2016年10月30日

なぜ国際教養大学はすごいのか 大学の国際化とは?



就職率100%を誇り、すべての授業を英語で行い、新入生全員に1年間の寮生活、すべての学生に1年間の海外留学を義務付けるリベラルアーツ大学、国際教養大学学長の鈴木典比古さんの本。

日本語の大学名は国際教養大学だが、英語ではAkita International Universityと秋田の名前が入っている。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で目次を紹介しておく。その章の目次のあとに、内容を簡単に紹介する。

第1章 世界の大学で何が起きているのか

・教育鎖国をやめて世界基準を導入するしかない
・優秀な学生を集めるべく世界中で青田刈りする海外の大学
・ブランチキャンパスという名の直接投資を行う海外の大学
・「教育財」の輸出入があればこそグローバル化は成り立つ
・真のグローバル教育ができないと世界では通用しない
・世界最先端の講義をどこにいても無料で受けられる時代
・自宅で基礎知識を身につけ大学で応用問題に取り組む「反転授業」
・日本の組織は「閉鎖型」から「浸透膜型」に構造をシフトせよ
・学生は勉強しない、教員は密度の濃い教育をしない…
・「大学レポート」で外国人に向けても情報公開

この章では、世界の大学の動きを紹介している。

世界の有名大学は海外で優秀な高校生を青田刈りしている。

たとえば、シンガポール国立大学は日本人も積極的にスカウトしていて、学費も家賃も無料、引っ越し代や渡航費も出し、さらに毎月10万円支給します、というような条件でスカウトしているという。

有名大学のブランチキャンパスは、現在は中国が27校、UAEが24校、シンガポールが13校、カタール11校、マレーシア9校という具合だ。

日本には地方自治体が積極的に勧誘して、一時は37校も海外の大学の分校があった。しかし、当時の文部省が大学として認めなかったので、どんどん減っていった。

現在は筆者のシンガポール人の友人の娘さんが行っているテンプル大学レイクランド大学、ボストン大学国際ビジネスマン養成プログラムの3校のみだ。

国際教養大学の場所も、もともとはミネソタ州立大学機構秋田校の跡地だったという。

インターネットによる大学教育も盛んで、Courseraというスタンフォード大学、イェール大学、プリンストン大学などが参加する米国発のプラットフォームの学習者は1,579万人、参加大学・機関数133、1,467コースがあるという。

講義内容は、教師がビデオに向かってしゃべる講義形式だけでなく、1回につき10分くらいの講義の動画を見た後、小テストが提示され、それに回答して1セットとなり、一つの講座につき週5〜10セットの学習をした後で、課題が出され、期限内に回答するという形式で、これを繰り返して、最後に総合課題を提出して、それが合格レベルであれば、修了証書をもらえるという形だ。

日本もJMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会)というのをつくって、gaccoなどのオンライン教育をスタートさせている。

学習意欲があれば、世界どこでも年齢に関係なく世界最先端の講座が受講できる時代なのだ。

日本の大学は入学するのは難しく、卒業するのは簡単な傾向があり、日本の大学生が米国の大学生に比べて勉強時間が短いことが統計で紹介されている。

サンプル44、905人の東大大学経営・政策研究センターが2007年に行った調査では、日本の大学生1年生は、1週間に全く勉強しない人が9.7%、1〜5時間勉強する人が57.1%で、一週間に5時間以下しか勉強しない学生が7割という結果が出ている。

それに対して米国では、全く勉強しないのは0.3%、ほとんどなく、最も多かったのが11時間以上勉強する58.4%だった。約6割の学生が授業の予習や復習で週11時間以上勉強している。

これは米国ではGPA(Grade Point Average)という全科目の成績の平均点が一定水準以上でないと、進級や卒業を認めないという制度だからだろうと。どの教科も手を抜けないのだ。

日本は不可にさえならなければ、出席数やテストの点数がギリギリでも卒業はできる。

第2章 リベラルアーツと日本のエリート

・東大も世界から見れば「ワンオブゼム」の大学にすぎない
・将来のエリートを目指す学生たちはリベラルアーツを学ぶ
・いまの日本のエリートに欠けているのは「全人力」
・「人工植林型」から「雑木林型」へ日本の人材育成は転換を
・「個」と「個性」との違いは何か
・「竹のようなしなやかさ」がリーダーに求められる時代

この章では、インダルトリアル(大量生産)の時代と、ポストインダルトリアル(大量生産以降)の時代に求められる能力が異なることを説明している。

インダストリアル時代は、ピラミッド構造の組織で、トップが計画を立案し設計するトップダウンとなっていたが、ポストインダルトリアル時代は組織はフラットとなり、現場がクライアントの意見を聞いて計画を立案し、設計するようになってきた。

これに伴い、インダルトリアルの時代では、仕事が分割されて一人の人間が同じ仕事をずっとやるという形だったのが、ポストインダルトリアル時代には、トータルソリューションが求められ、コミュニケーション能力、チームワーク、問題解決力、リスクテイキングといった能力が求められてきた。

それらの素養を身につけるにはリベラルアーツ教育しかないとの東京工業大学の木村孟(つとむ)学長の言葉を紹介している。

国際教養大学は、著者の鈴木さんが以前勤務していたICUのようなリベラルアーツ専門大学のように、少人数制の授業を重視し、教員と学生が対話をしながら授業を行っているという。


第3章 ”秋田発”グローバルスタンダード大学

・入試によっては偏差値は東大並み、就職率は100%
・新入生はすべて1年間の寮生活を体験
・ルームメイトとのトラブルや議論が語学上達の近道
・「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」ことが狙い
・世界的ヴァイオリニストが演奏しながら授業を行うことも
・少人数制の授業で、教員と学生双方の「逃げ場」をなくす
・24時間、365日、いつでも使える図書館
・すべての学生に1年間の海外留学を義務化
・「ギャップイヤー」制度で、入学前に自分探しや目標探し
・なぜ新渡戸稲造の「武士道」を読むべきなのか
・世界トップクラスのリベラルアーツカレッジになるために
・「生活寮」に「教育寮」も兼ね備えたテーマ別ハウス群
・「英語で英語を学ぶ」教育法を広めたい

この章で、鈴木さんは、国際教養大学の特徴を次のように整理している。

1.国際教養教育を学ぶ、リベラルアーツカレッジ
2.授業はすべて英語で行う
3.新入生は、学生寮で留学生と共同生活
4.在学中、1年間の留学が義務
5.24時間365日、勉強に集中できる学習環境
6.春と秋に入学できる

学生はこのような大学生活を通して、世界で活躍できるグローバル人材として成長していく。その結果が就職率100%だと。

開学してここまでの実績を築けたのは、故・中嶋嶺雄前学長や教員が企業に売り込んだ成果だと。

その教育内容を上記のような項目で紹介している。

卒業生の声

・現状に満足せずに探求心を持ち、新しいことにチャレンジする
・リベラルアーツ教育とは何か、思い悩み続けてほしい
・幅広い視野と好奇心があれば、人生は大きく変わります
・専門性は追及しなくても、「学び続ける」姿勢を身につけてほしい

この章では、卒業生の経験談を紹介している。そのうちの一人は、国際教養大学で初代主将として野球部を発足させた人で、筆者が駐在していたピッツバーグ郊外のWashington & Jefferson Collegeに1年間留学して、米国でもトライアウトを経て野球部に入部し、60人ほどの部員の中でプレイしていたという。

ペンシルベニア州ワシントンは、筆者が住んでいたピッツバーグ南部のアッパーセントクレアという町から車で15分くらいの市だ。こんなところの大学に日本人が留学していたとは知らなかった。

第4章 いま、日本の教育革命が始まる

・強制的に勉強せざるを得ない環境をつくるしかない
・学生たちが能動的に学ぶ環境は、教員がつくりあげるもの
・教え方を知らない教員に教わる学生たちは不幸
・教員の真剣さが伝われば、学生も真剣に学ぶ気になる
・教育者と研究者を二分することはできない
・大学のグローバル化を促す「世界標準カリキュラム」
・意義ある留学を実現するための「コースナンバリング制度」
・大学間の密な連携で、EU諸国では学生たちが複数の大学に在籍
・「文系学部の廃止」がもたらすもの
・受験の段階で専攻を決める必要はない

この章では、大学間の単位取得の世界標準システムを紹介している。コースナンバリングとは、国際標準の科目ごとの番号であり、次のように割り振られている。

100番台:初年次教育、一般教育
200番台:専門基礎教育
300番台:専門(上級)教育
400番台:卒業研究、卒業論文

EUでは大学間の連携が密になっていて、学生がEU諸国の大学を移動して、「学生渡り鳥」となり、複数の大学に在籍し、それぞれの大学で得た単位を蓄積している。

日本でも私立大学団体連合会が、「学生渡り鳥」制度を提言しているが、実践には結びついていない。日本では、依然として、どこの大学を出たかを重視するからだ。

しかし、教育のグローバル化を目指すなら、世界標準カリキュラムに統一し、学生渡り鳥が自由に行き来できる環境を整えるしかないと鈴木さんは語る。


第5章 世界標準の人材をつくるために

・優秀な人材が海外に流出しても、日本の価値は変わらない
・日本でも進む「ウィンブルドナイゼーション」
・年間4〜5万人、グローバル人材を育てたい
・「どこにいるか」ではなく「何をするか」が問われる時代
・これからの時代は、机上の知識だけでは決して乗り切れない
・日本語と英語に加え、もう一つの外国語を学べ
・日本は将来的に、モノづくりの国から知識で勝負する国へ
・本当のキャリアデザインは、一生を賭けてつくりあげていくもの

どこの大学の何学部を卒業したかを重視する日本の慣行はそう簡単には変わらないと思うが、たしかに日本への留学生が増えてくれば、世界標準カリキュラム化は必須となり、それが日本人の学生の海外留学が増えることにもつながると思う。

現在は海外留学すると、日本の単位が足りなくなるために、1年留年するパターンが多いが、こういったことはなくなるだろう。

大学は旧態依然として変わらない部分もあるが、ICUや国際教養大学のようなリベラルーツを重視して、世界標準カリキュラムを導入する大学が増えれば、だんだんに変わっていくだろう。

東大の濱田純一前総長が提唱した9月入学制度は、結局多くの大学の賛同が得られずに、実現しなかったが、これからも国際化にともない、大学の自己変革が進んでいくことだろう。

大学の国際化の動きがわかって参考になる本である。


参考になったら、投票ボタンをクリック願いたい。




  
Posted by yaori at 02:47Comments(0)TrackBack(0)

2015年04月19日

田舎の無名高校から東大、京大にバンバン合格した話



奈良の中高一貫の私立西大和学園の創始者で、現会長の田野瀬良太郎さんの本。

西大和学園といっても、関西以外の人にはほとんどなじみがないと思う。筆者もこの本を読んで初めて知った。

奈良県の受験校は東大寺学園が有名だが、実は西大和学園は、とうとう今年東大寺学園を上回る合格者を出し、堂々一位に躍進した。

2015年京大合格者数ランキング(京大は後期日程廃止)
◎ 西大和学園(奈良県)  81人(医4人)
◎ 東大寺学園(奈良県)  70人(医9人)
◎ 甲陽学院(兵庫県)      67人(医7人)
◎ 洛南(京都府)  60人(医15人)
◇ 北野(大阪府) 58人(医2人)
◎ 洛星(京都府)  56人(医2人)
◎ 大阪星光学院(大阪府)    54人(医4人)
◇ 天王寺(大阪府) 53人(医1人)
◇ 掘川(京都府) 52人
◇ 膳所(滋賀県) 48人
◎ 清風南海(大阪府)      47人(医3人)
◎ 大阪桐蔭(大阪府)      45人
出典:「陽は西から昇る! 関西のプロジェクト探訪」ブログ

2015年の東大合格者数は28人、ランキングでは17位とあまり目立たないので、いままで気が付かなかったが、着実に順位を上げている。

この本に過去20年間の東大・京大の合格者数の推移が載っているので紹介しておく。

西大和学園




















出典:本書8−9ページ

他の有名校も当然、受験指導には力を入れているなかで、これだけランキングを上げて、生徒の成績を上げているのは大したものだと思う。

この本の著者の田野瀬さんは、奈良県五條市出身、名古屋工業大学を卒業して名古屋の化学会社の研究所でサラリーマンをやったあと、29歳で五條市市議会議員に無投票当選、すぐに県議会議員を目指すが落選し、4年間の浪人生活を送る。

その後、県議会議員になったあと、衆議院選に出馬して、落選、またも4年間の浪人生活の後、50歳前に衆議院議員に初当選する。

学校経営に乗り出したのは、県議会議員に落選した浪人時代に、なかよし保育園を設立したからだ。奥さんが幼稚園の先生をしていたから、生活のために保育園経営を始めたのだという。

保育園を経営していくうちに、教育ビジネスの魅力に気づき、その後県議会議員となった後、奈良県の高校不足が深刻なことを痛感し、自ら高校をつくることを決めた。

高校づくりを決めても、メンバーは自分と遠縁の親類1名だけ、経験者ゼロ、資金ゼロでスタートした。

運よく建設用地が見つかり、銀行も「交通の便がよく、小高い丘の上にあり、近くにニュータウンがある」ということで、成功する私学の立地条件を備えているということで、すんなり融資をOKした。

1986年に第1期生を募集し、2、300人余りが受験、218名を合格させた。

体育系クラブも、たとえばサッカー部が初年度の新人戦で奈良県ベスト4という好成績を収めていたが、文武両道は無理と判断して、部活は週3回、2年生の3月までと決めて、進学路線に集中することにした。

まずは関西大学20名以上を最初の目標に、進学路線を強化した結果、22名が合格した。入学当時の偏差値では到底考えられない躍進だったという。

その後、中学部も併設、6期生から中高一貫教育を受けた西大和生が誕生し、この年の国公立合格者は200名を超え、東大6名、京大17名が合格した。

西大和学園は、塾や予備校通いが不要な教育を目指している。

この一環として、始業前の補習であるゼロアワー、一日7限の授業、補習で、平日は大体6時頃まで授業、休みに学校にクラス全員で泊まり込む勉強合宿、平日に学校に泊まり込む平日合宿など、質量ともに他の進学校を上回る授業をしている。

教員は当初から新卒を中心に採用しており、校長も3代続けて公立学校の校長を招いた後は、生え抜きの34歳の校長が就任した。若い教員で、長時間、質量ともに充実した教育を実施するのだ、

他の進学校が数学に力を入れているのに対し、西大和学園では数学と英語に力を入れ、ネイティブ教師、AETによる英語教育と、中学3年生の米国西海岸でのホームステイを実施している。

英語は受験で裏切らない、大コケが少ない教科で、英語で取りこぼさないことが重要だ。飛躍の原因は「英語が9割」なのだと。

2002年からは文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールに指定され、高校2年生の希望者は、最先端科学を研究する大学等のラボにステイして授業を受けたり、実験を行ったりしている。

2002年の第1回ラボステイでは、奈良先端科学技術大学院大学の山中伸弥教授の研究室で学んだという。

その他、8時55分から毎日小テストを行う、「8・55」の導入、高校一年から生徒全員にiPadを支給し、様々な授業で活用している。

田野瀬さんは、西大和学園以外にも、カリフォルニアに西大和学園カリフォルニア校、看護士資格と保健師等のダブル資格+学位が取得できる専攻コースもある白鳳女子短期大学、平成26年には大和大学を設立して、教育事業を拡大している。

「受験は団体戦だ」と田野瀬さんは語る。進学路線ではあるが、やっていることは、いわば「体育会系」の質量ともに充分な教育だ。これなら東大・京大合格者ランキングが上がったことも、なるほどと納得できる。

あとは人格教育だ。大学に入ることが人生の目標ではない。

この本では触れられていないが、有名進学校の多くは、聖光、栄光、ラサール、東大寺学園など、宗教系で宗教教育に熱心だったり、コンサートや演劇、絵画鑑賞、野外教習などのプログラムも充実している。

全人格教育を目標とし、受験の結果もさることながら、優秀な社会人となる基盤教育を目指しているのだ。

この本の最後の方に書いてある、7時限授業を週3日は6時限に減らすことや、「生徒が自由に取り組めるようなあらゆるステージを用意する」ということは、全人格教育の方向に徐々に舵を切っているのだろう。


いろいろな経験をしている田野瀬さんの話は面白く、大変参考になる本である。


参考になったら、投票ボタンをクリック願いたい。




  
Posted by yaori at 02:58Comments(0)TrackBack(0)

2014年11月04日

学校の先生が国を滅ぼす 国旗掲揚・国歌斉唱をサボタージュする教員

学校の先生が国を滅ぼす
一止羊大
産経新聞出版
2009-10-31


大阪市で平成10年から12年にかけて小中高一貫の障害児学校の校長を経験した一止羊大(いちとめ・よしひろ・ペンネーム)さんの本。一止さんは、最近でも時々、MSN産経ニュースの「解答乱麻」というコラムに、「はだしのゲン」などについて寄稿している。

一止さんは「反日教育の正体」という本も出している。



アマゾンに載っている産経新聞出版による本の紹介が良くできているので紹介しておく。

産経新聞の名物コラム「産経抄」あてに一冊の自主製作本が送られてきた。学校内での国旗、国歌指導の実態を知ってもらいたい-。そんな思いで、大阪府の元公立学校校長が綴った赤裸々な体験談だ。

着任したばかりの校長にあいさつすらさせない職員会議。入学式や卒業式の国旗掲揚、国歌斉唱は「戦争賛美だ」と決めつけ、「多数決を尊重しろ」と団交を繰り返す教職員たち。

校長を誹謗中傷する文書が保護者にも大量にまかれ、自宅にまで脅迫じみた電話がかかってくる…。とても教育者の集まりとは思えない学校現場の実態。

「あの本を読みたい」「書店では手に入らないのか」。コラムで紹介した産経抄担当者あての電話は鳴りやまなくなった。

産経新聞出版では、この幻の書「学校の先生が国を潰す」を読みやすく再編集、タイトルも「学校の先生が国を滅ぼす」と改め、一般書籍として発売することになりました。

ジャーナリストの櫻井よしこさんは、解説の中で、次のように述べています。

「私は日本の教育が直面する問題について、年来の取材を通じて或る程度理解していたつもりだった。だが、そのような考えが如何に甘かったか、実際の教育現場は想像を絶した真っ只中にある、と突き付けたのが本書である」

目次
第1章 「職場民主主義」の実態

第2章 背後に潜む政党の影

第3章 国旗・国歌法が制定されても

第4章 それは指示か、職務命令か

第5章 相も変わらず懲りない面々

解説・櫻井よしこ そしていま、私たちは、民主党政権の誕生を見た。

アマゾンの本の売り上げ順位 244,204位というマイナーな本にしては、32ものカスタマー・レビューが寄せられている。高評価のものが多いが、1のものもいくつかある。

この本の内容は卒業式、入学式等の学校の正式イベントで、国旗掲揚、国歌斉唱を行うことへの教員の執拗な反対、妨害行為を、当事者の校長自らが細かく記録したものをまとめたものだ。

学校の民主的運営とは、教師と校長・教頭ら管理職とは同等で、職員会議によって多数決で決められるべきだと主張する教員。

これに対して、校長は管理職であり、教員は校長の指導・命令に従わなければならないと当然主張。

さらに、校長が職員会議を開催の指示を出すが、校長は必ずしも職員会議の決定には拘束されないと、校長は主張する。

国旗掲揚、国歌斉唱は文部省の指導要綱にも含まれ、平成11年には「国旗及び国歌に関する法律」も成立した。

これに従うのは当然と主張する校長に対して、式次第から国歌斉唱を省いて印刷したりして、執拗に抵抗する教員。

この本が出た後でも、大阪では一部の教員によるサボタージュにより国旗掲揚・国歌斉唱が徹底できなかったため、平成23年には大阪維新の会が主導して、「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例(平成23年大阪府条例第83号)」が制定されている。

法令・条例でのけりはついているが、この本で紹介されている執拗な教員の反・日の丸、反・君が代の姿勢からすると、はたして今は実態はどうなったのか気になるところである。

ちなみに、この本では勤務時間中の組合活動を問題にすると、教師が「なにわ方式を知らんのですか」と言いだしたこと、教育委員会も認めていたことを暴露している。

「なにわ方式」とは、組合に出席するさい、年休届を出さなくて良いという教育委員会との取り決めで、一応届けを出して後で破り捨てる。いわゆる『破り年休』だという。教育委員会は、非公式には存在をみとめたものの、問題が明るみに出ると否定している。

「この状況が日本の教育現場で、再生産されながら、何十年も続いていること」、「この本に書いたことは、程度の違いはあってもわが国のどの公立学校でも普通に見られる現象だ」と著者の一止(いちどめ)さんは語る。

本当にそうなのだろうか?今はさすがにこんなことはないことを願いながら、この本を紹介しておく。


参考になったら、投票ボタンをクリック願いたい。

  
Posted by yaori at 23:13Comments(0)TrackBack(0)

2014年05月24日

給食で死ぬ!! 毎日サプリを飲んでいたらどうなるんだ?



給食を米飯と魚中心に変え、校内に花を多く置いたら、いじめ・非行・暴力がなくなり、優秀校になったという長野県真田町の元教育長で、中学校長の経験もある大塚貢さんの本。

大塚さんの給食改革による成果をわかりやすく説明するマンガ本もある。




大塚さんの講演のダイジェスト版がYouTubeに収録されている。これは5分程度なので、まずはこのダイジェスト版を見て頂きたい。このほかに2時間ほどの講演もYouTubeに収録されている




大塚さんの主張

大塚さんは、いじめ、カツアゲ、タバコ、空き巣などの犯罪だらけで、廊下をバイクで走り抜ける生徒もいた非行の激しい中学校に校長として赴任して、次の手法で改革した。

1.まずは、「わかる、できる楽しい授業」にすることに注力した。

2.一週間の給食5食すべてを米飯に変えた。

3.花づくりを推進した。

無農薬、低農薬の素材をつかった給食を実現し、魚を多く食べさせるようにしたという。



お金はかかるが、発芽玄米給食に変えたら、アトピーの子が激減するという効果もあった。

授業改革、花づくり、給食の改善の3本柱で、いじめが減り、不登校が激減した。読書の習慣が出てきた。学力も全国でトップクラスになった。


大塚さんが改革する前の状況

大塚さんが上記3点の改革に取り組む前は、生徒の4割が朝食抜きで、食べていてもコンビニ弁当などの、食品添加物だらけの食事と、レトルト食品、肉食だった。

朝食を摂らないとエネルギーが不足し、それが子供の無気力やイライラにつながる。

また、コンビニ食品による食生活を続けていると、栄養が偏り、いわゆる「血がドロドロ」状態となると大塚さんはいう。

血液をきれいにするカルシウムやマグネシウム、亜鉛、鉄分をはじめ、各種のミネラルも不足するためだ。野菜不足だから、ビタミンが足りなくて、血管が硬くなるなどのトラブルも招きかねない。

このブログでも紹介した「食品の裏側」から引用して、コンビニ食品等でよく使われている食品添加物の「タンパク質加水分解物」は発がん性があると注意喚起している。




学校に花を植える効果

佐世保小6女児同級生殺害事件」、「板橋両親殺害事件」、「奈良医師宅放火殺人事件」、「秋葉原通り魔事件」、「土浦荒川沖駅通り魔事件」、「元厚生事務次官宅連続襲撃事件」、「秋田児童連続殺害事件」、「神戸連続児童殺傷事件」などの凶悪犯罪が起こった学校は、どこも花がないという。

この本では、「花いっぱい運動」を続けるエアコン・暖房機などのメーカーのコロナの社長の話を紹介している。コロナは社員食堂で無農薬栽培のコメや野菜を提供している。

コロナの社長はレイチェル・カーソンの「沈黙の春」を読んでから、農薬の危険性に気づいたという。

沈黙の春 (新潮文庫)
レイチェル カーソン
新潮社
1974-02-20



アメリカでもオバマ大統領夫人のミッシェルさんが中心となって、ハンバーガーなどの高カロリー給食を追放する運動を進めている。

給食改革を取り上げた「ジェイミーの食育革命in USA」という映画もできている。この舞台はウェストヴァージニア州ハンティントンだ。筆者も行ったことがあるオハイオ川沿いの町だ。

飛行機のエンジン部品に使われる超合金の工場があるので、筆者はそこを訪問した。実はハンティントンは全米屈指の肥満率の町だという。



筆者が米国駐在の時は、息子たちが米国の小学校に行っていたので、筆者も小学校の食堂に行ったことがある。セルフサービス式で、サラダなどもあったと思うが、ピザ、ハンバーガー、チョコレートケーキ、コーラ等の高カロリー食が中心だった。

米国で、給食革命が叫ばれるのもわかる。


筆者の意見

大塚さんの「奇跡の食育」が成果を挙げているのは、よいと思うが、「給食を米食に変えたら、イジメ・非行・暴力がなくなった」というのは、因果関係として、いまひとつ理解できないものがある。

子供からサプリを飲ませる人は少ないかもしれないが、一か月分でも1,000円しかかからないマルチビタミン・ミネラルを飲めば、すべての必要なビタミンとミネラルは補給できる。

小林製薬 栄養補助食品 マルチビタミン・ミネラル+コエンザイムQ10(120粒入)【小林製薬の栄養補助食品】[サプリ サプリメント]
小林製薬 栄養補助食品 マルチビタミン・ミネラル+コエンザイムQ10(120粒入)【小林製薬の栄養補助食品】[サプリ サプリメント]

筆者は、25年くらい毎日マルチビタミン・ミネラルを飲んでいる。運動を続けていることもあり、血圧も最適値だ。

「給食で死ぬ!!」という刺激的なタイトルといい、魚食を訴えているだけに、ややフィッシー(fishy)な印象があるが、本当に効果があるのであれば、ぜひ全国の学校で試してもらいたいものである。


参考になったら、投票ボタンをクリック願いたい。

  
Posted by yaori at 23:27Comments(0)TrackBack(0)

2014年04月30日

東大教授 大学法人化で東大教授もずいぶん変わった

東大教授 (新潮新書)
沖 大幹
新潮社
2014-03-15


地球上の水を扱う科学=水文学(すいもんがく)者の沖大幹東大教授の本。沖教授は専門の水文学では、「水危機、ほんとうの話」などの本を書いている。



沖教授は今年50歳。新進気鋭の教授だ。毎年のスケジュールは、大体年初に決まってしまうという売れっ子教授でもある。

そんな沖教授が、この本を書いた理由は、1.東大で学問に取り組む際の様々な知恵や心構えを後進に伝えたかったこと、2.優秀な若者が東大教授を目指さない(東大経由で海外の大学で奉職する)のは、長期的に悪影響が大きいという危機感、3.東大教授への信頼感の欠如に発奮、なのだという。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で、目次を紹介しておく(節のタイトルは重要なものだけ選んだ)。目次からもだいたいの内容が推測できると思う。後進へのアドバイスが満載なことがわかると思う。

まえがき
・死ぬまでの暇つぶしのために
・自由と名誉と資産がほしいなら
・東京大学教授道

第1章 東京大学教授解体新書
・大学教授の定義
・年齢構成は?
・なぜ「総長」なのか
・旧制第一高等学校とは?
・東京大学名誉教授の条件
・給与について
・平均的キャリアは?
・給与は増やせるのか?
・勤務時間は?
・勤務はどう評価されるのか
・車、個室、秘書など待遇は?
・企業としての東大
・安定した自由業

第2章 どうすればなれるのか
・世界一になるのは簡単
・「東大卒」は必須条件か?
・東大入学への道
・「最難関」入試の考察
・進学の振り分けは?
・専門分野の選び方
・研究室と指導教員の選択
・地球の水循環と世界の水資源
・若者、ばか者、よそ者
・研究はスポーツ的か、芸術的か
・動物的研究と植物的研究
・論文書きの論文読み
・博士課程へ進むべきか
・「論文博士」とは?
・東大教授になるチャンス

第3章 社会的役割と権威
・日本を代表するには?
・国の審議会に参加したら
・政府の委員会での立ちふるまい
・英語で講演するために
・海外出張は魅力的か
・テレビ出演の注意
・新聞や雑誌との付き合い方
・政策立案支援と研究審査
・論文執筆こそ命
・有名学術誌から原稿を依頼されたら
・書籍の執筆法
・一般向けの講演も刺激的
・講演料はいくらか?
・東大教授の役得

第4章 醍醐味と作法
・講義こそ自己啓発の源
・弱小チームでも勝つには
・明日やろうは馬鹿野郎
・ゼミは英語で
・留学生の真実
・外国人教員の損得
・東大と国家百年の計
・次世代を育てるには
・教科書を書き換える研究
・伯楽への道

第5章 知的生産現場のマネジメント
・学内組織を円滑に運営するには
・学内会議のしきたり
・雑用を考察する
・東大の予算とは?
・業務マネジメント
・東大教授ほど素敵な商売はない

第6章 おわりに
・本書執筆の3つの理由
・究極の目的は何か
・知の統合のために

いくつか参考になった点を紹介しておく。


生まれ変わっても東大教授となりたい

沖教授は、生まれ変わっても東大教授として働けたらいいなと思う」という。東大教授になったら、自由、名誉、資産、いずれも努力が報われる程度には、バランスよく得られるのだと。

東大には3,900人の教員がいて、そのうち1,300人が教授だ。また、別枠で特任教授や特任研究員などの2,000人ほどの特定有期雇用教員がいる。職員は、事務系職員が1,500人、技術系職員が800人、医療系職員が1,800人いる。

東大教授の平均年齢は55.4歳で、東大教授に占める女性の割合は5%だ。准教授の平均年齢は45.6歳、助教は40.1歳だ。

ちなみに東大の財務報告を中心とした「事業報告書」と、より大学の実態を説明した「業務の実績に関する報告書」がネットで公開されているので、興味のある人は参照してほしい。


東大教授の給与

東大教授の平均年間給与は1,123万円、准教授で900万円、助手で730万円となっている。50歳前後で教授となって、年収は1,000万円程度、定年の65歳で1,200万円というのが平均的キャリアだ。医師免許を持っている場合は、大学外で医師になった場合の給与格差補てん(最大35年間の「初任給調整手当」)があるので、医学系の給与は、それ以外より高いという。

教授に昇格してからは、普通は出世もなく肩書きも変わらず、給与もあまり増えないが、減りはしない。成果が上がっても、上がらなくても、世間に認められようが、認められまいが、大学内ではほぼ同じように遇される。

沖教授は、この平等主義が東大の学問の自由を支えていると語る。つまり、結果が出るかどうか確信が持てずとも、学問的に重要だと信じる新しい研究に挑戦できるのだと。究極的には人類社会のためになるという信念があれば、研究に打ち込めるのだ。

給与を増やそうと思えば、管理職を目指すことになる。総長は倍、理事は6割増しの給与となるし、各組織の長でも理事並みの手当てがつく。しかし理事でない副学長の場合は、多少の上積みはあるが、普通の教授と大差ない。

ちなみに、政府の審議会の委員になった場合の謝礼は2時間の会議で2万円前後だという。


東大の学長を総長と呼ぶ理由

東大の学長を「総長」と呼ぶのは、東大の成り立ちが東京開成学校(法学部、理学部、文学部)と東京医学校(医学部)、工部大学校、予備門(東京英語学校)が一緒となったものだからで、それらを束ねる役職として「総長」が東京帝国大学に置かれた。東大の総長は、総長選考会議で選考される決まりになっているが、実際には、全学の講師以上の教員による投票によって決まるという内規になっている。

沖さんは東大の土木工学科(現在は社会基盤学科)の出身で、同窓会名簿には理学部工学科の卒業生と、工部大学校の卒業生の両方の名前が記されているという。

沖さんの水文学研究

水文学(すいもんがく)とはあまり聞きなれない言葉だが、沖さんたちは、貯水池操作や灌漑取水などの人間活動を含んだグローバルな水循環シミュレーションや、食料の輸入によって水不足地域の水需給がどの程度緩和されるかを見積もるバーチャルウォーター貿易研究、世界の水問題の実態把握、社会変化・気候変動に伴う水需給の変化などを研究しているという。

また、沖教授は、IPCCのウォーターフットプリントに関する作業部会に日本からの専門家として参加している。会議に出席するための旅費は日本政府が出してくれるが、謝礼はなく、経費節減でエコノミークラスにされる場合もあり、キツイという。

ちなみに東大の社会基盤学(土木工学)専攻では、書類選考のみで入学許可が出され、奨学金も受けられるという留学生特別コースを1982年から設けていたので、いまでは600名を超す留学生が卒業している。

東大が平成24年のQS World University Ranking のCivil Engineering分野でMITに次ぎ第2位になったのも、留学生コースの卒業生が活躍してくれているおかげだと。 (ちなみに2014年版では第4位となっている)。 


学問に対する態度

学問に対する態度としては、「論文書きの論文読み」として、何が学術的に高く評価されるのかを知るためにも、文献を地道に読みこなることが必要だと沖教授は語る。

音楽家が音楽をよく聴き、画家が絵を頻繁に鑑賞し、作家が本を濫読するのと同じだと。従来の枠組みを超えるためには、従来の枠組みがどうなっているのかを知っておく必要がある。

また、次の様な話も紹介している。

竜巻の大きさを示すFスケールに名前を残す、シカゴ大学名誉教授の故・藤田哲也教授は、大分県の「青の洞門」の話を小学生の時に聞いたときに、次のように思ったという。

「20年(伝承では30年)かけて穴を掘った人は本当に立派な人だと思いましたが、自分だったらそんな努力はしないで、まず最初の10年で穴を掘る機械を発明し、その後2倍のスピードで穴を掘る方が有効だと思いました。つまり、後に「穴」と「機械」が残りますので。研究でも同じで、仕事を始める前に「道具」をつくっています。そうすれば研究結果と「道具」の2つが残ります」。


以前は小講座制、現在は大講座制

以前は小講座制と呼ばれる伝統的な仕組みで、ある教授が辞めた後、その教授職にだれを据えるかは、辞めていく教授の意志を尊重していた。いわば徒弟制度のように、小講座制の人事には総長といえども選考に意見するのは難しかったという。

この反省で、現在は大講座制となっており、ある特定分野の教授を必ず置くというわけではなく、学問や組織の状況を考慮しつつ、大講座部門の教授の合議制で次に採用する教授の専門分野や候補者を決めるという。

国立大学法人は私立大学のように組織を経営する理事会と、教育研究を所管する教授会とが完全に切り分けられていないので、たとえば予算配分から人事制度、はては防災規則や、駐車場の配置、自転車置き場の通則まで、教員から成る委員会で議論する。

東大の「文化」として、「自分に悪影響が及ばない限りにおいて同僚の足は引っ張らず、やりたいようにやってもらうが、かといって特段の協力もしない」傾向があるという。

東大では2012年に「東京大学ファカルティ・ハンドブック2012(試行版)」という教員業務に関するマニュアルをつくっている。その内容は、この本にも一部紹介されているが、マニュアルなので本当のノウハウなどは含まれていない。この本では、そのノウハウ的な部分も紹介しており、現役の研究者には大変参考になると思う。


沖教授は理系の先生ではあるが、文才があり、文章は読みやすい。筆者も東大教授の先輩・後輩が数名いるが、こういう実務的なことを聞いたことはなく、参考になった。

現役の研究者の役にも立ち、東大教授についての一般知識を得るにも最適な本である。


参考になったら、投票ボタンをクリック願いたい。

  
Posted by yaori at 08:35Comments(0)TrackBack(0)

2013年04月22日

次男の大学入学式に出席した

次男の東大入学式に出席した。

H25年度東大入学式1











平成20年度の長男の入学式のときと、演奏する曲も同じ、式次第も同じ、応援歌なども同じで、ほとんどデジャヴュの式だった。

東大入学式














総長や来賓、各学部・研究所長のメンツは変わっている。もちろん浜田純一総長と、小宮山宏前総長の挨拶は、それぞれの打ち出した方針が異なるので、全然違うものだ。

5年前と比べると、留学生の数は99→40名程度、女性比率は18%→17%と低下している。

浜田総長が、学生の多様化のために、9月入学制度導入や、推薦入学制度導入に力をいれている理由がわかる。

今回の式辞でも総長、教養学部長、来賓(黒川明東大名誉教授・医学博士・原発事故調査委員会委員長)の3人が全員、多様化や海外留学など異文化体験の勧めを強調していた。

次男は幼稚園から小学校1年生まで、ピッツバーグで3年間住んだ経験があるが、それでも是非、機会をつくって、異文化体験を深めて欲しいものだ。

教養学部長からは「飲酒」についての注意と、「飲酒」に関しての家庭でのサポートを要請する発言もあり、飲酒事故をなくそうという大学側の姿勢が伺える。

はからずも定点観測になった入学式だった。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


>  
Posted by yaori at 12:54Comments(0)TrackBack(0)

2012年12月24日

就活生の親が今、知っておくべきこと 日経ウーマン編集長の体験記

就活生の親が今、知っておくべきこと (日経プレミアシリーズ)就活生の親が今、知っておくべきこと (日経プレミアシリーズ)
著者:麓 幸子
日本経済新聞出版社(2011-11-10)
販売元:Amazon.co.jp

2012年度の新卒採用は、2011年から2か月遅らせて12月1日スタートとなった。毎日のようにリクルートスーツを着て会社訪問に行っている息子さん、娘さんがいる人もいると思う。

40代、50代の親が経験した昔の就職活動と、現在のインターネットの就職サイトを使った就職活動は全く異なる。また子供の数は減っているのに、大学生の数は増えているので、景気低迷で採用者数が減少している現状では競争は比べものにならないほど厳しい。

だから名前を知らない会社に内定しても、いい大学に行っているのだから、もっと有名な会社にトライしろなどとケチをつけてはいけない。

これは、そんな親への日経ウーマン編集長の長男の就活を踏まえた体験記である。

元々は日経新聞電子版に2011年3〜4月に連載された「母と子の444日就活戦争」を再構成したものだ。


麓さんの長男の就活体験

著者の麓さんの長男は、超上位校ではないが、2番手グループに入る私立大学にいて真面目に大学に通っており、見た目も悪くないから、面接官にも好まれるのではないか、「まあ、なんとかなるんじゃないか」と思っていたという。

今から思えば、親バカの極みだという。

結論から言うと、麓さんの長男は2011年春に都内の私立高校の教員として就職した。内定したのが2010年の12月。就活を始めてから実に444日めの内定だった。

就活を通じて、長男は子どもが好きなことに気が付き、教職を目指すこととなったという。東京都の教職員採用試験ではいいところまでいったが、結果は不合格だった。ちなみに応募者は2万人、倍率8.1倍だったという。


就活に親が”丸腰”で臨んではいけない

麓さんは「就活は子どもに任せて親は暖かく見守るべし」などといって、ゆめゆめ子どもの就活に、親が”丸腰”で臨んではいけないと力説する。

子どもたちが就活時に体験する困難さや混乱は、子どもたちのせいではなく、国の雇用政策、産業構造、グローバル化を背景にした企業の事業戦略や人事施策などの大きな変化によってもたらされている。

親がすべきことは、単なる見守りだけでなく、自らの経験を生かして働くことの意味を伝え、適切なアドバイスをし、「大丈夫できるよ」といってポンと背中を押す。よきサポーターやアドバイザーになることだという。


親の世代の就活と現在の就活とは全く異なる

この本の前半で麓さんは、親の世代の就活と現在の就活とは全く異なることを、数々のデータを挙げて説明している。「昭和の就活」と今の「就活」が違う点を簡単に紹介しておく。

1.大学進学率は倍となり、少子化にもかかわらず大学生の数は増えているのに求人総数は増えていない。

scanner440













出典:本書83ページ

scanner437











出典:本書23ページ

2.非正規雇用が3割に達し、正社員の枠はますます狭き門になり、さらにグローバル採用という外国人との競争もでてきた。

scanner442












出典:本書126ページ

上記の通り、男性で非正規雇用者は2000年の12%から2010年には19%に増加した。女性では2003年ごろに正規雇用と非正規雇用が逆転し、2010年には、非正規雇用が54%で正規雇用の46%を上回るという状態になっている。

グローバル採用については、トム・フリードマンが「フラット化する世界」で書いていることが当てはまる。

「いいか、私は子供の頃、よく親に『トム、ご飯をちゃんと食べなさい ー 中国やインドの人たちは、食べるものもないのよ』といわれた。

おまえたちへのアドバイスはこうだ、『宿題をすませなさい ー 中国とインドの人たちが、おまえたちの仕事を食べようとしているぞ』。」


フラット化する世界〔普及版〕上フラット化する世界〔普及版〕上
著者:トーマス・フリードマン
日本経済新聞出版社(2010-07-21)
販売元:Amazon.co.jp


3.指定校制がなくなり、自由に応募できる就職情報サイトが主流となるにつれ、応募者が激増した。企業はひそかに「大学別ターゲット採用枠」という事実上の「学歴フィルター」を導入して自衛した。

東証一部上場の人気企業では万を超えるエントリーシートが寄せられる。エントリーシートとは次のようなものだ。

scanner438






出典:本書36−37ページ

このうち”自己PR=学生時代に頑張ったこと”(通称「ガクチカ」)で、企業側がどういう人材を求めているかを考えずに、自分の基準で的外れなことを書く学生が多いという。

麓さんは、面倒見の良い知人から長男がアドバイスを受けて、ガクチカを書き換えた話を紹介している。

長男が最も強調したかった「自分のサークルを廃部の危機から救った」という話ではなく、「サークルで学生のみならず、社会人OB・OGや子供も参加したイベントを企画して成功させた」というエピソードを取り上げるようにしたという。

これなら幅広い世代の人と話せるというコミュニケーション能力の高さを証明する事柄なので、企業側はオッと思うだろうと。


4.大企業を目指しての就活は、下位大学出身者だとやっても無駄(採用枠がない)。上位大学出身者では同じ大学同士で争うことになる。

大学は少子化にもかかわらず、学生を確保しなければならない必要に迫られ、学力試験なしのAO入試や女子学生を増加させて、学生数を増やし続けてきた。そのツケが大学生の学力低下だ。

就活生は45万人いるが、人気上位100社の新卒採用数は合計3万人弱。旧帝大、早慶上智、MARCH、関関同立といわれる関東・関西の上位校の就活生を全部足すと4−5万人になるという。

海老原嗣生さんの「就職に強い大学・学部」にあるように、人気上位100社への就職に強いのは慶應、早稲田、上智まで。それも経済・法学部・商学部など偏差値の高い学部に限られるというのが現実なのだ。

scanner329










scanner330







出典:「就職に強い大学・学部」71&75ページ


企業が本当に求める人材はズバリ「商社マンタイプ」

経団連の2011年新卒採用に関するアンケート調査(545社回答)によると、企業が選考にあたって特に重視した点は次の通りだ。

scanner441












出典:本書111ページ

第1位が8年連続で「コミュニケーション能力」、2位の「主体性」は4年連続で上昇、「協調性」、「チャレンジ精神」などが続き、「専門性」や「語学力」なども上昇しているという。

ひと言で言うと、企業が採用活動で重視するのは、ビジネスの基本となるコミュニケーション能力や熱意、バイタリティなどで、誰かの指示を待つ受け身な姿勢はダメで、積極的に自ら考えて動ける人材が求められているという。

つまり企業の欲しがる人材は「商社マンタイプ」なのだと。

「パワフルでコミュニケーション能力が高く、やり手で気が利いていてプレゼンもうまく、人をまとめられる、人を動かせる人」が求められているのだという。

筆者も商社で長年働いているので、「商社マンタイプ」という言葉には若干抵抗を感じるが、いずれにせよ上記のような人物像が、企業が最も求めているタイプであることは間違いない。


「人を動かす」から学ぶ

筆者の長男も麓さんの長男の一年後に就活を経験し、2012年4月に社会人になったばかりだ。筆者の出身クラブの後輩も時々相談に来る。

横道にそれるが、筆者の就活生に対するアドバイスは、カーネギーの「人を動かす」から学べというものだ。クラブの後輩だけでなく、会社の後輩や米国駐在の時はアメリカ人の部下にもこの本をプレゼントしてきた。

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10-31)
販売元:Amazon.co.jp

How To Win Friends And Influence PeopleHow To Win Friends And Influence People
著者:Dale Carnegie
Pocket(2010-04-27)
販売元:Amazon.co.jp

「人を動かす」の中には、運送会社が顧客に出したレターの添削や、アリゾナに転勤する女性銀行支店長の例が紹介されている。これらの文には人を動かすエッセンスが含まれている。

英文版の「なか見!検索」だと、目次の章題にリンクがついていて、それぞれの章題にジャンプできるようになっている。日本の「なか見!検索」もいずれこのような機能が追加されるのかもしれない。

上記の企業が重視している能力を参考に、採用担当者の立場に立って考えることができれば、「ガクチカ」や採用面接も克服できるだろう。

このブログではいろいろな人がカーネギーについて語っていることを紹介している。その層の厚さに驚くだろう。

法政大学では、「もし法大生が『デール・カーネギー』の原則を身につけたら」という特別講座を開講している。筆者と同じ考えの人がいるのだと思う。

人間関係の基本はいつの時代でもどの国でも変わらない。相手の立場で考えるという態度を身につけることができれば、その人はどこへ行っても成功すること間違いない。

永遠の名著「人を動かす」を参考にして、就活を勝ち抜いてほしい。


なお、このブログでは前述の海老原 嗣生(つぐお)さんの「就職に強い大学・学部」や、「学歴の耐えられない軽さ」のあらすじを紹介している。

偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)
著者:海老原 嗣生
朝日新聞出版(2012-03-13)
販売元:Amazon.co.jp

学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識
著者:海老原 嗣生
朝日新聞出版(2009-12-18)
販売元:Amazon.co.jp

また、東大生でも就活に苦労することを、「内定取れない東大生」のあらすじで紹介している。

内定とれない東大生 〜「新」学歴社会の就活ぶっちゃけ話 (扶桑社新書)内定とれない東大生 〜「新」学歴社会の就活ぶっちゃけ話 (扶桑社新書)
著者:東大就職研究所
扶桑社(2012-03-01)
販売元:Amazon.co.jp

海老原嗣生(つぐお)さんは、転職エージェントマンガ・エンゼルバンクのモデルとなったリクルートワークス編集長で人材コンサルティング会社(株)ニッチモ社長。ときどきテレビなどにも登場している。

就活に興味のある人は、海老原さんの「就職に強い大学・学部」や、「学歴の耐えられない軽さ」、「内定取れない東大生」のあらすじも参考にしてほしい。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。





  
Posted by yaori at 12:09Comments(0)TrackBack(0)

2012年05月15日

就職に強い大学・学部 まあ大体わかっていたことではあるが…

偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)
著者:海老原 嗣生
朝日新聞出版(2012-03-13)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

このブログでも「学歴の耐えられない軽さ」など何冊か紹介している転職エージェントマンガ・エンゼルバンクのモデルとなったリクルートワークス編集長で人材コンサルティング会社(株)ニッチモ社長の海老原嗣生(つぐお)さんの本。

学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識
著者:海老原 嗣生
朝日新聞出版(2009-12-18)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

就職をめぐるデマ・誤解

この本のあとがきで、海老原さんは、マスコミに流れるデマ・誤解をデータで反証するために就職関係の本をこれで5冊出したが、もうこれで打ち止めにしようとして、この本を書いたという。

そのデマとは(カッコ内は海老原さんの反論や筆者のコメントだ):

1.新卒偏重の日本では、大学卒業時点の1回しか正社員になるチャンスがない。

2.既卒3年まで新卒扱いすれば、若者は救われる

3.内定解禁を半年後ろ倒しにして4年の秋にすべき
(筆者はこれを”デマ”とは思っていなかったが、海老原さんは4月1日解禁の現在でも10月1日時点で4割近い未就職者が出ている。そこから3月末までにこのうちの3割は(大体は中小企業に)内定する。もし10月解禁にすると、3月末に4割近い未就職者が出てしまうという。)

4.採用広報を12月1日に後ろ倒しにすることで、学業阻害が和らぐ

5.採用を通年化すべき
(採用を通研化すると、いつまでも大手志向が冷めやらず、学生が中小企業に目を向ける機会が減る。人気100社には5%しか入れず、1000人以上の企業に就職できるのは1/3だという現実を忘れている。)

6.日本式の新卒一括採用が、若者を苦しめる諸悪の根源
(OECDのデータでも一括採用している日本と韓国の若年失業率が際立って低い。欧米型にすると就職できずに、インターンとかアソシエイトという不安定な待遇を我慢しないと、正社員にはなれない。どちらが若者にとって良いのだ?)


大体わかっていたことではあるが…

国公立大学は卒業生の就職先を公表していないので、この本で論じられているのは私立大学の卒業生の話だ。大体わかっている通りだが、結論は次の通りだ:

★人気上位100社への就職に強いのは慶應、早稲田、上智まで。それも経済・法学部・商学部など偏差値の高い学部に限られる。

海老原さんが各大学の公表資料からまとめた人気上位100社への就職率が載っている。高い方の数字は全就職者に占める比率、低い方の数字は全卒業生に占める比率。全卒業生は大学院進学者も含んでいる。

scanner328






出典:本書68ページ

次が上位100社に就職できたどの大学の学生が、どの業界に卒業できたかという表だ。早稲田・慶應・上智はいろいろな業界に、分布しているが、それ以下だと大量に採用する金融系の比率が圧倒的。

scanner329










出典:本書71ページ

金融系を除いた人気上位100社への就職率は、早稲田・慶応・上智が10%、同志社が6%、それ以下だと数パーセントとなっている。

scanner330







出典:本書75ページ

つまり、就職に強い私立大学は簡単に言うと慶應、早稲田、上智、同志社の順で、それ以下は金融系を除いては人気上位100社に就職は難しい。金融系は大量に採用するが、それは本店中心のキャリアを歩むエリートと、支店要員のソルジャーを両方採用しているからだという。


「誰でも大学生化」の当然の結果

「学歴の耐えられない軽さ」で説明されていた通り、若年層の人口は減っているのに、大学生の数は増えている。

基礎人口と大学進学率推移















当然のことながら、誰もが大学生となっている現在、平均学力は落ちている。産業構造が変わり、高卒求人が減少したことにより大学進学者が増えたのだ。

大学は少子化にもかかわらず、学生を確保しなければならない必要に迫られ、学力試験なしのAO入試や女子学生を増加させて、学生数を増やし続けてきた。そのツケが大学生の学力低下なのだ。

scanner327











出典:本書37ページ

これからは東大の秋入学化に象徴されるように、日本の少子化対策として留学生獲得競争が日本の大学に起こるだろう。


企業の求める人材の要素

企業が求める人材の要素は次の6つだ。
1.地頭がいい
2.要領がいい
3.継続性がある
4.体力がある
5.ストレスに強い
6.人に嫌われない、人を嫌わない。


人気上位100社の採用数は景気が良くても悪くても大体2万人前後で変わらない。

従来型の入試で、厳しい受験戦争を勝ち抜いて難関校に入るには、少なくとも上記の1〜3が必要だ。だから企業は難関校出身者を優先的に採用してきた。

一方、AO入試拡大で全私立大学の無試験入学者は5割にも上る。国公立を加えた全大学でも無試験入学は4割を超えるという。

厳しい受験戦争を経験せず「誰でも大学生化」で入学した学生は、上記1〜3の試練を受けていないので、大企業の選考ではじかれてしまう結果となるのだ。

昔のエントリーはハガキの手書きで、多くの企業に応募するのはよほど根気がないとできなかった。ところが、今は就職サイトに一旦情報を登録しておけば、同じ情報を使って何十社でもボタン一つで応募できる。

就職説明会などのエントリーでも、大手企業は有名校向けは大学別に開催し、それ以外の大学はまとめて開催している。誰でもエントリーが可能なので、希望者が殺到し、下位大学の学生はエントリーシートすら提出できないという事態になっているが、企業側も機械的スクリーニングせざるを得ないのだ。


早稲田対慶応の星取表が面白い

この本では早稲田対慶応の人気100社への就職状況を細かく分析していて面白い。

就職数では早稲田、就職率では慶応。業界数では早稲田だが、慶応が強い業界は慶応が圧勝しており、早稲田はまんべんなく、慶応は金融、商社などに集中する傾向がある。


国際教養大学が就職では最強

就職に強い大学は、開学からまだ8年の秋田県にある国際教養大学だという。

一般入試比率が7割で、入学者全員にTOEFLの成績でクラス分けし、最初の1年は全員が寮生活。1年の海外留学が必須で、4年で卒業できる学生は半分。企業の評価は高く、就職率はほぼ100%だという。


女子のほうが相対的に優秀のメカニズム

人気企業では男子学生の応募が大量にあるので、ライフイベントコストの低い男子を優先的に採用する。そんなハンディをものともしないパワフル女子は、激戦を勝ち抜いた精鋭となり、同期男子に比べて優秀さが際立つ。

人気企業が優秀な男子学生を大量に採用するので、それほど人気のない企業では優秀な男子学生が集まらない。

ところが女子は優秀でもなかなか人気企業に採用されないため、こうした企業群にも数多く応募する。したがって、優秀な女子とそれほど優秀でない男子との比較なら、どうしても女子が良く見えるのだ。

しかし女子が優秀=女子を多く採用とはならない。女性が長期で活躍できるのは、マスコミと化学・日用品業界というのが現実だ。


下位私立大学の高就職率は分母を操作している

下位私立大学が発表する9割という就職率は、就職できなかった学生をいろいろな理由でノーカウントにして操作された数字だ。

つまり就職者数=分子はいじれないので、分母=就職希望者数を少なくしているのだ。


大体わかっていたことではあるが、データで詳しく検証しているので納得できる。読みやすく参考になる本である。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。





  
Posted by yaori at 22:31Comments(0)TrackBack(0)

2011年01月24日

理科系冷遇社会 科学技術立国を阻む理系離れへの警鐘

理科系冷遇社会―沈没する日本の科学技術 (中公新書ラクレ)理科系冷遇社会―沈没する日本の科学技術 (中公新書ラクレ)
著者:林 幸秀
中央公論新社(2010-10)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

元文部科学省審議官で、JAXA副理事長だった林幸秀さんの本。

林さんは東大先端科学技術研究センターの特任教授で、独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センターの上席フェローだ。

大学院を卒業して博士号を持つ人材がなかなか定職につけない「ポスドク問題」をかかえる日本を、林さんは「理科系冷遇社会」と呼ぶ。

ノーベル賞受賞者が相次ぎ、日本の科学技術は世界トップレベルにあるような印象を受けるが、実は日本の科学技術はジリ貧状態に陥っており、このまま何の手も打たなければ、日本の科学技術は国際競争から取り残されると警鐘を鳴らす。

基礎研究面では欧米との距離が広がっており、急激な成長を遂げている中国にも追い越されようとしているという。

民主党の事業仕分けで蓮舫の「何故、スーパーコンピューターで世界1になる必要があるのでしょうか?2位ではダメなんでしょうか?」という発言が有名になったが、実は日本のスパコンは2位にもなれない現状だ。

スパコン保有台数では米国が282台で首位、2位は英国で38台、日本は18台で世界6位、24台の中国の下を行っている。

スパコンの性能比較ではさらに差が広がる。

世界1はクレイ社のCray XT5だが、2位は中国の「星雲」だ。ベスト10に中国が2台ランクインし、日本最高の日本原子力研究開発機構の持つ富士通スパコンは世界では22位という現状だ。ちなみに2010年には「天河一号A」が世界一位になっている。

エレクトロニクス製品の世界シェアの急落を示す小川紘一東大教授がつくった表が、ここでも紹介されている。

日本製品シェア推移







出典:2009年「科学技術白書」

経産省がiPodとiPadのコスト構成に於ける日本メーカーのシェアの減少をパイチャートにして示している。これも衝撃的だ。

iPodコストに占める日本製品シェア
















出典:本書22ページ


理科系人材の冷遇

理科系人材の冷遇という第2章は、次のような構成だ。

第1節 見劣りのする研究者数

第2節 児童・生徒の理科離れ

第3節 進学者数が減少する理科系学部

第4節 定職に就けない博士号取得者

第5節 育たない若手研究者

第6節 活躍できない女性研究者

第7節 少ない外国人研究者・技術者

表題だけ見てもこの本の指摘する問題点がわかると思う。


理系出身者の出世

生涯賃金では1998年の調査では理系が5,000万円少ないというデータがあるが、2010年の京都大学の西村和雄特任教授の調査では理系学部卒業者の平均年収は文系より100万円高く、年齢が上がるに連れ差は拡大するという結果が出ている。

全く逆の結果が出ているが、林さんは理系が文系の年収を下回っているという実感を持っているという。

例として日本の理系出身者の企業トップの比率は28%で、フランスや英国・ドイツでは55%前後であることが挙げられている。また中国の共産党政治局常務委員9名のうち、8名が理系だという。

外国人研究者の育成については、今度あらすじを紹介する「宇宙は何でできているか?」の著者村山斉さんがトップを務める東大数物連携宇宙研究機構(IPMU)の例を紹介している。

宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)
著者:村山 斉
幻冬舎(2010-09-28)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

IPMUでは、外国人研究者が半数を超え、機構長の村山さんも総長以上の報酬でUCバークレーから迎えた人材だ。

2009年の「科学技術白書」の「目に見える世界トップレベルの研究拠点に向けて」というコラムで、村山さんは外国人研究者獲得競争で、海外レベルにあった給与、インターナショナルスクールの費用の半額負担、貸家の斡旋、配偶者の就職先の紹介、テニュア(終身在職権)が与えられないなど多くの問題があったことを指摘している。

ここをクリックしてぜひ「目に見える世界トップレベルの研究拠点に向けて」というコラムを見ておいて欲しい。


他国の取り組み事例

他国の取り組みの紹介も参考になる。

米国では安全保障面を支えている科学技術開発には金に糸目を付けない。米国政府の科学技術予算の半分はペンタゴンが獲得している。

米国が科学技術で遅れを取り、大問題になった2つの事件が紹介されている。

一つは言わずと知れたスプートニクによるソ連の宇宙開発で、もう一つは2002年のNECの地球シュミレーターが世界最速の演算記録を達成した時だという。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のノーベル賞受賞にも大きく貢献した地球シュミレーターが世界最速になったことで、米国は危機感を感じ短時間に追いついた。

スパコンは核実験のシミュレーションも可能なので、安全保障上重要だという認識があるのだという。

インターネット、カーナビは軍事技術の民間転用だ。

ロックフェラー財団カーネギー財団、フォード財団、ゲイツ財団など、民間財団の科学技術への貢献も見逃せない。

オバマ政権も2009年に「米国・イノベーション戦略:持続可能な成長と質の高い雇用を目ざして」というレポートを発表し、イノベーションへの民間と政府の研究開発費をGDPの3%以上(現在は2.8%)にすることを目標に掲げている。

欧州でもアリアン・ロケットなどを欧州各国が分業して取り組んでおり、2000年には「リスボン戦略」として2010年までに欧州の研究開発投資をGDPの3%に引き上げることに合意している。

中国では2000年には70万人だった研究者数を2007年には142万人にまで拡大している。日本は70万人なので、すでに日本の倍の研究者がいるわけだ。大学卒業者数も450万人と日本の75万人の6倍で、自然科学系PhD取得者はすでに米国とほぼ同数の2万人以上いる。(日本は7,000人)

「海帰政策」で海外で勉強した技術者に帰国を促す制度もある。

韓国の人口は5千万人で、日本の1億3千万人の半分以下だが、大学生の数では同等、大学院生の数では日本を上回っている。小学3年生から週1-2回の英語の授業を実施済みで、小学校全学年に英語教育を行うことが検討されている。

李明博大統領は研究開発費総額をGDPの5%に拡大することを公約に掲げていたこともあり、研究開発に熱心に取り組んでいる。

日本の科学技術の現状という第7章では、世界の主要雑誌に発表した国別の論文数推移や、大学のランキング、ノーベル賞の受賞者数などの統計をまとめている。

さらに先端技術の国際比較では、1,基礎研究力、2,応用開発力、3.産業技術力の3つの尺度で、次のような分野の競争力を分析している。

・電子情報通信分野全般

・ナノテクノロジーー材料全般 日本が健闘

・ライフサイエンス全般

・臨床医学全般

・環境技術全般 ー 日本は欧州と並んで強い

・先端計測技術全般


第8章 科学技術で世界に挑戦

最後の「第8章 科学技術で世界に挑戦・貢献を」は、次の構成となっている。

第1節 科学技術の重要性の再確認

第2節 研究開発費の増額

第3節 選択と集中の徹底

第4節 理科系人材冷遇社会の打破

第5節 人材を活かすシステム改革

第6節 国際標準戦略の策定

第7節 臨床研究の強化

第8節 東アジア科学技術協力構想


筆者自身も高校入学時には理系志望だったが、高校一年の時の数学の成績が悪かったので、結果的に文系となった。たぶん数学ができなかったので文系にしたが、理系には憧れをもっているという人は多いと思う。


日本の科学技術立国・知財立国のためにも、理系人材の育成についての林さんの提言は重要と思う。理系人材育成の現状がわかるよくまとまった本である。


参考になれば投票ボタンをクリック願う。




  
Posted by yaori at 12:59Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月09日

学歴の耐えられない軽さ 知らなかった新卒就職事情

学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識
著者:海老原 嗣生
販売元:朝日新聞出版
発売日:2009-12-18
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

元リクルート「Works」編集長で、マンガの「エンゼルバンク」のカリスマ転職エージェント海老沢康生のモデルとなった人材コンサルティング会社ニッチモ社長の海老原嗣生(つぐお)さんの本。

エンゼルバンク ドラゴン桜外伝(1) (モーニングKC)エンゼルバンク ドラゴン桜外伝(1) (モーニングKC)
著者:三田 紀房
販売元:講談社
発売日:2008-01-23
おすすめ度:3.5
クチコミを見る

「やばくないか、その大学、その会社、その常識」という副題がついているので、てっきりトップクラス以下の大学の話かと思ったら、日本の新卒就職事情についての本だった。

大学生の息子がいずれ就職マーケットに参入するので、この本は大変参考になった。

アマゾンのなか見!検索に対応していないので、目次を紹介しておく。目次を読むとこの本の論点が大体わかると思う。

第1章 学歴のインフレーション

1.学歴と常識の間 ー 秋田県も知らない若手社員

2.12年にわたる野放し状態 ー 大学無試験化という危険な社会実験

3.早慶は昔の早慶ならず ー 数字が語る経営戦略と入学者の変容

4.禁断の偏差値トリック ー 一般入試でさえ、学力低下競争へ

5.お手軽入試、アカデミズムにも歪み ー 教科減・マークシートの影響

6.高校未履修問題の矛先を変えたマスコミ ー 罪深い進学校病

7.企業には「かつての学歴」がちょうど良い ー 大量優等生と少数異能

8.金の卵のために鶏を殺した大学 ー 拡大経営とブランド失墜

9.大学を「補習の府」に ー 再建のための秘策

第2章 人気企業が危ない

1.大学サークルに缶ビールを贈った大手企業 ー ランキング病?

2.秘技、旧帝大「生物、食品・農学部」卒 ー 採用実績校のお化粧

3.就活の縮図、インターンシップ ー 偏差値と人気ランキングの泥仕合

4.不吉な前兆? ー 人気ランキングに入った企業は衰退が始まる

5.奥田さんと稲盛さんと土光さんの正しい生き方 ー 不況期就職勝ち組

第3章 若者はけっこうカワイソウじゃない

1.就職氷河を厚くした玄田論文 ー 「過去企業への憧れ」という病根

2.就活期の景況で人生は決まらない ー 誰でも20代にチャンスは2回

3.「就社より就職」というウソ ー 13歳のハローワーク幻想

4.「総合職」という蜜の味 ー ”何でも屋”という誤った批判

5.答えは従業員150人の企業 ー 社内で再チャレンジできる最小単位

6.フリーターの尊厳をまず認める ー 脱フリーターという横暴


この本を読んで、大きな変化に気が付いていなかったことがわかった。


若者人口は減っているのに大学生は増えている

一つは19ー22歳の人口は1993年にピークを迎え、その後減少しているのに、大学の学生数は増加していることだ。

次はこの本に紹介されている統計だ。大学進学率が現在は50%を超えており、特に女性の大学進学率は筆者の学生時代の10%台から、3倍の44%となっている。

基礎人口と大学進学率推移














出典:本書70ページ

大学の数も増えており、これだけ大学生が増えたら学力の低い学生がいることはむしろ当然だろう。この本で紹介されているように秋田県の場所もわからない一流大学卒の社員が出てくることもうなずける。


新卒正社員採用数は減っていない

もう一つは新卒正社員採用数は増えており、新卒を非正規社員に置き換えるという動きはないことだ。

次がこの本で紹介されている新卒正社員の就職数推移のグラフだ。女性の新卒就職者が増えたので、全般的に新卒正社員数は増えている。

正社員就職数推移






出典:本書176ページ

筆者の会社でも女性の総合職が増えているが、思えば当たり前のことである。今や大学生のほぼ半分は女性なのだから。

筆者の学生の時は1,2年生のクラスは法学部と経済学部が一緒だったが、女子がゼロのクラスもいくつかあった。

女子が少ないので、まんべんなく割り振ると一クラスに1−2人になってしまうので、5人くらいまとめていくつかのクラスに集中的に割り振っていたからだ。今の学生には信じられない話だろう。


この本では雇用についての誤解をデータで反証している。たとえば:


★なぜ、若者は3年で辞めるようになったのか? − 若者は50年以上前から、3年で辞めている。

次がリクルートエージェント社が2007年に大卒ホワイトカラー5万人に実施した調査での年齢別転職経験者比率を示したグラフだ。

20代までに半数は転職を経験し、35歳以降はほぼ定着するという傾向は昔も今も同じだと海老原さんは語る。

大卒ホワイトカラーの年齢別転職経験者比率






出典:本書134ページ

★成果主義が普及して、職場が殺伐となった? − 成果主義とそれ以前で査定はほとんど変わっていない。

★就職氷河期の多くの人たちは世間の底辺で何を考えているのか? − 就職氷河期でも就職できた人が圧倒的多数。

新卒の求人倍率は常に1を超えており、中途採用者の倍率がめったに1を超えないことと際だったコントラストを成している。

今も昔も大変なのは転職や中途採用市場で、新卒ではないのだ。

新卒と中途の求人倍率推移



















★大企業が平気でリストラをする昨今、不安な熟年が増えている? − つぶれる寸前の会社でないとリストラはしない。

★不況だからこそ語学や資格を身につけキャリアを守るべきか? − 語学を身につけ資格をとってもキャリアの足しにはならない。


早慶の学生確保戦略

早稲田大学と慶應大学の入試方法、学部新設、定員数を分析して、それぞれの学生確保戦略を分析していて面白い。

早稲田大学は学部は新設しても定員は増やさず、一般入試定員を絞る方法で、人気と偏差値を高く維持している。

慶應大学は新規学部を開設して定員は増やしたが、試験方式を国立大学と併願しやすい方式を導入する方法で、同じく人気と偏差値を維持している。

どちらも少子化を乗り切り、高い倍率を維持しているが、学生の質はかつてと異なるという。

偏差値についても、筆者の学生時代の様に全受験者を一律の偏差値で比較するのではなく、試験科目ごとに受験校別の集団に分けて比較するので、同じテストの点数でも偏差値は異なる。

それを示したのが、次のグラフだ。

偏差値のしくみ






出典:本書43ページ

だから慶應の経済学部より法学部の方が偏差値が高いというのは、同じ母集団での比較ではなく、本来比較してはならないものを比較しているのだと。

いままであまり意識していなかった就職分野なので、大変参考になった。これから新卒就職戦線に参入する学生には、少なくとも社員150名以上の職種転換が可能な規模の会社に就職することを勧めている。

同じ企業での異動も含めてリベンジ転職のチャンスは35歳頃までに2回はあるという。その会社が20年後も一流企業である保証はないので、人気や待遇ではなく、「徹底的に社風で選ぶ」べきだと。


大変参考になったので、海老原さんの別の本、「雇用の常識『本当に見えるウソ』」も今度読んでみる。

雇用の常識「本当に見えるウソ」雇用の常識「本当に見えるウソ」
著者:海老原 嗣生
販売元:プレジデント社
発売日:2009-05-18
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


非常に参考になる本だった。もっと詳しく紹介したいところだが、本を読むときに興ざめなのでこの程度にしておく。

話題も豊富で飽きさせない。データを駆使して解説するという姿勢も好感が持てる。簡単に読めるので、是非一読をおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


  
Posted by yaori at 00:23Comments(0)TrackBack(0)

2009年11月23日

東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法 

501回めの投稿にあたっての所信表明

今回が501回めの投稿だ。5年で500回というのは、多いようにも見えるが、少ないとも言える。

1回の投稿で、メインの本の長いあらすじと、サブの本の短い紹介、それと関連する本数冊を掲載しているので、いままで紹介した本は1,000冊以上、つまり年間200冊以上になる。

週5〜7冊読んだりオーディオブックを聞いたりしているので、読む本は年300冊程度になる。

中にはあらすじを紹介するまでもない”スカ”の本もあるが、年に200冊のあらすじでは「あらすじ検索サイト」と銘打つには少ないと思う。世の中に出回っている本はどれだけあるのかわからないが、200冊では本当に誤差の範囲だ。

このブログは”書評ブログ”ではない。書評なら「読んでいない本について堂々と語る法」に書かれていたように、極端な話、全く本を読まずに目次や帯だけ読んでも書ける。

しかしあらすじはそうはいかない。すべて読んで内容を自分なりにまとめないとあらすじは書けないのだ。

だからどうしても生産性は落ちるが、それでも500回達成で満足せず、1,000回、2,000回を目指して、もっとペースを上げるべく努力する所存である。

東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法
著者:吉永 賢一
販売元:中経出版
発売日:2008-08
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

東大理III出身で、アルバイトで家庭教師や塾講師をやった後、アルバイトが本業となり、結局受験生を教えることを職業にしてしまった吉永賢一さんの本。

会社の勉強家の友人に勧められて読んでみた。

吉永さんも小学生の頃(!)カーネギーの本に影響されたそうだ。久しぶりに出てきたカーネギー信者だ。

吉永さんは偏差値93だったという。「東大家庭教師…」シリーズは、「記憶術」と「読書術」が出ているので、今度読んでみる。」

東大家庭教師が教える 頭が良くなる記憶法東大家庭教師が教える 頭が良くなる記憶法
著者:吉永 賢一
販売元:中経出版
発売日:2009-02-20
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

東大家庭教師が教える 頭がよくなる読書法東大家庭教師が教える 頭がよくなる読書法
著者:吉永 賢一
販売元:中経出版
発売日:2009-07-31
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

東大理IIIというと、文系・理系を含めて東大の最難関学科で、東大で唯一専門課程が決まっている学部だ(他の学部はまず2年間教養学部に入ってから専門学部に進学振り分けする)。

筆者も理IIIの友人がいるが、エキセントリックというか、ちょっと変わった人が多かった。しかし、この本の著者の吉永さんはまとものようだ。


成績を上げる3つの要素

吉永さんは今まで1,000人以上の生徒に勉強を指導してきた経験をふまえて、成績を上げるには次の3つの要素が必要だと語る。

1.覚える(暗記)
2.わかる(理解)
3.慣れる(練習)

3つの要素のどれが欠けてもダメで、このサイクルを繰り返すことで勉強が高速化する。

ちょっとずつ毎日覚えて、音読なども取り入れて何度でも繰り返すのだ。

吉永さんは本は300回を目安に読む。気に入った本は1,000回読むという。パラパラっとめくって、気になった部分だけ注意深く読むのだという。


実戦的なアドバイスが満載

受験のプロなだけに、実戦的なアドバイスが多い。筆者なりに整理した吉永さんのアドバイスは次の通りだ。


<試験のためのアドバイス>

★わからない問題は無視する

★速くやることを意識する

★模試は結果は無視、復習はしっかり

★カンタンな問題から解いていく

★1問あたりの制限時間を決める

★最後の5〜10分は見直しに使う(新しい問題を解くより点を伸ばせる)

★計算はなるべく暗算する

★論文は3つのネタからふくらます


勉強のためのアドバイス

★どんどん間違える

★こま切れの締め切りで集中力を高める

★「何もしていない時間」を勉強時間にする

★参考書はまず折って汚す

★問題集には「カンタン」と書く

★ノートは後から見てもわかるように書く(これは筆者は反省しなければならない。後からメモに何を書いたのか読めないことが多すぎる)

★ノートに書くのは完結した文章


心構えについてのアドバイス

★人に教える。相手の質問に答える(実はこのブログも本のあらすじを人に伝えて、知識を自分の血や肉にするために書いているものである)

★「つまり?」、「もっというと?」という質問を連発して自分の理解度を確認する。(まさにロジカル・シンキングと同様の手法だ)

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)
著者:照屋 華子
販売元:東洋経済新報社
発売日:2001-04
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


★やる気が起きない時には、自分の呼吸を観察する(呼吸を感じることで「生きる力」を実感できるのだと。面白いテクニックである)。

★自分に起こったことは、自分に原因があると考えよ(他人や環境のせいにした時点で成長はストップする。自分を変えるという発想を持つのだ)。

★すべてをポジティブシンキングで。

★「現状を受け入れる」ことが成績アップの最初のステップ。

★カンタンを口癖にする。

★感謝する。ほめる。

★定期的に成果をチェックし、記録する

★1秒ルールでさっさと決断し、集中力を高める

★練習での間違いはよろこび、本番での間違いは悔しがる


頭が良くなるのかどうかわからないが、吉永さんの書いていることはオーソドックスな勉強法ばかりで、すべて「腑に落ちる」。

唯一エキセントリックなのは、本を300回、気に入った本は1,000回読むという点だが、これは今度紹介する宇津木妙子さんの講演を聞いた時になるほどと思ったことと一致する。

宇津木魂 女子ソフトはなぜ金メダルが獲れたのか (文春新書)宇津木魂 女子ソフトはなぜ金メダルが獲れたのか (文春新書)
著者:宇津木 妙子
販売元:文藝春秋
発売日:2008-10-16
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

練習は毎日繰り返しやるものであり、練習の目的も毎日繰り返して教え込むのだと。

宇津木さんは「私は頭が悪いから毎日覚えないと忘れる」のだと謙遜して言っていたが、切り返す刀で、会場の出席者に質問した。

「今年御社の社長の年頭の目標は何でしたか?これから当てるから言ってください」

会場が凍り付いた。まさに宇津木さんにガーンと気合いを入れられた。

社長の年頭の挨拶は年初は覚えていたし、今も漠然とは覚えているが、スラスラ言えるほど頭に入っている訳ではない。それでは覚えていないのと同じことなのだ。

吉永さんの言いたいこともたぶん同じだろう。反復練習、重要なことは毎日でも繰り返し、何百回でもやる。

筆者が尊敬するコンサルタント新将命さんの言う「コツコツカツコツ(コツコツ=勝つコツ)」だ。

それが成績が上がる秘訣だ。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。



  
Posted by yaori at 00:20Comments(0)TrackBack(0)

2008年08月30日

もう、国には頼らない ワタミの渡邉美樹さんの「民活」実践記

もう、国には頼らない。経営力が社会を変える! (NB Online book)


ワタミ社長の渡邉美樹さんの、学校、病院、介護、そして農業での民活実践記。

それぞれ規制や既得権が根強い分野で、渡邉さんの合理精神に基づいた闘いがあちこちで摩擦を引き起こすが、それを一つ一つ乗り越えている体験談を語っている。

これらの分野でいわゆる「民活」として実際に事業を興し、そして本に書いている人はあまりないので、貴重な体験談である。


渡邉さんの経歴

渡邉さんは1959年生まれ。運送会社で働いて稼いだ資金300万円を元手に、「つぼ八」のフランチャイズオーナーとなって起業し、従業員教育が行き届いた顧客満足度の高いサービスの店という評判を武器に「和民」チェーンを開業した。

1996年の店頭公開後、2000年に東証一部上場を果たし、今や様々な外食チェーンを展開する他、この本でも取り上げられている様々な業態に参入している。

このブログでも紹介したOKウェーブの兼元さんは、経営者として注目しているのはワタミの渡邉美樹社長であると語っている。

ワタミは『地球人類の人間性向上のためのよりよい環境をつくり、よりよいきっかけを提供する』ことを会社のミッションとして掲げているので『やられた』と思ったと。


渡邉さんの印象

以前「サービスが感動に変わる時」という渡邉さんが外食産業で起業し、「和民」を始める時の苦労話や、従業員教育について書いた本を読んだことがある。

サービスが感動に変わる時―青年社長渡辺美樹の社員への熱いメッセージ


外食産業というとアルバイトばかりで、マニュアル社員ばかりという先入観を持っていたが、お客の心に残るサービスを訴え、従業員についても厳しく教育をしていて大変熱心な経営者だと思った。

一方、従業員の退社率が高いこともあり、なにかきれい事だけしか語っていないような印象を受けていた。

渡邉さん以外の登場人物はほぼゼロで、「社員」はよくやってくれたとか書いてはあるものの、名前が出てこないので個人の顔が全く見えない。これも違和感を憶えた理由の一つだ。

たぶん渡邉さんを取り巻く社員は、ワンマン社長には到底ついていけないとして、そのうち退社してしまうので、社員の名前が載せられないのではないかと感じていた。

しかしこの本を読んで、渡邉さんが有言実行で、困難や官業にも正面から立ち向かう骨のある経営者であることがわかった。

ワタミグループの創業社長としてワンマン社長の様なので、たぶんいろいろな問題はあるのだろうが、社会起業家として尊敬すべき経営者であることは間違いない。


ケーススタディ1 教育 郁文館夢学園

ワタミを創業するときも、将来は教育を手がけたいという希望があり、政府の「教育再生会議」委員を勤めた。

神奈川県の教育委員会委員にもなって、バウチャー制や教師の評価が給与評価となる制度などを提唱するが、全く相手にされず、教師の評価をするはずの独立組織の教育委員会が全く機能していない現状を知る。

誤解されることが多いが、渡邉さんの「生徒は学校にとってお客さまである」という発言は、生徒を甘やかすことではなく、「生徒が将来幸せになるために最高の教育を施し、生徒に感謝されるような教育を目指そう」というのが真意であると語る。

具体的実践として、バブル期に50億円で豪華な研修施設をつくって経営が立ちゆかなくなった文京区の郁文館学園の再建に2003年から乗り出す。郁文館夢学園と改名して、渡邉さん流の教育改革を実践する。

郁文館は夏目漱石の「吾輩は猫である」にも出てくる明治22年創立の伝統ある中高一貫男子校だ。

そういえば、「吾輩は猫である」で、次のような苦沙弥(くしゃみ)先生の家の隣の私立中学校というのが出てくるが、これがそうだろう。

「落雲館(らくうんかん)と称する私立の中学校―八百の君子をいやが上に君子に養成するために毎月二円の月謝を徴集する学校である。

名前が落雲館だから風流な君子ばかりかと思うと、それがそもそもの間違になる。その信用すべからざる事は群鶴館(ぐんかくかん)に鶴の下りざるごとく、臥竜窟に猫がいるようなものである。

学士とか教師とか号するものに主人苦沙弥君のごとき気違のある事を知った以上は落雲館の君子が風流漢ばかりでないと云う事がわかる訳(わけ)だ。」

渡邉さんが初めて訪問した郁文館は生徒1,500人のうち500人が遅刻してきて、挨拶もろくにしない生徒が多いという状態だった。なにか「ドラゴン桜」の龍山高校を思い起こさせる。

渡邉さんの改革により見違える様に生徒の意識が向上したという。大学進学実績も向上し、2010年に新しい校舎に建て変わる時には、男女共学校として生まれ変わるという。

生徒の評価も含めた先生の360度評価を開始したり、2010年までに東大合格者20名、2011年までに甲子園出場を目標にしてプロジェクトをスタートさせている。

渡邉さんの改革についてこれずに教師の1/3が入れ替わっている。学級崩壊は先生の方が悪いと渡邉さんは言い切る。


ケーススタディ2 病院 岸和田盈進会病院

渡邉さんは病院経営も頼まれて引き受けた。

その病院は大阪の岸和田市で当初ペインクリニックとしてスタートしていたが、行くところがないから病院にいるという保険報酬のない老人の「社会的入院患者」が多く留まり、採算は赤字となっていた。

渡邉さんは、「社会的入院患者」を退院させ、肺循環器とリハビリの関節治療を売り物にする岸和田盈進会病院という新しい病院に生まれ変わらせた。医師に対するお礼などの不公正慣行も廃絶した。

一部の医師・職員が去っていったが、渡邉さんはやり遂げ、現在は黒字経営となっているという。

厚生労働省に厚く守られている医療業界にも健全な自由競争と、不足が目立つ産婦人科医や小児科医には、自由競争の弱点を補強し、弱者救済のためのセーフティネットが重要であると渡邉さんは訴える。

先日伊藤元重東大教授の講演を聞いたが、日本は今や乳幼児死亡率は先進国で最も高いと語っていた。

Wikipediaでも調べ、念のためCIAのデータでも調べたが、日本は依然としてG7の中では最も低く、世界で3番目に低いので、たぶんこれは事実とは反すると思う。

横道にそれるが、この日本が先進国では乳幼児死亡率が最も高いというのは、朝日新聞が意図的に作り上げた記事ではないかという2005年の医師ブログのやりとりがあるので紹介しておく。

しかし統計はどうあれ、乳幼児死亡率が上がっていると言われたら、さもあらんと納得できる現実がそこにあることは間違いない。


ケーススタディ3 介護 ワタミの介護

病院再建の時に、退院してもらった「社会的入院患者」を収容する必要もあり、渡邉さんは老人介護ビジネスに進出した。

まずは病院の介護事業を引き継いで、岸和田に高齢者向けのマンションをつくった。

その次に後継者不在で悩む「アールの介護」を創業者から買い取り、「ワタミの介護」と名前を変えて全国に展開した。

介護でも行政のつくりあげたおかしな仕組みがある。特に渡邉さんが憤ったのは、「特殊浴」と称して、お年寄りをカーウォッシャーのような風呂にやたら入れたがることだと。

特殊浴





出典:取手市介護老人保健施設 緑寿荘ホームページ(筆者注:たまたまインターネットの「特殊浴」検索でトップに表示されたので、この施設の写真を掲載した。この施設を批判するものではない)

老人を裸で横にして上からお湯を掛け、洗剤を掛け、またお湯を掛け、最後に温風で乾かし、まるで食器洗い機で人を洗っている様だと。

これが一番作業効率が良く、入浴1回で介護保険料をもらえるからだ。

今の介護業界は、客の満足など考えていないと渡邉さんは語る。すぐにおむつ、すぐにミキサーで流動食、すぐに車いすと介護に手間が掛からないようにしているという。

補助金が交付され、努力しなくてもある程度の収入があり、他の施設とサービスの質で競争することもないのが介護の現状なので、本来老人をいたわる気持ちを持って介護の仕事を始めた人でも、ついルーティン化しておざなりになっているという。

アールの介護でも渡邉さんの改革の考えについてこれず1/3の人がやめて、入れ替わったという。

ワタミの介護では、1,おむつーゼロ、2.特殊浴ーゼロ、2.経管食ーゼロ、4.車いすーゼロを目標にしている。非常にわかりやすいサービスの質の向上だ。


デンマークがモデル

福祉国家デンマークのことを紹介している。デンマークなど北欧では所得税50%、消費税25%という高い税率だが、税金がきちんと目的通りに使われているので国民も納得しているという。

デンマークでは傾斜介護といって、その人の体力とか意識の状態によって歩行も、食事もきめ細かく対応している。また老人ホームの料金はその人の受け取る年金の金額から月三万円残る料金としているという。

日本では歩行が不自由になるとすぐに10数万円もする車いすを使わせるが、そうすると足腰が弱くなって二度と歩けない体になる。

デンマークでは2万円程度のロレーターという歩行補助器を使うので、車いすを使う老人がほとんどおらず、自立歩行ができる老人ばかりだ。渡邉さんはそれを日本に導入しているという。

歩行補助車【哲商事】ロレーター歩行補助車【哲商事】ロレーター


ケーススタディ4 農業 ワタミファーム

現在有機野菜は全体の0.17%しか流通していないので、渡邉さんは有機野菜を安定的に供給するために2002年から農業にも参入し、千葉県、北海道などで有機野菜や有機酪農を行っている。

現在はワタミグループでの自社有機野菜の利用率は35%に達しているという。

順調の様に見えるが、実際はものすごく時間が掛かっているという。株式会社が農業に参入できることになったものの、農地のリースを受けるのに二年弱かかり、手続きが非常に面倒だ。有機と認められるには、農地を少なくとも二年化学肥料を使わずに土づくりをしなければならない。

また農業法人には、農事組合法人と会社法人があり、後者が規制緩和で新しく参入できるようになったものだが、株式は譲渡制限があるものに限るという条件があるので、普通の株式会社では参入できないのだ。

だからワタミは当初設立した有限会社ワタミファームと株式会社ワタミファームの2つの組織を持たざるをえないのだと。

農業法人の有限会社ワタミファームなら、農地も簡単に借りられるからだ。

本来株式会社の農業参入を可能としたのは、農地保全と食糧自給率アップが目的なはずだが、全く見せかけの規制緩和であると。

主要国の食料自給率は日本が最も低く40%で、同じ島国のイギリスでも70%ある。ドイツは90%、フランス・アメリカは120−130%で輸出している。

とりわけ渡邉さんが憤っているのは、減反政策に基づく転作奨励金である。米を作るのをやめたら、米をつくる利益以上の補助金がもらえる不思議な制度であると。

渡邉さんは、去るべき農家には補助金を出さず、アメリカと戦える様な農業をつくるために補助金を活用すべきだと論じる。


既存のルールで真っ向から行政と戦っている。渡邉さんのファイティング・スピリットには感心する。

いかに日本がいまだに規制だらけかがよくわかり、読み物としても面白い。おすすめの本である。


参考になれば次クリック投票お願いします。





  
Posted by yaori at 00:27Comments(0)TrackBack(0)

2008年04月16日

ドラゴン桜 No-nonsenseな東大受験指南書

ドラゴン桜 (3) (モーニングKC (948))


長男の東大の入学式に行ってきた。

東大入学式














残るは次男なので、東大に入る勉強法を紹介したマンガ「ドラゴン桜」を読んでみた。

以前阿部寛主演のテレビドラマでやっていたので、数回は見たことがある。当時はマンガだからとバカにしていたが、一度読んでみようと思いたったのだ。

たまたま図書館で借りたのは、「ドラゴン桜 3」だったが、このマンガは役に立つと思う。


数学勉強法

筆者も受験勉強をくぐり抜けてきたが、やはり最も差が付くのは数学だ。

そして受験数学の力を付けるには、問題を多くこなしてパターンを覚え込むしかない。

ドラゴン桜では、「柳式問題解答同時プリント」を紹介している。

数学問題と答えの両方のプリントを用意して、3分以内に頭の中で「解き初め」をイメージし、3分後に答えを見て、「解き初め」が合っていれば次の問題へ。ダメなら答えを読む。

計算など解くのに時間が掛かる部分はすっ飛ばしてどんどん問題の数をこなすのだ。

文章題では何を「X」と置くかが重要で、図形の問題では補助線を引くだけで答えに大きく近づく。

こういった「解き初め」=スタートイメージを覚え込む。滝に打たれるように大量の問題を浴びろという。

筆者が受験した約三十数年前の試験では、タンジェントα=Xと置いて解く面積の問題が出た。こんなタンジェントα=Xと置くなどという発想は、問題の数をこなさないと絶対に出てこない。

問題のシャワーを1時間。そして計算力と解答の書き方を覚えるために、計算問題を30分、解答を書く練習を1時間、毎日やるのだという。

筆者自身は、高校1年生の時に「数学1000題(?)」という様なタイトルの問題集を買ってコツコツ解いていったが、基本的に同じ考えだ。しかも筆者のやり方より効率はドラゴン桜の方が上ではないかと思う。


英語勉強法

マンガではビートルズを歌いながら、エアロビクスで英語をリズムで覚えるやり方や、いちいち辞書を引かずに、推断する手法などが紹介されている。

ボキャブラリーは毎日10語単語を覚えるのではなく、毎日70語アバウトで良いから覚えろと言う。

そしてその日覚えた新しい単語を10個使って英語で日記を書くのだと。

この新しい単語を使って作文する練習も大変語学力をつけるのに役立つ。

筆者は会社に入って3年目にアルゼンチンに語学研修生として2年間行っており、仕事をする傍らスペイン語を勉強した。

賄い付きの下宿に住み、同宿人はアルゼンチン人ばかり3人という理想的な環境で、最初の1年はベルリッツスクールに2時間毎日行っていた。ここまでは普通の研修生と同じだ。

普通は半年でかなりスペイン語ができるようになり、1年も経つとほぼ完璧にできるようになるので勉強をやめてしまう研修生が多いのだが、筆者は2年目はブエノスアイレスのカトリック系大学の講師を先生として個人教授をみっちり受けた。

このときの勉強法が毎回予習としてノーベル賞作家ガルシア・マルケスなどの短編小説を読んで、そのあらすじをスペイン語で書き、新しく覚えた単語を使って作文してくるというものだった。

悪い時 他9篇


この勉強法のおかげでスペイン語能力は飛躍的に伸び、帰国後の社内検定試験で1級という最高ランクを獲得できた。

ちなみにこのあらすじブログで「頭にスッと入りわかりやすい」あらすじにこだわるのも、このスペイン語のトレーニングの影響によるものだ。

ドラゴン桜は英語で日記を書くという方法だが、新しい単語を使って作文するトレーニングは英語力を向上させること間違いないと思う。


東大新聞の「受験生特集号」

東大新聞の「受験生特集号」には東大入試についての様々な役に立つ情報や、出題者の意図、先輩の体験談などが紹介されており、参考になると紹介している。

ここまでくると単にマンガという表現手段を使っているだけで、立派な東大受験指南書である。


今回読んだのは「ドラゴン桜3」だけだが、たぶん他の巻でも役に立つ東大受験法が紹介されているのだと思う。

東大入学者の出身高校の数は、多分日本で最も多い方だと思う。日本全国のちょっとした高校なら東大入学者を毎年、あるいは数年に一回出している。

この実績が示すとおり、誰でも努力すれば東大に入れるというのは正しいと思う。

当初の筆者のリアクションの様にマンガとバカにせず、マジで東大受験を目指す人にすすめたい本である。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします。


人気ブログバナー



  
Posted by yaori at 00:11Comments(0)TrackBack(0)

2008年01月16日

下流志向 多作多芸な内田樹教授の下流論

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち


専門は現代フランス思想論ながら、映画論、武道論、アメリカ文化など、幅広い分野で積極的に情報発信している内田樹(たつる)神戸女子大教授の下流論。

昔の仕事仲間で、24万社の顧客を持つ日本最大の間接資材のネットストアMonotaRO(ものたろう)の瀬戸社長にすすめられて読んでみた。

内田樹の研究室というブログが、多くの本を生み出している。

この本は、ひところの下流論ばやりの頃のベストセラーだ。

内田さんは1950年生まれということで、ほとんどのページに’’’(強調点というのだろうか?)で修飾された部分がある。最近の本には、この強調点はほとんど見られないので、ひさしぶりに学生時代の頃の本に出会ったような気がした。


エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」

最初に主題が、「学びからの逃走・労働からの逃走」だと説明されている。

筆者も学生時代に読んだエーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」のように、子供達の学びからの逃走、若者の労働からの逃走が起こっているのだと。

自由からの逃走 (1951年) (現代社会科学叢書〈第1〉)


筆者が学生の時に読んだのは、まさにこの表紙の本だ。当時の教養学部では、組織論とか現代の人間とかいったゼミが人気で、フロムの本も教科書の一つになっていた。

フロムが描いたのは、20世紀前半に市民が自由主義を捨て、ナチスドイツなどの全体主義に傾斜していく現象だが、現代でも同じような逃走が学びや労働で起こっていると東京大学の佐藤学教授は指摘している。


日本の子供は世界で最も勉強しない子供?

OECDの統計によると、日本の子供は世界で最も勉強しない子供になっているという。

にわかには信じがたいが、中学2年生の校外学習時間は1995年の世界平均が3.0時間で、日本では2.3時間だった。これが1999年に1.7時間に下がり、当時の調査国37ヶ国中35番めだった。たぶん現在は調査国中最低になっていると思われると。

ネットで検索してみると、次の資料が中央教育審議会の議論のなかで示されてた。

校外学習時間調査






この本の中で引用されているデータと若干違うが傾向は同じだ。2003年の調査では、主要OECD13ヶ国のうち、下から3番目の週6.48時間だった。

筆者の率直な印象としては、日本全体の平均はこの調査の様になっているかもしれないが、私立と公立の差が大きいではないかと思う。


勉強は何の役に立つのですか?

今の子供は「先生これはなんの役に立つんですか?」と聞いてくるという。ひらがなを学ぶといった小学1年生の学習からもだ。内田さんは「新しいタイプの日本人の集団」という。

「人を殺してなぜいけなんですか?」など、内田さんは答えることのできない問いには、答えなくてよいと語る。

気に入ればやる、気に入らなければやらない。そんな選択権があると思っている子供がいる。授業を受けるという不快を耐えているのに、先生にとやかく言われる必要はないと考えているのだと。


不快通貨論

このように不快が「通貨」として流通している。その起源は家庭だという。家庭内通貨として「他人のもたらす不快に耐えること」が機能しているのだと。

家族の中で、誰が最も家産の形成に貢献しているかは、誰が最も不機嫌であるかに基づいて測定されるのが、現代日本の家庭のルールだという。

「不快通貨論」面白い指摘だ。


青い鳥症候群

自分探しの旅で、世界を旅する人は人間的に成長する可能性は低い。本当に自分探しなら、親や近親者にロングインタビューした方がよっぽど分かるはずだと。

むしろ目的は、自分についての外部評価をリセットすることではないか。

勉強は何の役に立つのかと逃げだす子供、仕事をすぐに投げ出す若者は、捨て値で未来を売り払っているのだと内田さんは語る。

未婚化・非婚化と言われているが、現実には高学歴で高収入の人たちの方が、結婚率は高く、収入と学歴が下がるにつれて離婚率、未婚率が上がる。実は社会的弱者ほど、支援者が持てないシステムになっているという。

勉強しなくても自信たっぷりで、自己決定して学校の業績主義から離脱することが良いことだと思っているのが、低い階層の出身者の傾向であると。

労働からの逃走では、自己決定フェティシズムともいうべき、「自己決定したのであれば、それが結果的に不利益をもたらす決定であっても構わない」というメンタリティがある。

日本型ニートは、このような「自己決定」する若者たちの一つの病態と考察すべきものだという。

「青い鳥」を求めて、「こことは違う場所」を求めて、「今、ここでベストを尽くすこと」を拒否しているうちに、どうにも身動きならなくなってしまった。

日本版ニートはそのように形成されているのではないかと、内田さんは分析する。


こうすれば良いという示唆を出している訳ではないが、分析はなるほどと思う。参考になる本だ。



参考になれば次クリックお願いします。


人気ブログバナー



  
Posted by yaori at 23:34Comments(0)TrackBack(0)