2007年09月25日

伝説コンシェルジュが明かすプレミアムなおもてなし 感動をもたらす気配り

伝説コンシェルジュが明かすプレミアムなおもてなし―お客様の望みをすべてかなえる方法
伝説コンシェルジュが明かすプレミアムなおもてなし―お客様の望みをすべてかなえる方法


林田さん他のリッツカールトンシリーズでも紹介されていた伝説のコンシェルジュ、前田佳子さんの本。

この本を読むとリッツカールトンの感動を呼ぶサービスとして紹介されていたエピソードの多くが、前田さんの経験談であることがわかる。

ところが同じストーリーながら、他の本と違って、読んでいて涙がジーンと浮かんでくるような書きっぷりになっていない。実に淡々と書いている。

自分の自慢話とせず、スタッフ全員の共同作業として再現可能なストーリーにして、サービス業を目指す人に役立てることに徹しているのだ。

すごい人だ。

リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと
リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと


前田さんは大学卒業後スチュワーデスを目指すが果たせず、大阪東急インのフロント係として就職、そこで頭角をあらわしヒルトンホテル大阪に転職。

ヒルトンでシステマティックにお客に対応する技術と語学を学び、スタート直前のリッツカールトン大阪にコンシェルジュとして転職、「心でモノを見る」ということを学ぶ。

ヒルトンで5年、リッツカールトンで9年働いた後、2008年3月に東京お台場にオープンする会員制リゾートホテルのリゾートトラスト東京ベイコート倶楽部の開業準備室で働いている。

東京ベイコート倶楽部のコンセプトは、すべてのスタッフがコンシェルジュの様に仕事をするというもので、前田さんはそれに心を打たれたという。


おもてなしに一番必要なもの

前田さんはおもてなしに一番必要なものは、マインドだと語る。

マインドの高い人は、お客様の要望に決して"NO"ということはない。

たとえ口に出されない要望でも、五感や第六感を駆使してキャッチし、他のスタッフとのチームワークで、実現しようとするのだ。

現在は、お客様の要望に答えるのはあたりまえ、それを超えた「おもてなし」をしてはじめて、お客様に感動して頂ける時代だと前田さんは語る。

たしかに外資系の有名ホテルがぞくぞく日本に進出してきて、帝国ホテルやホテルオークラなどの日本のホテルが、サービス満足度で劣勢に立たされている。帝国ホテルは三井不動産の系列に入ったばかりで、今後も激動の時代が続くだろう。

前田さんの言葉も、なるほどとうなずける。


伝説の感動ストーリーが一杯

林田さんの本にも紹介されていた次のような感動ストーリーが一杯だ。

・「飛行機を止めてくれ」。父親が危篤のアメリカ人ゲストに頼まれ、飛行機会社に出発を遅らせてもらう

・「予算18万円でリッツカールトンのスイートルームにバラとミモザの花を敷き詰めてほしい」

・「プロポーズのタイミングで、アイスツリーからティファニーの指輪が落ちる様にしてほしい」


プロフェッショナルとしての気配り

前田さんのマイモットーは次の3つだという。

1.あきらめない

2.心でモノを見る

3.自分以外はみな師

このマイモットーで、おもてなしをするのだ。さすがと思える気配り・心構えが満載だ。

・電話は笑顔をつくって、2コール以内に(試してみたら、こちらは2コールでも相手は3コールだった)

・声質にかかわらず重要なのが話すスピード

・ボールペンは3本 お客の前で使う1本 お客が貸すための1本 秘密メモ記入用の1本 

・ボールペンはノベルティグッズや事務用品は使わない ホテルは「非日常空間」だから

・「お待ち下さい」と言わない 必ず「お待ち頂けますか?」と言う

・緊張度は瞳孔に、感情は瞳に表れる(脳が緊張しているときには瞳孔が小さくなり、脳がリラックスしているときは瞳孔は大きくなる)

・女性には「言葉地図」の方が好まれる (言葉地図とは書いた図面でなく、言葉で説明した地図、たとえば「XX駅の何番出口を出て左に200メートル行った角を右に曲がり、そこから100メートル行ったところ」といった具合)

「話を聞かない男、地図が読めない女」という本があったが、前田さんはそのことを体験で知っている。

話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く
話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く


・カールトンのクレドにある"We are on the stage" 仕事では「舞台に上がる」という発想が大事

・本代は月に3万円 ノンフィクションやビジネス書で勉強する


ホテルの仕事を辞めようと思った日

その前田さんでも、ホテルを辞めようと思ったときがあったという。ゲストに代わりに買い物をしてくれと頼まれ、応じようとしたら、「あなたが一人やったために、他の人がみんなしなくてはいけなくなるから、そういうことはやめてくれ」と言われ、反発したのだ。

そんなとき、たまたま俳優のマルチェロ・マストロヤンニが滞在していた。彼が体調を崩したので親身になって3時までつきそい看病すると、彼から次のようにいわれた。

「いろいろつらいことがあるかもしれないけれど、この仕事は辞めなさんな。あなたはこの仕事をするべくして生まれてきた人だと私は思う。だから決してあきらめないで、頑張りなさい。これは私が言っているんじゃなく、神様が私の体を使って言っていると思いなさい。」

さすが大俳優。印象に残る話だ。


コンシェルジュ資格基準

最後にこの本の付録の東京ベイコート倶楽部のコンシェルジュ資格基準が面白い。次のような項目だ。

1.資質: 気配り、注意深さ、情報量、丁寧さ、感受性、共感性、穏やかさなど9項目

2.会社方針: リッツカールトンのクレドの様に「スタッフウィル」というものをまとめているので、暗唱できるかなど理解度、実戦度などの4項目

3.業務内容: これがメインで、道案内(台場周辺、江東区、東京都)、館内設備、外部イベント、フライト、列車、旅行アレンジ、劇場・コンサート・映画チケット手配、手配物(花など)、ビジネスサポート(タイピングなど)、外部レストラン案内、遊園地案内、言語能力、電話対応、アテンド、シガー(知識)、飲料の20項目

4.コミュニケーション全般: セクション内、部内、他部署、上司・部下の4項目

これらすべてに1〜5とSP(スペシャル?=90点以上)まで6段階の点数がある。

コンシェルジュは8割以上に3,最上級のチーフコンシェルジュは全項目について5以上(80点以上)でなければならないという内規だ。


サービス業を目指す、あるいはサービス業に興味のある人に、心構えから懇切丁寧に指導しようとする態度がよくわかり、非常に読みやすく書かれている。

前田さんの言われる内容はスッと頭に入る。さすが伝説のコンシェルジュだ。本にまで気配りが一杯である。

リッツカールトンについての本も良いが、前田さんの本も是非おすすめする。


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2007年04月20日

サービスで小さな奇跡を起こす方法 リッツカールトンシリーズの林田さんの本

伝説ホテルマンだけが知っている!サービスで小さな奇跡を起こす方法―0


「リッツ・カールトンシリーズで学んだ仕事で一番大事なこと」がベストセラーとなったホテルマン林田さんが紹介する、優れたホテルマンやコンシェルジェなどのサービスの奥義。

サービス業に携わる人には非常に参考になると思う。

以前紹介したレストランカシータの話が出てくる。サービスのプロの林田さんが、愛と感動のレストランとして高く評価している。


伝説ホテルマンとして登場するのは:

帝国ホテル 宴会予約支配人の宮井宏和さん

元リッツ・カールトンホテルのコンシェルジェで、今は東京ベイコート倶楽部の宿泊部支配人の前田佳子さん

かつて浦安ブライトンホテルに勤務し、現在はチームラボサービスコンサルティング社長の江澤博巳さん

元リッツ・カールトンホテルのサービスマンで、現在はマンダリンオリエンタルホテルのバンケットマネージャーである石原進一さん

ホテルニューオータニ大阪の料飲部総括支配人である阪口正彦さん

目次は次の通りだ:

序章  伝説ホテルマンを感動させたサービス

第1章 伝説ホテルマンだけが実践する「気配り&心配り」の話術

第2章 サービスで”小さな奇跡”を起こす舞台裏の演出法

第3章 CSの達人・林田流「感動サービスの6ステップ」

第4章 クレーマーをもファンにしてしまう伝説のサービス

第5章 CSフィロソフィーで”小さな奇跡”を起こすチームづくり

第6章 お客様をロイヤルカスタマーに変える感性を磨く

いくつか印象に残った話を紹介しよう。

断定形でなく、質問形で話す

マンダリンオリエンタルホテルの石原さんは、必ずお客様にお伺いをたてるようにしていると。

たとえばワインリストを見せて欲しいというケースは、「かしこまりました、少々お待ちください」とは言わず、「かしこまりました。少々お待ちいただいて、よろしいでしょうか?」と言う。

結局は、お客様の”YES”を一番大切にしているのだ。お客様が”YES”と言わない限り、こちらの都合を押しつけるわけにはいかないのだ。

徹底的にお客様第一で考えるという思想がすばらしく、これは”NO”と言わないサービスに通じるところがあると林田さんは評価する。

感動を与えるストーリーが満載され、サービスを提供している人の言葉で語られており、考え方がわかる。


林田流感動サービスの6ステップは次の通りだ:

1.事前対応サービス ー 電話の第1印象に配慮する

2.当日のお出迎えサービス ー スタッフ一同を巻き込む

3.滞在時のサービス ー 予期せぬ事を演出する

4.お見送りサービス ー 「二重のお見送り」がなぜ大切か

5.24時間以内のフォローサービス ー 電話で感触を探る

6.一生のおつきあいをするためのフォローサービス ー ひと筆だけでも手書きで添える


林田さんはホテルマンやレストランの従業員に聞く。「あなたの仕事は何ですか?」

マンダリンオリエンタルホテルの総支配人も同じ事を聞く。「あなたの仕事は何ですか?」

期待される答えは「サービスです」だ。「お客様だけでなく、総支配人にも、自分のスタッフにも、自分の家族にもサービスする。それが仕事だと思っています」と。

サービスとはお客様の心に向かって仕事をすることであり、「自分の周りはすべてお客様」との心が社内の人間関係を変えるのだと。

林田さんは組織は逆ピラミッドであるべきだと考えていると語る。一番上にお客様、次に現場のスタッフ、チームリーダー、管理職、そして一番舌にいるのが社長だ。

社長が管理職を支え、管理職がチームリーダーを支え、チームリーダーが現場のスタッフを支えるという体制ができているからこそ、お客様のことを第1に考えることができるのだ。

リーダーは時間を3分割して使えと林田さんは説く。1は自分の仕事、2は部下の教育、そして3は1年先、3年先、5年先のことを考えることだ。

CSフィロソフィーをつくるには、30−40代前半のスタッフで、3−4割は女性のスタッフを入れたチームをつくるべきであると。サービスには女性の感性が不可欠だからだ。そして半年から10ヶ月掛けてCSフィロソフィーをつくるのだ。

伝説のコンシェルジェ、前田さんの話も参考になる。困っているお客は雰囲気でわかるので、「何か、お困りのことはございませんか?」と声を掛けるのだ。

また女性と男性では質問を変える。前田さんは立ち位置にもこだわる。お客様の斜め45度くらいの位置に立つのだ。さらにお客の瞳孔まで確認していると。人間の瞳孔は緊張していると小さくなり、リラックスしていると開くのだと。

ホテルでサービスに携わる達人自身の言葉が紹介されていて参考になる。リッツ・カールトンシリーズと比べて、内容はより実践的、実用的となっている。

日本の気配りがわかる良い本である。おすすめする。


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2006年07月12日

ホスピタリティの教科書 赤のリッツ・カールトンの林田さんの近著

ホスピタリティの教科書


このブログでも紹介している赤のリッツ・カールトン(「リッツ・カールトンで学んだ仕事で一番大事なこと」)の著者の林田正光さんの近著だ。


リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと


林田さんはお客様が賢くなったことをまず指摘する。賢くなったお客様にどのように接していけば満足していただけるのか、そして感動させられるのか。それがこの本のテーマである。

「気くばり」とはビジネス上のマナーのこと。「心くばり」は漢字で書くと「心配」で文字通り相手のことを心配するのだ。「通常のサービス」に「気くばり」がプラスされると、お客は「満足」する。さらに「心くばり」がプラスされると、お客は「感動」するのだと。

3回来られたお客をファン、5回以上をリピーター(常連客)と呼ぶなら、5回以上来店されてお店のよい噂をふりまいて営業してくれるお客はロイヤルカスタマーである。

ロイヤルカスタマーになってもらうには、満足よりも感動が必要である。

まずは3回までの来店に全精力を注ぎ込み、それをクリアできたら5回以上を狙い、最終的にロイヤルカスタマーになってもらうことを目指すのだ。

ユダヤ人の教えに「あなたの周りの数十人の友人だけを大切にしなさい」というものがある。親しい友人が20人いるとすると、その友人一人一人に20人の友人があり、400人の潜在顧客がいることになるのだと。

数十人のロイヤルカスタマーを大切にするだけで、意外と経営は成り立つものであると林田さんは語る。

会員カードなどをつくって割引したりするとリピーターはつくれるが、問題はロイヤルカスタマーをいかにつくるかである。

普通のサービスでは、ファンやリピーターしかつくれない。感動のサービスを提供することで、はじめてロイヤルカスタマーにアップする可能性が出てくるのだと。

賢くなったお客様は消費行動に感動を求めているのだ。

なるほどと考えさせられる。

口コミをひろめてくれるロイヤルカスタマーをいかに増やすか。これがサービス業共通の成功の秘訣だと思う。


この本の最も重要な部分はこの点だが、その他にいくつか印象に残った点を紹介しよう。


従業員のモチベーションを高める方法

従業員のモチベーションを高めるには、正当な評価を与えることが一番である。リッツ・カールトンではファイブスター制度があり、その評価基準は「経営理念を実際にどのように活用したか」である。

数字はあくまで目安である。

どこの会社でも、まずは評価の基準となる企業の経営理念を、しっかり時間を掛けてつくることを林田さんはすすめている。


個人プレイでは感動は与えられない

個人プレーではお客様に感動は与えられない。ラグビーの「みんなは一人のために、一人はみんなのために」という言葉があるが、サービス業にこそチームワークが必要なのである。

これまでうまくいっていたのに、最近は会社の業績が落ち込んでいるという会社もよくあると思う。

従業員にハッパをかけ続けているが、伸びる気配はない。こういう時には一度「セクショナリズムが強まって、チームワークが軽んじられているのではないか」と疑ってみることを林田さんはすすめる。

どのようにすればチームワークが自然と生まれてくるのか、全員で検討してみるのが良いだろうと。


感性を磨く自己投資と想像力

感性を磨くためには有名な画家の美術展に行ったり、能や歌舞伎、狂言を見ることを林田さんはすすめる。ミュージカル、禅寺、生け花、ハリウッド映画等々、いつも新しいことにふれ、勉強していると自信が出てくるからだ。

自信が出てくると、どんなときでも落ち着けるようになる。

感性は知識や教養ではない。知識や教養をもう一段昇華させた知恵を磨くのだ。


笑顔とアイコンタクトで心温まる雰囲気を

「人は見かけが9割」ではないが、林田さんもアメリカの心理学者マレービアンの顔の表情が55%、音声が38%、話の内容が7%で人の第一印象が決まるという研究結果を紹介している。

林田さんは毎日鏡の前で5分間笑顔の練習をしていると。

接客、ホスピタリティのプロでもここまでやるのか!

さすがサービスのプロである。

最後に林田さんは、「ホスピタリティの原点は心です。お互い、笑顔で、誇りを持ち、そして常に心を込めてお客様とおつきあいをしていきましょう」と呼びかけている。

サッと読めて、印象に残るストーリーが一杯である。赤のリッツ・カールトンと並んでおすすめの本である。


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2006年05月28日

リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと 『売れる』自分のつくり方

リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと


京都全日空ホテル社長で、リッツ・カールトンの大阪営業統括支配人を7年勤めた林田正光さんが語る、『売れる』自分のつくりかた。

リッツ・カールトンを題材にした最近のベストセラーは、本の帯の色で青と赤の2冊ある。

青の帯が以前紹介したリッツ・カールトン日本支社長の高野登さんの『リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間』であり、こちらは赤の帯のリッツ・カールトンだ。


リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間


感動を与えるサービスを作り出す仕組みのインサイダー情報(?)も興味深いが、この本の珠玉は第4章の「リッツ・マンに負けない魅力ある自分をつくる」という部分である。

林田さんは「自分の魅力づくり」というテーマで、しばしば講演の依頼を受けるそうだが、この本はリッツ・カールトンを経てパワーアップした林田さんが実践してきた「自分の魅力づくり」が紹介されており非常に参考になる。

青のリッツ・カールトンも良いが、赤のリッツ・カールトンも良い。一読をおすすめしたい本である。


林田さんの略歴

林田さんは熊本県出身で、高校卒業後、藤田観光の子会社の大阪の太閤園というレストランで32年間営業マンとして勤務したが、大病して退社。リッツ・カールトンが大阪で開業する際に応募し、営業支配人として就職する。

藤田観光はフォーシーズンズホテル椿山荘という合弁会社を持つが、フォーシーズンズホテル関係者が「リッツ・カールトンに見習え」としばしば言っていたことから、林田さんもいつかはクオリティの高いホテルで仕事をしたいという思っていたと。

林田さんは太閤園時代は3,000人を越えるお客様と、いつでも電話できる人間関係を保っていた。リッツ・カールトンに転職してからは人脈を4,500人に拡大した。

独立してサービス業のコンサルを一時していたが、現在は京都全日空ホテルの社長である。


リッツ・カールトン・ミスティーク

リッツ・カールトン・ミスティークについては、リッツ・カールトン日本支社長の高野登さんの『リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間』で一部紹介したが、この本では、ミスティークと呼ばれるサービスを提供する仕組みがわかって面白い。

たとえばリッツ・カールトン・ミスティークの代表的なもので、以前一度宿泊しただけなのに、フロントが名前を覚えていたり、前回の宿泊目的がゴルフだったことを覚えていたりして感動した、というのがある。

これはドアマンが荷物の名札から名前を読み取り、インカムでフロントに連絡し、チェックインの準備を整えるとともに、素早くデータベースを参照しているのだ。

この様な接客はある意味、マネができるところだが、マネのできないところは営業時間が終了していても来た客には料理を出すとか、バーならせっかくだからと一杯出すとかいった、通常のサービスを超えた「ノーと言わない」サービスだ。

さらにお客の期待を上回り、感動を与えるサービスを提供するために、エンパワーメントという一人20万円までの決裁権限を全員が持ち、その場で最良の手配ができる仕組みとなっている。本物の顧客第一主義だからここまでやれるのだと。

お客のニーズをつかむために、従業員が心配りできる設定もしてある。

お客を部屋に案内したり、話をする機会をとらえてお客のニーズをいかに察知するかが決め手となるので、リッツ・カールトンでは自動ドアはないし、エレベーターやトイレは人目に触れにくくされ、表示もない。

これは「もう一つのわが家」というコンセプトからプライベートな空間を演出する意味合いもあるが、スタッフとお客様が接する機会を増やすという戦略でもあるのだ。


クレド(信条)を基軸として最高のサービスをつくる

リッツ・カールトンが感動を与えるサービスを提供できる仕組みは、リッツ・カールトン・クレドと呼ばれる信条が中心だ。

従業員には、入社時にクレドカードが配られ、これにはゴールドスタンダードと呼ばれるクレド、サービスの3ステップ、従業員への約束、モットー、ザ・リッツ・カールトン・ベーシックが記載されており、これがことあるごとに使われる。

このあたりは、青のリッツ・カールトン、高野登さんの『リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間』に詳しい。

次に入社後2日間の、アルバイトやパートを含め全員が受けるクレドの思想・哲学の勉強で、紳士・淑女の行動はいかにあるべきかを一人一人が考える。

さらに入社1年目は300時間クレドを日常業務で実戦できるようトレーナーがマンツーマンで指導。定期的なテストもある。

これに加えてデイリー・ラインナップと呼ばれる15分間のミーティングで、クレドに基づいた勉強会を毎日全職場で行う。

クレドを根付かせ、補強する制度として3ヶ月に1度各ホテルで5人が選ばれるファイブスター制度、エンパワーメントなどがある。

林田さんは、お客様第一主義を掲げながら、多くの会社は自分たちの都合で動いていると指摘する。

それを限りなくお客様の都合にあわせる「ノーと言わない」会社にするために、リッツ・カールトンはクレドという経営哲学をつくっているのだ。

林田さんは、顧客満足向上のコンサルティングをするときは、必ずクレドを創るようにすすめていると。首尾一貫した心配り、顧客満足のアクションを起こすためにはクレドが必要なのである。尚、クレドつくりには必ず女性をいれよと林田さんはアドバイスしている。


仕事でいちばん大事なこと

林田さんは仕事でいちばん気を配らなければいけないことは、人間関係であると説く。

仕事上の仲間、上司、部下のみならず、お客様、取引先など、お互いの関係がうまくいかなければ、その仕事が成功する確率は極めて低いと。

林田さんはリッツ・カールトンに在籍してリッツ・カールトン・ミスティークと呼ばれる、お客様との人間関係を構築する手法にふれ、それを自分のものとする機会に恵まれたと語る。

モテる人になるのだ。そのために必要なのが、自分の魅力づくりだ

林田さんは「自分の魅力づくり」というテーマで、しばしば講演の依頼を受けるそうだが、魅力は『心配り』という土台の上に、『専門性』がのって成り立っていると語る。

心配りの最初は気配りで、マナーとコミュニケーション能力である。コミュニケーションのポイントは相手のことを理解しようとする姿勢とお互い妥協点を見つけあうことだ。

「なにごとも最初は人間関係から始めなくてはなりません。これは長年サービスや営業の仕事に携わってきた私の実感です」と林田さんは語る。「まずはマナーとコミュニケーション能力を身につけることから始めてください」と。

その上で自分の専門性を磨くのだ。

林田さんの『売り』は人脈づくり、顧客満足、イベントの仕掛けである。


林田さんの人脈づくり

林田さんは太閤園の営業マン時代は3,000人を越えるお客様といつでも電話できる人間関係を保っていた。名刺は名簿化して、2ヶ月に一回太閤園のイベント案内のDMを、必ず林田というハンコを押して送る。

リッツ・カールトンに転職してからは人脈を4,500人に拡大した。リッツ・カールトンを退職して、独立したときは、一介のサラリーマンの激励会にお客様400人が祝賀会を開いてくれたほどだ。

リッツ・カールトンを退社した後は、自分でイベントを考え、DMを出し続けていた。

林田さんの人脈づくりはこうした地道な努力と心配りの結果だ。

世代を越えたつきあいも意識してつくった。太閤園にいたときは、なるべく年上の人とつきあうことをこころがけ、ロータリークラブやライオンズクラブの人たちからはかわいがって貰ったと。

「頼み事をされたら絶対に断らない」し、心配りと情報で人脈をつくるのだ。

また入会金20万円を払い、自費で青年会議所(JC)に参加し、太閤園の勤務時間外にJC活動を積極的に行い、一月に10日はJC活動に充ていた。これで青年実業家を中心に人脈がどんどん広がった。

団体に所属する他に、自分でイベントを開くということも人脈づくりに有効である。

林田さんは42歳のとき、経営の為の勉強会『なにわ経済倶楽部』をつくり、現在は『ザ・フレンド倶楽部』という1,000人ほどの会となっている。

成功する異業種交流会の開き方についても、林田さんはノウハウを公開している。講師を呼んで講演会と交流会を行う。交通の便のいい場所で、参加者の1/3は女性とする。世話人会を作る等々。とにかく継続が大切である。

名刺交換御礼のファックス、フォロー、人脈つくりにはマメに心配りをというのが林田さんのメッセージだ。


リーダーシップと目標

最後に林田さんはリーダーシップと目標管理の重要さを説く。

リーダーには管理と感性の両方が必要であると。人間関係ができていれば、理屈抜きで人は動くと。

リーダーシップとともに、魅力ある人が必ず備えているものが目標である。個人版クレドを持とうと林田さんは説く。

林田さんの目標は、1.健康である、2.経済力をつくる、3.自己啓発をする、4.人脈づくりをする、5.家庭を大切にする、6.趣味を持つ、7.仕事、8.ボランティアの8つだ。

それぞれに3年先を見据えた長期目標、1年先を見た短期目標を定める。具体的な目標があれば、具体的なアクションプランが見えてきて、何をすればよいのかわかる。


トップ営業マンがリッツ・カールトンを経て、さらにパワーアップした『自分の魅力づくり』のノウハウを親切に説明してくれる。

さすがベストセラーになるだけのことはある。赤のリッツ・カールトンもおすすめだ。


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2006年03月27日

リッツ・カールトンが大切にするサービスを越える瞬間 リッツ・カールトン・ミスティークとは?

リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間



リッツ・カールトンのサクセスストーリー

筆者が最初に米国に駐在していた1980年代はアメリカのベストホテルといえば、ワシントンのフォーシーズンズが定番だった。きめ細かいサービスが評判で、一度泊まった宿泊客が次回行くとフロントが名前を覚えているという話だった。

米国のベストホテルについて最近フォローしていなかったが、だいぶランキングが違ってきている様だ。フォーシーズンズはいくつかベスト50に入っているが、ワシントンのフォーシーズンズは今はランクインしていない。

代わってのしてきたのがリッツ・カールトンだ。

元々はパリの有名なホテルリッツとロンドンのカールトンホテル(現在はリッツ・ロンドン)が一緒になったもの。

元祖リッツ・カールトンはアメリカでもいくつかホテルを運営していたが、うまく行かず、最後に残ったボストンのリッツ・カールトンホテルを1983年にアメリカの不動産王のW.B.ジョンソンに売却した。

ジョンソン氏は自分がつくったアトランタのモナーク・ホテルと合併させて、ザ・リッツ・カールトンホテル・カンパニーをスタートさせた。これが現在のリッツ・カールトンだ。


著者の高野登さんはリッツ・カールトン日本支社長

著者の高野登さんはニューヨークのプラザホテルなどアメリカの一流ホテル勤務後、リッツ・カールトンに入社し、現在はリッツ・カールトン・ホテル(大阪)の日本支社長だ。

表紙の裏に「お客様自身が気づかれていない望みとは何か」、「それに対して自分ができる最高のおもてなしは何か」、これらをつねに考え、思い、感じること…と書いてある。

リッツ・カールトンが目指しているのは、この本のタイトルの通り、サービスの善し悪しという段階を越えて、一生記憶に残る感動を与えることだ。そのために従業員みんながチームワークで励んでいる。

リッツ・カールトンの創立メンバーで初代社長のホルスト・シュルツィは高野さんに、良いホテルかどうかは「ホテルの温度を感じろ」と言っていたと。"Don't think. Feel!"であると。


"We are Ladies and Gentlemen Serving Ladies and Gentlemen."

上記の英文がリッツ・カールトンのクレドのモットーだ。

リッツ・カールトンの従業員はクレド(信条)と呼ばれる4つ折の小さなラミネートカードを常に携帯している。

表面には『クレド』、『エンプロイー・プロミス(従業員への約束)』、『モットー』、『サービスの3ステップ』、裏面には『ザ・リッツ・カールトン・ベーシック』と呼ばれるスタッフの為の20項目の行動指針が記されており、これらを総称してゴールド・スタンダードと呼んでいる。

クレドも、従業員への約束も、サービスの3ステップも、書いてあることは、どんな業態にでも通用するサービスの基本理念、ホスピタリティを示したものだと高野さんは語るが、一見普通に見える中でもキラリとひかる言葉がある。

それはクレドのなかの「お客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービス」、従業員への約束のなかの「リッツ・カールトン・ミスティーク」、サービスの3ステップのなかの「お客様のニーズを先読みし、おこたえします」という部分だ。

つまり「お客様の願望、ニーズを先読みしてこたえる」というのがワオ・ストーリあるいはリッツ・カールトン・ミスティークと呼ばれる、リッツ・カールトンならではの感動を呼ぶサービスの基本なのだ。

高野さんはサービスは科学だと言うが、まさに仮説・検証の繰り返しが感動を与えるサービスの本質なのだ。


採用がカギ

リッツ・カールトンは人材の採用に十分時間をかけ、入社後の教育も毎日欠かさず行う。

高野さんが受けたリッツ・カールトンの採用面接は1対1の面接を5名とおこない、実績やスキルについてはほとんど尋ねられず、人間性や性格を探る様な質問ばかり受けた。まるで深層心理を探る精神科医のカウンセリングの様な不思議な面接だったと。

「最近どんな本を読みましたか?その本のどこに感動しましたか」とか「最近家族を喜ばす為に何をしましたか」とか「同僚があなたに協力的でなかったら、あなたはどうしますか?」といったものだったと。

またリッツ・カールトンの面接会場はホテルの宴会場で、入り口にはドアマンが立っており、中にはグランドピアノの生演奏、面接では管理職がウェイターとなり、コーヒーやジュースを運んでくれるという、応募者に対しても、お客と同じ様なもてなしをするという。

これは最初にリッツ・カールトンの理念や価値観を伝えるためであり、事実応募者の半分くらいは会場の雰囲気を見て、自分には合わないとして帰っていってしまったと。

リッツ・カールトンの従業員は『エンパワーメント』と呼ばれる、最高2、000ドルまでの上司の判断を仰がずに使える即時決裁権が与えられていることは有名だ。

また、他のセクションを手伝うときは、自分の通常業務を離れることが認められており、従業員がその場で判断して、行動できるようなしくみにしている。

信頼できる従業員を採用しているからこそ、このような授権のしくみが生きてくるのだ。

技術は訓練できても、パーソナリティは訓練できないからであると。


リッツ・カールトンの訓練

リッツ・カールトンでは新人の時から、感性を発揮するチャンスを与えたり、グッドアイデアボードというアイデア投書箱がある。

ラインアップ(朝礼)はマネージャーが指示・注意を与えるという形式ではなく、ディスカッション方式で、司会役がゴールドスタンダードから選んだ質問を、みんなで考えて話し合うというものだ。

正解が用意されているわけではなく、ディスカッションを通して、それぞれが自分の頭で考えるプロセスが重要なのである。

ラインアップでは今日のベーシックということで、20項目のベーシックを一日一項目読むことを、毎日必ず行っている。こうしてベーシックを徹底的に頭にたたき込むのだ。


トップ5%の顧客の感性を大切にする

リッツ・カールトンのブランド戦略は『トップ5%の顧客』の感性を満足させるようなサービスを提供するということを目標にしている。

ディズニーからも多くを学んだが、ディズニーとリッツ・カールトンの共通点は一人一人のお客様に目を向け、つねに感性を磨くステージを提供しているという点であると。

ディズニーではディズニーマジックと呼び、リッツ・カールトンではリッツ・カールトン・ミスティークと呼ばれているものは、お客様が言葉にされない願望、ニーズを先読みして、お客様が想像すらしていなかったサービスを提供することでワオ・ストーリー、感動を引き起こすことだ。

感動を持続させることで、さらに一段上の感謝へと進化していく可能性のあるものである。

ブランドを評価する基準はリピート率とリファーラル率(口コミ)だ。大阪のリッツ・カールトンの場合、リピート率は50%であり、高いリピート率が生涯顧客の創造につながるのである。

ちなみにディズニーランドの場合、リピート率は90%だ。



一番印象に残ったストーリー

リッツ・カールトン・ミスティークあるいはワオ・ストーリーと言っている通り、いくつもの感動するストーリーが一杯の本だ。

感動のストーリーをいちいち挙げていては興ざめなので、詳しくは紹介しないが、筆者が一番印象に残ったストーリーを引用したい。

それは「あなたのパラシュートを詰めるのは誰?」という話だ。

これは顧客の体験ではなく、高野さんがリッツ・カールトンのアトランタ営業所のスタッフから教えて貰った話だそうだ。

ベトナム戦争に従軍したエリートパイロットのチャールズは大きな戦果をあげていたが、最後にミサイルで撃ち落とされた。パラシュートで脱出に成功したが、ベトナムで捕まり、長い投獄生活を送った後、解放され無事生還した。

ある日のこと、彼が妻とレストランで食事をしていると見知らぬ男がそばに寄ってきて、「あんた空母キティホークにいたチャールズじゃないか。撃墜されたんじゃなかったのか?」と言った。

驚いたチャールズがなぜそんなことを知っているのかと尋ねると、男は「あのとき、おれがあんたのパラシュートを詰めたんだよ。どうやらちゃんと開いたようだな。」

「もちろんだ、あの時あんたのパラシュートが開かなかったら、私は今ここにこうしていられるはずがない!」

チャールズはその夜一睡もできなかった。あの男のことが頭から離れなかったのだ。

同じ海軍とはいえ、あの男は一水兵で、自分はエリートパイロット。彼とも何度か顔を合わせていたに違いない。しかし「おはよう」とか「元気か」とか自分から声をかけたことが一度でもあっただろうか。

何十人という水兵が船底に近い作業所で、言葉をかわすことすらないパイロットのために、毎日何時間も黙々とパラシュートを折り畳み、丁寧に詰めている姿をチャールズは思った。

人は皆、気づかないうちに、誰かに様々なパラシュートを詰めて貰っている。思いやりのパラシュート、情緒的なパラシュート、祈りのパラシュート…。

チャールズは思い返していた。

落ちていくジェット機から必死の思いで、パラシュートを開いたこと。長い投獄生活の苦しい年月の間、家族や友人たちのことを思うことによってどれほど自分の心が勇気づけられたのかを。

それから彼は自分の経験から学んだことを講演して歩くこととなったと。


このストーリー自体は感謝の心を常に忘れずにというものだ。

ホテルもドアマン、ポーター、ウェイター、コック、皿洗い、ベッドメーカー、洗濯、アイロン掛け、フロント、コンシェルジェ等々様々なスタッフに支えられて成り立っていることを思うと、このストーリーが本当に意味を持ってくる。

ホテルのサービスを提供する精神はオーケストラではなく、ジャムセッションの精神であると高野さんは言っている。

即興性と各パートの連携が大事なのだ。なるほど言い得て妙である。

さすがにベストセラーになるだけのことはある。是非一読をおすすめしたい本だ。


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Posted by yaori at 23:42Comments(0)TrackBack(0)