2013年07月02日

資産防衛マニュアル 橘玲さんの最新作

日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル [単行本(ソフトカバー)]
著者:橘 玲
出版:ダイヤモンド社
(2013-03-15)

このブログでも「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」や、「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」を紹介しているユニークな投資術を説く橘玲さんの最新作。

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門 [単行本(ソフトカバー)]
著者:橘 玲
出版:幻冬舎
(2002-11-26)


黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 (講談社プラスアルファ文庫)黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 (講談社プラスアルファ文庫) [文庫]
著者:橘 玲
出版:講談社
(2011-10-21)

アベノミクス開始後の2013年3月に出版された本だが、「日本の国家破産に備える」という副題が示す通り、「異次元の金融緩和」により、株高・円安のため景気が回復基調にある現在では、ややピントがずれた内容となっている。

橘さんは「橘玲の海外投資の歩き方」という「ザイ」と共同のサイトでも執筆している。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次を見て頂きたい。

目次にもある通り、アベノミクスの破滅シナリオで「高金利、円安、高インフレ」のアナザーワールドとなった場合の資産防衛手段としては、次の3つの金融商品で十分対応可能だと。

1.国債ベアファンド

2.外貨預金

3.物価連動国債ファンド

この本のあとがきに本書のメッセージを繰り返している。

1.日本の財政がたとえ破綻に向かっているとしても、当分は金融資産は普通預金で持っていればいい。

2.日本の財政が破たんしたとしても、手近にある金融商品だけで資産のかなりの部分を守ることができる。

3.たとえ「海外投資」をする必要があるとしても、ネット銀行の外貨預金でじゅうぶんだ。

そして資産運用に成功する黄金律は、「金融機関が熱心に勧誘するウマそうな話はすべて無視する」ことだと。


このブログで何冊も紹介している橘玲さんのいつもの情報力があまり見られないような気がするが、最後の忠告はたしかに「黄金律」だと思う。


あまり参考にならなかったかもしれないが、よろしければ投票ボタンをクリック願いたい。


  
Posted by yaori at 12:43Comments(0)TrackBack(0)

2011年11月27日

大震災の後で人生について語るということ 日本を襲ったブラック・スワン

大震災の後で人生について語るということ大震災の後で人生について語るということ
著者:橘 玲
販売元:講談社
(2011-07-30)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

最新の海外投資やパーペチュアル・トラベラー(常に渡り歩いて、どの国にも税金を払わない)、サラリーマン法人など、ユニークな話題を取り上げている橘玲さんの最新作。このブログでも多くの橘さんの作品を紹介している

この本では日本で起こった二つのブラック・スワン(起きる前は誰も予想できなかったが、起こった後は誰もが”起こるべくして起こった”と見なしている「世界を変えた出来事」)として、今年の東日本大震災と1997年のアジア通貨危機を取り上げている。

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
著者:ナシーム・ニコラス・タレブ
ダイヤモンド社(2009-06-19)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

ちなみに「ブラック・スワン」という2010年度アカデミー主演女優賞を受賞したサスペンス映画もあるが、ここでいう「ブラック・スワン」とは関係ない。



東日本大震災と福島第一原子力発電所の問題は、誰にでもわかりやすいブラック・スワンの例だが、1997年のアジア通貨危機とその後の日本の金融危機(北海道拓殖銀行、山一證券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の破綻)は言われてみなければわからない。

日本の自殺者は1998年から1万人/年増えていて、毎年減らない。

自殺者長期推移






次が男女・年齢別の自殺者数の推移だ。1998年以降男性が大幅に増えているのに対し、女性はほとんど変化が見られない。

自殺者男性年齢別











出典:「自殺対策白書」

政府が毎年発表している「自殺白書」では、1998年から男性の45歳〜64歳の自殺率が急増し、それが毎年1万人弱という大幅な自殺者の増加の原因であることを示している。

東日本大震災での死者・行方不明者は約3万人と言われているが、1998年からの金融危機後の自殺者増加数は12年間の累計で10万人にも上り、東日本大震災を上回るインパクトである。

中高年男性が自殺を選ぶ最大の原因は経済的な理由と見られている。

典型的なパターンは、リストラなどによる失業や賃金カットで、住宅ローンや教育費が払えなくなり、消費金融から金を借りるだけでは追いつかず、闇金にも手を出す。借金取りに追い立てられて挙げ句の果てには自殺して生命保険で借金を清算するほかなくなる、という悲劇の構造だ。

この金融危機後のブラック・スワンの原因は次の日本の4大神話が崩壊したことにあると橘さんは語る。

1.不動産神話 持ち家は賃貸より得だ
2.会社神話  大きな会社に就職して定年まで勤める
3.円神話   日本人なら円資産を保有するのが安心だ
4.国家神話  定年後は年金で暮らせばよい


これらがいずれも崩壊したことに気が付かないと、ある日突然自分の資産がマイナスとなり、窮地に追い込まれることとなる。

橘さんはマイホームを買うという夢は否定しないが、年収の数倍という大きな借金を背負って金融資本のすべてを不動産に投資することは、きわめて危険な選択だという。

米国のようにノンリコース(非遡及型)なら、住宅ローンが払えなければ、家を明け渡せばよいだけだが、日本の住宅ローンは属人型なので、不動産価値が下がると、たとえ家を換金売りしてもまだ借金は残る。

サラリーマンは一定の賃金が将来とも保証されているという「サラリーマン債券」という資産を持っていると見なせるが、会社が倒産したり、リストラにあって職の安全が保証されなくなるとサラリーマン債券を失う。「サラリーマンでいることのリスク」が顕在化してきているのだ。

リストラに遭うと、中高年サラリーマンが再就職するのは至難の業で、せいぜい非正規社員にしかなれない。収入は激減し、住宅ローンや教育費が重くのしかかってくるのだ。


日本人はリスクを嫌う

「リスクに背を向ける日本人」という本で引用されている、「世界価値観調査」によると”自分は冒険やリスクを求める”のカテゴリーに当てはまらないと思っている比率は日本人が世界でも最も高い。

リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書)リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書)
著者:山岸 俊男
講談社(2010-10-16)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

世の中に錬金術はなく、国家財政の赤字を垂れ流し、国債を発行ばかりしていれば、人口減少・少子高齢化の日本の未来ははっきり見通せる。それは今と逆の世界で、高金利、円安、インフレだ。

日本人は元々リスクを嫌う国民で、安定した人生を送るために、偏差値の高い大学に入って大企業に就職することを目指し、住宅ローンを借りてマイホームを買い、株や外貨には手を出さずにひたすら円を貯め込み、老後の生活は国に頼ることを選んできた。

こうしたリスクを避ける伝統的な選択が、今はリスクを極大化する事になってしまう。この事態は1997年の金融危機から始まっていたが、多くの日本人は”不都合な真実”に眼をそむけ、3.11の東日本大震災ではじめて自らのリスクを目の前に突きつけられたのだと橘さんは語る。


伽藍からバザールへ

そしてこの本の結論として、橘さんは「伽藍からバザールへ」という言い方で、「出る杭は打たれる」ことを恐れ、目立つことをしない閉鎖的なネガティブゲーム社会から、自分の能力を売り物にするグローバルなポジティブゲーム社会へ生き方を変えることを提言する。

伽藍というのはあまりビジネス書では使われない言葉だが、いわば塀に囲まれた町のようなイメージだろう。

米国の労働長官も務めたUCバークレー教授・ロバート・ライシュは「ザ・ワークス・オブ・ネーションズ」で、これからの仕事は”マックジョブ”と””クリエイティブクラス”に2極化すると予言している(この表現は橘さんの用語で、元々の表現は”シンボリック・アナリスト”と”対人サービス業者”、”ルーティン肉体労働者”)。

ザ・ワーク・オブ・ネーションズ―21世紀資本主義のイメージザ・ワーク・オブ・ネーションズ―21世紀資本主義のイメージ
著者:ロバート・B・ライシュ
ダイヤモンド社(1991-10)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

マックジョブはマクドナルドのアルバイトのようにマニュアルにより誰でも出来る仕事で、製造業でもサービス業でも、この種の仕事の賃金はグローバルな競争にさらされる。

その一方で医者や弁護士などの専門家、俳優やクリエイターなどのスペシャリストは専門性あるいは他の人で置き換えられない価値を持っている。


読者が目指すべき道

日本の出版業界では、ながらく本を読む人は人口の10%と言われてきたという。「出版大崩壊」という本で、著者の山田純さんは、日本のビジネス・経済書を読む人口を400万人と推定している。

出版大崩壊 (文春新書)出版大崩壊 (文春新書)
著者:山田 順
文藝春秋(2011-03-17)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

その根拠は、日本の一流大学(MARCH,関関同立など)の卒業生は年間15〜20万人で、その人たちが40年間にわたって本を読むとして800万人。ビジネス書の読者は圧倒的に男性だから、その半分の400万人がビジネス・経済書の読者というものだ。

この本の読者はすでにその400万人の日本の知識層のうちの一人なので、転職や独立を意識しつつ、スペシャリストとして競合他社や他の業種でも評価してもらえる実績をつくることが重要だと橘さんは説く。

サラリーマン法人など前作「貧乏はお金持ち」で紹介したような(筆者はちょっとありえないと思うが)サラリーマンのフリーエージェント化の可能性もある。

貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する
著者:橘 玲
講談社(2009-06-04)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

これが人的資本の伸ばし方の一例で、金融資本の伸ばし方(投資)については、インフレに強い投資(金EFTや商品EFTなど)、FX(ハイリスクなので筆者はお勧めしない)、世界株投資(ACWI=All Country World Index EFTやVT(Vanguard Total World Stock EFT)などを紹介している。

個人のバランスシートは4つの神話に基づいたものから、次のような新しいポートフォリオに変わるのだ。

scanner252




出典:本書

最後に橘さんは、東日本大震災の日にあてもなく街をさまよった自らの経験を語り、ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」の「最もよき人々は帰ってこなかった」という一節を引用している。

夜と霧 新版夜と霧 新版
著者:ヴィクトール・E・フランクル
みすず書房(2002-11-06)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

そして”カポー”(ユダヤ人のナチス協力者)は、暖房の効いた部屋で津波に押し流される家を見ていた自分だったと語る。

橘さんは地震の後、ショックを受け茫然自失に陥った。自分の本はいままで絵空事を書いてきただけではないかと悩んだ。しかしそうであれば絵空事を書くことに徹しようというということで、この本を2週間で書き上げたという。

地震で評価を挙げた経済人は、100億円を寄付したソフトバンクの孫さんや10億円を寄付した楽天の三木谷さんユニクロの柳井さんなどベンチャー企業経営者で、バザールの住人たちだった。大企業はほとんど存在感を発揮できなかった。

筆者自身の話となるが、筆者はいままで橘さんのいう「伽藍世界」の価値観で生きてきた。一流大学を卒業し、大企業に就職して、25年ローンで東京の郊外に一戸建てを買った。18年前に購入したマイホームは、住みやすく問題はない。しかし最初の米国駐在から帰ったバブル直後に購入したこともあり、マイホームの価値は買ってから半減した。

筆者がマイホームを購入したのは、会社の先輩の「年を取るとローンが借りられなくなる」というアドバイスがきっかけだ。橘さんの「サラリーマン債券」という発想そのものである。バブルの後で不動産市況は下落していたが、逆に非常にクオリティの高い住宅が以前より安く買えるようになったことが、現在の家を購入した理由だが、結局マイホーム投資では数千万円という資産価値の下落を経験した。

さいわいまだ個人バランスシート上は債務超過にはなっていなし、払い終えるめどはほぼついてきたが、あやうく債務超過に陥るところだった。

日本が少子高齢化・人口減少化社会に向かうことから考えても、年収の数倍のローンを抱えてマイホームを購入することは、今後は大きなリスクとなることは間違いない。橘さんの説く方向性は間違っていないと思う。なんらかの技能や資格を持ち”つぶしが効く”存在となり、家は極力賃貸することだ。

橘さん自身が書いているように、この本はこれまでの本と同じ路線で、あまり新規性はないが、これまで述べてきた主張を本にまとめて、日本をおそったブラック・スワンに対して日本人への警鐘を鳴らす本である。

この人は本当に文章がうまい。いつもながらテンポがよく、読みやすい本である。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。



  
Posted by yaori at 23:23Comments(0)

大震災の後で人生について語るということ 日本を襲ったブラック・スワン

大震災の後で人生について語るということ大震災の後で人生について語るということ
著者:橘 玲
販売元:講談社
(2011-07-30)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

最新の海外投資やパーペチュアル・トラベラー(常に渡り歩いて、どの国にも税金を払わない)、サラリーマン法人など、ユニークな話題を取り上げている橘玲さんの最新作。このブログでも多くの橘さんの作品を紹介している

この本では日本で起こった二つのブラック・スワン(起きる前は誰も予想できなかったが、起こった後は誰もが”起こるべくして起こった”と見なしている「世界を変えた出来事」)として、今年の東日本大震災と1997年のアジア通貨危機を取り上げている。

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
著者:ナシーム・ニコラス・タレブ
ダイヤモンド社(2009-06-19)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

ちなみに「ブラック・スワン」という2010年度アカデミー主演女優賞を受賞したサスペンス映画もあるが、ここでいう「ブラック・スワン」とは関係ない。



東日本大震災と福島第一原子力発電所の問題は、誰にでもわかりやすいブラック・スワンの例だが、1997年のアジア通貨危機とその後の日本の金融危機(北海道拓殖銀行、山一證券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の破綻)は言われてみなければわからない。

日本の自殺者は1998年から1万人/年増えていて、毎年減らない。

自殺者長期推移






次が男女・年齢別の自殺者数の推移だ。1998年以降男性が大幅に増えているのに対し、女性はほとんど変化が見られない。

自殺者男性年齢別











出典:「自殺対策白書」

政府が毎年発表している「自殺白書」では、1998年から男性の45歳〜64歳の自殺率が急増し、それが毎年1万人弱という大幅な自殺者の増加の原因であることを示している。

東日本大震災での死者・行方不明者は約3万人と言われているが、1998年からの金融危機後の自殺者増加数は12年間の累計で10万人にも上り、東日本大震災を上回るインパクトである。

中高年男性が自殺を選ぶ最大の原因は経済的な理由と見られている。

典型的なパターンは、リストラなどによる失業や賃金カットで、住宅ローンや教育費が払えなくなり、消費金融から金を借りるだけでは追いつかず、闇金にも手を出す。借金取りに追い立てられて挙げ句の果てには自殺して生命保険で借金を清算するほかなくなる、という悲劇の構造だ。

この金融危機後のブラック・スワンの原因は次の日本の4大神話が崩壊したことにあると橘さんは語る。

1.不動産神話 持ち家は賃貸より得だ
2.会社神話  大きな会社に就職して定年まで勤める
3.円神話   日本人なら円資産を保有するのが安心だ
4.国家神話  定年後は年金で暮らせばよい


これらがいずれも崩壊したことに気が付かないと、ある日突然自分の資産がマイナスとなり、窮地に追い込まれることとなる。

橘さんはマイホームを買うという夢は否定しないが、年収の数倍という大きな借金を背負って金融資本のすべてを不動産に投資することは、きわめて危険な選択だという。

米国のようにノンリコース(非遡及型)なら、住宅ローンが払えなければ、家を明け渡せばよいだけだが、日本の住宅ローンは属人型なので、不動産価値が下がると、たとえ家を換金売りしてもまだ借金は残る。

サラリーマンは一定の賃金が将来とも保証されているという「サラリーマン債券」という資産を持っていると見なせるが、会社が倒産したり、リストラにあって職の安全が保証されなくなるとサラリーマン債券を失う。「サラリーマンでいることのリスク」が顕在化してきているのだ。

リストラに遭うと、中高年サラリーマンが再就職するのは至難の業で、せいぜい非正規社員にしかなれない。収入は激減し、住宅ローンや教育費が重くのしかかってくるのだ。


日本人はリスクを嫌う

「リスクに背を向ける日本人」という本で引用されている、「世界価値観調査」によると”自分は冒険やリスクを求める”のカテゴリーに当てはまらないと思っている比率は日本人が世界でも最も高い。

リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書)リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書)
著者:山岸 俊男
講談社(2010-10-16)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

世の中に錬金術はなく、国家財政の赤字を垂れ流し、国債を発行ばかりしていれば、人口減少・少子高齢化の日本の未来ははっきり見通せる。それは今と逆の世界で、高金利、円安、インフレだ。

日本人は元々リスクを嫌う国民で、安定した人生を送るために、偏差値の高い大学に入って大企業に就職することを目指し、住宅ローンを借りてマイホームを買い、株や外貨には手を出さずにひたすら円を貯め込み、老後の生活は国に頼ることを選んできた。

こうしたリスクを避ける伝統的な選択が、今はリスクを極大化する事になってしまう。この事態は1997年の金融危機から始まっていたが、多くの日本人は”不都合な真実”に眼をそむけ、3.11の東日本大震災ではじめて自らのリスクを目の前に突きつけられたのだと橘さんは語る。


伽藍からバザールへ

そしてこの本の結論として、橘さんは「伽藍からバザールへ」という言い方で、「出る杭は打たれる」ことを恐れ、目立つことをしない閉鎖的なネガティブゲーム社会から、自分の能力を売り物にするグローバルなポジティブゲーム社会へ生き方を変えることを提言する。

伽藍というのはあまりビジネス書では使われない言葉だが、いわば塀に囲まれた町のようなイメージだろう。

米国の労働長官も務めたUCバークレー教授・ロバート・ライシュは「ザ・ワークス・オブ・ネーションズ」で、これからの仕事は”マックジョブ”と””クリエイティブクラス”に2極化すると予言している(この表現は橘さんの用語で、元々の表現は”シンボリック・アナリスト”と”対人サービス業者”、”ルーティン肉体労働者”)。

ザ・ワーク・オブ・ネーションズ―21世紀資本主義のイメージザ・ワーク・オブ・ネーションズ―21世紀資本主義のイメージ
著者:ロバート・B・ライシュ
ダイヤモンド社(1991-10)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

マックジョブはマクドナルドのアルバイトのようにマニュアルにより誰でも出来る仕事で、製造業でもサービス業でも、この種の仕事の賃金はグローバルな競争にさらされる。

その一方で医者や弁護士などの専門家、俳優やクリエイターなどのスペシャリストは専門性あるいは他の人で置き換えられない価値を持っている。


読者が目指すべき道

日本の出版業界では、ながらく本を読む人は人口の10%と言われてきたという。「出版大崩壊」という本で、著者の山田純さんは、日本のビジネス・経済書を読む人口を400万人と推定している。

出版大崩壊 (文春新書)出版大崩壊 (文春新書)
著者:山田 順
文藝春秋(2011-03-17)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

その根拠は、日本の一流大学(MARCH,関関同立など)の卒業生は年間15〜20万人で、その人たちが40年間にわたって本を読むとして800万人。ビジネス書の読者は圧倒的に男性だから、その半分の400万人がビジネス・経済書の読者というものだ。

この本の読者はすでにその400万人の日本の知識層のうちの一人なので、転職や独立を意識しつつ、スペシャリストとして競合他社や他の業種でも評価してもらえる実績をつくることが重要だと橘さんは説く。

サラリーマン法人など前作「貧乏はお金持ち」で紹介したような(筆者はちょっとありえないと思うが)サラリーマンのフリーエージェント化の可能性もある。

貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する
著者:橘 玲
講談社(2009-06-04)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

これが人的資本の伸ばし方の一例で、金融資本の伸ばし方(投資)については、インフレに強い投資(金EFTや商品EFTなど)、FX(ハイリスクなので筆者はお勧めしない)、世界株投資(ACWI=All Country World Index EFTやVT(Vanguard Total World Stock EFT)などを紹介している。

個人のバランスシートは4つの神話に基づいたものから、次のような新しいポートフォリオに変わるのだ。

scanner252




出典:本書

最後に橘さんは、東日本大震災の日にあてもなく街をさまよった自らの経験を語り、ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」の「最もよき人々は帰ってこなかった」という一節を引用している。

夜と霧 新版夜と霧 新版
著者:ヴィクトール・E・フランクル
みすず書房(2002-11-06)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

そして”カポー”(ユダヤ人のナチス協力者)は、暖房の効いた部屋で津波に押し流される家を見ていた自分だったと語る。

橘さんは地震の後、ショックを受け茫然自失に陥った。自分の本はいままで絵空事を書いてきただけではないかと悩んだ。しかしそうであれば絵空事を書くことに徹しようというということで、この本を2週間で書き上げたという。

地震で評価を挙げた経済人は、100億円を寄付したソフトバンクの孫さんや10億円を寄付した楽天の三木谷さんユニクロの柳井さんなどベンチャー企業経営者で、バザールの住人たちだった。大企業はほとんど存在感を発揮できなかった。

筆者自身の話となるが、筆者はいままで橘さんのいう「伽藍世界」の価値観で生きてきた。一流大学を卒業し、大企業に就職して、25年ローンで東京の郊外に一戸建てを買った。18年前に購入したマイホームは、住みやすく問題はない。しかし最初の米国駐在から帰ったバブル直後に購入したこともあり、マイホームの価値は買ってから半減した。

筆者がマイホームを購入したのは、会社の先輩の「年を取るとローンが借りられなくなる」というアドバイスがきっかけだ。橘さんの「サラリーマン債券」という発想そのものである。バブルの後で不動産市況は下落していたが、逆に非常にクオリティの高い住宅が以前より安く買えるようになったことが、現在の家を購入した理由だが、結局マイホーム投資では数千万円という資産価値の下落を経験した。

さいわいまだ個人バランスシート上は債務超過にはなっていなし、払い終えるめどはほぼついてきたが、あやうく債務超過に陥るところだった。

日本が少子高齢化・人口減少化社会に向かうことから考えても、年収の数倍のローンを抱えてマイホームを購入することは、今後は大きなリスクとなることは間違いない。橘さんの説く方向性は間違っていないと思う。なんらかの技能や資格を持ち”つぶしが効く”存在となり、家は極力賃貸することだ。

橘さん自身が書いているように、この本はこれまでの本と同じ路線で、あまり新規性はないが、これまで述べてきた主張を本にまとめて、日本をおそったブラック・スワンに対して日本人への警鐘を鳴らす本である。

この人は本当に文章がうまい。いつもながらテンポがよく、読みやすい本である。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。



  
Posted by yaori at 23:23Comments(0)

2011年09月22日

証券会社が売りたがらない米国債を買え! 米国債投資の啓蒙書

証券会社が売りたがらない米国債を買え!証券会社が売りたがらない米国債を買え!
著者:林 敬一
ダイヤモンド社(2011-08-26)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

読書家の上司に借りて読んだ。

著者の林敬一さんは最初JALに入社し、アメリカ駐在中に投資銀行のサロモン・ブラザースに転職、その後英国投資会社のIT系人材会社に転職し、M&Aを手がけた後2009年に独立。現在はフリーランスのコンサルタントをしているという。

林さんは「ストレスフリーの資産運用」というブログを書いている。

この本は林さんが所属しており、筆者の会社の大先輩でもある森祥二郎さんが主催している「サイバー・サロン」という1,000人くらい会員のいるメーリングリストで発信したものだ。

アマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、目次を参照して欲しい。


米国債投資はフィクストインカム(利回り確定)、リスクフリーで、購入・管理手数料もかからない。しかも売りたいときに売れるという流動性があるという。安全・確実・有利な投資なのだと。

しかし、たぶん多くの人の反応も同じだろうが、筆者も上司からこの本を勧められたときにドル安の為替リスクはどうなるのか?との疑問がまず湧いた。


為替変動の例ー筆者のドル建ての生命保険

為替変動の一例としてこのブログでも紹介した、筆者がアメリカ駐在の時に購入した掛け捨ての生命保険の例を紹介しよう。

これは30年間毎月100ドル強を支払い、78歳までに死亡すると50万ドルの生命保険が支払われるというものだ。

life insurance











最近日本でもネット生命保険などが、さかんに保険料が安いことを宣伝しているが、筆者の年齢では100ドル=8,000円程度の保険料では、期間10年で1千万円の生命保険すら買えない。

アメリカで買った生命保険は、30年間の保険金総支払額は4万ドル弱、つまり保険料の8%以下。それでいて30年間のうちに死亡すれば50万ドルが支払われるものだ。もし喫煙者だと料率は倍以上に跳ね上がる。

筆者の場合、コレステロール値が基準よりやや高かったので、最低料金ではなかったが、タバコを吸わない健康な人はそれだけ死亡率が低いということだ。

その後アメリカでも10年超の生命保険商品はなくなった。30年間同じ保険料という現在では到底ありえない有利な条件の保険だった。

10年前に購入した時の為替レートは1ドル120円くらいで、死亡時の保険金は6千万円くらいになると想定していた。他の掛け捨ての生命保険もあり、家のローンも生命保険でチャラになるので、全部で1億円くらいと家があれば、残された家族はなんとかなると踏んでいた。

ところが1ドル70円くらいになると50万ドルでも3千5百万円にしかならないので、だいぶ安心感が違ってくる。

このままドル安が続くかどうかわからないし、GDPで世界ランクがどんどん下がり、日本政府の財政赤字が際限なく膨らむと、保険が満期を迎える20年以内には逆に円安になる可能性が高いと思う。

ひょっとすると保険料を支払っているときは円高で負担が楽になり、死亡した時は円安になって円建てで十分な保険金となるという、いいとこどりの可能性もあるかもしれない。

(もちろん78歳までに死亡しなければ、保険料は掛け捨てだが、その場合には78歳まで生きられたことを喜ぶべきだろう。)

閑話休題。


長期複利運用すれば為替変動をカバーできる

このように為替レートの変動は大きいが、林さんは複利で長期運用すれば、金利メリットが為替変動ロスを下回る可能性は低いと説明している。

例として1997年に退職した某企業の元財務部長の米国債への投資を挙げ、13年間でみると米国債に5,000万円投資したほうが、日本国債に同額投資するより約2,000万円金利収入が多いという結果となったことを紹介している。

それは年間の金利差4.5%を複利で運用すれば、13年間で77%となり(筆者計算)、投資実行時との為替差損の23%を軽くクリアーできるからだ。

実際にはその時々の為替レートにあわせて期間毎に計算する必要があるが、それでもドル安になってもまだ金利差のほうが勝つことがわかる。

さらに円が対ドルで77円前後と史上最高値をつけている現状からさらに円高となるかどうかという疑問も残る。

中国の人民元は高い成長率と好調な輸出に支えられて、今後も引き続き引き上げられると思うが、成長の鈍化した日本ではこれ以上の大幅な円高、たとえば1ドル=50円になるとかは、考えずらいところだ。

2011年8月5日に格付け機関のS&Pが米国債をAAAからAA+に引き下げたからといって、依然として米国債は、林さんが”リスクフリー”と呼ぶ世界で最も安全な投資であることは間違いない。

その証拠に米国債の買い手は外国投資家が多く、外国投資家の中でも公的機関が8割を占める。政府系投資ファンドが安全な投資先として米国債に投資しているのだ。

為替リスクについても、長期複利投資なら為替でやられる可能性は少ない。林さんの言うように、30年物などの長期米国債が日本でも手軽に買えるのであれば、「買い」だと思う。


実際に買ってみないと分からない点もありそう

一方、アマゾンのカスタマーレビューを見ると、この本を5つ星評価している人にまじって、2つ星評価の人もいる。

この人は「米国債に投資した経験のある者からすれば、証券会社の外国債の販売担当者の回し者のような気がしてなりません。」と言っている。

要は米国債は売値と買値に大きな差があり、見かけ上は手数料がかかっていないようにみえるが、売りと買いの差が証券会社の儲けであり、それは相当大きいと。

自分で実際に買ってみないとわからない点もあるのだと思う。


結局は複利投資が長期的には一番有利

筆者はこれまで株、金、米国投資信託、郵貯の定額預金など様々なものに投資してきた。

たとえば金はアルゼンチンにいた時に、インフレヘッジのためにメキシコ金貨に投資した。ちょうどタイミングがよかったこともあり、1オンス300ドル以下で買って、約1年後に650ドル程度で売った。しかし金はその後相場が長く低迷し、ずっと300ー400ドル前後のボックス相場の時期がたしか20年近くあった。

日本株は長期投資対象としては不適格のパフォーマンスだし、米国投資信託は手数料が高い上に、当てることは難しい。筆者の場合にはIT系米国ファンドに投資して30%くらい損した。

結局筆者の今までの投資で、最も確実に資産が増えたのは、当時7%前後で購入した郵貯の定額預金だった。

日本株は良いタイミングで売れたものは、3倍くらいで売れてすごく儲かったが、逆に20年以上持っていた株でも簿価を割って損失が出たことがある。現在も20年以上保有しているわりには、利益はたいしたことがない。

その意味では筆者も林さんの意見に同感で、長期的には複利投資が一番だと思う。そして複利投資をしろというのは、このブログでも紹介した名著「バビロンの大富豪」の教えるところでもある

バビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのかバビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか
著者:ジョージ・S・クレイソン
グスコー出版(2008-08-08)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


住宅ローンは返すな?

筆者はまだ住宅ローンを抱えているが、林さんは住宅ローンは変動金利なら1%前後であり、繰り上げ返済はせず、”円キャリートレード”として投資に回したほうがよいと勧めている。

筆者の住宅ローンの金利は、今年借り換えたので平均1.2%となった。こんな低利なので、筆者も全く繰り上げ返済する必要性を感じていない。


最終評価

この本のもとになったメルマガ講座が、特定のサークルの人達向けの講義だったことも考えると、アマゾンでレビューを書いている人のように、林さんを「証券会社の回し者」とは思わない。

そもそもこの本を読んで米国債を買うことになっても、林さんには一切直接的な便益はないと思う。

その意味で、この本は「個人が米国債を買う」というほとんど知られていなかった投資方法にスポットライトを当て、日本国債との比較、購入方法などを懇切丁寧に解説しており、米国債投資の啓蒙書というべきだと思う。

読んで面白い海外投資ということなら、このブログで紹介している「海外投資を楽しむ会」の橘玲さんの「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」などの本にはかなわないが、米国債だけに的をしぼって、マニュアル的に使えるので、大変役立つ本と思う。

黄金の扉を開ける賢者の海外投資術黄金の扉を開ける賢者の海外投資術
著者:橘 玲
ダイヤモンド社(2008-03-07)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


筆者は定年退職まであと数年あるが、この本を読んで退職金の運用先としては米国債も考慮に入れようと思った。大変参考になる本だった。


参考になれば投票ボタンをクリックして頂きたい。




  
Posted by yaori at 02:44Comments(0)TrackBack(0)

2010年08月16日

日中GDP逆転 ゴールドマン・サックスの伝説のBRICSレポート再掲

2010年8月16日再掲

本日2010年4−6月で中国のGDPが日本のGDPを超えたことが、日経新聞等で報道された。

このままだと2010年通年でも中国のGDPが日本を上回り、中国が世界第2位の経済大国となるのが確実と思われる。

まさにゴールドマン・サックスのBRICSレポート改訂版が予想したとおりのGDP成長になっている。

現在の情勢を考えるにあたって、BRICSという言葉を作り出したゴールドマン・サックスの伝説のBRICSレポートの2007年の改訂版(英語)のあらすじを再度掲載する。


2008年8月6日初掲:

BRICs and beyond revised








本というと書店で買うものと通常は思うが、今回は企業のホームページからダウンロードできる本の紹介だ。投資銀行のゴールドマン・サックスは経済レポートをホームページで公開しており、だれでもダウンロードできる。

このブログでも紹介した「フラット化する世界」や、「日本は没落する」で引用されているBRICs諸国の躍進を予測した2003年10月の伝説的レポート"Dreaming with BRICs:The Path to 2050"も収録されている。

ゴールドマン・サックスのホームページ(英語版)"Ideas"というセクションがある。ここにBRICs関係のレポートや、経済成長、環境とエネルギーなどの分野のレポートが掲載されている。

英語のホームページにはBRICs研究の責任者のジム・オニールが、今最も面白いのはブラジルであると語っている2008年2月のインタビューが日本語字幕付きで公開されており、参考になる。

今回紹介する"BRICs and beyond"は全部で270ページ余りなので、読むのに決心が要るが、2003年に出された"Dreaming with BRICs"は全部で20ページ強、付録を除くと本文は17ページなので、まずはこのレポートを読むことをおすすめする。

英語のレポートを読むのは慣れていないと大変ではあるが、やはり日本語と英語では情報量が違う。時々はゴールドマン・サックスのホームページなどをチェックすることも参考になると思う。

日本のゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント社のホームページにもBRICsに関する情報が多く載せられているが、もっぱら投資環境情報で、マクロ経済についてのまとまったレポートは英語のレポートを読むしかない様だ。

投資運用ではモーガンスタンレーのMSCIコクサイインデックスファンドが世界的な指標となっているが、モーガンスタンレーのホームページでも市場環境のレポートが公表されている。

今回紹介するゴールドマン・サックスの2007年12月の"BRICs and beyond"レポートは、各国にいるアナリストがそれぞれの国について2006年から2007年にかけて書いたものを編集して一冊の本としている。

その中にはこれもゴールドマン・サックスが2005年に作った言葉であるN−11("Next eleven")の韓国、フィリピン、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、パキスタン、イラン、エジプト、ナイジェリア、トルコ、メキシコというBRICsに次ぐグループの国々のレポートの改訂版も含まれている。

左が2003年10月の"Dreaming with BRICs"で紹介されていた有名な図だ。車のアイコンはいつの時点でBRICsの国が、G7の国を抜くかを示している。これが、2007年3月の"The N-11: More than an Acronym"で見直しされており、それが右の図だ。BRICs諸国の成長はさらに早まることが予測されている。

BRICs original estimateBRICs revised estimate

今回の改訂で、BRICs合計のGDPがG7を上回るのは当初予測の2040年より早まり、2032年と改訂され、中国が米国のGDPを上回るのも当初予測の2035年から2027年と改訂されている。

中国が日本のGDPを上回るのも、当初の2016年から、2010年に改訂されている。

次がこのレポートの140ページに掲載されている2007年に改訂された2025年の世界のGDP上位国と2050年のGDP上位国の予測だ。

この図でわかるとおり、2050年には日本はG7の中でこそ米国に次ぐ2番目だが、全世界ベースでは中国はもとより、インド、ブラジル、メキシコ、ロシア、果てはインドネシアにまで追い抜かれ世界8位になると予測されている。

World in 2050












2050年の世界のランキングとGDP予測は次の通りとなる。(括弧内は2006年のGDPと2050/2006比率)

1位 中国     70.1兆ドル (2.7兆ドル、26倍)
2位 米国     38.5兆ドル (13.2兆ドル、2.9倍)
3位 インド    38.2兆ドル (0.9兆ドル、42倍)
4位 ブラジル   11.4兆ドル (1.1兆ドル、10倍)
5位 メキシコ    9.3兆ドル (0.8兆ドル、11.6倍)
6位 ロシア     8.6兆ドル (1.0兆ドル、8.6倍)
7位 インドネシア  7兆ドル   (0.4兆ドル、17.5倍)
8位 日本      6.7兆ドル (4.3兆ドル、1.6倍)
9位 英国      5.2兆ドル (2.3兆ドル、2.3倍)
10位 ドイツ    5兆ドル   (2.9兆ドル、1.7倍)
11位 ナイジェリア 4.6兆ドル (0.1兆ドル、46倍)


成長の要因

その国の経済成長を支える要因としては、この本では次を挙げている。

1.マクロな安定度
2.法の統治等の仕組みとしての安全度
3.経済の開放度
4.教育

ここでも「フラット化する世界」と同様、教育の重要性が大きく考慮されている。

これらを数値化したのが、ゴールドマン・サックスで2005年に導入されたGES(Growth Environment Scores)で、これによって国の成長環境を判定している。このGESの判定要素は次の13の指標で、それぞれ0から10の評点となっている。

1.インフレーション
2.政府の財政赤字(対GDP比率)
3.対外債務(対GDP比率)
4.投資率(対GDP比率)
5.経済の開放度
6.電話普及率
7.パソコン普及率
8.インターネット普及率
9.中等教育の年限
10.平均寿命
11.政治の安定度
12.法の支配
13.汚職


次が2006年のGESによる各国の成長環境の評価だ。1位から4位はスウェーデン、スイス、ルクセンブルグ、シンガポールである。

GES 2006









このレポートの意味するもの

この270ページにもわたるレポートを読んでいていくつかキーワードがあると感じた。

それは、次の通りだ。

1.各国の高度成長を維持するためには人口増加が必須となること
2.成長を維持するために教育水準の向上が欠かせないこと
3.政治の安定が必須条件であること
4.通貨の上昇が見込まれていること


通貨の上昇が成長の要因

ゴールドマンのレポートでは、国の成長率を維持する理由の2/3はその国の生産性向上率、1/3は通貨の上昇だ。実際、30年間でBRICs通貨は対ドルで300%上昇すると予測されている。

将来の予測にはドル相場がどうなるのかも大きな要因だ。

中国、湾岸諸国がドルペッグを維持するかどうかが鍵である。

日本もそうだが、これらの国は外貨準備の大半がドルなので、ドルが他の通貨に対して下落を続けても容易にはドルから切り替えることはできず、手詰まりの状態となる。

この安全弁が崩壊すると、それこそドルの大暴落につながる可能性があるのだ。


マクロでの比較

この本ではBRICs及びN−11についてそれぞれの国のアナリストが、それぞれの国の強み、弱みを整理しており、いわば鳥瞰図的に理解できる。

マクロ経済レポートでもあり、個別企業についての説明はほとんど皆無なので、個別の企業の活動については他の本を読む必要がある。その意味で、この本と「フラット化する世界」は良いコンビネーションだと思う。

"BRICs and beyond"の国別のレポートでも言われているが、各国のアナリストたちはゴールドマン・サックスの本社アナリストたちよりも自国の成長について強気であり、特に中国とインドについては、今回の見直しよりもさらに成長が早まると見ているそうだ。


ずば抜けている中国の底力

BRICs4ヶ国、そしてN−11の国につきいわば同じ土俵で評価しているが、やはり中国の底力がずば抜けているという印象を強くする。

将来の成長を阻む要因となっている一人っ子政策や人々の移動を阻む戸籍制度の「戸口」制度は、いずれ見直される可能性が高い。

9年制の義務教育と一人っ子政策の結果、国民の教育熱は高く、より高度な教育を受ける比率が高まり、大学進学率は10年前の5%弱から、現在は20%に上昇しており、2020年には40%に上昇することが見込まれる。

高等教育を受けた親を持つ子供は、大学に行くのが当然と考えるので、そうなると教育水準は上がり、さらに「戸口」の改革により若年労働力が都市部に入ってくると労働プールにも3千万人単位での若年労働力が生まれる。

加えて世銀の勧告等で一人っ子政策が緩和されると、人口ピラミッドも是正され、将来の成長力にもつながる。

日本の大学入試センター試験の志願者数は過去のピークで60万人、現在は約54万人となっているが、中国の同等の試験である「高考」の志願者は1,000万人を超えている。

中国の大学生に占める工学部系の比率は60%。仮に1学年で1,000万人とすると、600万人のエンジニアが毎年卒業する。それに対して日本の工学部志望者は年間27万人、実に1/25である。これでは全く勝負にならない。


成長率の加速が見込まれるインド

インドは古くは1500年頃までは世界のGDPの約3割を占める世界最大の経済国だった。1500年頃に中国が世界最大の経済国となったが、中国も1800年前後に産業革命の起こったヨーロッパに抜かれる。

world 1to2000



ゴールドマン・サックスのレポートは、中国とインドが2050年頃には世界1・2位になると予測しているが、18世紀以前の世界ランキングに戻ることになるわけだ。

インドは黄金の四辺形ハイウェイが完成し、インフラは今後も改善され、成長率も加8%から2010年までには10%超まで加速し、それから10%近い成長が継続することが見込まれる。

農業から工業やサービス業への労働人口のシフトが起こるので、成長率が底上げされることになる。インドには世界で最も成長の早い30都市のうち10都市がある。都市人口が増えると建設や電力などの需要が急速に増加する。

ゴールドマン・サックスのレポートにはないが、インド南部はモンスーンという自然の脅威があり、モンスーン期間中は船での輸送はできないので、インドは交通のハブにはなりえない。

平均教育年限が5.1年という国民の教育レベル、会社を閉鎖するのに10年掛かると言われている非効率な政府手続き、カースト制、女性労働力の未活用という問題がある。

100人以上の会社では事実上解雇ができないという話もある。

これも書かれていないが、宗教上牛あるいは豚は食料にできないし、食料生産に適していない気候や風土ゆえ、人口が増えると飢餓人口も増えるおそれがある。

教育も私立大学は厳しく規制されており、高学歴者を多く生み出す体制とはなっていない。

このようにインドには人的資源という意味では大きな問題があると筆者は感じるが、このゴールドマン・サックスのレポートでは、これらのネガティブな面はサラッと触れられているだけである。


ロシアの問題は法の支配

ロシアは最近税法、労働法、土地所有法を相次ぎ制定しているが、基本的に法の支配がない。

シェル、三井物産、三菱商事が参加していたサハリンIIの過半数の株式をロシア政府の圧力でガスプロムがいわば強奪したことが良い例だ。

報道メディアも支配下に置いたプーチン院政の間は安定することが見込まれ、2012年にはプーチンが大統領として復帰する可能性も取りざたされている。

政治的には安定しようが、外資にとっては法の支配がないと、安心して投資はできない。

プーチン時代は平均年率6.8%成長し、インフレも9%程度に落ち着いた。

しかし単にエネルギー価格が上がって外貨準備が増え、石油代金変動勘定が増えるだけという状態なので、投資なき成長という状態だ。

また現在の人口の142百万人が2050年には109百万人に減少すると見込まれ、GDP成長率も今後低下することが見込まれることはネガティブ要因である。


成長が加速するブラジル

ブラジルは昨年から鉄鉱石や大豆などの一次産品の価格上昇とエネルギーの自給を達成したことにより、成長率は年率5%程度にアップしている。

一応の産業インフラはできあがっているだけに、他のBRICs諸国ほどは高い成長性が見込めないが、それでも従来の成長率2−3%よりは高い。

今後はリアル高、高金利の中で民間部門の投資が増加できるかどうかが鍵である。

筆者は1978年から1980年までアルゼンチンに駐在していたことから、ブラジルとは30年のつきあいだが、国としての先見性という点で昔からすごい国だと思っていた。

何もない高原に首都ブラジリアを建設したり、30年以上前からエタノール混合燃料車を走らせていたり、セラードと呼ばれる農業用地の大規模開発による大豆の増産、鉄鉱石や一次産品の生産拡大などその計画性、先見性は旧共産国をはるかに上回るものがある。

政治的には安定しているが、インフレ率を低く抑えられているのは、通貨の切り上げによる効果が大きく、逆に工業製品は高金利と通貨高により競争力を失っている。

ブラジルはインフレこそ5%前後に収まったが、依然として企業向け貸し出し金利は約30%も高く、いわゆるリアルキャリートレードで、外国からの短期投資資金が流入し、リアル高を支えている。

ブラジルについては、鈴木孝憲さんの本のあらすじを近々紹介するので、これを参照して欲しい。


世界のエネルギー事情

IEAの統計のページに各国の種類別のエネルギー供給がパイチャートになっているので、比較してみると面白い。

左が全世界の種類別のエネルギー供給、右がアメリカのエネルギー供給だ。ほぼ似通っている。

energy balance worldenergy balance USA

次の左が日本で、同じような傾向だ。それに比べて右のブラジルは全く異なる。

energy balance Japanenergy balance Brazil

再生可能エネルギーの比率が高いことがわかる。深海油田開発技術を生かして、石油も今や自給できるので、自国で生産できる石油と水力、エタノール、木炭などの再生可能エネルギーが主体である。

左のロシアは天然ガスの世界最大の生産国なので、天然ガスの比率が高い。同じ南米でも右のアルゼンチンはブラジルと異なりロシアに近い。天然ガス産出国だからだろう。

energy balance Russiaenergy balance Argentina

中国は世界最大の石炭生産国なので、石炭の比率が圧倒的に高い。石炭はCO2排出量も多く、中国の環境問題は地球環境に悪影響を及ぼす可能性もある。中国に比較的似ているのがインドのエネルギー事情だ。インドも世界第3位の石炭生産国なので、石炭の比率が高い。

energy balance Chinaenergy balance India

インドはバイオマス発電大国で、全土に2,000近く小規模のバイオマス発電所があるという。キャッサバ、サトウキビかすが主な燃料だ。インドでは牛糞も古くから燃料として使われてきたので、牛糞も燃料となっているのだろう。鶏や動物の糞は今や最先端のバイオマス燃料だ。


中国の問題

中国の問題は、政治的安定がいつまで続くかという点と、環境問題だ。上記のように中国のエネルギー源は石炭で、石炭はCO2排出量も、また排煙をちゃんと処理しないと酸性雨の原因となる亜硫酸ガスなどの排出も多い。

なんといっても中国と日本は同じ経済圏にあるので、中国の環境問題は日本の重大関心事であり、人類生存の問題でもある。

その意味で、小宮山東大総長が「課題先進国日本」と呼ぶ様に、日本の環境技術が中国、ひいては世界の環境を保全し、そして日本も栄えるというそんな未来図を考えさせられた。


英文を270ページも読むのはかなり大変なので、まずは20ページのBRICsレポートを読むことをおすすめする。

昨年中国がドイツを抜いて世界第3位の経済大国になったが、これはまさに2003年のBRICsレポートが予測していたのとぴったり一致している。

BRICs original estimate






好むと好まざるとにかかわらず、これからもこのレポートで予測されたシナリオに近い形で現実となっていくだろう。その意味では必読のレポートだと思う。


参考になれば次クリック投票お願いします。





  
Posted by yaori at 18:45Comments(0)TrackBack(0)

2009年04月01日

マネー力 大前研一氏の「株式・資産形成講座」

マネー力 (PHPビジネス新書)マネー力 (PHPビジネス新書)
著者:大前 研一
販売元:PHP研究所
発売日:2009-01-17
おすすめ度:3.5
クチコミを見る


世界金融危機以降、世界は大変だが、日本はチャンス!と呼びかける大前研一氏の近著。

「いよいよ日本の出番」と、まるで長谷川慶太郎さんの本の様だ。

千載一遇の大チャンス千載一遇の大チャンス
著者:長谷川 慶太郎
販売元:講談社インターナショナル
発売日:2008-12-18
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


それでも、「平成恐慌」はありません。―これが、世界経済再生のシナリオ (WAC BUNKO)それでも、「平成恐慌」はありません。―これが、世界経済再生のシナリオ (WAC BUNKO)
著者:長谷川 慶太郎
販売元:ワック
発売日:2009-03
クチコミを見る


筆者もグリーンテクノロジーなどの分野で、日本の出番だと思うが、サブプライムローン問題ではほぼ無傷の日本が、昨年11月以降製造業中心に、これほど大きなダメージを受けるとは予想していなかった。

最も裾野の広い自動車業界が最もダメージを受けている。

自動車の買い換えを1年くらいのばしても、今の日本車なら全く問題ない。”合成の誤謬”で、みんなが買い換え時期を延ばすと理論的には1年分の国内需要がなくなる。この消費者の買い換え意識の減退が、現在の急激な自動車生産の落ち込みの原因の一つだと思う。

それと日米での自動車リースの普及度の差が大きい。

アメリカでは法人はほぼ100%リース、個人でもリースが大半なので、3年前後のリースの期限がきたらほとんどが新車に乗り換える。そのためアメリカの自動車業界の方が需要の落ち込みが緩やかとなる。

(筆者は二度ピッツバーグに駐在したが、最初の駐在時は家内の車も含めてローンで2台購入したが、2度めの駐在では2台ともリースにした。リースなら頭金20万円程度で車が手に入るし、帰国するときはリースを解約すれば良いので、車を処分するのもラクだ。)

自動車業界のリース比率の差が、今回日米の自動車生産の落ち込みの厳しさの差となっていると思う。

中国の自動車業界は輸出が少なく内需中心なので、今でも生産量を増やしており、国としても中国は依然として6−7%の成長を維持している。先進国が軒並みマイナス成長になっているので、差が急速に縮まっており、3年後は中国の経済規模は日本を抜くと大前さんは予想している。

この本は、「大前流心理経済学」の続編のような内容で、資産運用力をつけるには今がチャンスと呼びかけている。

大前流心理経済学 貯めるな使え!大前流心理経済学 貯めるな使え!
著者:大前 研一
販売元:講談社
発売日:2007-11-09
おすすめ度:3.5
クチコミを見る


いくつか参考になった点を紹介しておく。


世界のホームレスマネーは3,000兆円の規模

2008年の金融危機以降の株価下落、石油などコモディティ価格下落、不動産価格下落により、世界の余剰資金の規模は半分に減ったが、それでも約3,000兆円が行き場を求めてさまよっている。

マネー力を強化するためには、このホームレスマネーの動きを読めるようにすることが必要だと大前氏は語る。

日本にいては、ダイナミックなお金の流れはわからない。世界を足で歩けという。

ホームレスマネーは、先進国のファンド、オイルマネー、中国マネーの3種類あり、中国マネーのおかげで香港とマカオは未曾有の活況を呈していた。

中国の金持ちのスケール、中国のマーケットの大きさ(毎月携帯電話の新規契約者が5百万人ずつ増える!)はとてつもないものがある。

マネー力をつけるためには、中国マネーは体験しておく必要があると大前氏は語る。

中国の外にインドやロシアも見逃せない。大前氏は「ロシア・ショック」でも書いているが、オイルマネーとプーチンのフラット・タックス改革で、ロシアの時代は必ず来ると予想する。

日本だけ見ているとこれからはせいぜい1〜2%の成長がやっとだ。15%業績をのばすと宣言したGEのイメルト会長のように、15%の成長を遂げている国の事業を伸ばすのだ。

GEは向こう3年間でインドで現在の10倍の5万人体制を敷くと宣言している。

逆に大前さんはアメリカには関心がなくなったという。2007年には一度もアメリカを訪問しなかったが、こんな事は初めてだと。家も6軒所有していたが、すべて売却したという。

「ブッシュ前大統領がいかにアメリカを、自己中心的で世界と没交渉のつまらない国にしたかは後世の歴史家が証明してくれることだろう」と辛辣だ。


自分の資産は自分で守れ!

大前さんは日本の国は将棋で言えば”詰んでいる”という。年金とかで国になんとかしてもらおうとなどと、ゆめゆめ思わないことだと。

2055年の人口動態予測が載っている。

2055年人口動態日本の人口ピラミッドが年々変化していく様子国立社会保障・人口問題研究所がホームページのトップに公開しているので、紹介しておく。

ピラミッド型から逆ピラミッド型に変化していく様がスライドショーで紹介されている。


ドルからユーロへの基軸通貨シフト

アメリカはドルの衰退で、”ブラジル化”すると大前氏は予想する。ドルとユーロのアトランティックの戦いに敗れると、アメリカ人も自国通貨を売って、強い通貨に変えようとするだろう。これが大前さんが言う”ブラジル化”だ。

アメリカはこれには耐えられないので、ユーロとドルを統一させようとする。それが大前さんの予想する仮称”ユーラー”か”ドーロ”の誕生だ。

こうなると世界の通貨の85%は米欧統一通貨となる。円とかウォンとかの弱小通貨は生き延びられず、結局世界統一通貨の”グロボ”とかになるだろうと。

これは大前さんの仮説だが、こういうシナリオを持っていれば、たとえドルが大暴落してもパニックになることはないと語る。


マネー脳の鍛え方

マネー脳を鍛えるにはITと英語は不可欠だ。世界中の国が競って英語を勉強している。最近では特にドイツの英語力向上がめざましいという。

大前さんは韓国の2つの大学で名誉・客員教授をやっているが、韓国の大学では1997年の通貨危機以来、英語が話せる国際派人材の育成ということで、世界中から講師を招き、当たり前のように英語の授業をしているという。

2008年1月に教育再生会議の最終報告書が出されたが、”ニートやフリーダーをなんとかしよう”とか、”いじめをなくそう”とか、教育の本質とは関係ない事ばかりが書かれていて、肝心の世界で通用する人材をこうやって教育するという内容は見あたらなかったという。

ニートやフリーターを減らしても、日本の経済力は上がらない。

それよりも「世界中の人とコミュニケーションが可能で、どの国の人に対してもリーダーシップを発揮することができ、なおかつ余人をもって代え難いスキルをもつ人材の育成」をするべきだと大前氏は語る。

筆者も最近のマスコミは、弱者の味方となって企業の”派遣切り”を断罪しているが、そもそも派遣労働者を拡大してきたのは、政府の政策であったことが忘れられているのではないかと思う。

企業の競争力を高め、労働者も希望するなら勤務時間に拘束されず、自由に働けるしくみが派遣労働者だったはずだ。

03haken_01





出展:「連合」資料

大前さんは”ストリート・スマート”だけが生き残ると語る。給料をもらったらすぐに強い通貨に変えるかつてのブラジルとか、ルーブルをドルやユーロに換えるロシアのタクシー運転手など、生活の中で学んで生きていくのだ。

筆者は1978年から1980年まで年間のインフレ率が100%を超えるアルゼンチンで研修生として働いていたが、給料を受け取ったらすぐにドルやドイツマルク、最後の1年間は金貨に換えていた。

ちょうどこのころ金が暴騰し、1オンス300ドル台から、一挙に800ドルを超え、筆者が帰国前に処分したときは300ドル以下で買った金貨が、640ドルまで上がっていた。

Libertadoronewrev









出展:Wikipedia

金貨は8枚程度しか持っていなかったが、まさに”ストリート・スマート”を体験できた。

大前さんは日本人は国を信じる危険に目覚めよ、マネー脳は中国人に学べと説く。現在中国では資産を自由に海外に持ち出すことは法律上できないので、家族の一人に外国籍を取らせ、その人を通して海外投資するのだと。

その裏には外国居住の中国人を増やしてロビー活動に使おうという中国政府のしたたかな計算があるという。

日本円や日本政府に義理だてする必要などない。学ぶべきは中国人のしたたかさである。


大前健一の株式・資産形成講座

大前さんは2006年からビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジで、「大前健一の株式・資産形成講座」という講座を開講している。自ら判断できる力を養うことが目的だ。

大前さんは日本人のマネー力は幼稚園児レベルだという。ほとんどの日本人が額に汗して働き、稼いだお金は銀行やゆうちょ銀行に預けておくだけだ。

”効率よくお金にお金を稼がせる”ことを考えていないと。

お金にお金を稼がせるるというのは、「アメリカの高校生が学ぶ経済学」でも高校生が学ぶことで、いまだにベストセラーとなっているロバート・キヨサキの「金持ち父さん、貧乏父さん」が主張するところでもある。

アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践へアメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践へ
著者:ゲーリーE.クレイトン
販売元:WAVE出版
発売日:2005-09-15
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


金持ち父さん貧乏父さん金持ち父さん貧乏父さん
著者:ロバート キヨサキ
販売元:筑摩書房
発売日:2000-11-09
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


家を買うか借りるかもマネー力があれば迷わない、資産形成は長期運用、分散投資が基本、専門家に聞くのが一番、実際にやらなければ力は身に付かない、などとBBT事務局からの内容説明や、受講者の声も紹介している。

終章”いよいよ日本の出番”では、いつも通り大前さんがいくつか具体的提案をしているので、箇条書きで紹介しておく。

・このまま入ったら長期衰退

・オバマは環境戦争を始める 相手は地球環境破壊者だ 日本の環境技術の出番だ

・眠れる1500兆円を市場に誘い出す 相続税廃止で資産を老人から若者へ

 ちなみに現在相続税のない国は、スイス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、スウェーデン、イタリア、マレーシアなどで、現在相続税廃止を検討中なのは、イギリス、フランス、ドイツなどだと。

 アメリカはかつて60%だった相続税率を2001年から段階的に下げており、2010年にはゼロとし、その後は上げていく予定だ。この2010年相続税ゼロという「ブッシュ・プラン」」がアメリカの救世主になるかもしれない。

 日本の相続税収は1兆5千億円程度で、この税収のために1,500兆円がフリーズしているのが現状なのであると。

・東京をマンハッタン化せよ 東京のフロア数は山手線の内側でも平均2.6階 電線地下埋設と高層化

・「戦略事業単位」としての道州制

・チャンスを生かすには意志がいる 若い人の国を変えようという意識高揚が必要

   
今回は大前さん自身のビジネスブレークスルー大学院大学講座の宣伝という色彩が強かったが、投資術初級編として参考になる内容である。

本屋で手にとってみることをおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。



  
Posted by yaori at 00:19Comments(0)TrackBack(0)

2009年01月10日

無税入門 気になるタイトルなので読んでみた

2009年1月11日追記:

「無税入門」があまりに単純な、サラリーマンも副業をつくり自営業者として開業届けを出して費用を計上しろというものだったので、他の本も読んでみた。

この分野でのベストセラーは次の本だ。

フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。
著者:きたみ りゅうじ
販売元:日本実業出版社
発売日:2005-12-08
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

きたみりゅうじさんという元SEでイラストレーターの人が、税理士にいろいろ質問するという企画のものだ。きたみりゅうじさんは「キタ印工房」というサイトも運営している。

内容は税法の変更にあわせて適宜アップデートされているという。サラリーマンにはあまり参考にならないかもしれないが、グレーな部分も含めて、単刀直入な質問もあり、面白い。

次に元国税調査官の大村大次郎さんという人が、やたら刺激的なタイトルの本を出している。税務署を勤め上げた人は、退職後税理士として働けるが、国税局(?)に10年間勤務しただけで、このような裏技を紹介する本をやたら出しているのはやりすぎという感じがする。

その税金は払うな!その税金は払うな!
著者:大村 大次郎
販売元:双葉社
発売日:2006-11
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


大村さんはブログもあるが、ほとんど更新されていないようだ。

ホントかどうかわからないが、年収5、000万円までの開業医は約70%の経費が認められるとか、開業医が優遇されているのは日本医師会という強力な圧力団体があるからだとか、言い放題である。

かなりあぶない本である。税金が安くなるなどといった本はタイトルだけでも売れることもあり、玉石混交なのではないかという気がする。

もし実際に個人事業を開業するなら、図書館に行けばいくらでも同じようなマニュアル本がだされているが、参考までに最新刊が図書館にあったので、読んでみた。

一番よくわかる個人事業の始め方一番よくわかる個人事業の始め方
著者:鈴木 克俊
販売元:西東社
発売日:2008-11
クチコミを見る


退職後個人事業を始める人を主な対象にした本で、税務署等への届出や税法・簿記の基礎知識、日本政策金融公庫などからの資金の調達法などが詳しく説明されている。

興味のある人は確定申告や税法関係の本はたくさん図書館にあるので、図書館でチェックされることをおすすめする。


2008年12月29日初掲:

「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しよう「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しよう
著者:只野 範男
販売元:飛鳥新社
発売日:2007-10
おすすめ度:3.0



紹介記事だったか(朝日新聞?)、売上ランキングだったかで見て、気になるタイトルなので読んでみた。

こんな本を出すと当然税務署に目を付けられるのでペンネームではないかと思うが、著者は只野範男(略してタダノリ?)さんとなっている。

37年間も税金(所得税・住民税)を払わないで、教育など国や地方自治体の様々なサービスを受けている人がいるというのは腹が立つ話だが、働いている人の25%は所得税・住民税ゼロだという。

年収325万円以下の子ども2人のサラリーマン世帯、年収235万円以下の65歳以上の夫婦世帯、114万円以下の独身者は所得税がかからないという。勤労者の25%がこのカテゴリーに当てはまる。

日本の課税最低額が低すぎることは、今までもしばしば指摘されている。325万円といえば、今のドル=90円なら36,000ドルになる。

アメリカではZIP CODE(郵便番号)ごとの地域情報データベースを提供するサービスがあり、その地域での平均給与などもわかる。

たとえば筆者が最初の駐在のときに住んでいたピッツバーグのマウント・レバノンという準高級住宅地と、オフィスのあったダウンタウン(中心街)の平均収入分布は次の通りだ。

15234income15219income

出典:http://www.city-data.com/zips/15234.html

マウント・レバノンの平均年収は46,000ドルなので、36,000ドルだとやや低い部類となるが、4割程度の住民が36,000ドル以下だろう。36,000ドルというと悪くない年収で、アメリカの課税最低年収は低いので当然税金を払っている。

ピッツバーグのダウンタウンの年収となると、平均は16,300ドルで7割程度が36,000ドル以下だ。住民も黒人と若い年代が圧倒的で、日本の課税最低標準では大半が無税となってしまう。

余談になるが、この地域情報データベースサービスでは、出身国別や人種別のデータが非常に充実している。やはり自分が住むとなると、その地域の雰囲気に関心が高いのは当然で、たとえばマウント・レバノンとダウンタウンを比較すると、同じピッツバーグでも人種構成に大きな差があることがわかる。

15234race15219race

出典:http://www.city-data.com/zips/15234.html

この辺りの事情は、以前紹介した筆者の先輩の小林由美さんの「超・格差社会 アメリカの真実」に詳しい。

「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しようはアマゾンのなか見!検索に対応しているので、目次を見ると大体の内容がわかると思う。

またアマゾンのクチコミで、読んだ人の多くがこの本につきコメントしているので、それも参考になると思う。

著者は年収約500万円の神戸市在住の59歳のサラリーマンで、副業としてイラストレーターをやっている。

いわゆる売れないイラストレーターではあるが、一人前のイラストレーターに変わりはない。

そしてイラストレーター業を自営業として、税務署に「開業届け」を出し、年間30万円程度ある収入から自営業に掛かった様々な経費や家事関係費*を引くと赤字となるので、自営業の赤字と約500万円の給与所得と一緒に確定申告すると、給与やイラストレーター報酬から源泉徴収された税金が還付されるのだという。

*家事関係費:自宅を営業用に使っている場合の家庭用と事業用の経費が一体となって支出された経費のこと。自宅の家賃や光熱費、電話代、車の燃料代、固定資産税、火災保険料などの3−4割を事業用の経費として申告するのだと著者は言う。

イラストレーターの報酬が少ないからといって雑所得(20万円まで申告不要)としては損益通算ができない。

給与所得と損益通算ができるのは、1.不動産所得、2.事業所得、3.譲渡所得、4.山林所得の4種類に限られているからだ。だから、あくまで事業所得として申告するのがミソだという。

著者がこの本を書いた理由は、本が売れて印税が入ってくればうれしいからで、他の無税の人に「無税入門」の発表で、先を越されたくないというのが本音だという。

要は副業をつくって、それを個人事業として開業届けを出し、確定申告して給与所得に対する所得税と住民税を減らせというのが、著者の主張である。

アマゾンのクチコミにも同じ意見が多いが、こんなループホールを税務署が野放しにするはずがないと思う。

いずれ実体を伴わない似非自営業者は税務否認されることになるだろう。

年収30万円のイラストレーター業で、90万円の経費があり、60万円の赤字というのは、どう見ても税金を減らすための方便にしか見えないので、いずれ税務署が網を掛けてくるのではないかと思う。

実体がないのに無理に個人事業にこじつけると税務署に目を付けられ、それが勤務先にも知れるリスクを考えると、59歳の定年間近なサラリーマンはともかく、普通のサラリーマンにはとても負えないリスクだと思う。

本の主張が、煎じ詰めればサラリーマンは自営業兼任となれというだけのことなので、税制の基礎を簡単におさらいする部分を付け足したり、橘玲、野口悠紀雄、森永卓郎の節税術をけなす部分もあったりで紙幅を使っているが、あまり内容はない。

本の帯には”税金払うの、もう、やめませんか?”とか、”全国5000万サラリーマンに贈る「無税のススメ!」”とか、”税金ゼロこそ、手間をコストのかからない、強力な生活防衛術の1つだ”とかいった挑発的なセールスキャッチが書いてあるが、決して真に受けないほうが良いと思う。

この本の挑発的なタイトルに惑わされず、あくまで実体として自営業と言えるほど副業での収入があれば税務署に開業届けを出して正々堂々と申告したら良いというのが筆者の結論だ。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。






  
Posted by yaori at 23:19Comments(0)TrackBack(0)

2008年05月23日

10年先を読む長期投資 澤上さんの長期投資のすすめ

10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書 108)


さわかみ投信の澤上篤人社長の長期投資のすすめ。

日本のファンドマネージャーの中でも澤上さんは長期投資の第一人者だ。

澤上さんは37年前から長期投資の実践を始め、現在はさわかみファンドという長期投資専門のファンドをつくって、サラリーマンなど一般人を中心に12万人が投資し、資産規模も2,000億円に達している。

長期投資は、経済指標、相場動向、企業の業績見通しなどはすべて無視する。そのかわり「将来どんな社会を築いていきたいのか」をひたすら考えて、将来像を実現できるような企業を選び出し、株主として支援する。

社会をよくすることができ、自分の収入も増えて豊かになるのが長期投資の目標だ。花や野菜が育つのを待つのと同じ非常にシンプルでマイペースである。

澤上さんは預貯金信仰は今も根付いており、たしかに預貯金利率が7%前後の時は、預貯金が確実な運用先だったが、今、預貯金では財産を食いつぶしてしまうと指摘する。

「バビロンの大富豪」のあらすじで紹介した通り、「自分のお金にも働いて貰う」ことが必要なのだ。

長期の株式投資は定期預金金利よりも高利回りで、複利で運用することで、お金にも働いて貰うのだ。

日本の貯蓄率は世界でも群を抜いて高いと言われてきたのは、昔のこととなってしまった。日本の貯蓄率は高度成長時代の1975年には23%に達し、おおむね10%で推移していたが、2000年代に入って下落し始め、2004年度にはなんと2.7%にまで下落している。これは1949年以来の低い水準だ。

給料が伸び悩んだことと、社会保障費負担がふえたことが貯蓄率下落の要因だ。

貯蓄するどころか生活費まで削って暮らす人たち、貯蓄を食いつぶしていく人たちが急速に増えているのだ。

株式会社の原型は、大航海時代に船に出資して数年後安全に戻ってくれば利益を配分するというものだ。これは現代の長期投資と同じ考えであると。

澤上さんの基本となる考え方は次の通りだ。

1.株価はいつも景気や業績に先行する
その理由はいつの時代でも投資家の心理が行き過ぎてしまうからだと。

2.景気のおおきなうねりを先取りする

3.みんなで豊かになることを意識する

4.暴落したらご機嫌で買う

澤上さんは村上ファンドショックで株が下落したときも、サブプライムショックで下落したときも大量に株を買ったという。

バブル崩壊の時も、澤上さんの様な長期投資家がたくさんいれば、買って買って買いまくることで相場の自律回復も呼び込め、土地や株価の下落にブレーキを掛けられたのではないかと語る。

事実アメリカでは2001年9月11日の後、取引再開の9月17日から一週間で14%下落したが、出来高は市場最高水準だった。売りが殺到して市場がパニックになっている状態で、長期投資家たちは大量の買いを入れてニューヨーク市場を支えたのだと語る。

長期投資の実践は次の通りだ。

1.5年先、10年先の社会が必要としているものを考え、それを供給しようとしていて応援したい企業を徹底的に考えて選び出しておく。

2.そういった企業の株を相場暴落等の時に思いっきり買う

3.あとはのんびり5年、10年待つ

4.景気が上昇段階に入って、株価が上がってきたら保有株の一部を売る
  →1.に戻る

長期投資をしたい企業を選ぶには、自分が将来どいう社会をつくっていきたいのか、子どもや孫をどんな社会に住まわせたいのかを考えて将来像を描き、それを実現してくれそうな企業を長期投資で応援するのだと。

たとえば高齢化社会の日本で、介護人口の不足が予想される場合には、介護ロボットをつくっている企業を長期投資で応援するとかだ。

よく経営者を見て判断するというアナリストがいるが、澤上さんは、そういうアナリストは傲慢なだけで、経営者にすれば失礼な話だと。経営者はアナリスト対策でなく、経営に徹して貰えば良いと。

長期投資の売り時は、景気のうねりに乗って上昇期に入り、そろそろ良いところに来たなと思った時だという。さっさと利益確定の売りを出すという。

街に人出が出て、活気づいたり、若い人でもお金を派手につかっていると感じたときに、そろそろ利食いしようと感じるという。

ただし持ち株のすべては売らず、2/3とか4/5ぐらいを利食うのだと。そしてその利益を使って、景気下降場面でまた同じ株を買うのだと。

長期投資には「損ぎり」はないが、「縁きり」はあると。見込み違いの場合には縁を切るのだ。

澤上さんは、2000年にブリジストンがファイアストンのリコール問題で最大顧客のフォードと対決したときも、3日考えて結局応援することを決め、株を買い増ししたという。


投資信託

投資信託は信託財産なので、安全性は預金よりも高い。あとは運用能力の問題だ。

3,000本もある投資信託から銀行などにすすめられるままに買っては、銀行が儲かるだけだ。

日本の個人資産に占める投資信託の割合は、2004年の2.1%から2007年9月には5%にまで上がってきた。しかしまだ米国の14.3%などに比べて低い。

アメリカやヨーロッパでも1980年代には投資信託は1%程度だったのが、インフレ下の不況が長期化して、預金だけに頼ってはまずいと思った人たちが投資信託に資金を振り向け、10%を超えたのだ。ちょうど今の日本の状況と似ている。

投資信託には販売手数料と信託報酬の2種類がある。

5年以上にわたって流入が流出を上回っているのは10本ちょっと。毎月のペースになると1本か2本だという。

投資信託は販売努力を重ねるものではなく、売れてしまう物だと澤上さんはいう。アメリカでは2005年では54%がノーロード型(販売手数料ゼロ)だと。

澤上さんの勧める投資信託の選び方は次の通りだ。

1.10万円ほどの資金を用意する

2.販売手数料の高い投信は外す

3.運用期間を設定していたり、継続投資ができなかったりする投信もはずす

4.運用している純資産額が安定的に増えている投信を中心に、これはと思う物を1万円ずつ10本ほど購入する。

5.体験してみたファンドの中に、長期投資を基本的な運用方針に据え、真に投資家の財産作りに貢献するというところが見つかれば継続投資していく。

この方法ならすぐにでもできるし、リスクもないと思う。

これがさわかみファンドの運用方針である。

アメリカにはインベストメントカンパニーオブアメリカという過去74年間の運用実績が12.8%というすごいファンドがある。これは販売手数料を5.75%取るが、普通はICAファンドを10年、20年保有するはずなので、販売手数料の5.75%なんて気にしないはずという理屈だ。

高い販売手数料を課すことで、短期投資家を足切りし、長期投資家だけを対象にして純度の高い資金を運用して大成功し、現在の運用資産は11兆円だという。

直接販売の投信会社がねらい目で、さわかみファンドもそうだという。

ありがとうファンドというありがとう投信株式会社が2004年に設定した長期投資型のファンドがある。

札幌、甲府、長崎、富山、水戸の有力税務会計事務所を母体として、地元の人々の財産作りをお手伝いするために設立されたのだと。

地元の会計士達と澤上さんがファンドオブファンズの形で世界に投資している。

クレディセゾンが運営しているノーロードのバンガード社のインデックスファンドと、ファンドオブファンズの2本も注目だという。

澤上さんは日本各地で講演しているが、一般人の投資家が増え、おらが町の投信をつくり、資金が地元企業に使われ、地域経済の活性化につながるというような理想型で、長期投資が民間版の景気対策につながることを望んでいると語る。

筋肉質の企業かどうか見極めるには付加価値分析を使えという。付加価値とは経費と経常利益をすべて足したもで、5年から10年の期間で見る。

これからのインフレの規模は70年代の数倍になると澤上さんは予測する。というのは70年代は世界の人口は40億人だったが、先進国の人口は7億人で、30億人近い人は社会主義の計画経済にいた。しかし今や世界の人口は70億人で、先進国は14億人、中国沿岸部やインド南西部などの発展著しい地域の人口を加えると20億人。残りの50億人弱も計画経済ではなく、先進国の生活を目指している。

だからあらゆるものが不足するのは目に見えている。世界規模のインフレが起こる。一方給料は上がらず、実質的な収入は下がることになる。

長期投資には今が最高のタイミングだと語る。最高に熱い夏になるだろうと。


最後に澤上さんは「長期投資は国語ですね」という言葉を紹介している。

「どう生きるのか」、「どのような社会を築いていくのか」といった人間としての意志や思い、価値観を反映させたものである。

「世の中思い通りにはいかない」という達観も長期投資を楽にさせてくれる。

投資運用の初心者向けに書いた本で、明日にでも実行可能だ。自社のさわかみ投信のことを全然すすめないのも好感が持てる。

まずは1万円で投信を何種類か買ってみようという気になる。

お金を銀行に預けず投資するなら、おすすめの一冊である。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします。


人気ブログバナー



  
Posted by yaori at 12:00Comments(0)TrackBack(0)

2008年05月06日

お金は銀行に預けるな 「実践」してはいけないベストセラー本

お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)


「10倍アップ」シリーズなどベストセラーを連発して一躍売れっ子になった公認会計士の勝間和代さんの資産運用入門。

自分のお金を銀行などに預金として預けておけば安全と思っていると、人生設計上のリスクになると勝間さんは語る。

お金に働いて貰うことを知らずに、本来なら得られるべき収入を放棄することを意味するからだ。お金に働いて貰うことについては、「バビロンの大富豪」のあらすじを参照して欲しい。

この本ではまず金融リテラシーの必要性について語り、次に金融商品の説明、実践、そして最後に金融を通じた社会的責任にまで言及する。

日本人が金融リテラシーが欠けているのは、学校教育で金融について学んでいないことと、社会人になっても忙しすぎて金融リテラシーを磨く時間がなかったことだと。

筆者もアメリカの高校で資産運用講座の教室を見学したことがあるが、アメリカではNCEEという経済教育協議会があり、小学校からの経済に関する教育について監督している。

高校では個人資産運用Personal Financeについての詳しい教科書が出されている。



アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書


アメリカの年金は、1978年に自分の年金資産を自分で運用できる確定拠出型年金401−Kが導入され、自分の年金を自分のライフスタイルやリスク許容度に応じて運用するのが当たり前になっているので、アメリカ人は金融に対する意識が高い。

筆者も米国駐在時に、アメリカ人の同僚と話していて、各種の投資信託について良く知っていることに驚いた経験がある。

日本でも2012年には適格退職年金制度が廃止され、確定拠出型の年金が増えてくると予想されている。自分たちで年金の運用方法を決めなければならなくなるので、よりいっそう金融リテラシーをつける必要が出てくるのだ。


この本のとおり「実践」してはいけない

この本は勝間さんがターゲットにしている若者や主婦、OLなどを対象にしているやさしい資産運用の本だ。

アマゾンでも売り上げ順位300位前後にランキングされているベストセラーだが、出版された昨年後半に、この本の通り「実践」したら間違いなく大きなやけどを被っている。

投資した時期にもよるが、たぶん損失は20%前後だろう。

勝間さんも本を書くことは大変な責任を負うことになることを、この本で実感しているのではないかと思う。

「お金は銀行に預けるな」という主張自体は、大前研一氏も「大前流心理経済学」で述べている様に、正しい提言だと思う。

しかし踏み込んで「実践編」でインデックスファンドでの資産の運用までファイナンシャルプラナーの様に提案しているので、市場の変化により結果が大きくマイナスになってしまっているのだ。


分散投資シミュレーションツール

新生銀行のサイトに勝間さんがこの本ですすめる国内株式、外国株式、国内債券、外国債券の4つのインデックスファンドへの投資リターンの推移が簡単に割り出せる分散投資シミュレーションチャートがあるので紹介しておく。

分散投資シミュレーション1






このシミュレーションの使い方は次の通りだ:

1.まずは投資金額を決定する。デフォルトは元金300万円で、毎月いくらか決めて投資するなら、毎月の金額をインプットする。

2.次に投資先の選択だ。国内株式、外国株式、国内債券、外国債券と、それぞれ1/4ずつのバランス型投資信託がデフォルトだ。自分で比率を調整できるし、不要な投資先は消すことができる。

3.次に期間の設定だ。下の3.のメーターをスライドすることによって、期間が決定できる。デフォルトは1969年から2007年の38年間だ。

たとえばこの本が出版された2007年10月末から12月末までの2ヶ月のリターンは次のグラフの通り、すべての投資運用がマイナスになっている。国内株式が最悪でマイナス12%。4分割投資でもマイナス8%となっている。

分散投資シミュレーション2ヶ月






筆者がこの本を「実践してはならないベストセラー本」と呼ぶゆえんだ。


この本ほど考えさせられた本はない

この本ほど考えさせられた本は最近ない。

第一に、本に書いた内容が陳腐化することのリスクだ。

この本では勝間さんはノーロード(信託手数料ゼロ)の国内株式、外国株式、国内債券、外国債券のインデックスファンドへの分散投資を手始めにすすめている。

この本は2007年11月の出版で、勝間さんが書いたのはたぶん2007年の半ばだろう。

次がここ5年間の日経平均株価の推移だ。

5年間の日経平均推移






2007年半ば当時は日本株はバブル後の最高値を付けており、サブプライム問題がきっかけで世界同時株安が進むとは誰も予想していなかった。

株式相場が順調に伸びる時はインデックスファンドはリターンが上がるが、相場が今回のように急落すると国内株式のインデックスファンドの1年間の運用益は、惨憺たる結果になる。

外国株式のインデックスファンドも国内株式ほどではないが10%前後下落している。

日経VS外国株





債券の投資信託も下落というように、昨年後半にインデックスファンドを買っていれば、すべてが原価割れしているはずだ。

日経VS債券





つまり勝間さんの言っている通り実践した場合、短期間で20%前後財産を失うことになったはずだ。

いまだにこの本は売れているが、株式相場が下がった今ならこれ以上下落するリスクは少なくなってきている。

またドルコスト平均法といって毎月一定金額を投資して、相場変動リスクを逓減する方法をすすめているので、勝間さんとしてはちゃんと説明したつもりなのかもしれない。

しかし、昨年末にこの本を鵜呑みにしてインデックスファインドを買った人は大やけどを負っているはずだ。


第二に、個人が短期収益をねらって投資する場合のリスクの大きさだ

筆者は資産運用の基本的な考え方として、近い将来のことは予測できないが、10年先のことなら誰でも大体予測が可能だと考えている。

ゴールドマンサックスの2050年までの各国のGDP予測は、その実現時期はともかく、誰もが認めるところだろう。

GS見通し






日本の人口動態の推移は、この国が残念ながら活力を失う様を冷徹にあらわしている。

人口動態調査







その国の経済の相対的競争力が強ければ、おのずと為替も強くなる。

経済が発展し、高い成長率が維持できれば、為替と高成長でダブルで国のGDPは上がり、それにつられて株式市況もあがる。

日本経済は向こう15年以内に中国に抜かれ、25年以内にインドにも抜かれる。日本人なら信じたくないシナリオだが、この人口動態を見たら国としての活力が失われているのは明らかだろう。

長期的な予測なら、素人も玄人も変わりはない。

世界1の大富豪のバフェットも、アラビアのバフェット、アルワリード王子も、株が安い時に買って、ひたすら持ち続けるバリュー投資家だ。

筆者のすすめるファイナンシャルインテリジェンスはバッフェト流、アルワリード流の長期投資だ。

たとえば過去1年の日経平均とアジアオセアニア株の投資信託の値動きを比較してみよう。

日経VSアジアオセアニア株





下がってはいるが、決して一本調子で下がっているわけではない。

さらに日経平均と中南米株の投資信託の値動きを見てみよう。

日経VS中南米株






こちらは同じ期間で、値上がりしていることがわかる。

筆者も勝間さんの言うように、素人は投資信託を重視することは賛成だ。

しかし株式の売買単位が下がってきているので、数十万円で株を買うこともできるし、株なら運用手数料は不要で、今の株価水準なら多くの企業の配当利回りは預金金利より高い2%前後である。

株式投資ではプロは素人をカモにするというのは正しいと思うが、プロがいつも勝つわけではない。いつも勝つなら、プロは全員大富豪でなくてはならないが、そんなことはない。

勝間さんの言うように「退職金が入って、自分で株で資産運用しようとする人も多いが、プロにボコボコにKOされるのがオチ。株式は、プロが得して個人が損する世界で、個人が次のGoogleをめざして成長株を買うことはギャンブルと同じ」だとは思わない。

短期売買にこだわらず、前述のバッフェトやアルワリードのように、これから高成長を遂げることがほぼ確実な国や企業に投資をして、長期投資と考えて"Buy and Forget"すれば良いと思う。


第三に、このあらすじブログに載せるべき本のセレクションについて考えさせられた

このあらすじブログには毎日200名前後の方が訪問されている。

人気ブログバナー多くの皆さんに文末の「ブログランキング」をクリックして頂いているので、ランキングも日本でトップ30−50位に入ることが多い(5月2日現在では38位だ)。

多くの訪問者がこのブログに期待されていることは、たぶん(1)わかりやすく正確なあらすじ(クオリティ)、(2)読みたい本のあらすじが掲載されているかどうか(品揃え)、(3)良書の紹介(リコメンデーション)だと思う。

筆者は一人の作者の本を読み出すと、その人の書いた他の本や、その人がリコメンドする本を集中的に読む。

このブログでも紹介している「本を読む本」で紹介されていた「シントピカル読書」だ。

作者を多面的に理解し、書いている内容を頭にたたき込むのと、その内容の確かさを評価するためだ。

勝間さんに限らず、最近の仕事効率を上げるシリーズ物もそれぞれ数冊読んでいるが、どれも似たような内容なので、はたして時間を掛けて、いちいちあらすじを書いていて良いのかという疑問がわいてきた。

人生は短く、一生に読める本の数は限りがある。筆者はまだまだ勉強が足りない。もっと良い本を読まなければならない。

たとえば町田図書館で「著者=松下幸之助」で検索すると81冊もの本があるが、筆者は松下幸之助の本はまだ4冊しか読んでいない。

カーネギーの本は4冊、ドラッカーの本に至っては結局1冊も完読できていないのに、例に出して悪いが、ぽっと出の勝間さんの本を5冊も読んでいるのはどうなんだ?と思ってしまう。

当たり前のことだが、time-testedな良書は1年間に何冊も書ける訳がない。

人気に乗じて売れるだけ売れという姿勢で、異なった出版社から短期間に何冊も本を出している作者には、一般論として気を付けた方が良いだろう。


勝間さんへのエール

あらすじブログが今回は書評ブログになってしまい、この内容をブログに載せるかどうか正直迷った。

筆者はポリシーとして本の批判はしないことに決めている。本の批判をネットに載せて鬱憤を晴らすよりは、そんな本は無視してブログに載せない方がよほど精神的にも良いし、大人の対応だ。

それでもあえてこのような書評ブログになってしまったのは、上記の筆者自身の自己批判も含めて、大いに考えさせられる本だったからだ。

この本には読者への気配りも、仕事(著作)への愛情も感じられない。

勝間さんの愛読書リストには松下幸之助の本が一冊も載っていないが、最後に筆者の「座右の書」であり、発刊以来40年間ベストセラーを続けているTime-testedな名著の代表の松下幸之助の「道をひらく」の一節を紹介して、勝間さんへの応援のエールとしたい。

2008年5月5日現在、勝間さんのこの本はアマゾンのランキングでは280位で、なんと松下幸之助の「道をひらく」はそれよりも上の229位だ。

道をひらく


世間というもの ― 松下幸之助「道をひらく」より

世間というものは、きびしくもあるし、また暖かくもある。そのことを、昔の人は「目明き千人めくら千人」ということばであらわした。いい得て妙である。世間にはめくらの面もたくさんある。だから、いいかげんな仕事をやって、いいかげんにすごすことも、時には見のがされてすぎてしまうこともある。つまりひろい世間には、それだけ包容力があるというわけだが、しかしこれになれて世間をあまく見、馬鹿にしたならば、やがては目明きの面にゆき当たって、身のしまるようなきびしい思いをしなければならなくなる。

また、いい考えを持ち、真剣な努力を重ねても、なかなかにこれが世間に認められないときがある。そんなときには、ともすると世間が冷たく感じられ、自分は孤独だと考え、希望を失いがちとなる。だが悲観することはない。めくらが千人いれば、目明きもまた千人いるのである。そこに、世間の思わぬ暖かさがひそんでいる。

いずれにしても、世間はきびしくもあり、暖かくもある。だから、世間にたいしては、いつも謙虚さを忘れず、また希望を失わず、着実に力強く自分の道を歩むよう心がけたいものである。



参考になれば次クリック投票お願いします。


  
Posted by yaori at 08:52Comments(1)TrackBack(0)

2008年04月10日

スタバではグランデを買え! 身近な経済学 

スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学


キャッチーなタイトルでベストセラーとなっているので読んでみた。アマゾンの売上ランキングでは依然として500位前後に入っている。

このブログでも紹介している山田真哉さんのさおだけ屋はなぜつぶれないのか」や「食い逃げされてもバイトは雇うな」の路線をねらった日常生活で目にする様々な価格設定をわかりやすく解説した本だ。

著者の吉本佳生(よしお)さんは、南山大学や、名古屋市立大学で講座を持っている経済学者だ。

目次は次の通りだ(アマゾンのなか見検索でも目次が見られる):

第1章 ペットボトルのお茶はコンビニとスーパーのどちらで買うべきか?

第2章 テレビやデジカメの価格がだんだん安くなるのはなぜか?

第3章 大ヒット映画のDVD価格がどんどん下がるのはなぜか?

第4章 携帯電話の料金はなぜ、やたらに複雑なのか?

第5章 スターバックスではどのサイズのコーヒーを買うべきか?

第6章 100円ショップの安さの秘密は何か?

第7章 経済格差が、現実にはなかなか是正できないのはなぜか?(所得より資産格差のほうが問題)

第8章 子供の医療費の無料化は、本当に子育て支援になるか?

終章  身近な話題のケース・スタディ
(1) 日本の石油製品輸出が増えているのはなぜか?
(2) 牛肉をステーキ屋と焼き肉屋のどちらで食べるか?
(3) 家具の組み立てと運送は、どちらを先にすべきか?
(4) 子供を持つ親が喜ぶサービスとは?
(5) 携帯電話料金の話Part2
(6) アジア製の安いCDは、日本の音楽文化の敵だったのか?

種明かししてしまうと興ざめなので、詳しくは説明しないが、山田真哉さんの本にある「さおだけ屋」とか、「食い逃げ」とかいった意外性を含んだインパクトはない。

そのかわりに経済学者らしく、手間や人件費を含めた「取引コスト」とか、「裁定(=アービトラージ=さや取り)」、「物流コスト」、「規模の経済」、「価格差別」、「限界コスト」などを実例を使って説明している。

情報として役立った部分をいくつか紹介しておく。

ダイソーはアルバイトにレジまでやらせるが、商品の棚卸を定期的にやって1%以上のロスが出れば、アルバイトを解雇できるという厳しい契約を結んでいる(もともとは週刊東洋経済2006年1月21日号)。

100円ショップの供給元として、中国の浙江省の義烏市が日用雑貨の世界的な供給拠点となっている(吉本さんは現地を訪問したので、現地レポートも面白い)。

携帯電話は、本来はSIMカードを入れ替えればどこのキャリアの携帯電話でも使えるはずのものが、日本ではSIMロックのために他社の携帯電話として使えない(あるいは周知の事実かもしれないが、筆者は知らなかった)。


スタバではグランデを買えというのは、スタバではショート(240CC)とグランデ(480CC)の価格差はどれでも100円なので、グランデの方が割安だ。

一方、増量分の原材料費はしれているので、店もグランデを売った方が儲かるというものだ。

もっとも筆者はショートでも量は十分と思っており、量が多ければしまいにはさめてしまうので、この本を読んでグランデを買おうという気にはならなかったが、人によってはグランデに変える人もいるだろう。

図も使われているが、どちらかというと「ことば地図(コンビニの角を右に曲がって、2本目の道を左に曲がって…のたぐい)」の様に、文章で数ページにわたって説明されているので、山田真哉さんの本の様にテンポ良く頭に入ってこないのが難点といえば難点だ。

簡単に読めるので、上記の目次の項目に興味を惹かれた人は一読をおすすめする。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします。


人気ブログバナー



  
Posted by yaori at 02:07Comments(0)TrackBack(0)

2008年03月27日

バビロンの大富豪ととなりの億万長者

バビロンの大富豪―「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか


レバレッジシリーズの本田直之さんだったろうか、誰かが「本200%活用ブック」で推薦していたので読んでみた。

仕事に活かす!本200%活用ブック


日本語版は2000年3月の出版だが絶版となっており、アマゾンのマーケットプレースでは定価1,500円の本がなんと8,000円前後の値段がついている。

単純だが役に立つ成功の法則をバビロンの大富豪という寓話の形で紹介しており、筆者も大変気に入ったので、読んでから英語のオーディオブックを購入した。

バビロンにちなんで、昔のヒット曲のBoney Mの"Rivers of Babylon"を久しぶりにYouTubeで検索して聞いてみた。



ちなみにこのミュージックビデオの舞台はバビロンではなく、おそらくジャマイカのオチョ・リオス(Ocho Rios)だと思う。

英語の原著は2007年に改訂版が出ているので、翻訳が絶版になっているのは、あるいは現在改訂版を翻訳中なせいかもしれない。

英語を現代風に直した改訂版でも出ているので、ペーパーバックあるいは、オーディオブックもお薦めする。

Richest Man in Babylon


英語に抵抗がある人は、是非日本語版を図書館で借りて読んで頂きたい。


1926年出版の本が今でも米国アマゾンの人気ランキングトップクラス

この本は米国の出版社社長のジョージ・クレイソンという人が、1926年にパンフレットとして蓄財について書いた古代バビロンの寓話が保険会社や銀行などで配られるようになり、一躍有名になったので本として出版したものだ。

クレイソンは米国ではじめてロードマップを出版した地図出版社も経営していたが、皮肉なもので彼の地図出版社は大恐慌を生き延びることができなかったという。

英語の"The Richest Man in Babylon"は、英語のWikipediaにも説明があり、いままで2百万部が売れたベストセラーだと紹介されている。

たしかに米国アマゾンの売上ランキングでは全体で425位、Business & Investing > Personal Finance > Money & Valuesでは2位となっている。 ちなみに筆者のおすすめのカーネギーの"How to win friends and influence people"(「人を動かす」の原著)は全体で115位、Business & Investing > Skills > Communications分野で1位だ。

この本の推薦人の一人は、デール・カーネギー研究所の副所長で、「本書は、現代ビジネスの極意を分かりやすく解き明かした名著であり、あらゆる人にとって重要な一冊である。」としている。


バビロンの寓話というストーリーで記憶に残る

この本はバビロンの戦車職人のバンシアが、働いても働いても暮らしが楽にならないので、バビロンで最も裕福なアルカドに話を聞きに行くというストーリーから始まる。

アルカドは昔は市庁舎で粘土板に文字を刻みつける書記だったが、金貸しのアルガミシュに金持ちになる方法として「稼いだものは、すべてその一部を自分のものとして取っておくことだ」と教えられた。

教えはたったそれだけだったので、アルカドは教えを実行して、1年間お金を貯めて、煉瓦造りの友人に頼んでフェニキア人の宝石買い付けに投資したところ、すべて金をすってしまった。

アルガミシュは1年後来て、煉瓦造りの職人が宝石の鑑識眼などないと指摘した。

アルガミシュはまた翌年来た。今度はアルカドは青銅を買う資金として楯作りの友人に貸してあり、利息を4ヶ月ごとに受け取っていると答えた。

しかしその利息でアルカドは、ごちそうや晴れ着を買っていると答えると、アルガミシュは、「お金の子供が生まれたら、その子供がまた子供を生んで、それがまたお前のために働くようにするのだ。”お金の奴隷”の大群を確保するのだ。」と教えた。

今度は2年間アルガミシュは来なかったが、次に来たときはアルカドは「お金はさらにお金を稼いでいて、その儲けがさらにまた稼いでくれています。」と答えた。

アルガミシュは、アルカドが”金の稼ぎ方”、”稼いだ金の守り方”、”稼いだ金の使い方”をマスターしたとして、アルカドを新しい土地開発の共同経営者に起用した。

友人たちがアルカドのことを運が良いというと、アルカドは運が良かったのではない、「成功したい」という強い欲求を抱いていたからだと答えた。


富をもたらす「黄金の7つの知恵」

アルカドはバビロニア王の求めに応じ、次の「黄金の7つの知恵」を住民に教える。

1.サイフを太らせることから始めよう 10枚のコインがあれば使うのは9枚までにする

2.自分の欲求と必要経費とを混同すべからず 「必要経費」は必ず収入と等しくなるまで大きくなるものだ

3.貯めた資金は寝かさずに増やすべし

4.損失という災難から貴重な財産を死守すべし

5.自分の住まいを持つことは、有益な投資と心得よ

6.将来の保障を確実にすべく、今から資金準備に取りかかるべし 

7.明確な目的に向かって、自己の能力と技量を高め、よく学び、自尊心を持って行動すべし

  さらに自尊心のある人間であれば、次のことを守らなければならないとアルカドは教える。

(1)借金は能力の及ぶ限り、なるべく早く返すこと
(2)支払い能力を超える買い物はしないこと
(3)家族の面倒を見て、家族から慕われ、尊敬されるように努めること
(4)遺言書をきちんと作っておくこと
(5)親しい人には思いやりのある態度で接すること


アルカドはさらに「幸運の女神は行動する人間にしか微笑まない」と語り、優柔不断な人間には幸運はやってこないと語った。受講者は自分の経験を語り、ギャンブルで儲け続けた人はいないこと、自分たちも優柔不断から大きく儲けるチャンスを失ったことが多々あることを口々に報告した…。

このような具合に、古代都市バビロンでの寓話という形で単純で記憶に残るストーリーが展開されている。

整理すると、

(1)収入の一部を投資に回し
(2)金利や配当なども消費せずに再投資に回す
(3)そしてそれを強い意志で継続する
(4)消費は押さえ
(5)身の程を超えた借金は背負わない

と言うことになる。

筆者も家を買うまでは、この教え通り行動していたが、結婚して家を買ったことから借金を抱えてしまったので、忸怩たるものがあるが、今からでもやれることはやろうと思う。


「となりの億万長者」の教え

同じような分野で、やはり本田さんだったか、誰かが「本200%活用ブック」で推薦していた本に「となりの億万長者」がある。

となりの億万長者―成功を生む7つの法則


こちらの本は現代版だが、アメリカの億万長者を調べてみたら次のような7つの法則が見つかったというものだ。

1.彼らは、収入よりはるかに低い支出で生活する(金持ちであることが目立たない)

2.彼らは、資産形成のために、時間、エネルギー、金を効率よく配分している

3.彼らは、お金の心配をしないですむことのほうが、世間体を取り繕うよりもずっと大切だと考える

4.彼らは、社会人となった後、親からの経済的な援助を受けていない

5.彼らの子供たちは、経済的に自立している

6.彼らは、ビジネス・チャンスをつかむのが上手だ

7,彼らは、ぴったりの職業を選んでいる


バビロンの大富豪もとなりの億万長者も、どちらの教えもかなり共通する部分が多い。

以前紹介したブライアン・トレーシーが「フォーカルポイント」で説明していたとおり、億万長者になるのは、想像以上に簡単だ。

毎月100ドル(1万円)を年率10%くらいの投資信託に投資し、リターンを再投資して、これを20歳から65歳まで45年続けると100万ドル以上になる。

優柔不断では幸運のチャンスをつかめない。筆者も肝に銘じてファイナンシャリースマートになるべく、バビロンの大富豪の教えを活用していくつもりだ。

単純な教えで、スッと頭にはいる。是非"Rivers of Babylon"を聞きながら一読をおすすめする。


参考になれば次クリックお願いします。


人気ブログバナー



  
Posted by yaori at 00:30Comments(0)TrackBack(0)

2007年05月07日

マネーロンダリング入門 パーペチュアルトラベラーの提唱者 橘玲さんの近著

マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)
マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)


以前紹介したベストセラー「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」の著者橘玲(あきら)さんの近著。「お金持ちになれる…」では賢く(スマートに)生活するために様々なヒントが紹介されていた。

橘さんは、パーペチュアルトラベラー(永遠の旅人)ーつまり頻繁に各国を旅行して課税基準となる180日以上はどの国にも滞在しないで、どの国にも納税義務を負わない生活ー の提唱者だ。

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門
お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門



元々橘玲さんはデビューも小説「マネーロンダリング」だったので、マネーロンダリング話は得意中の得意といったところだろう。

この本では、カシオの3,000万ドル外債投資詐欺事件や、ライブドアの粉飾決算のための株価操作事件などの手口を調査して、詳細に紹介している。


ライブドア粉飾決算事件

たとえば次の写真の図がライブドアが自社株価をつり上げて、利益を計上するために仕組んだ粉飾決算のフローだ。

一見して何がなんだかわからないと思うが、要はライブドアが預金を担保にクレディスイスから88億円ホリエモンの個人会社エバートンエクイティに融資を受ける。その金でJMAM(投資組合)の保有するライブドア株1,260万株を市況を上回る¥700で購入する。

この取引でJMAMに30億円の利益が生じるので、それの大半をライブドアに配分して利益を計上するというものだ。

ライブドア相関図







ドル取引はすべて当局に筒抜け

国際送金取引は、コルレスと呼ばれる銀行間ネットワークを通じて、A銀行からB銀行に送金される。

その送金情報はSWIFT(The Society for World-wide Interbank Financial Telecommunication)というブリュッセルに本拠を置く金融機関の協同組合を通して各銀行に伝えられる。

たとえば三井住友銀行の略号はSMBCJPJT、三菱東京UFJはBOTKJPJTだ。

このSWIFTの送金情報を抑えれば、誰から誰に送金されたのかすべてトレースできる。

2001年9.11のワールドトレードセンター事件で、多くの仲間を失ったウォール街の経営幹部が、テロ資金の解明にやっきになっている捜査当局にその存在を教え、米財務省が第2のテロ攻撃を防ぐためという理由で、SWIFTから情報を入手したのだ。

SWIFTには米系金融機関の関係者も多く、9.11の異常な雰囲気の中で、OKしたものだ。

この送金情報は宝の山で、麻薬取引や脱税などのマネーロンダリング送金もすべて調べようと思えば調べられるが、あくまでテロ情報のみと限定してスタートしたのだった。

その後SWIFTは情報提供を止めることを申し入れるが、2003年グリーンスパンFRB議長も出席したといわれるホワイトハウスとの会議で、SWIFTの代理人が調査に立ち会い、不正な利用を監視するという条件で、引き続き情報が提供されることになり、現在に至っている。

つまり国際送金取引は「天網恢々疎にして漏らさず」状態となっているのだ。

だから動かぬ証拠があるので、2003年以来ミャンマー、シリア、ラトビア、イランなどの銀行が金融制裁を受けている。

マカオのバンコ・デルタ・アジアの北朝鮮関連口座が、偽ドル紙幣を使ってのマネーロンダリングで金融制裁を受け、この口座凍結を解除するために米朝金融交渉が開かれていたことは記憶に新しい。

アメリカが資金の流れをすべてつかんでいるので、新たな資金源を絶とうとすれば、いつでもできる状態にあり、北朝鮮の首根っこはアメリカに握られているのだ。

国際テロ、マネーロンダリングを秘密裏に行うためには、もはや現金を動かすしかなくなっているのだ。


ローマ法王庁とバチカン銀行を巡る黒い噂

以下はこの本のあらすじだが、正直筆者にはまるで映画のストーリーの要で、信じられない話だ。橘さんの話を信じるかどうかは読者の判断にお任せする。

カトリックから「悪魔の子」と呼ばれ、異端扱いされているフリーメーソン リーチョ・ジェッリがつくったP2(プロパガンダ2)と呼ばれる秘密結社が、ローマ法王庁にも着実にネットワークを延ばしていた。

NO.2の国務長官をはじめ、バチカンにも多くのフリーメーソンが居ることに驚愕し、フリーメーソン一掃を決意したヨハネパウロ1世は、その決意から数日後に原因不明の死を遂げた。

さらにバチカンが関与する不正な金融取引を調査していたイタリア検察、弁護士、警察官が謎の死を遂げる。

バチカン銀行はローマ法王庁の資金運営をしているが、P2のネットワークに浸食されており、麻薬や武器輸出のマネーロンダリングに関わっているという。

カトリックの最大の敵はマルクス・レーニン主義で、バチカンのお膝元のイタリアでさえ共産化の危機にさらされていた。バチカンはマネーロンダリングで15%の手数料を取り、そして得た資金で反共団体を支援していたのだという。

CIAやマフィアとは反共の理念で一致していたのだと橘さんは語る。


BCCI 犯罪銀行

パキスタン人アガ・ハサン・アベディが設立したBCCI(Bank of Credit and Commerce International)はアメリカ、ヨーロッパ、中東などに支店網を展開する国際銀行だったが、1991年に突然破綻する。

BCCIは犯罪銀行と呼ばれ、独裁者や汚職政治家、マフィア、武器商人たちのあらゆる要望に応えられる体制をつくり、巧妙なマネーロンダリングサービスを提供していたのだという。


ブラッドダイヤモンド

デカブリオ主演で映画でも話題になったブラッドダイヤモンド

西アフリカシェラレオネで1970年代から始まったダイヤモンド生産のことだ。

シェラレオネの独裁者チャールズ・テーラーはダイヤをベルギーで売却し、その金で旧ソ連から武器を買いあさった。その資金源となったダイヤモンドはブラッドダイヤモンドと呼ばれた。

テーラーはSBU(Small Boy Unit)と呼ばれる少年兵を組織して、麻薬漬けにして忠誠のあかしとして家族を殺させ、殺人兵器として洗脳していく。

シェラレオネやライベリアなどの国では部族間の抗争が激化し、内戦状態にある。

アルカイダはそのブラッドダイヤモンドを買い上げ、グローバルなマネーロンダリング網をつくりあげたといわれている。


相続税をゼロにする方法

日本の相続税の高さというより、そもそも相続税があるということが、世界では例外になりつつある。

カナダやオーストラリア、ニュージーランドは相続財産に課税しない。明白な二重価税なので、アメリカでも2010年に向けて遺産税の税率をゼロに向かって引き下げることになっていると。

以前は子供が相続税のない国に居住していれば、財産を海外に移すだけで合法的にすべての相続(贈与)税が非課税になった。

プライベートバンクは資産家の子女にアメリカ国内で勤務する仕事を紹介する、ついで贈与すべき財産をドルに換えて米国債を購入し、贈与する。シティバンクのプライベートバンクは資産家部門は、この手法を日本の富裕層に大々的に売り込んだという。

だから2000年4月の租税特別措置法の改正で、贈与者と受贈者がともに5年以上海外に居住していなければ相続税の課税対象となることになった。

しかし新たな変化が起こっている。年金世代の海外移住の増加である。

東南アジア諸国は団塊世代をターゲットにしている。

マレーシアのMMSH(Malaysia My Second Home)プログラムでは50歳以上の夫婦が毎月1万リンギ(30万円)以上の収入がある場合、15万リンギを定期預金するだけで長期滞在者向けのビザが発給される。

フィリピンの特別居住滞在者ビザでは5万ドル以上をフィリピン国内の株式などに投資することだけだ。

資産1億円以上の富裕者はオーストラリア、カナダ、香港などの選択肢がある。

海外移住のハードルが低くなってくると、相続人・被相続人ともに5年以上非居住者であることという条件を簡単にクリアーできるようになってくる。

村上世彰氏がシンガポール移住を目指したように、税金を払いたくない人はいつでも日本から出て行くことができるのだ。


橘さんの綿密な調査に基づいた新鮮な指摘は参考になる。一部真偽のほどは疑問な部分もあるが、簡単に読め参考になる本である。



参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします。


人気ブログバナー



  
Posted by yaori at 23:25Comments(0)TrackBack(0)