2010年10月21日

電子書籍の衝撃 いつも参考になる情報が多い佐々木俊尚さんの近著

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
著者:佐々木 俊尚
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2010-04-15
おすすめ度:3.5
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主にIT関係の本を年に何冊も出しているジャーナリスト佐々木俊尚さんの近著。2010年4月に出た本だが、筆者の読んだものはすでに第8刷だった。よく売れているようだ。

佐々木俊尚さんの本はこのブログでいくつか紹介しているが、いつも新鮮な情報があり有益だ。

この本でも電子書籍ビジネスをめぐる動きを、iPodを中心とする音楽配信業界の動きと比較しながらまとめていて参考になる。


セルフパブリッシングの時代

この本で一番参考になったことは、電子書籍(紙でも可能)の出版方法を「セルフパブリッシングの時代へ」ということで、Amazon Digital Text Publishing (Amazon DTP)とよばれるアマゾンでのセルフパブリッシング方法を詳しく紹介していることだ。

筆者もいずれはあらすじをまとめた本を出したいと思っており、それには注釈代わりにリンクが織り込める電子書籍が最適と思っていたが、今やAmazon DTPを使えば、紙媒体さえ必要なければ初期費用なしで自分の本が出版できるのだ。

セルフパブリッシングは自費出版とは根本的に異なる。自費出版は最低2,000部とかの買い取り保証や諸費用等で、最低でも数十万円掛かる。ところがセルフパブリッシングは、売れればアマゾンが手数料を取るだけなので、紙媒体を出さなければ、基本的に出版費用はかからない。

本の国際標準コードであるISBNコードを日本図書コード管理センターに申請するのに、10冊分で1万7千円くらいかかるが)、これは本を検索するときに必要なので、必要経費と言えるだろう。

アマゾンDTPはまだ日本語対応画面がなく、英語、フランス語、ドイツ語にしか対応していないが、いずれキンドルを日本語対応化すれば、日本語での手続きも始まるだろう。

英語のアマゾンのサイトに行くと”Publish on Amazon Kindle with the Digital Text Platform”という電子書籍出版ハウツー本のキンドルバージョンが無料で読めるようになっている。

紙の本で出すなら、クリエイトスペースというアマゾンの子会社で申し込む。これで売れたらオンデマンド印刷で本が出版できる。

あとは自分のブログとかでプロモーションすることだ。


音楽のセルフディストリビューション

すでに音楽では、自宅で録音してネット配信したりCDで売ったりしているアーティストがいて、たとえばつぎのまつきあゆむさんなどが代表例だ。

自宅録音自宅録音
アーティスト:まつきあゆむ
販売元:UK.PROJECT
発売日:2005-05-11
おすすめ度:5.0
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まつきさんは、自分の音楽活動を支えるための「M.A.F.」というファンドもつくっており、だれでも出資して音楽販売のプロフィットシェアリングに参加でき、まつきさんのお金の使い方も知ることができる。

その他参考になった例を箇条書きで紹介しておく。


参考になった事例

★「7つの習慣」の著者、自己啓発本のベストセラー作家、スティーブン・コヴィーは、過去の本の電子ブック発売権を大手出版社のサイモン&シュースターからアマゾンに移した。

7つの習慣―成功には原則があった! (CD付)7つの習慣―成功には原則があった! (CD付)
著者:スティーブン R.コヴィー
販売元:キングベアー
発売日:2009-08
おすすめ度:5.0
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「7つの習慣」は筆者も好きな本の一つで、全世界で1,000万部以上売れているという。筆者はオーディオブックと日本語訳の本と両方持っている。このブログではその「7つの習慣」の発展編の「第8の習慣」のあらすじを紹介した。

大手出版社のネット販売での作者の手取りは25%程度だが、アマゾンのディールでは50%以上がコヴィーさんの手取りになるという。

★アマゾンはキンドルがスタートしたばかりの頃は65%のマージンを取っていたが、iPadが参入してきたので、一挙にマージンをアップルに対抗して30%に下げた。

★ボブ・ディランはYouTubeに新作プロモーションビデオをアップして、SNSのマイスペースに自分のページを設けて情報発信したので、「ウォールフラワーズのリーダーのジェイコブ・ディランのオヤジはなんだかスゴイらしい」ということでクチコミが広まり、往年の名曲までが売れるようになったという。

MySpace Bob Dylan









★若者は活字を読まなくなったわけではない。日本の出版業界が劣化しているのだ。本の売り上げは8億冊程度で変わらないが、新刊の点数は1980年代の年間3万点から、8万点に増えている。駄作の乱発で、一冊当たりの売り上げが減っている。

★発行部数が減らない理由は、「本のニセ金化」にあるという。本は欧米では買い取り制だが、日本では再販制度があるので、出版社から取次に卸すと、本来委託販売にもかかわらず、代金は100%支払われる。売れずに返品されると、出版社は返金資金を工面しなければならず、あわてて別の本を取次に売って、その支払いで前の本の返品代を支払うという自転車操業をしている。これが佐々木さんの言う「ニセ金化」だ。

★ケータイ小説は読んだことがないが、この本でその一節が紹介されている。

「ん?? 元気元気♪ ヤマト酔いすぎだし〜!!」「俺酔ってねぇって〜なぁ〜酔ってねぇから〜」「お〜同じバイトだよ〜。ってか〜二人は付き合ってんのぉ?」「えっ、美嘉とヤマトが??まっさかぁ〜ないない!!」「俺たちマブダチだもんなあ〜美嘉ちん〜」

出典:本書210ページ 原典:「恋空」美嘉 

ケータイ小説とはどんなものか初めて知った。引用するのも疲れる。本もよく売れているようだ。

恋空〈上〉―切ナイ恋物語恋空〈上〉―切ナイ恋物語
著者:美嘉
販売元:スターツ出版
発売日:2006-10
おすすめ度:2.0
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★もはや「出版文化」は幻想で、志の高い編集者は「はぐれ者」扱いされているという。だから「新しい革袋には新しい酒を」ということなのだと。

★グーグル検索で全文検索できても、本の売れ行きには影響しない。「全文検索できると本が売れなくなる」などという話の証拠はどこにもない。ケータイ小説など、ウェブで全文配信されているにもかかわらず、売れまくっているものもある。

★ソーシャルメディが生み出すマイクロインフルエンサーの活用が、これからの本や電子書籍の売り方だ。


電子書籍の総括

最後に佐々木さんは電子書籍を次のように総括している。

1.キンドルやiPadのような電子ブックを購読するのにふさわしいタブレット
2.これらのタブレット上で本を購入し、読むためのプラットフォーム
3.電子ブックプラットフォームの確立が促すセルフパブリッシングと本のフラット化
4.そしてコンテキストを介して、本と読者が織りなす新しいマッチングの世界

これが電子ブックの新しい生態系だという。

筆者も海外の友人の持っているキンドルを見たことがあるが、その画面の鮮明さに驚いた。また読み上げ機能もあり、速度や男性女性の声を選べるという点も気に入ったが、日本語版がないのでまだ買っていない。

iPadになるかキンドルになるかわからないが、いずれ日本語版のタブレットデバイスと、本の配信プラットフォームが確立してきたら是非購入したいと思っている。


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2010年06月14日

マスコミは、もはや政治を語れない ジャーナリスト佐々木俊尚さんの近著

マスコミは、もはや政治を語れない 徹底検証:「民主党政権」で勃興する「ネット論壇」 (現代プレミアブック)マスコミは、もはや政治を語れない 徹底検証:「民主党政権」で勃興する「ネット論壇」 (現代プレミアブック)
著者:佐々木 俊尚
販売元:講談社
発売日:2010-02-26
おすすめ度:4.0
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ネット関係の著作を量産しているジャーナリスト佐々木俊尚さんの2010年2月の最新刊。

タイトルの「マスコミは、もはや政治を語れない」というのは、昨年の民主党の圧勝は小選挙区という選挙手法によるもので、全得票率では議席数ほどの差がついていないことをマスコミはどこも語らないことを指している。

他にも日本のマスコミ特有の問題として、記者クラブ問題を取り上げている。

そもそも記者クラブは、日本とアフリカのガボンにしかないと言われているそうだ。

民主党公約の記者クラブ開放が結局、外国メディア増加と雑誌記者への開放のみに終わり、フリージャーナリストなども含む開かれた記者クラブとはほど遠くなった。

しかしブログなどのネット論壇が登場し、記者クラブを通して政府が言論をコントロールする時代は終わりつつあると佐々木さんは語る。

しかし全くマスコミにグリップが効かない状態もリスクがあるという。

たとえば既存マスコミが強くなかった韓国では、ネット論壇が世論を形成し、根拠のないデマが流布して、女優のチェ・ジンシルなどが自殺するという事態まで発生している。

「ネットで書かれたことは、瞬時に全国民に伝わる」というのは恐ろしいこともあるのだと。


インターネット大家族

フェースブックは日本ではあまり普及していないが、世界で3億人のユーザーがいる世界最大のSNSだ。

高齢者の間でもフェースブックは浸透しており、最近ではフェースブック上で、祖父母と孫が連絡を取り合い、「インターネット大家族」のようなものができているという。

上記のような話題も含め、マスメディアでは報道されない見方が取り上げられている。印象に残ったものをいくつか紹介する。


★事業仕分けの歴史的意義

事業仕分けを仕切った枝野さんと蓮舫さんがそろって菅内閣の重要ポストに入ったが、事業仕分けの意義は、すべてが公開されたことだという。

いままで密室で決められていた予算折衝が白日の下にさらされる訳だ。


★池上彰さんの仕事

新聞が「ニュースをわかりやすく解説する」という本来の仕事を放棄しているので、池上さんの仕事が成り立っていると池上さんは語る。
 
知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)
著者:池上 彰
販売元:角川SSコミュニケーションズ
発売日:2009-11
おすすめ度:4.0
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★亀井徳政令

亀井大臣は辞任したので、あるいは自見徳政令になるのかもしれない。

亀井静香大臣は「東京大学でマルクス経済学を学び、キューバのゲリラ指導者チェ・ゲバラを心から尊敬する極めて危険な社会主義者だから、甘く見ない方が良い」と、「金融日記」という人気ブログの作者の外資系投資銀行勤務の藤沢数希氏は語っているという。

経済学については、少なくとも昭和50年代までは東大のマル経、一橋の近経と言われていたので、元警察官僚の亀井さんがマルクス経済学のゼミを取っていても不思議ではない。

こんな色眼鏡のかけ方をしていると、昭和50年代までの東大経済学部の卒業生の過半数はマル経を取ったと思うので、すべて同じような社会主義者と見られることになるだろう。

日本のネット論壇はまだまだだと思うが、この本では背後からハミング大西宏のマーケティング・エッセンス漂流する身体などが紹介されている。

いずれ「ネット論壇」といえるようなものが日本でも出現するのかもしれないが、アメリカのネットメディア(たとえば"A Bright Fire"など)が影響力を勝ち得ているのに対して、日本ではまだ時間が掛かると思う。

いずれにせよ、情報ソースの拡大という面では意味があると思うので、この本で紹介されているブログのいくつかを時々チェックしてみようと思う。


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2006年12月23日

グーグル ネット業界に強いジャーナリスト佐々木俊尚さんのレポート

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)


ヒルズな人たちなどの著書で知られるIT業界に強いジャーナリスト佐々木俊尚さんの本。

グーグルのすごさについては、大ベストセラー梅田望夫さんのウェブ進化論に詳しいが、キーワード広告で飛躍的に売上を伸ばした例など、違った角度から述べている。

たとえばGoogle News

ベータ版だが、日本版は610ものサイトから最新ニュースを自動的に収集して十数分毎に再構成する。

日本語版ではどうしても記事が限られるが、英語版だと4,500ものニュースソースから自動編集され、大変な情報量だ。

情報リテラシーの観点から、同じニュースを各国のメディアがどう見ているのかが比較でき、多様な価値観が理解できる。英語版であれば、辺境の新聞社の記事でも世界中の読者に読まれるようになるのだ。

情報のハブがCNNとか、ニューヨークタイムズとかの大手マスコミからグーグルに移っていくのだ。

新聞社から記事提供を拒むとかの動きもあったが、日本でも当初は記事提供を拒否していた読売新聞も記事提供を始め、スタートして三ヶ月で3大全国紙からの情報提供がはじまった。

まだまだYahoo!ニュースに比べると知名度も読者数も今ひとつだが、英語版なら世界の情報を収集でき、日本語版なら地方のニュースもわかるという意味では、使い方次第によっては非常に便利な情報源となるだろう。

この本ではグーグルの『破壊者』的性格と、すべてを検索、選別、そして『支配』していく全能の神的なグーグルの性格を様々な角度から紹介している。

成功例としては次を紹介している。

羽田の近くの有料駐車場がキーワード広告のアドワーズのおかげで、時にはお客を断らなければならないくらい顧客を集めることができたこと。

福井の三和メッキ工業という中小メッキ工場が、必殺メッキ職人というサイトを立ち上げ、キーワード広告やSEO(サーチエンジンオプティマイゼーション)で、全国の研究所や個人などから注文が集まったこと。

他方支配する神的な例としては、個人が広告収入を得られるアドセンスでクリック詐欺として停止処分を受けた映画評論家の例を紹介している。

この映画評論家のサイトの例では、1年2ヶ月あまりで30万円ほどの広告収益があったそうだが、その道が絶たれてしまったという。

梅田望夫さんのウェブ進化論の様なインパクトはないが、簡単に読めてグーグルを中心とする最近のインターネットの動きと意味がわかる本である。



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2006年03月27日

検索エンジン戦争 検索エンジンの歴史と方向性がわかる

検索エンジン戦争


このブログで紹介したヒルズな人たちとか図解ネット業界ハンドブックの著者、佐々木俊尚さんとECジャパンにSEOコラムを連載しているジェフ・ルート氏の共著だ。

検索エンジンとポータルサイトは、現在のインターネット産業の2大分野であり、インターネット広告分野でも最も延びている分野である。

タイトルに惹かれ、またこの前読んだウェブ進化論にも触発されてこの本を読んでみた。

検索エンジンの歴史と現在の対立構造がよくわかる。

各章のタイトルを紹介すれば、内容が推測できると思うので、次に紹介する。

第1章 先史時代の検索エンジン

第2章 検索エンジンと広告の物語

第3章 パックス・グーグル(グーグル王国の平和)

第4章 そして、乱世が幕を開けた

第5章 ますます広がる検索エンジンの役割

第6章 パワー・トゥ・ザ・ピープル(オープンソースの検索エンジン)

検索エンジンを巡ってのグーグルとヤフーの力関係の変化、ヤフーの逆襲、マイクロソフトのグーグル買収を初めとする戦略、アマゾンもウェブサービスで参戦と続く。

最後にオープンソースでの検索エンジン開発の動きであるNutchも紹介している。

筆者は知らなかったが、グーグルに囲い込まれてしまわない開発者の集団がナッチを支えていくのだと。

サッ読めて、グーグル、ヤフー、マイクロソフト、アマゾン等の列強の対立構造がよくわかる良い本だ。

ウェブ進化論と一緒に読むことをおすすめする。


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2006年03月12日

図解 ネット業界ハンドブック ネット業界が概観できるおすすめハンドブック

図解 ネット業界ハンドブック


このブログでも取り上げた『ヒルズな人たち』の著者佐々木俊尚さんのまとめたネット業界ハンドブック。


ヒルズな人たち―IT業界ビックリ紳士録


東洋経済のハンドブックシリーズは就職活動の業界参考書にも使われるので、それを意識した構成となっている。

各企業の特徴をよくつかんでおり、佐々木さんがネット業界に精通しているジャーナリストであることがよくわかる。


この本の構成は次の通りだ:

1.ネットビジネス驚異の成長10年史

2.勝ち組ネット企業の秘密

3.ネットビジネスの儲けの仕組み

4.ネットビジネスを支えるキーワード

5.ネットビジネス成功のカギ

6.ネット企業の育て方

7.ネット企業で働いて成功する

資料 ネット業界主要企業データ


ネット業界の歴史から説明し、主要企業、ビジネス(儲け)のしくみ、成功のカギ等も説明しているので、わかりやすい。

広く浅く説明しているが、ポイントを押さえているので、新入社員教育用にも適当なおすすめハンドブックである。


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2005年08月01日

ヒルズな人たち ストーリーの出来はばらつきがあるが参考になる


ヒルズな人たち―IT業界ビックリ紳士録

日本のIT業界を代表する著名人の生い立ちやエピソードの紹介。

今や六本木ヒルズが日本のIT業界のメッカとなっているので、人目を引くタイトルをつけている。

こういった目立つタイトルを付けた本は、いかにも売らんかなというコマーシャリズム丸出しで、玉石混淆というよりなことが多い。この本はストーリーの出来はかなりばらつきがあるが、のストーリーもあり参考になる。

この本は次の面々を取り上げている。

ライブドア       堀江貴文

楽天          三木谷浩史

ソフトバンク      孫正義

サイバーエージェント  藤田晋(すすむ)

元プロジー社長     榎本大輔

オーケイウェブ社長   兼元謙任(かねもとかねとう)

USEN          宇野康秀

センティビジョン    明瀬洋一

M2X           松島庸(いさお)

光通信         重田康光

著者のフリージャーナリスト佐々木俊尚氏のつきあいの深さが違うのか、あるいはフリージャーナリストというポジションでは、なかなか直接インタビューは難しいのか、それぞれのストーリーの出来がかなりばらついている。

ホリエモンはとっつきがたいようで、三木谷氏に『堀江?そんなのもいましたかね』と言わせて溜飲を下げたり、『ミもフタもない人間嫌いの男』と決めつけており、内容も薄い。

イーバンク電話脅迫事件(ライブドアとイーバンクの泥仕合で、イーバンクの松尾社長が、ライブドア宮内氏のケータイに『あんまり遊んでると、おまえの会社ぶっつぶしちゃうよ。俺は本気になるぞ。お前。それじゃな』という留守録を残したとライブドアが公開したもの)が契機で、ホリエモンが老人支配社会への怒りを覚える様になったと言っている。

これはホリエモン本人が言っているわけでもなく、単に推測にすぎないのでは?

三木谷さんのところで参考になったエピソードは、楽天出店料は5万円/月と価格破壊だが、支払いは6ヶ月分前払いとして、低価格で大手モールに対抗し、なおかつ資金ショートを防ぐという手法を取ったという点。

孫さんの経歴・ビジネス歴の部分は読みやすく、孫さんの政治力についてもふれており、よくまとまっている。ただ、様々な本に既に書かれており、特に新しい発見はない。

強いて言えばソフトバンクIDC社長の真藤豊さんはスピードネット社長として孫さんに三井物産からヘッドハントされてきたが、ソフトバンクが引いたので社長をわずか8ヶ月で退任したこと。

サイバーエージェントの藤田さんのところには参考になる指摘がある。

藤田さんの様な『団塊ジュニア世代』の起業家は、考え方は良識的で、態度は紳士的。強烈に自己を主張することもない。

カリスマ的な強烈な個性は乏しいが、すぐれたビジネスプランを考え出し、そのプランをもとにして会社がうまく売上を上げていく社内システムをつくりだしているのだ。

優れたシステムをつくり、あとは優秀な人材を配置すれば会社は自動的に拡大する。システムをつくりだす能力さえあれば、経営者はカリスマである必要はないのであると。

サイバーはJリーグの様にJ1〜J3という新規ビジネスの社内格付け制度=CAJJがあり、毎月昇格あるいは降格(撤退)したプロジェクトを月次決算の時に公表している。社員のモチベーションも自然と上がり優れた社内システムである。

OK Web(オーケーウェブ)の兼元(かねもと)さんの話は一番面白い。

孫さんの様に子供の時に在日韓国人として受けた差別。食うや食わずでドラム缶で寝泊まりしたこともある。

2ちゃんねるの様ないわば『共食い鮫』が集まっている様な掲示板に対し、『助け合いのネット』をつくれないかという発想。

これがナレッジマネージメントにもつながり、gooへのOEM提供『教えてgoo』の他、NECやトレンドマイクロなどのカスタマーサポート部分のアウトソーシングビジネスに広がっている。

ネットの匿名性が2ちゃんねるの書き込みの攻撃性を助長していると思うが、これはYahoo!知恵袋とOK Webの違いを見ればよくわかる。Yahoo!知恵袋はほとんどがID非公開なので不用意に質問するとひどい目にあう。

筆者もOK Webを利用しているが、質問すると早ければ30分から1時間くらいで回答が寄せられるあたたかみのあるコミュニティは感激もの。

また自分で答えられる質問があるとつい答えてあげたくなる。是非広がって欲しいサイトである。

USENの宇野さんの部分も参考になる。

宇野さんは溜池山王で働く社長のblogというのをやっているが、ホリエモンとか藤田さんに比べてマスコミカバレージやブログの情報発信量が少ないので、宇野さんのことは今まであまり知らなかった。

宇野さんは華僑の息子で日本に帰化した。

宇野さんの父親が始めた大阪有線は無断配線という黒いイメージがあったが、宇野さんが亡父の後を継ぎ、USENに社名を変更し、数百億円の利用料を支払いすべて正常化した。

USENブロードバンドは光接続の利用者拡大に苦労しているが、発想を切り換え、他社からラストワンマイル工事を請け負うビジネスをメインとした。

エイベックスや映画配給大手ギャガを傘下に持ち、満を持して無料ブロードバンド放送GyaOを立ち上げている。

学生時代から人を集めて組織するのが天才的にうまかったとのこと。納得である。

宇野さんはリクルートコスモスに入社し営業のノウハウを徹底的に仕込まれたあと、25歳でインテリジェンスを創業する。藤田さんのメンター、三木谷さんの良き相談相手となっている。

最後に著者が次のようにまとめている。

ネット起業家には2つの世代的特徴がある。

一つは1960年代半ば生まれの『新人類世代』。もう一つは1970年代前半生まれの『団塊ジュニア世代』である。

『新人類世代』は新しい価値観を持ち、コンピューターに対する親和性は従来の世代と比較にならないほど高く、この人達が経済界に新たなパラダイムシフトを起こしていく。

『団塊ジュニア世代』は戦後初の『失われた世代』、つまり親よりも生活レベルが下がる世代である。

価値観消滅の世代なので、必死に頑張って豊かになりたいとかいったモチベーションは希薄となり、生活や遊びをまったり楽しむという『コンサマトリー(consummatory)』と呼ばれる『そのこと自体を楽しむ』というメンタリティが特徴である。

つまり「面白ければそれでいいじゃん」というノリで、旧来の価値観に支配されない世代であり、旧世代からは「何を考えているのかわからない」といったことになる。

そういえばとなるほどと思い当たることもある。参考になる指摘である。

いずれにせよ彼らネット起業家は優秀な人を自分のまわりに集め、その人たちをうまくとりまとめて仕事を進めていく運営能力が優れている。

これが21世紀の経営者像なのだろう。

ネット業界はバブっているなどと斜に構えず、冷静な分析が必要である。
その意味でこの本は参考になる。

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