2016年03月07日

天才 石原慎太郎が描く田中角栄

天才
石原 慎太郎
幻冬舎
2016-01-22


石原慎太郎が描く田中角栄の自伝的小説。

この本の「長い後書き」に石原慎太郎が記している。

この本を書くことになったのは、早稲田大学の森元孝教授との会話がきっかけだったという。

森教授は「石原慎太郎の社会現象学」という本を書いている。




「貴方は実は田中角栄という人物が好きではないのですか?」と森教授に聞かれ、

「確かに、彼の様にこの現代にいながら中世期的でバルザック的な人物は滅多にいませんからね」。

と答えたという。

石原慎太郎は田中角栄の金権政治に真っ向っから反対していた。しかし、その一方で田中角栄という政治家が好きだったという。

テレビというメディアを造成したのは田中角栄だし、高速道路の整備や新幹線網、各県に一つの空港、エネルギー資源の乏しい国に適した原子力発電推進、資源をメジャーに依存しないための自主資源外交、30を超える議員立法のいくつかは現在も有効だ。

自主資源外交を推進したためにアメリカの虎の尾を踏んで彼らの怒りを買い、虚構に満ちた裁判で失脚に追い込まれたが、それ以前に重要閣僚としてアメリカとの交渉で見せた姿勢は、彼がまぎれもない愛国者だったということがわかる。

田中角栄の先見性に満ちた発想が、今日の日本の在りようをつくったともいえる。

筆者もまさに石原慎太郎さんと同感だ。

このあたりは、「田中角栄 封じられた資源戦略」という本のあらすじで紹介しているので、参照してほしい。



この本では、田中角栄の生い立ちから、高等小学校を卒業後、土方をやって身に着けた世の中の見方が後々役に立ったことなど、様々なエピソードも交えて田中角栄自身が語るという一人称小説に仕上げているので、非常に読みやすい。

石油ショックでアメリカやメジャーに頼っていた日本のエネルギー自立を促進するため、カナダ、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、ビルマ(現ミャンマー)を歴訪して資源確保の契約を進めた。

これがニクソンの片腕だったキッシンジャーの反発を買い、キッシンジャーは田中のことを「デンジャラス・ジャップ」と呼んで、のちにアメリカが仕掛けたロッキード事件で田中角栄は失脚した。

次の三木内閣の法務大臣となった稲葉修が「逆指揮権」を発令して、田中角栄は受託収賄容疑で逮捕された(その後起訴され、一審、二審で有罪、最高裁の判決が出る前に田中角栄は75歳で亡くなり、死後最高裁が収賄を認定した)。

三木内閣は総選挙で大敗、次は福田内閣となった。

福田内閣時代には、中国の小平副主席が田中邸を訪ね、「水を飲む時、井戸を掘った人の苦労を忘れない」と言って、田中角栄に感謝したことは有名だ。

この本では田中角栄の妾や愛人との関係などの私生活、政治活動、仲間の政治家の評価などについても、田中角栄自身に語らせていて大変面白い。


小説なので、これ以上は紹介しない。

一人称小説で、これほど読みやすいものは珍しいと思う。

全200ページの本だが、2時間程度で簡単に読める。

是非一読をおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


  
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2008年02月03日

東京の窓から世界を 石原都知事の対談集

東京の窓から世界を


東京のローカル局であるMXテレビで放映されている石原慎太郎都知事と、各界からの多彩なゲストとの対談集。

この本では、なかにし礼(作詞家、作家)、石井和子(気象予報士会会長)、蓮池透(拉致被害者家族連絡会副代表)、岡崎久彦(元大使、国際政治評論家)、はかま満緒(タレント)、葛西敬之(JR東海会長)、小田啓二(日本ガーディアン・エンジェルス理事長)、星野仙一(阪神シニアディレクター)、中曽根康弘というゲストと対談をしている。

テレビ番組なので台本もあるのかもしれないが、それにしても石原慎太郎氏の博識には感心する。

文人政治家と言えるだろう。

石原慎太郎氏は国会議員として25周年の時に国会議員を辞めて、都知事に転身した。やはりこの人は、国会議員でワンオブゼムになるより、大統領型の都知事の方が向いていると思う。


ところどころに東京都の宣伝も入っている。

たとえば神田川の治水対策として、環状七号線の地下40メートルに設置された直径12.5メートル、長さ4.5キロの巨大な調整池トンネルのことが紹介されている。2007年に全部完成したが、2004年、2005年の台風や集中豪雨の時は、浸水対策として威力を発揮した。

このブログでも紹介した拉致被害者家族会の蓮池透さんとの対談では、帰国した拉致被害者には月額24万円しか政府から支給されていないことや、元外務省の田中均前外務審議官のミスターXのことが糾弾されている。

外務省は拉致をテロだとは言わないと。テロと言っているのは、安倍晋三氏と中山恭子氏だけで、小泉総理も「普通に考えればテロだ」と言っているそうだ。

外務省の田中均元外務審議官の「ミスターX」秘密外交は許せないと石原氏は語る。当時の安倍晋三官房副長官も矢野外務副大臣も、ミスターXが誰か知らなかったという。

加えてブッシュー小泉会談の前に、田中氏が訪米して、加藤大使など正式な外交チャンネルをスルーして、直接米国国務省のアーミテージ氏とかケリー氏と会い、北朝鮮に対して強く当たらないように依頼したという。

首脳会談では「北朝鮮問題の平和的解決には対話と圧力が必要」という共通認識で一致しているものを、田中氏は「圧力」という言葉を公表しないように、アメリカに働きかけていたのだと。

石原氏は、外務省の悪口は言いたくないが、と言いながらも、白洲次郎の論文集を引用して、外務省は「あいつら、外国語ができない。外国語ができない人間は、社交ができない。社交ができない人間に外交できるか」との言葉を紹介する。

逆に一番しっかりしているのは、やはり警察を中心にした内務省で、マッカーサーが軍隊のあと、これを徹底的に潰そうとして、内務省が潰されたのはわかると白洲の本に書いてあったと言う。

北朝鮮へのコメの援助については、石原氏は「ものをやらなかったら出てこない」んじゃない、「やらなきゃ出てくる」んだよと語る。

日朝平壌宣言では、外務省は「拉致」という言葉を一切使わなかった。「日本人の生命に関わる云々」という一行が拉致問題だというのだと。

蓮池さんも、著書では言い出せないことを、石原氏のつっこみもあってか、不満を暴露している。


元大使、国際政治評論家の岡崎久彦氏との面談では、石原氏の米国政界とのコネクションを披露している。

松下幸之助の言葉を紹介した江口克彦さんの「成功の法則」ハドソン研究所の未来科学者ハーマン・カーン氏のことが出てくるが、石原氏はハーマン・カーン氏と仲がよかったので、アメリカの情報がいろいろ入ってくると言う。

今のブッシュのホワイトハウスを動かしているのは、カール・ローブとか、ロバート・ゼーリックとか、みんなハドソン研の連中だが、日本の大使館はそういう人たちへのアプローチができていないと。

岡崎さんは、戦後の総理大臣で偉かったのは岸信介氏だという。

総理就任後、すぐに外遊しているが、最初に行ったのは戦前日本を尊敬していたインドのネールのところで、次にパキスタン他、最後に台湾に行って蒋介石に会って帰ってきた。

アジアで大歓迎を受けて、アメリカに行き、アイゼンハワーに会い、それから東南アジアをすべて訪問し、アジア外交の基礎をつくったという。


弟故石原裕次郎の親友のはかま満緒との対談では、大道芸人をヘブンアーティストとして東京都が認めた話が出てくる。当時の警視総監が話が分かる人で、道交法の関係で資格が必要だが、公道での大道芸を認めることになった。

最後にはかま満緒が、伊勢のおかげ横町の様に、東京でもお台場に「大江戸名店街」をつくり、江戸時代から営業している老舗400店をあつめることを提案している。

JR東海の葛西社長との話では、フランスのTGVは機関車が客車を押し、引っ張る動力集中方式をとっているので、モーターが各客車に分散している日本の新幹線の様に急停車ができず、各駅停車運行や小刻みな運転はできないという。

日本の新幹線は1時間に12本運転しているが、TGVではせいぜい1時間に2−3本で、韓国もTVGを買って困っているようだと石原氏は言う。

JR東海だとやはり話題はリニアだ。ドイツのリニアは8MMしか浮上しないので、ボルトが落ちていても障害になるが、日本の超伝導リニアは10CM浮上する。既に最高時速550キロを達成したという。

実験線は19キロしかないが、一日に90往復しているので、約2,800キロを一日で走行している。これだけ走れれば、いつでも実用化できるのだという。

2025年までに首都圏と中京間でリニアを実用化する計画を、JR東海は進めている。

リニア新幹線





出典:リニア中央新幹線ホームページ


星野仙一氏との対談では金田正一氏の話が出てくる。カネやんと石原氏は山中湖の別荘が隣同士なので、仲が良いが、左手は硬くなって右手のようには曲がらないという。「この左手で400勝して、プロ野球で数十億円稼いだのよ」と言っていたという。

その金田の400勝めの試合の負け投手が星野仙一だという。

金田とはルーキーの年にオールスターで一緒に練習したが、22歳の星野が、40歳近い金田について行けなかったという。

星野は、同年代のナンバーワンは江夏だという。スピード、コントロール、勝負勘、すべてが長けていたという。

長嶋はつかみどころがなかったという。どこに放っても一応バットに当ててくる。王は選球眼が良いので、「ストライクしか打ちませんよ。勝負したかったら、ベースの中に放ってきなさいよ」というタイプだったという。

ただ星野はONよりもちょこまかしたヤクルトの若松とか、広島の高橋慶彦などが嫌いだったという。


最後の中曽根康弘氏は、「命の限り蝉しぐれ」という本を共著で出しているが、今なお改憲の意識が高いのには、感心した。

命の限り蝉しぐれ―日本政治に戦略的展開を


中国は10−15年のうちには日本に追いついてくるが、政治、経済面で2020年頃からがどうなるか動向をさぐり、共存していくのが今後の大きな仕事だという。

中曽根氏は、憲法問題はやはり大事な問題だから、国民運動を起こさなければならないと意欲を語っている。今年90歳になるが、意欲は衰えない。スゴイ人だ。


ゲストも石原慎太郎氏が事前に人選しているのだと思うが、気の置けない対談で、読み物としても面白い。おすすめの本である。



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Posted by yaori at 21:48Comments(0)TrackBack(0)

2006年03月05日

息子たちと私 石原慎太郎さんの深い子息愛がわかり共感できる

息子たちと私―子供あっての親


筆者は息子と電話で話すのが好きだ。電話の口調というか、声のトーンというか、話していて楽しいという感じが伝わってくる。

カーネギーの本の人に好かれる方法の有名なくだりを思い出す。"he will almost jump out of his skin to show you how much he likes you." "with leaps of joy and barks of sheer ecstasy."

これは人の話ではない。犬と彼の子供の頃の愛犬チッピーの話だが、カーネギーは無条件の愛の例として使っている。

犬と同列にしたら息子も怒るだろうが、無条件の愛、好かれているという感じは、この犬の例が一番直感的にわかると思う。

石原慎太郎さんの『息子たちと私』も、石原さんの子息に対する無条件の愛がよくわかる。

石原慎太郎さんといえば、昔は『スパルタ教育』というベストセラーを出して物議をかましたことがあるので、息子には厳しいスパルタ教育をしている様な印象があったが、この本を読むと石原さんの深い子息愛が感じられる。


石原さんの息子への愛の原点

石原さんの息子への愛の原点は、石原さんの父親が会社で会議中に昏睡状態となって、そのまま帰らぬ人となった時だと。

会社に行って冷たくなった父親の遺体にふれたときに、自分と父の関わりは決してこれで終わったのではないと信じていたと。

石原さんは長男が生まれて『ああ、これでまた確かに環が一つ繋がったな』と強く感じたそうだ。

筆者も子供が産まれて、これで次代につなげるという人間として最低限の貢献はできたとを感じたものだ。


酒と教育

石原さんの最近のエッセーは『老いてこそ人生』とか『弟』を読んだが、自然体で、いわゆる昔のタカ派のイメージは薄れている。

しかしそれでもホテルオークラのメインバーで『大丈夫か』と念を押して頼んだドライマティーニがひどい出来だったので、突っ返すという様な『教育』をしている。

酒は文化であり、日本を代表するホテルで相手が外国人であれば恥をかくのはホテルではなくて、東京であり日本であるからだと。

この件は、後日談があり、たまたま居合わせたどこかの商事会社の社長が見て、石原は都知事になって人前で些細なことでホテルの従業員を叱りつけていたが、慢心は禁物だなどと批判していたという話を後から聞きつけ、石原さんは酒は文化であり、それがわからない手合いのレベルはしれていると人づてに伝えたそうだ。


石原さんは実は先輩

石原さんは実は高校、しかも同じサッカー部の先輩なのだが、石原さん自身の言葉によると受験校にいやけがさして登校拒否の様になり、1年間休学したそうで、あまり母校に良い思い出はない様だ。

そのせいか、子息は全員幼稚舎から慶応に入れている。全員姓名判断を受けての命名の長男の伸晃(のぶてる)さんは政治家、次男の良純さんは俳優(と気象予報士)、三男の宏高さんは昨年代議士となり、四男の延啓(のぶひろ)さんは画家となって、全員所帯持ちとなり、いまや石原さんには6人の孫がいる。


目次

この本の目次は次の通りだ:

1.存在の環

2.幼稚な親

3.子供たちの災難

4.兄と弟の関わり

5.似たもの同士

6.息子たちの仕事と人生

7.どういう生き方をするのか

8.スポーツに関するわが家のDNA

9.酒はわが家の伝統

10.酒という教育

11.海に関するわが家の系譜

12.叱る、諭される

13.子供の性

14.息子との旅

15.息子の結婚と新しい家族たち


印象に残るストーリー

いくつか印象に残るストーリーがある。

良純さんがホノルルマラソンに出て、残りあと何キロかという地点で突風に帽子を吹き飛ばされ、拾おうとしたが、今まで走ってきた脚を一瞬とはいえ急に止めたら痙攣が起こりそうで、暑さも激しく痙攣も怖いので、しばらくその場で脚踏みしながらついに思い切って立ち止まり、帽子を拾って走り出したという話だ。

この話を聞いて石原さんは感動したと。含蓄のある話だが、たとえ良純さんがいつか人生で突発事に巻き込まれても、彼は少なくとも他の男たちよりはそれに耐えられるに違いない。その理解こそが父親と息子のいうにいわれぬ根源的な関わりというものなのだと思うと。


子供の性

筆者も思春期の息子を持つ身であり、実はひそかに期待していた『子供の性』という章は、石原ファミリーの性教育がわかるのではないかと思っていたが、あまり詳しくはない。

やはり幼稚舎から慶応に入れると、ませた連中がいて、自然とわかる様になるのかもしれない。筆者の場合は、自分で考えるしかなさそうだ。

筆者の友人の六本木の婦人科の赤枝クリニックの赤枝先生も登場する。都の条例改正の時に、最近の性風俗の話を石原さんにレクチャーしたようだが、年輩者相手なら安心だと援助交際のアルバイトを娘にすすめる母親がいるとか驚かされる話だ。

サッと読め、石原さんの深い愛に共感できる良い本だった。                                     

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Posted by yaori at 12:51Comments(0)TrackBack(0)