本は次のような構成となっている。

第1章 面白くてためになる「戦略的」な勉強法とは

第2章 勉強の時間を作り出すテクニック

第3章 効率的に勉強するための情報整理術

第4章 すべての基本「読む力」をつける方法

第5章 理系的私見突破の技術

第6章 人から上手に教わると学びが加速する


それぞれの章が10前後の節から構成されているので、全部で55の節があり、それぞれが実践的なアドバイスだ。


勉強法のポイント

この本で鎌田教授の伝えたい肝心の点は次の2つに絞れると思う。

1.勉強するときは集中し、ONとOFFをはっきりさせる。集中するためには弛緩(しかん)する時間も不可欠だ。

2.勉強は場当たり的にするものではない。目標とそれに到達する工程をあらかじめ決め、締め切り時間を決めて「戦略的」に取り組む。


磨くべきスキル

勉強は単に知識を増やすだけではない、音楽や古典などの教養の両方が必要である。スキルとしては次の3つの能力を磨く必要がある。

1.コンテンツ能力 必要な知識を身につける

2.ノウハウ能力 仕事のやり方についての具体的なテクニック

3.ロジカルシンキング能力 データを論理的に組み立てて説得力ある結論を導く能力


もっとも困難なのは「努力すること」そのもの

鎌田教授は勉強でも仕事でも、最も困難なのは「努力すること」そのものだと語る。これには筆者も100%同感だ。

「努力すること」がきちんとできるようになれば、たいていのことは成就する。だから「努力が継続するシステム」の構築が重要だ。

たとえばイチローは「先に満足している」からヒットを打てるのだと。「一試合終わって良いヒットが打てたらそれで満足する」という。

小さな満足を得ることで、努力がおっくうではなくなり、もっと大きな努力を呼ぶ。もっと大きな満足をもたらすという好循環がでてきているのだ。

以前紹介した松井秀喜の「不動心」に「努力できることが才能だ」という言葉が紹介されていた。筆者はこの言葉は、まさに金言と思っている。

たとえば昼休みの食事の後の30分を毎日勉強に充てれば、積み重ねれば相当な時間になる。ビジネスランチでも良い。昼休みの活用の努力が、他人との差別化につながるのだ。


理系的試験突破の技術

なにせ入学試験の出題者であり採点者でもある大学教授だけに「理系的試験突破の技術」という章は大変参考になる。

「試験勉強は相手の意図を探ることから始める」というのは、まさに出題者ならではアドバイスだ。

大学入試のいわゆる「赤本」で、多くの高校生は最初の「傾向と対策」の部分を省いて過去問を解こうとする(そう言われてみれば筆者もそうだった)。しかし、実はこの解説のページに試験突破の重要な手掛かりが書かれているのだ。

この部分は予備校の教科主任のような立場の人が、過去20年間の過去問を研究して解説を書いているので、試験官が要求するポイントをとらえており、問題の傾向をつかんでいる。

大人の勉強に完璧主義は不要であり、「ドライに行こう」と。満点でもすれすれでも資格としては同じであり、効率主義で良いのだ。

テキストは最初から最後まで覚えず、ヤマを張る。模擬試験を利用してヤマの的中率を上げる。テキストで重要な点はどこか、重要なポイントを外さない判断力をいかに養うかが勝負なのだと。

情報は3段階で記憶する(1.熟読、2.音読、3.書いて覚える)とか、試験問題は第1問から解いてはいけない(解ける問題から解く。難問に取り組むより、見直しで5点、10点稼ぐ)とか、入試だけでなく、どんな試験の受験生にも役立つ実践的なアドバイスが満載だ。


鎌田教授もカーネギー信者

「第4章 すべての基本『読む力』をつける方法」の章では、次の写真が使われている。

一生モノの勉強法













出典:本書111ページ

なんと中心にカーネギーの「道は開ける」を置いている。

道は開ける 新装版道は開ける 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10)
販売元:Amazon.co.jp
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この本のなかでもカーネギーの「人を動かす」の「人に好かれる6原則」をそのまま紹介している。

1.誠実な関心を寄せる
2.笑顔を忘れない
3.名前を覚える
4.聞き手にまわる
5.関心のありかを見抜く
6.心からほめる

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10-31)
販売元:Amazon.co.jp
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鎌田教授もカーネギー信者だったんだ。

天才マーケッターの西川りゅうじんさんも、カーネギーの本は擦り切れるほど読んだと言っていた。「自己啓発はヘンなのも多いけど、やはりカーネギーに始まり、カーネギーに終わる」。その通りだと思う。


大変参考になった本だが、詳しく紹介していると長くなりすぎるので、その他参考になった点をいくつか紹介しておく。

★「締め切り効果」で時間の流れを制御する
たとえばインターネット検索なら、あらかじめ15分と締め切りを決めて実行する。トリンプの吉越前社長の「デッドライン仕事術」のように効率をアップさせるのだ。締め切りを決めないと、漫然と1時間以上も検索に費やすというようなことになりがちだ。

デッドライン仕事術 (祥伝社新書)デッドライン仕事術 (祥伝社新書)
著者:吉越 浩一郎
祥伝社(2007-12-15)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


★大学の講義法も「3分間スピーチ」から学んだ
鎌田教授は「冠婚葬祭のスピーチは3分でまとめろ」という解説書を参考にして、講義も3分ごとの話を積み上げるようにした。これによって聞く方の興味が持続するのだと。

筆者もセミナーなどで講演することがある。さっそくこの「3分間スピーチ」術を実行してみる。

★入門書は最低3冊買う(そのうち一冊は新書)

★不得意な分野は児童書を見よ
鎌田教授は「ジュニア新書」はもっとも高度な表現が求められると語る。文系の人には、理系の「プリマー新書(ちくま書房)」や「ジュニア新書(岩波)」が良いという。

実は筆者も図書館で借りて児童書の世界偉人自伝全集で、チャーチルの自伝を読んでいる。

チャーチル (昭和41年) (世界偉人自伝全集〈1〉)
著者:チャーチル
小峰書店(1966)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


チャーチルの伝記は新書でも出ているので、こちらも図書館で借りた。

チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)
著者:河合 秀和
中央公論社(1998-01-25)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


まだ読み始めていないが、児童書の方が写真や図も多くて新書より情報量が多い。鎌田教授が児童書をすすめる理由が納得できる。

★鎌田教授の推薦するテレビ教養番組
次が鎌田教授の推薦するテレビ番組だ。
・「世界一受けたい授業」日テレ 鎌田教授も火山の話で登場したという
・「プロフェッショナル 仕事の流儀」NHK
・「爆笑問題のニッポンの教養」NHK
・「課外授業~ようこそ先輩」NHK
・「美の壺」NHK教育

その他、本の書き込み法(これは筆者は絶対にやらない)、書店を利用するメリット、文房具について、クリアファイルについてなど、知的生産の道具の説明も参考になる。

鎌田教授は、一瞬「2ちゃんねるか?」と思わせるような構成のホームページをつくっているが、ブログとかインターネット利用法は一切出てこないところが、最近の本にしては珍しい気がする。

読者の役に立つようにという熱い思いと気遣いが感じられる。面白く読めて、かつ著者の親切心が伝わってくる良著だ。


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2010年05月05日

村上式シンプル仕事術 まずはどれか一つから始めよう!

村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則
著者:村上 憲郎
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2009-10-02
おすすめ度:4.0
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村上式シンプル英語勉強法が20万部を超えるベストセラーになったグーグル日本法人名誉会長(英語勉強法出版当時はグーグル日本法人社長で本社の副社長)の村上憲郎(のりお)さんの仕事術14ヶ条。

村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける
著者:村上 憲郎
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2008-08-01
おすすめ度:4.0
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またもや見つけたカーネギー信者だ。


村上さんとカーネギー

村上さんは1970年に京都大学工学部を卒業し、日立電子に入社。1978年に日本DECに営業職として転職した。日本DECで受けた最初の研修がデール・カーネギーのマネジメント講習だった。

新米マネージャー研修の一環として講習を受け、カーネギーの考え方に感銘を受け、それ以来「人を動かす」は村上さんのバイブルになったという。

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
販売元:創元社
発売日:1999-10-31
おすすめ度:5.0
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村上さんの人とのつきあい方も、仕事での人間関係のつくりかたも、カーネギーの本がベースになっているという。

ビジネスパーソンにとって必読の書だと村上さんは語る。

村上さんはカーネギーの「人を動かす」の目次をコピーして、デスクの引き出しに入れていた。毎朝引き出しをあけて目次を一通り読んだという。次が村上さんがコピーして持っていた目次だ。

人を動かす目次





出典:本書68−69ページ

カーネギーのもう一冊のベストセラー、「道は開ける」にも、村上さんは影響を受けたという。

道は開ける 新装版道は開ける 新装版
著者:デール カーネギー
販売元:創元社
発売日:1999-10
おすすめ度:4.5
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詳しく紹介すると本を読んだ時に興ざめなので、タイトルだけ紹介しておく。

仕事で大切なのは、仕事の全体像、”仕事という森”を見ることだ。


仕事における7つの原理原則

1.会社のしくみを知る
2.財務・簿記の基本知識を身につける
3.疑問はその日に解決する
4.仕事の目的は顧客満足にある
5.仕事のプライオリティ(優先度)をつける
6.アイデアは頭で考えない(どんどん書き出し、みんなで議論する)
7.デール・カーネギーに学ぶ


グローバル時代に不可欠な4つの知識

1.キリスト教の基礎を理解する
2.仏教の基礎を理解する
3.西洋哲学の基礎を理解する
4.アメリカ史の基礎を理解する

筆者はアルゼンチン(カトリック国)2年間、米国9年間の駐在経験者なので、村上さんの語る4つのポイントは全く同感だ。

もっとも聖書とか仏教とかいまさら読むのも大変なので、時間のないビジネスマンはオーディオブックとか要約本の活用をおすすめする。

筆者は新約・旧約聖書は図書館でカセットブックを借りて、通勤途上にiPodで聴いた。それぞれ10時間強の長さだが、それでも要約版だと思う。

なんですぐに人殺しばかりするのか?と旧約聖書の残酷性に驚いたものだ。

村上さんの挙げるそれぞれのテーマについて一冊の要約本を読めば、おおざっぱには理解出来ると思う。要約本はいくつも出ているが、たとえば聖書については、次の本が地理的な位置関係もわかって参考になった。

図説 地図とあらすじでわかる!聖書 (青春新書INTELLIGENCE)図説 地図とあらすじでわかる!聖書 (青春新書INTELLIGENCE)
販売元:青春出版社
発売日:2009-05-02
おすすめ度:4.5
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仕事に生かす3つの経済学

1.心優しき日本人の陥りがちな陥穽
2.マンキューの経済学を学べ
3.フリードリヒ・ハイエクの自生的秩序がもたらすもの

こちらは結構たいへんだ。筆者は大学時代はサミュエルソンの経済学で学んだ。
サムエルソン 経済学〈上〉サムエルソン 経済学〈上〉
著者:P.A. サムエルソン
販売元:岩波書店
発売日:1992-05
おすすめ度:4.5
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マンキューという名前は知っていたが、本を読んだことがないので、まずは図書館で予約してみた。これが大変だ。

マンキュー経済学〈1〉ミクロ編マンキュー経済学〈1〉ミクロ編
著者:N.グレゴリー マンキュー
販売元:東洋経済新報社
発売日:2005-09
おすすめ度:5.0
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サミュエルソンの経済学も上巻だけで500ページの大作だが、マンキューのミクロ経済学だけで700ページ、マクロ経済学を加えると合計1,300ページにもなる。

図書館で借りたので、来週から読み始めるつもりだ。もし借りずに買っていたら、間違いなく「積ん読」になると思う。

恥ずかしながら、筆者はハイエクも読んだことがない。ハイエク全集などは十数冊あり、どれから読んだらいいのかよくわからない。

大学の時の経済学の先生の嘉治元郎先生が訳したものがあるので、この辺か、あるいは新書でまず読んでみる。

個人主義と経済秩序 ハイエク全集 1-3 【新版】個人主義と経済秩序 ハイエク全集 1-3 【新版】
販売元:春秋社
発売日:2008-04
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自由をいかに守るか―ハイエクを読み直す (PHP新書 492)自由をいかに守るか―ハイエクを読み直す (PHP新書 492)
著者:渡部 昇一
販売元:PHP研究所
発売日:2008-07-16
おすすめ度:4.0
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最後の「仕事に生かす3つの経済学」が重いが、それ以外は腑に落ちるリコメンデーションばかりだ。

リコメンデーションを実行に移すには、強い意志がいる。すべてをいっぺんにやる必要はないので、まずはできるところから、たとえばカーネギーとか聖書、アメリカ史から始めたらよいと思う。

千里の道も一歩からだ。


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2010年04月24日

東大読書法 理III出身のカリスマ家庭教師の3部作 今度は読書法

東大家庭教師が教える 頭がよくなる読書法東大家庭教師が教える 頭がよくなる読書法
著者:吉永 賢一
販売元:中経出版
発売日:2009-07-31
おすすめ度:4.0
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最難関の東大理III(医学部進学コース)出身で、アルバイトで家庭教師や塾講師をやった後、アルバイトが本業となり、結局受験生を教えることを職業にしてしまった吉永賢一さんの本。吉永さんは偏差値93だったという。

このブログでも紹介した東大家庭教師3部作の読書法。他に「勉強法」「記憶法」がある。


「頭が良くなる読書法」として、選ぶ、読む、活かすの3ステップのノウハウを明かしている。ちなみに「頭が良い人」は、現実対処能力の高い人のことだと定義している。

吉永さんは「記憶法」でも小学校3-4年のときにトニー・ブザンの「頭が良くなる本」を読んだと書いているが、この「読書法」でも小学校3−4年のときにベン・スゥートランドの「信念をつらぬくー私はやる」と「自己を生かすー私はできる」を読んで大きな影響を受けたと書いている。ずいぶん早熟な人だ。

信念をつらぬく―私はやる (HD双書 (14))
著者:B.スイートランド
販売元:創元社
発売日:1971-12
おすすめ度:5.0
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自己を生かす―私はできる自己を生かす―私はできる
著者:B. スイートランド
販売元:創元社
発売日:2003-07
おすすめ度:4.5
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そしてその「自己を生かすー私はできる」の本の中の広告で、興味を惹かれて読んだのがデール・カーネギーの「人を動かす」だ。

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
販売元:創元社
発売日:1999-10-31
おすすめ度:5.0
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中学生のときに読んで、この本の各章の最後に書いてあるまとめ(ナットシェル)をすべて手帳に書いて何度も読み返して「メンタル・トレーニング」を実施していたという。

筆者も読書法については一家言があるが、この本では吉永さんのこだわりの読書法を紹介している。

あまり詳しく説明すると本を読んだときに興ざめなので、参考になったいくつかを紹介しておく。

1.頭が良くなる本の選び方
★吉永さんは本屋に行ったら、すべてのフロアに立ち寄って目に付いた本を手にとっているという。これは子供のときからの習慣だそうだが、ネット書店に対するリアル書店のメリットで、本屋の陳列の一覧性を生かしたやりかただ。

★立ち読みのコツは飛ばし読みでも最後まで目を通すことだと。本との相性がわかるという。

★吉永さんは本は買ったほうが頭が良くなると言う。自分で買えばいつでも読めて、書き込みができ、お金を払った分内容が頭に入りやすい。まとめ買いも勧めている。

筆者は「買った本は読まない」傾向があるので、「読んだ本しか買わない」図書館利用派だが、吉永さんのようなやり方もあると思う。

ちなみに筆者の図書館利用法はこのブログに多く紹介しているので、参照してほしい。

2.頭が良くなる読み方
★必須知識とアーカイブ知識(将来使うかもしれない知識)を切り分け、必須知識だけじっくり読み、アーカイブ的知識は軽く読む。

★面白い本は一気に読まない。面白かった本ほど記憶に残らないという。だから面白い本は盛り上がったところで一旦休み、それまでの内容を思い返して、それから読み続けるのだと。

★書き込みや付箋を活用する。この本では吉永さんの流儀の書き込み方や付箋の貼り方も紹介されていて、参考になる。

筆者は図書館派なので、本の書き込みは当然やらず、付箋愛好派だから吉永さんの付箋の貼り方は参考にあった。

その他、名著をコマ切れ時間を使って読むなど、目的別の頭が良くなる本の読み方が紹介されているのでアマゾンのなか見、検索を使って、この本の目次を参照してほしい。

3.頭が良くなる本の活かし方
★いつまでに何をやるという期限入りのTo doリストをつくる。吉永さんはGoogle Docsのスプレッドシートを使っているが、まずは手書きでTo doリストをつくることを勧めている。

★1000回音読する。吉永さんは本によっては1000回音読するという。たとえば斉藤一人さんの本や、ジョン・マクドナルドの「マスターの教え」などだという。

マスターの教えマスターの教え
著者:ジョン マクドナルド
販売元:飛鳥新社
発売日:2001-06-22
おすすめ度:4.5
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★読書ノートをつけたり、ブログに書いたり、他人に話したりというアウトプット法も紹介されている。


本を読んでよかったこと

エピローグに吉永さんは、本を読んで良かったこととして次を挙げている。

1.たましいが震える
2.窮地を救われる
3.この世界のことがわかる

表現はともかく筆者も全く同感である。本は知識の宝庫だと常々思っている。


(蛇足ながら)図書館派の弁明

最後に筆者は図書館派で、吉永さんの「本は買って読む」派とは異なるので、蛇足ながらその理由を一言書いておく。

それは残念ながら世の中には読んでがっかりする本が、10冊のうち5冊以上あるということだ。筆者は年間250冊くらい本を読むが、「読んでから買う主義」なので、買う本は年間20冊程度だ。つまり結構本を選んだつもりでも、読んでから手許に置いておきたいと思う本は1割以下というのが現実である。

吉永さんは著者として本を売る立場なので、図書館利用より本を買うことを当然勧めているし、読書術も本を買う前提で書いているが、「スカ」をつかんだ失望感とダメージは結構大きい。

大体その時々のベストセラーは「スカ」が多いという皮肉を言う人も多く、当たっているケースも結構あると思う。

はっきり言って書評はあまりあてにならない。このブログで紹介した「読んでない本について堂々と語る本」が言っているように、書評は本を読まなくても書けるからだ。(あらすじは読まないと書けない)

読んでいない本について堂々と語る方法読んでいない本について堂々と語る方法
著者:ピエール・バイヤール
販売元:筑摩書房
発売日:2008-11-27
おすすめ度:5.0
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筆者がなぜ図書館を利用するかというと筆者は積読(つんどく)派で、本を買うと安心してしまい「買った本は読まない」からなので、えらそうなことはいえないが、図書館の利用と本を買うのと、うまくバランス取って知識を吸収することをお勧めする。


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2009年11月23日

東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法 

501回めの投稿にあたっての所信表明

今回が501回めの投稿だ。5年で500回というのは、多いようにも見えるが、少ないとも言える。

1回の投稿で、メインの本の長いあらすじと、サブの本の短い紹介、それと関連する本数冊を掲載しているので、いままで紹介した本は1,000冊以上、つまり年間200冊以上になる。

週5〜7冊読んだりオーディオブックを聞いたりしているので、読む本は年300冊程度になる。

中にはあらすじを紹介するまでもない”スカ”の本もあるが、年に200冊のあらすじでは「あらすじ検索サイト」と銘打つには少ないと思う。世の中に出回っている本はどれだけあるのかわからないが、200冊では本当に誤差の範囲だ。

このブログは”書評ブログ”ではない。書評なら「読んでいない本について堂々と語る法」に書かれていたように、極端な話、全く本を読まずに目次や帯だけ読んでも書ける。

しかしあらすじはそうはいかない。すべて読んで内容を自分なりにまとめないとあらすじは書けないのだ。

だからどうしても生産性は落ちるが、それでも500回達成で満足せず、1,000回、2,000回を目指して、もっとペースを上げるべく努力する所存である。

東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法
著者:吉永 賢一
販売元:中経出版
発売日:2008-08
おすすめ度:4.5
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東大理III出身で、アルバイトで家庭教師や塾講師をやった後、アルバイトが本業となり、結局受験生を教えることを職業にしてしまった吉永賢一さんの本。

会社の勉強家の友人に勧められて読んでみた。

吉永さんも小学生の頃(!)カーネギーの本に影響されたそうだ。久しぶりに出てきたカーネギー信者だ。

吉永さんは偏差値93だったという。「東大家庭教師…」シリーズは、「記憶術」と「読書術」が出ているので、今度読んでみる。」

東大家庭教師が教える 頭が良くなる記憶法東大家庭教師が教える 頭が良くなる記憶法
著者:吉永 賢一
販売元:中経出版
発売日:2009-02-20
おすすめ度:4.0
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東大家庭教師が教える 頭がよくなる読書法東大家庭教師が教える 頭がよくなる読書法
著者:吉永 賢一
販売元:中経出版
発売日:2009-07-31
おすすめ度:4.0
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東大理IIIというと、文系・理系を含めて東大の最難関学科で、東大で唯一専門課程が決まっている学部だ(他の学部はまず2年間教養学部に入ってから専門学部に進学振り分けする)。

筆者も理IIIの友人がいるが、エキセントリックというか、ちょっと変わった人が多かった。しかし、この本の著者の吉永さんはまとものようだ。


成績を上げる3つの要素

吉永さんは今まで1,000人以上の生徒に勉強を指導してきた経験をふまえて、成績を上げるには次の3つの要素が必要だと語る。

1.覚える(暗記)
2.わかる(理解)
3.慣れる(練習)

3つの要素のどれが欠けてもダメで、このサイクルを繰り返すことで勉強が高速化する。

ちょっとずつ毎日覚えて、音読なども取り入れて何度でも繰り返すのだ。

吉永さんは本は300回を目安に読む。気に入った本は1,000回読むという。パラパラっとめくって、気になった部分だけ注意深く読むのだという。


実戦的なアドバイスが満載

受験のプロなだけに、実戦的なアドバイスが多い。筆者なりに整理した吉永さんのアドバイスは次の通りだ。


<試験のためのアドバイス>

★わからない問題は無視する

★速くやることを意識する

★模試は結果は無視、復習はしっかり

★カンタンな問題から解いていく

★1問あたりの制限時間を決める

★最後の5〜10分は見直しに使う(新しい問題を解くより点を伸ばせる)

★計算はなるべく暗算する

★論文は3つのネタからふくらます


勉強のためのアドバイス

★どんどん間違える

★こま切れの締め切りで集中力を高める

★「何もしていない時間」を勉強時間にする

★参考書はまず折って汚す

★問題集には「カンタン」と書く

★ノートは後から見てもわかるように書く(これは筆者は反省しなければならない。後からメモに何を書いたのか読めないことが多すぎる)

★ノートに書くのは完結した文章


心構えについてのアドバイス

★人に教える。相手の質問に答える(実はこのブログも本のあらすじを人に伝えて、知識を自分の血や肉にするために書いているものである)

★「つまり?」、「もっというと?」という質問を連発して自分の理解度を確認する。(まさにロジカル・シンキングと同様の手法だ)

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)
著者:照屋 華子
販売元:東洋経済新報社
発売日:2001-04
おすすめ度:4.0
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★やる気が起きない時には、自分の呼吸を観察する(呼吸を感じることで「生きる力」を実感できるのだと。面白いテクニックである)。

★自分に起こったことは、自分に原因があると考えよ(他人や環境のせいにした時点で成長はストップする。自分を変えるという発想を持つのだ)。

★すべてをポジティブシンキングで。

★「現状を受け入れる」ことが成績アップの最初のステップ。

★カンタンを口癖にする。

★感謝する。ほめる。

★定期的に成果をチェックし、記録する

★1秒ルールでさっさと決断し、集中力を高める

★練習での間違いはよろこび、本番での間違いは悔しがる


頭が良くなるのかどうかわからないが、吉永さんの書いていることはオーソドックスな勉強法ばかりで、すべて「腑に落ちる」。

唯一エキセントリックなのは、本を300回、気に入った本は1,000回読むという点だが、これは今度紹介する宇津木妙子さんの講演を聞いた時になるほどと思ったことと一致する。

宇津木魂 女子ソフトはなぜ金メダルが獲れたのか (文春新書)宇津木魂 女子ソフトはなぜ金メダルが獲れたのか (文春新書)
著者:宇津木 妙子
販売元:文藝春秋
発売日:2008-10-16
おすすめ度:5.0
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練習は毎日繰り返しやるものであり、練習の目的も毎日繰り返して教え込むのだと。

宇津木さんは「私は頭が悪いから毎日覚えないと忘れる」のだと謙遜して言っていたが、切り返す刀で、会場の出席者に質問した。

「今年御社の社長の年頭の目標は何でしたか?これから当てるから言ってください」

会場が凍り付いた。まさに宇津木さんにガーンと気合いを入れられた。

社長の年頭の挨拶は年初は覚えていたし、今も漠然とは覚えているが、スラスラ言えるほど頭に入っている訳ではない。それでは覚えていないのと同じことなのだ。

吉永さんの言いたいこともたぶん同じだろう。反復練習、重要なことは毎日でも繰り返し、何百回でもやる。

筆者が尊敬するコンサルタント新将命さんの言う「コツコツカツコツ(コツコツ=勝つコツ)」だ。

それが成績が上がる秘訣だ。


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2008年03月18日

大学生の息子に送る「本を読む本」そしてカーネギー

2008年3月18日追記:

まさかこのブログのせいではないだろうが、カーネギーの「人を動かす」とモーティマー・アドラーの「本を読む本」がアマゾンのベストセラーの50位内に入った。

カーネギーの「人を動かす」は19位。

Amazon best seller






「本を読む本」は36位だ。

Amazon best seller2






長年のベストセラーのカーネギーはともかく、「本を読む本」は知る人ぞ知る本なので、ベストセラーに入るとは驚きだ。

このブログが「本を読む本」の普及に役立ったとすれば喜ばしい限りだ。

是非おすすめしたい本だ。


2008年3月12日再掲:


長男が大学に合格した。ついこのあいだ生まれた様な気がするが、もう4月から大学生だ。時の経つのは早いものだ。

その長男の合格祝いに贈った本が、この「本を読む本」だ。

大学生になったら是非いろいろな本を読んで欲しい。その際、本の読み方を知っておくのと、知らないのとでは将来大きな差が出てくる。

だからこの本を贈った。

それと必読書として渡したのが、カーネギーの「人を動かす」のオーディオブックだ。

How To Win Friends And Influence PeopleHow To Win Friends And Influence People
著者:Dale Carnegie
販売元:Simon & Schuster Audio
発売日:2000-01
おすすめ度:5.0
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尊敬するコンサルタント新将命さんにならって、大学在学中にはデール・カーネギー・トレーニングも受講して欲しいと思う。

本をたくさん読んで、そして人とのつきあい方を覚えて欲しい。そんな思いを込めてこの2冊を贈った。



2008年1月27日再掲:

1月1日の「本を読む本」の中でも紹介した「本200%活用ブック」というムック本を読んでみた。

仕事に活かす!本200%活用ブック


司法試験の伊藤塾の伊藤塾長、このブログでも紹介しているレバレッジリーディングの本田直之さん、無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法の勝間和代さん、「伝説の社員」になれ! 成功する5%になる秘密とセオリーの土井英司さん、和田裕美の「稼げる営業」になる!―お金と感謝がやってくる3つのステップの和田裕美さんという、ベストセラービジネスライターが自分の読書法、勉強法を紹介している。

「本を読む本」からも、このあらすじで紹介する「読書の4段階」や、「積極読書の技術」の4つの質問などが、大きく取り上げられている。

これらベストセラービジネスライターのコメントを読んでいると、誰もが本を自分のものにしようとして、レバレッジメモ、マインドマップ的整理、赤ペンチェック法、読書ノート、早朝読書会など、様々な努力をしていることがよくわかる。

本田直之さんは、若い人には「とにかくビジネス書を読め。本への投資は100倍になって返ってくる」と言っているという。

本を読む時間がないという人には、本は読めば読むほど仕事が効率化されて、時間が生まれるということを言いたいという。

時間がない人ほど、読まないといけないのだと。

だまされたと思って、まずは今読んでいる量の2倍読むようしてみようと。3ヵ月続けるだけで、自分と仕事に大きな変化を感じることができるはずだと。

まさにその通りだと思う。

年収10倍シリーズの勝間和代さんは、オーディオブックの活用を説く。CDなどもいいが、ダウンロードも便利だと。

筆者もオーディオブックを愛用しているが、なんといっても歩きながら本を読める(聞ける)のがいい。すきま時間を有効に活用できる。

勝間さんのおすすめは、英語なら、このブログでも紹介したオーディブル、日本語なら、フィービー新刊JPだという。


本を読む上で参考になるムック本である。早い人なら30分あれば読めるので、以下に紹介するモーティマー・アドラーの「本を読む本」(英語タイトルは"How to read a book")とともに、おすすめする。



2008年1月1日初掲:

本を読む本 (講談社学術文庫)


本日は年の始め1月1日なので、本のあらすじブログにふさわしい本を紹介する。

この本はシカゴ大学の哲学研究所所長で、エンサイクロペディア・ブリタニカの編集長も勤めたモーティマー・アドラーの名著である。先日あらすじを紹介したジム・ローンの"The Art of Exceptional Living"でも必読書として紹介されている。

最近発売された仕事に活かす!本200%活用ブックというムック本でも、アドラーのこの本が紹介されている。

英語版Wikipediaによると、アドラーは1902年にニューヨーク市の貧しい移民の家庭に生まれ、14歳で学校からドロップアウトするが、苦学してコロンビア大学の夜学に通う。そこでJ.S.ミルの著作に感銘を受けるとともに、ミルがわずか5歳でプラトンを読んでいたことに衝撃を受け、哲学研究を志す。

この本は、1940年に出版され、英語圏で高校や大学の教材として広く使われ、スペイン語、ドイツ語、フランス語などにも翻訳され、日本では1978年に邦訳が出版された。

先日紹介した本田直之さんのレバレッジリーディングと共通点もあるが、ハウツー本ではなく、読書の基本を述べたものだ。

アドラー自身の言葉によると、「読むに値する良書を、知的かつ積極的に読むための規則を述べたもので、すべての本がこの本のすすめる様な読み方に値するわけではなく、名著といわれる本にこそふさわしい読み方」ということだ。

60年以上前に書かれた本だが、全く陳腐化しているところはない。

英文版の付録ではGreat Booksとして137人の名著が挙げられているが、この本を読んで学生時代にかじった本(目は通したという意味では読んだが、内容を覚えてもいない本)を、再度挑戦してみようかという気になった。


読書の4段階

この本でアドラーは、読書を次の4段階にわけて説明している。

1.初級読書 ー 初歩的な読み書きの技術を習得するためのもの 単に文の意味を理解するレベル

2.点検読書 ー 時間に重点を置いた読書 系統立てた拾い読み 本田さんのレバレッジ・リーディングに近いが、全く同じではない

3.分析読書 ー 時間に制約がない時に本の内容を徹底的に読み込むもの いわばよくかんで消化すること 理解を深めるための読書

4.シントピカル読書 ー 最も高度な読書 最も複雑で組織的な読書法 一つの主題について何冊もの本を、相互に関連づけて読むこと


シントピカル読書

シントピカル読書とは聞き慣れない言葉で、辞書にも載っていないが、朝日新聞の天声人語などの記事を思い出して貰えば良い。

天声人語では、ほとんどの場合、他の人の本や発言が引用され、それを利用してトピックスを構成している。つまり、TPOにあわせて「著者に読者(天声人語の場合には筆者)の言葉で語らせる」のだ。これがシントピカル読書の特徴で、一番難しい点なのである。

シントピカル読書に至る前には、2の点検読書による拾い読みと、3の分析読書が準備段階となる。

シントピカル読書の第一段階は、主題に関係のある作品をすべて再点検し、密接な関わり合いを持つ箇所を見つけ出すことだが、読む本の論旨がわからなければ、他の本も見つけられないというパラドックスがある。

このパラドックスを解消するツールとして、アドラーはシントピコンというブリタニカの「西欧名著全集」の項目索引を挙げている。

シントピコン






ブリタニカによる「西欧名著全集」の紹介は次の通りだ:

「過去の歴史的作品から20世紀の傑作まで、それぞれの作品・作家を紹介した西洋史コレクションとも言えるものです。

西欧世界の1.文学 2.数学 3.歴史・社会学 4.哲学・神学などの諸分野の著名な作品517編・作家130人を収めた大全集です。

また、グレートブックスならではのシントピコン索引は、知識のデータベースとして活用できます。」

邦訳版では見あたらなかったが、この本の英文版の付録として137人の歴史的名著リストが”Great Books”として紹介されている。

もちろんこの137人だけでは不十分で、カバーされていない名著も多い。今ならインターネットの検索や、いずれGoogleのGoogle Book Searchが完成すれば、シントピコン検索が、もっと簡単に手軽にできる様になるだろう。


積極読書の技術

アドラーは、読者は本を読みながら、次の4つの質問を繰り返さなければならないと語る。

1.全体として何に関する本か
2.何がどのように詳しく述べられているか
3.その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か
4.それにはどんな意義があるのか

さらに本を自分のものにする技術として、本の「行間を読む」ために、本の行間に書き込むことをすすめている。

アンダーラインや、線で囲んだり、書き込みをしたりすることだ。読書は著者と読者の対話でなくてはならないので、読者が著者と意見を異にするか、同じくするかの表現として、本に書き込むのだと。

筆者は書き込みは好きではないので、たくさんしおりを挟んで、あらすじをこのブログにまとめているが、目的は同じだ。

本の構想やプロットを捉え、アウトラインをつかみ、著者の意図を見つけるためにする書き込みは、読者が著者に対して払う最高の敬意であり、書くことと読むことは、教えることと教わることの関係のように相互的であるとアドラーは語る。

さらに、「わかったと言えるまでは、賛成、反対、判断保留の態度の表明を差し控えること」だと。アマゾンなどの書評に多く見受けられるが、「けんか腰の反論はよくない」とアドラーは付け加えている。


文学書の読み方

このあらすじブログは基本的にビジネス書などの教養書を中心としているが、筆者は小説なども時々読んでおり、最近は夏目漱石などの小説の全文を吹き込んだオーディオブックを愛用している。

アドラーは教養書と文学書の違いとして、次のように語っている:

教養書は著者が経験したこと、あるいは経験できるかもしれないことの知識を伝えるものだが、文学書が伝えるのは、経験それ自体で、読者が得ることのできる経験だと。

だから文学書を読むには感覚と想像力が必要で、教養書を読むには判断力と推理力が必要だ。

文学の中に、命題、論証を求めてはならないとアドラーは語る。

筆者は夏目漱石の「それから」や、川端康成の「雪国」などの様に、尻切れトンボで終わる小説には、つい不完全燃焼感を抱いてしまうのだが、それは良くないとアドラーは言う。

作品の好き嫌いを言う前に、読者は、まず作品を誠実に味わうように努力することだと。味わうとは、作者が読者の感情や想像力に働きかけて創り出そうとした経験を体験することである。

教養書を読んで理解するのと同じく、積極的な態度で小説も読まなければならない。

小説は一気に読むものである。「戦争と平和」の様に多くの登場人物が出てきて、わからなくなっても、かまわず読み続けるのだと。


無人島に持参する10冊の本

最後にアドラーは、本はピラミッドだと語る。世界で出版された本の数は数百万(千万?)冊以上に達するが、その中で、本当に読むに値する本は数千冊で、分析読書に適する本となると100冊にも満たないだろうと。

それらは、最高の読書術を駆使しても、完全には理解できず、読み直すたびに、新しい発見のある様な本、つまり永遠の名著だ。

いまたった一人で無人島に流される事になって、持って行きたい本を10冊選べと言われたら、どれを選ぶだろうかと。

自分にとって読み返したい本はどれかということを、改めて考えさせられる。まさに自分の生き方を反映する選択だ。

英語版Wikipediaによると、1980年のインタービューで、アドラーは無人島に持って行く本として次の11冊を挙げている。

トゥキディデスの歴史

プラトンの作品5ー6点
アリストテレスの政治学、形而上学
アウグスティヌスの告白
プルタークの英雄伝
ダンテの神曲
シェークスピアのいくつかの戯曲
モンテーニュの随想録
ガリバー旅行記
ジョン・ロック市民政府論
トルストイの戦争と平和

あなたはどの10冊を選ぶのか?

考えただけでも、楽しくなってくる質問である。


興味をそそられた古典的名著

上記のアドラーの10冊とかぶるものもあるが、最後にこの本の中で紹介されていた古典的名著で、筆者が再度読みたい本を紹介しておく(これらは、筆者が無人島に持って行きたい10冊のリストではない)。

筆者は退職したら図書館に通って、学生時代にかじった古典を読もうと思っているが、人生は限られており、いずれと思っていたら、結局時間がなくなったということもあるので、古典的名著も徐々に読み直そうという気になった。

種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)
著者:チャールズ ダーウィン
販売元:光文社
発売日:2009-09-08
おすすめ度:5.0
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新訳ローマ帝国衰亡史


政治学 (西洋古典叢書)


ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)


国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)


戦争と平和〈1〉 (新潮文庫)


ハムレット (新潮文庫)



参考になれば投票ボタンをクリックして頂きたい。





  
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2006年02月09日

人を動かす カーネギーの不朽の名作

2006年2月9日追記:

過去1年ブログを運営して、このブログで取り上げる有名人の多くがカーネギーの影響を受けていることを実感している。

サイバーエージェントの渋谷ではたらく社長藤田晋さん、大作『男たちの大和/YAMATO』を出した復活したカリスマ角川秀樹さん、ビジネスコンサルタントの新将命さんなどがカーネギーから影響を受けたことを語っている。

自分自身もまたカーネギーの『人を動かす』のオーディオブックを聞き直しているので(これで何回目かわからない。たぶん100回以上は聞いている)、自分の反省も含めて再掲する。

是非お読み下さい。



カーネギーと聞いて何を思い出しますか?鉄鋼王カーネギー(アンドリュー)?カーネギーホールのカーネギー(やはり同じアンドリュー)?私もそう思いました。

今は亡き友人篠塚一太君から『カーネギーの本を読んだらいいよ』と言われて、そのままにしていましたが、その篠塚君がバングラディシュの飛行機事故で亡くなり、彼の言葉を思い出してこの本を手に取りました。

こちらのカーネギーはデール・カーネギーで鉄鋼王とは全く別人で親戚でもありません。しかしながら鉄鋼王に負けず劣らず世界的に有名な人です。

10年ほど前にトルコと仕事をすることがあり、トルコ人のバイヤーと話したときに、彼もこの本をトルコ語で読んだと言っていたのにはびっくりしました。

世界中で1500万部も売れているそうで、まさに不朽の名著です。

私もはじめは日本語で読みましたが、原本でもわかりやすい英語で、また録音テープもおすすめです。

最近後輩にこの本を贈ることがあり、自分でもまた英語のテープを聴き直していますが、本当に記憶に残るいい話をちりばめており、つい感動で涙がにじみます。

つごう100回くらい聞いて、今はアナログーデジタル転換ソフトを買ってきてテープをiPodにダビングして繰り返し繰り返し聞いていますが、いつ聞いても新しい発見と感動があります。

人を動かす 新装版
How to Win Friends and Influence People



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Posted by yaori at 12:13Comments(1)TrackBack(0)

2005年07月04日

渋谷ではたらく社長の告白 読後感爽快な元気の出る本


渋谷ではたらく社長の告白

(今回のあらすじは長いです)

筆者は新刊書でもベストセラーでも、まずは図書館で予約して読む。読まずに買うことはしない。その筆者がインターネット業界本で初めて買った本がこれだ。

藤田氏の経歴・自伝の内容もさることながら、有線の宇野社長、ホリエモン、三木谷さん、GMOの熊谷社長などとの会話の引用が、それぞれの社長の性格がよくわかる発言に仕上がっていて絶妙である。

『社長失格』からホリエモンやGMOの熊谷正寿社長のベストセラーの『一冊の手帳で夢は必ずかなう』などネット関係者で数百冊の本を読んだが、この本は頭にスッと入り、思わず引きつけられる。

女優奥菜恵と結婚していることでも知られているインターネット広告事業のサイバーエージェント藤田晋(すすむ)社長の自伝的告白。すでに5年前に『ジャパニーズドリーム』という本を出版しており、これが2作目。福井県のめがねフレームで有名な鯖江市生まれで、父親はカネボウの工場に勤務するサラリーマンというごく普通の青年。

しかし筆者が一度読んでからあえて本を買ったことでもわかる通り、ただ者ではない。

藤田氏は天才的営業マンでなおかつすぐれた経営者なのだろう。高校まではバンドをやってミュージシャンを目指していたが、高校3年で歌の才能がないことに気づく。偏差値40から急遽受験勉強して、青山学院大学経営学部に入学する。将来の夢として『会社をつくる』ことをこころざし、そのために学生の時に人材紹介業のオックスプラニングセンターにアルバイトとして働き、営業員として頭角を現す。



ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則このオックスプラニングセンターでのアルバイト時代に感銘を受けたのが『ビジョナリーカンパニー』で、いずれ『21世紀を代表する会社をつくる』ことを決意とする。



人を動かす 新装版角川春樹がカーネギーに影響されたことは前に書いたが、藤田氏もまたカーネギーの『人を動かす』から学んだことをあげていること。

なんと藤田氏もカーネギー信者か!

卒業後は当時32歳でインテリジェンスの社長だった有線の宇野社長に出会い、インテリジェンスに入社する。宇野社長が社内一番のハードワーカーだったそうだが、藤田氏も最初からほとんど休みなしに働き、土日も出社し、バリバリ実績を上げ、『すごい新人が入ってきた』と周囲から一目おかれる。

入社1年目でオックスプラニングセンターの元上司、親友に誘われ、3人で会社設立すべく決意し、インテリジェンス宇野社長に告げると、なんと逆提案でインテリジェンスが50%出資する会社をつくるのでその社長になれと言われる。これが入社1年目の新入社員がやることか!宇野氏にも藤田氏にも両方に驚かされる。

『大事なのは金じゃない。本当に大事なのは志を共有できるかどうかなんだ』

『21世紀を代表する会社をつくる』という目標をもった藤田氏はこの宇野社長の殺し文句でコロリ、インテリジェンス入社1年後の1998年4月にサイバーエージェントを創業する。

会社を創るときには事業はなにをやるのかはっきりしたプランがなかったが、宇野社長と相談し、1998年当時注目をあびてきたインターネット関係の事業で、インターネットの営業を専門にする会社をつくることにする。

インターネット業界は営業が弱いから、営業の専門会社をつくるそれだけのシンプルな事業計画で、学生アルバイトを集めスタート。

営業第一号は高津社長のウェブマネーの営業代行。持ち前の営業力で売りまくる。そうかそれでウェブマネーは強いのかと納得できる。

藤田氏は創業直後の1998年7月から『ベンチャー企業の日記』をホームページ上に書き始める。これが今は渋谷ではたらく社長ブログになっている。ブログのパイオニアである。

最初から週110時間働くと決めていた彼らは『毎日事業プランコンテスト』を行う。その中からでてきたのがサイバークリック(クリック保証型広告事業)だ。まずは学生アルバイトにつくらせるが、全然ダメ。困ってエッジの堀江貴文社長を訪問する。

当時の堀江社長は26歳、藤田氏は25歳、おたく的雰囲気の堀江氏のオフィスを訪問すると、スリッパに履き替え、バーカウンターのある会議室に通される。そこに長髪で今よりだいぶ太っていたおたく的な堀江社長が現れる。挙動不審に思えたが、話し始めるとあふれる野心、独演会、ただものではないと直感する。

そんな堀江氏にクリック保証型システムの件を相談すると『いや、できますよ。あんなの楽勝ですよ』翌週には完成。堀江氏自身がプログラムをつくった。エッジにパートナーとして収益を分け合う形としてスタートしたサイバークリックに営業を集中。トラブルは堀江氏がバイクで来て修理した。

堀江氏は『あんなの楽勝ですよ。他にもあったら言ってください』と言うので、メール版のアフィリエイトシステムも『そんなの作れますよ』のノリで、参入。結局これがサイバーエージェントとエッジの共同事業のメルマガ配信システム、クリックインカム=現メルマとなる。

創業初年度の1998年に7名の新卒内定者を取ったが、この7名は1人を除きいずれも退社。しかし2年目の内定者20名はサイバーエージェントグループの要職についている。

表参道のオフィス環境、最先端のインターネットビジネス、若く士気の高い社員たち。すべては優秀な人材を確保するためのプレゼンテーションだったのだと。藤田氏は自分は採用に関しては最初からたぐいまれな能力を発揮していたと語っている。

インテリジェンスは全く他社との差別化はなく、後発にもかかわらず他社をごぼう抜きにしている。理由はただ一つインテリジェンスは採用に非常に力をいれているので、同業他社と比べて明らかに優秀な社員が入社し、その社員が非常に高い士気で頑張っているからだ。『採用力は競争力だ』

1999年にネットバブルが起こる。業績も急成長、サイバークリック、クリックインカム(現メルマ)、大阪支店も大当たり、2000年の史上最年少社長としての上場記録をめざす。原宿から始めたオフィスも北青山、そして2000年に家賃1,500万円の渋谷マークシティに引っ越す。

東大卒、住友商事で働いていた23歳の中山豪氏を口説いて入社。現在財務担当取締役の中山氏は入社当日に寝袋持参で出社、『ベンチャーですから』と20日間泊まり続けた。博報堂から米国にMBA留学中の早川氏を引き抜く。

このころ出資したいというベンチャーキャピタルや上場企業が押し寄せる。ある上場企業の経営者よりは50億だすと言われる。ソフトバンクの孫氏は『インターネット業界は今100年に一度のチャンスです!』と言い、熱狂はさらに盛り上がる。

こんなタイミングで恩人の宇野社長に出資比率の変更を申し出る。『わかった。最初の約束だったもんな。なんとかするよ』と。宇野社長も立派だ。結局藤田氏の持ち分を34%とし、上場後に出資比率が落ちないようにワラントも発行することとなる。

GMO熊谷社長は初対面で『…というわけで、当社はインターネット広告に参入したいと思っている。そのためにもサイバーエージェントに出資させて頂いた上で提携したい』と。このときは断るが、後にGMOはサイバーの株主となり、一時は20%を保有していた。

1999年9月末サイバーエージェントの2回目の決算がでる。売上は5億円、利益は3千万円程度出ているはずだった。ところが売上計上の仕方を変えないと上場できないと監査法人から言われ、その通りにすると売上4億5千万円、利益は2千万円の赤字となる。

2000年春の上場をあきらめかけた時に神風が吹く。孫さんがナスダックジャパンの設立を発表。東証も対抗するために、マザーズ創設を発表。赤字会社でも上場が可能となる。




ジャパニーズ・ドリーム―史上最年少の上場企業社長
上場にあわせて『ジャパニーズ・ドリーム』を出版。時価総額10兆円企業を目指すと宣言。1999年の日経ベンチャーの未上場ベンチャーオブザイヤーの2位に選ばれる。1位は楽天でこのときに三木谷社長と知り合う。  続きを読む
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2005年06月18日

わが闘争 ヒトラーならぬ角川春樹の復活宣言


わが闘争―不良青年は世界を目指す
「不良青年は世界を目指す」とサブタイトルのついた角川春樹の『わが闘争』。ビル街で鎧(よろい)を着た角川春樹の写真の表紙が目を引くので、つい読んでしまった。太宰治を思わせる和服姿で刀を持った角川春樹の写真が、随所に出てくるが、ちょっと貧弱に感じるのは出所すぐで体力が落ちているからか?

読んで驚いたが、ひさびさに『頭にスッと』でなく、『頭をガーンと』やられた本である。本の帯に『カリスマ、復活!』とか書いているが、今まで彼の関係した本や映画を見ていて、角川春樹という人物を意識したことはなかったが、この本を読んではじめて彼がカリスマプロデューサーであったことがわかった。



塀の中の懲りない面々
筆者は年間2〜300冊の本を読んでいるが、この本の様に何故かわからないが、頭をガーンとやられる衝撃を経験したのは安部譲二の『塀の中の懲りない面々』以来だ。その意味ではこの衝撃は20年ぶりくらいだろう。

安部譲二の本もそういえば刑務所出所直後の本であり、角川春樹の『わが闘争』も同じく麻薬で2年半の懲役から戻ってきた直後の本である。

安部譲二の本は楽しく読める本で、この本とは異なるが、才能のある人が懲役の様な異常体験を経験した直後に出す本はとぎすまされた殺気の様なものがあるのかもしれない。

わが闘争 上―完訳 角川文庫 白 224-1


わが闘争』は勿論ヒトラーのマインカンプ"Mein kampf"が有名で、筆者は大学時代にヒトラーの大作は読んだ。

この角川春樹のわが闘争はヒトラーとは何の関係もないと思っていたが、ここで書いていてわかったのだが、ヒトラー本も角川文庫で出版されている。角川春樹は麻薬所持で逮捕されて、追放されるまで角川書店の社長だったので、角川文庫本を意識しているのかもしれない。

おれの魂はスサノオノミコトである』とか言いながら始まるので、なんか『おれ』とか書いていて変なオッサンだなと思ったが、読んでいくと引きつけられるものがある。

おれの魂はスサノオノミコトだが、刑務所生活で仏の慈悲に目覚めたという。刑務所で毎日『我慢我慢の辛抱は大きくて強くてあたたかい心の人をつくるよ』、『前へ前へ。どんなにつらくてとも悲しくとも、いつかきっと道は開けるよ。だから前へ前へ』とも唱えていたのだと。

UFO体験とか、おれの脳細胞は20%近く覚醒しているとか、強い精神エネルギーがあるおれは歩く神社だとか、なにかわけがわからないが、たしかにパワーを感じる。
父親の角川源義、姉の辺見じゅん、弟の角川ホールディング社長の角川歴彦、自殺した妹の真理、生母、義母、自分自身の五回結婚、五回離婚の話とか、言葉では簡単に言い尽くせない生い立ちと家系である。

父親の角川源義は國學院大學の理事だったが、角川書店のビジネスも大きく國學院卒業生に依存していたので、早稲田の文学部に受かっていたのに、父に國學院に入るよう言われて従った話とか、不良ではあるが、父親に認められようと父の愛に飢えていたことがよくわかる。



巨富を築く13の条件

ナポレオン・ヒルのThink and Grow Rich『巨富を築く13の条件』がおれを大きく変えた本であり、デール・カーネギーの『人を動かす』も影響を受けた本であると。



人を動かす 新装版


筆者もこの二書、特にカーネギーは常々読み返す本なので、こんな共通点がガーンとやられる衝撃を受ける基盤なのかもしれない。

仕事はカリスマプロデューサーであることは間違いない。いままで知らなかったが、角川書店が近代的なメディアミックスの有力グループとなって、本、文庫、翻訳、ベストセラーの映画化、テレビコマーシャルとつぎつぎに成功を収めたのは角川春樹の力に依るところが大きい。

ラブストーリー、いちご白書、ジャッカルの日などフォーサイス作品、人間の証明、八つ墓村、犬神家の一族等の横溝正史作品、文庫カバーのビジュアル化、セーラー服と機関銃等々。

生涯不良宣言というのもふるっている。『女と金は追いかければ追いかけるほど逃げる』というのが角川春樹の法則だと。

今は角川春樹事務所でベストカンパニーを目指している。組織が大きくなると一人ひとりのキャラクターが生きなくなる。中島みゆきの歌に『人は多くなるほど、物に見えてくる』という歌詞があるが、その通りだと。社員50名以下が良いのだと。

パワーを感じる強烈な本である。

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2005年02月04日

オーディオブックのすすめ

How to Win Friends & Influence PeopleCarnegie

アメリカでは通勤や出張、旅行などで車で移動することが多いせいか、オーディオブックがよく売れています。

ちょっとしたベストセラーにはオーディオブックが出ており、手軽に買えます。

年間200冊ほど本を読む私でも同じ本を2回以上読んだことはほとんどありません。

同じ本を読むのは本当にエネルギーが必要ですが、オーディオブックならバックグラウンドミュージック代わりに気軽に聞けて、何度も何度も繰り返し聞けます。

英語に慣れていない人はやや抵抗感があるかもしれませんが、オーディオブックは本当にわかりやすい英語ですので、初めての人にもおすすめできます。

カーネギーの人を動かす(How to win friend and influence people)はその中でも特におすすめです。ナレーターが非常にわかりやすい英語で話すので、ヒアリング能力アップに絶好です。
  
Posted by yaori at 00:47Comments(0)TrackBack(0)