社長の仕事48の鉄則―船井総研社長が提言!会社を強くする「ヒト・モノ・カネ」の実践ノウハウ
船井総研社長の小山政彦さんの経営鉄則集。2002年2月発刊の本だが小山さんの先見性に驚く。
先見性と予想の正確さに驚く
たとえば鉄則9の「5つの『一体化』から時流を読みとれ」だ。
『分離と融合』の一体化では競合は3社が最適なので、3社に淘汰されると説く。この本発刊時の2002年の時点では4大金融グループが誕生したばかりだったのに、5年以内に3大金融グループへの再編が来ると予想している。東京三菱ーUFJ統合で、3年も掛からずに小山さんの予言が実現した。
中国製のフレームと韓国製のレンズを使った眼鏡業界の安売り業界化も予想している。
また『エコノミーとエコロジー』の一体化ではトヨタのプリウスを取り上げる。初代プリウスは一台売ると50〜100万円の損と当初言われていたのだが、エコノミーとエコロジーを両立する解決策がプリウスだと。
現在のハイブリッドカーの人気を2002年の時点で予測しているのだ。
話は横道にそれるが、筆者も今年ハリアー・ハイブリッドに買い換えたが、満足感が非常に高い車である。
先日東京モーターショーに行ってきたが、多くの自動車メーカーがコンセプトカー、あるいは近日発売予定の新車として展示しているのが、ハイブリッドカーあるいは燃料電池車、水素エネルギー車だった。
その中でもトヨタは現在販売中のハイブリッドカーをずらっと並べ、コンパニオンによるエスティマハイブリッドの新モデルの説明や、レクサスの来年発売予定のハイブリッドモデルも多く展示し、エコロジー=トヨタを強く印象づけていた。
レクサスは日本よりアメリカで多く売れているが、アメリカのエコロジー意識が高まっていることをにらんで、レクサスの最高級車やスポーツカーもハイブリッドモデルを販売するのだ。もはやベンツもBMWもこの分野ではレクサスの敵ではない。
船井総研の得意分野
船井総研というと、船井幸雄さんや小山さんが有名だが、本業はなんのコンサルティングなのかこの本を読むまで、筆者も知らなかった。
船井総研は小売業を得意とするコンサルティング会社なのだ。
小山さんによると、船井流コンサルティングとは全国各地の小売店に足を運び、経営指導して、たとえば15〜20万円のコンサルティング料をもらうというやりかたであり、船井幸雄会長に教えて貰った地方回りのコンサルタントが創業の原点であると。
小山さんは商店や会社のレベルを次の3段階にわけている:
生業レベル : 『戦略、戦術、戦闘』がひとりに集中 ワンマンカンパニー
家業レベル : 『戦略、戦術』と『戦闘』にわかれる 社長と部長、あるいは店長
企業レベル : 『戦略』『戦術』『戦闘』がわかれる 社長が戦略、部長が戦術、社員が戦闘
社長はどこかの段階でさらなる権限委譲をするという戦略を持ち、社長自身が自己改革をしなければレベルアップは難しいと。人をうまく使う。それが社長の仕事だ。
船井総研のトップコンサルタント五十棲さんが社長は現場に出るなと言っていることもこの小山さんの話と同じである。
この本では社長の仕事の48の鉄則をあげている。いくつか印象に残る話を紹介しておこう。
船井幸雄研究
小山さんは『船井幸雄研究』で社長になったと。会社にとって正しいことは、その会社における常識であり、『社長の常識』である。従って社長の考えを正しく理解して社員に伝えてきたらからこそ、船井幸雄さんを継いで社長になったのだと。(鉄則1)
社長は『資金繰り』『人材育成』に全力を尽くせ
タイトルの通りだが、コミュニケーション能力、『対話力』があることがトップであることの重要な条件の一つである。ニッサンのゴーンさんが良い例だ。(鉄則4)
一体化
これからの経営では『一体化』がキーワードであると。
たとえばウォルマートは超ローコスト経営で有名であるが、店の入り口にはグリーターがいて、あいさつをし、返品カウンターには3人がおり、レジスターは平日にもかかわらず多くが開いている。欠品を出さないというコンセプトで在庫も多く抱えている。
お客に見えるところではハイコストなのだが、お客に見えないバックヤードでは徹底的なローコスト経営をしているので、お客に接する部分でハイコストにやれるのである。ローコストとハイコストの一体化である。
競争と共生の一体化の例としてはトヨタとニッサンの共同配送をあげている。
両社は激しい競争をしているが、同じ地区に別々に配送するよりも1台の輸送車でまとめて運んでトヨタとニッサンの両方の販売店に輸送することを始めているのだと。
この話、筆者は寡聞にして知らなかったのだが、もし本格的協業が実現しているのだとすると凄いことだ。(鉄則8)
現象の裏にあるニーズをつかめ
吉野屋の牛丼は400円から280円に3割値下げして、売上が5割増えた。にわかには信じられない計算だが、この理由は新しいニーズをつかんだことだ。
従来昼食価格帯は800円ゾーン、500円ゾーンの2つだったが、これに加えて300円ゾーンが登場した。
住宅ローンと教育費で小遣いが減り、年収800万円程度のサラリーマンが昼食300円族として牛丼屋に走ったのだ。
マクドナルドは既にハンバーガーを半額にしてこの人たちを取り込み、吉野屋も300円でお釣りが来ることが魅力だった。
このように表面的な現象に目を奪われず、ニーズのベースとなっていることを把握することが最も重要なのであると。(鉄則39)
ビジョンを絵に描いた餅で終わらせない
5年後会社をどうしたいというビジョンを持っているか?それを実現するための具体的な方策を持っているか?
小山さんのビジョンは6年で売上を倍にすることで、これの実現には逸材社員の流出を止めることが重要だ。
社員というのはある程度やめるものであり、やめていいものなのだ。船井総研の場合、従来40人が入って、40人がやめていく会社であったが、これを60人が入って、20人がやめていく会社にするのだと。
具体的には評価制度、給与、賞与の査定を変えた。
外部に対しては『創客』、『創品』、つまり顧客の創造と、新規商品創造である。
船井総研ではリフォーム、リサイクル、エコロジーで新規分野を開拓、これと新規顧客獲得で売上高倍増をめざすのだと。(鉄則44)
タイトルだけでも理解できる
鉄則22 後継者は雰囲気で決まる
鉄則23 モチベーションのアップこそが業績向上のカギである
鉄則25 社員が話したくなる環境をつくれ ー 社長さん、社員と食事に行っていますか?
鉄則26 すべての不満を聞くことが正解ではない ー 民主的な企業は崩壊する
鉄則27 怒りそうになったら、『一杯の水』と心得よ
小山さんのお父さんは怒りっぽい人だったが、怒るのをやめるために怒りそうになった瞬間、「水を一杯くれ」と言って、それを飲んでから話すようにしていたと。
鉄則28 ほめるは、やる気アップの特効薬だ
鉄則29 女性社員はアナログ対応で使いこなせ ー 女性は3日に1回ほめよ
鉄則31 やめていく社員の影響力を軽視するな
鉄則45 最終的に目指すところを確認せよ
鉄則46 社長は全社員と夢を共有せよ
小山さんが考える社員の夢とは「自分の生活が安定して、所得が伸びること」だと。
小山さんの近著の『へえ、儲かる会社はこんなことをやっているんだ!』もスッと読めてインパクトがあり、参考になる本だったが、この本も2002年の本とは思えない新鮮なものである。一読の価値がある。
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