2020年07月09日

池上彰の世界の見方 朝鮮半島 朝鮮半島情勢を理解するために



+++今回のあらすじは長いです+++

池上彰さんの「世界の見方」シリーズの朝鮮半島編。中田敦彦さんのYouTube大学でも取り上げられていた(次の第1回講義の25:20頃に池上さんの本の紹介がある)。





「世界の見方」シリーズは、現役高校生に対する授業をまとめたもので、今回は都立西高の生徒への講義録だ。「内在的論理」として、その国について筆者もこれまで知らなかったドライビング・フォースが紹介されていて参考になる。

いくつか紹介すると。

★北朝鮮建国の父、「偉大な領袖・金日成同士」と呼ばれる金日成の実像と公式伝記の比較表が参考になる。本名・金成柱が、ソ連の後ろ盾もあり「抗日運動の英雄・金日成」を名乗る。

金日成実像














































出典:本書63ページ

★農業のことを知らない金日成は、毛沢東の大躍進政策と同じような大間違いの農業政策を指示する。それにより、トウモロコシ栽培用の段々畑をつくるために、北朝鮮の山の木は切り倒されて、はげ山となり、洪水が頻発した。栽培したトウモロコシは悪天候に弱く、収穫できず、飢饉が発生した。また、洪水により運ばれた土砂は、北朝鮮の良好な近海漁場を埋め、沿岸漁業も壊滅状態になるという最悪の結果をもたらした。

★韓国にも建国神話がある。1910年の日韓併合後、1919年3月1日に朝鮮半島で200万人が日本の支配に反対して暴動を起こしたが、朝鮮総督府に制圧される(「3.1独立運動」。その後、日本統治反対派が上海に逃げ、中華民国の支援を得て「大韓民国臨時政府」を組織する。この抗日運動で日本と戦った「大韓民国臨時政府」の正当な後継者が「大韓民国」なのだと。

★1965年朴正煕大統領との間で「日韓基本条約」と「日韓請求権並びに経済協力協定」が締結される。締結後、日本は3億ドルの無償供与と2億ドルの借款を実施した。これが「漢江の奇跡」と呼ばれる韓国の経済復興に役立った。日本と韓国は一度も戦争をしていない。だから賠償金ではなく、経済協力で支援するという建前をとったのだ。これにより日本側は請求権問題は、「完全かつ最終的に解決した」という立場を取っているが、請求権協定には、「この協定をめぐって何か意見の相違があった時には、再び交渉する」という項目も入っているという。

★韓国の憲法裁判所が、李明博大統領時代に、慰安婦問題で日本と交渉しないのは憲法違反であるという判断を出しているので、韓国の政治家としては、それに従わなければならないのだと。池上さんは、少し突っ込んで慰安婦問題はどの国の軍隊にもあったこと、ソ連はスターリンの指示で、慰安婦を用意しなかったので、ソ連兵は占領地すべてで強姦・略奪と狼藉の限りを尽くしたことなどを説明している。

★池上さんは、ナチスの被害にあった国とドイツとの間では、「許そう、しかし忘れない。」という関係があるのだと。かつて、シンガポールのリー・クアンユーも同じように語った。日本と韓国も、将来的にそう言ってもらえるような関係が望ましいのだろうと池上さんは語っている。

★1960年代のスターリン批判後の中ソ対立とキューバ危機により、北朝鮮は自国は自国で防衛するという決意を固め、核兵器とICBM開発を始める。キューバ危機で、ソ連はもし核戦争の危険が迫ると、自国が大切で、周りの国を見捨てるので、いざ核戦争になった時に守ってくれる保証はない。だから、自分で守るのだと。

★金日成死後、金正日が引き継いだ後は、「先軍政治」というスローガンを掲げ、すべてにおいて軍が優先し、北朝鮮はテロ国家そのものだった。この本では、「1968年の青瓦台襲撃未遂事件」、「1983年のラングーン事件」、「1987年の大韓航空機爆破事件」、「1996年の北朝鮮潜水艦座礁事件」、日本人拉致事件、「よど号ハイジャック事件」が紹介されている。

ちなみに、池上さんは言及していないが、青瓦台襲撃未遂事件に対する韓国の報復工作が映画「シルミド」で取り上げられている1971年の実話だ。

シルミド/SILMIDO [DVD]
ホ・ジュノ
アミューズソフト
2006-06-23


この時期、1970年には「金大中事件」も起こっている。韓国も無茶なことをしている時代なのだ。

★日本人拉致事件

この本では、日本政府認定の17人の拉致被害者リストを掲載している。北朝鮮が入国を認めていない人もいるし、横田めぐみさんなど、既に死去していると北朝鮮が主張している人もいるが、決して忘れてはならないリストだ。

日本人拉致被害者









































出典:本書142ページ

★韓国の若者が、腐敗した李承晩政府を倒した1960年の「4.19革命」が、歴史的な成功体験となっている。

不正選挙に怒った大学生・高校生数万人が大統領官邸を包囲、抗議のデモを行う。運動は全国に広がり、李承晩は警官隊を導入、4月19日だけで、全国で186人が射殺され、6000人を超える負傷者が出た。政府は戒厳令を発令、軍隊の出動を要請するが、軍隊は動かず、李承晩はハワイに亡命した。これが「4.19革命」だ。

この本では、韓国の歴代大統領のリストが掲載されている。李明博元大統領と、朴槿恵前大統領については、それぞれ著書や関連書のあらすじを紹介しているので、参照願いたい。

大統領退任後逮捕されたり、自殺したりと、受難者のリストの様だ。

歴代韓国大統領










































出典:本書188ページ

★テレビの取材で2回北朝鮮に行ったことがあるという池上さんの体験談が面白い。10年ほど前にピョンヤンに行き、6年ほど前には軍事境界線近くの開城(ケソン)まで行ったという。

北朝鮮は、基本的には旅行者にはピョンヤンしか見せない。ピョンヤンは、映画のセットの様な街だという。表向きは高層ビルが立ち並ぶ都会だが、裏に回ると壁もちゃんと塗ってなかったりする。

必ず2人の案内人がつき、25階建ての高層アパートに案内されたという。

ピョンヤン市内








出典:Wikipedia

★エレベーターは、外国人に見せるためだけに運転しており、住民は普段は階段で上り下りする。取材した高層アパートの住人に、テレビディレクターが「水道の水は出ますか」と失礼な質問をしたので、池上さんはドキッとしたが、奥さんは「水は出ますよ。一日2回」と答えたという。

外国人が宿泊できるホテルは2か所しかなく、部屋は壁の片方が全面鏡張りになっている。マジックミラーで常時監視されているのだ。

★北朝鮮では国民を階層分けしており、最上位は「核心階層」(25%)で、政権に対して忠実な人たち、「核心階層」だけがピョンヤンに住める。次は「動揺階層」(55%)で、インテリや日本からの帰国者など。体制に忠誠を誓っているが、必ずしも信用できないので、監視対象。

下位が「敵対階層」(20%)で、日本統治時代に日本に協力していた人たちとその子孫、元大地主などで、特別監視対象であり、僻地への強制移住、配給停止(ピョンヤン以外の地方には配給はない)などを強いられており、飢饉で餓死する人はこの階層が多い。現在は、これら3つの階層をそれぞれ、64以上にさらに細かく分けているという。

★朝鮮戦争が勃発し、北朝鮮が攻めてきて、一気にソウルを占領し、韓国軍・米軍が釜山付近に押し込まれた原因の一つは、北朝鮮軍はソ連から貸与された250両の戦車があったが、米軍は山の多い地形の韓国には不適だとして、戦車は一台も配備していなかったことだった。

朝鮮戦争に関しては、ドキュメンタリー映画がYouTubeで公開されている。前編後編で90分の映画だ。





★ソウルにある米軍基地は、北朝鮮に近いソウルの北側にあって、いわば防衛線のようになっていたが、ジョージ・W. ブッシュ大統領の時に、ソウルの南側に移転した。当初は、北朝鮮の攻撃があったら、まっさきに米軍に死者が出るので、それが国内世論を盛り上げて米軍が参戦しやすいという「トリガー理論」(たとえば「リメンバーパールハーバー」、「リメンバーアラモ」といったのが有名だ)に基づいていた。

★朝鮮半島の核危機

当時は筆者も全く知らなかったが、クリントン政権時代の北朝鮮の核施設への攻撃計画のことが明かされている。北朝鮮は、自国の電力供給不足解消のために原子力発電を導入するという名目で、1985年にソ連から黒鉛炉型原子炉を導入。購入の条件は「核拡散防止条約」(以下「NPT」=Non- Proliferation Treaty)への加盟だったが、北朝鮮はIAEAの査察を拒否、世界各国の圧力で、ようやく1992年にIAEAの査察を受けたところ、使用済み核燃料からプルトニウムを密かに精製していた痕跡が見つかった。

もとから、電力供給が目的ではなく、自国は自国で守るという方針のもと、核爆弾を作る目的だったのだ。北朝鮮は1993年に「NPT」からの脱退を表明。危機感を抱いたクリントン政権は、北朝鮮の核施設に対する限定的な攻撃を計画する。当然北朝鮮は反撃するので、ふたたび挑戦半島が戦場になる可能性があるので、このとき在韓米軍兵士の家族を避難させている。当時NHKにいた池上さんは、もしかしたら戦争が始まるかもしれないという危機感を持って米国の出方を注視していたという。

日本では、ちょうど1993年7月の総選挙で、自民党が過半数を割り、野党に転落、その後、細川護熙政権、羽田孜政権を経て、自社さ連立の村山富市政権となって、驚天動地のまっただ中だったので、朝鮮半島のことはほとんど報道されなかった。

北朝鮮からの反撃があった場合の損害を推定させたところ、戦争開始から3ケ月以内に、米軍兵士5万2千人、韓国軍兵士49万人が死傷するという報告が出され、加えて多数の民間人も犠牲になるので、クリントン大統領は頭を抱えた。

そこで、ジミー・カーター元大統領を大統領特使として、北朝鮮に派遣して、金日成主席との会談で、北朝鮮は、核開発中止、「NPT]復帰の約束をし、黒鉛炉を廃棄する見返りとして、軽水炉の提供や以後北朝鮮に毎年食料と、火力発電用の50万トンの重油を供与することを約束した。

金大中政権の韓国も「太陽政策」として多額の資金を援助した。

北朝鮮は、この合意に沿って、黒鉛炉を廃炉にして、プルトニウム型の原子爆弾を作ることはやめたが、もう一つの原子爆弾の作り方であるウラン濃縮型の核開発をパキスタンから技術を得てひそかに進める。インドに対抗して核兵器を持っているパキスタンに北朝鮮はミサイルを売っており、密接な関係があるのだ。

ウラン濃縮型だと、ウラン鉱石は北朝鮮にもある。原子力発電所の建設は不要で、地下にウラン濃縮工場をつくってそこで秘密裏に核兵器用のウランを製造すればよい。原子爆弾については、「日本は原子爆弾をつくれるのか」のあらすじを紹介しているので、参照して欲しい。



2002年になって米国がこのことを突き止め、ケリー特使を派遣すると、北朝鮮はウラン濃縮型の核開発を認め、翌2003年に「NPT]を脱退する。

米国、ロシア、中国、日本、韓国は北朝鮮を入れた6カ国協議を始めるが、それからは北朝鮮のやり放題だ。

2005年に核兵器保有を宣言。
2006年に初の地下核実験を実施。平行して長距離弾道ミサイルの発射に成功。
2009年に二度目の核実験を実施。
2013年に三度目の核実験を実施。
2016年に四度目(水爆実験に成功したと発表している)、五度目の核実験を実施。
2017年に六度目の核実験を実施。
2018年に最初の米朝首脳会談がシンガポールで開催される
2019年に二度目の米朝首脳会談がベトナムのハノイで開催される
2019年に板門店で、米、韓、北朝鮮の首脳が会談

世界をだまして結局核兵器を持った北朝鮮の金一族は、これで一族安泰とほくそ笑んでいることだろう。核兵器を持った北朝鮮の金正恩は、選挙対策で外交の実績を欲しがる米国のトランプ大統領を手玉に取り、自信をもって、強気で交渉していることがわかる。

池上さんは、金一族の家系図を掲載している。

金一族家系図
























出典:本書215ページ

驚くのは金正恩の冷血さだ。金正日葬儀の時に金正恩と一緒に棺を運んだ体制トップ7人のうち、5人が2年後には粛清または更迭されている。

特に、上記の家系図にもある張成沢の処刑には、池上さんも衝撃を受けたという。張成沢は金正恩の叔父さんで、実質No.2と見られていたが、あっさりと銃殺された。張成沢は、金正日体制に替わった時、秘密警察組織を指揮し、1万人を処刑し、2万5千人を強制収容所に送ったといわれている。

テレビで放映されたマレーシアのクアラルンプール空港でのVXガスによる異母兄金正男暗殺も衝撃的だった。

次が池上さんがまとめている世界の核保有国リストだ。

核保有国と弾頭数









































出典:本書226ページ

核保有国に仲間入りし、金一族の独裁政治を維持するためには、身内も殺すという冷血な指導者が支配している国。そんな北朝鮮にまともに付き合えるとは思えないが、池上さんは当事者同士の話し合いで、核兵器非保有に合意したブラジルとアルゼンチンや、南アフリカなどの例を出して、核兵器の拡散を止めることは無理だと考えないほうがいいと高校生たちに力説する。

最後に民族差別につながる「朝鮮人だから」とか「韓国人は」とか偏見を持たないよう生徒に注意して、池上さんの講義は終わる。

この本を読んでいると、池上さんの知識の広がりは、どれだけあるんだと驚かされる。世界各地に、たとえば北朝鮮には2度行っているという池上さんの実地体験も貴重だ。

高校生向けの講義なので、質疑応答形式で進めていてわかりやすい。他の「世界の見方」シリーズも読んでみようという気になる本である。


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Posted by yaori at 15:01Comments(0)

2014年02月13日

知らないと恥をかく世界の大問題 4 池上彰さんのわかりやすい解説



わかりやすい解説で定評がある池上彰さんの世界情勢解説の最新版。

このブログでも紹介した1は2009年に発刊され、今回紹介する4は2013年5月の発刊だ。

知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)
池上 彰
角川SSコミュニケーションズ
2009-11


このシリーズはすべて読んでいる。毎回参考になることが満載で、大変役に立つ。まずは、ここをクリックしてアマゾンのなか見!検索で目次と最初のページを見てほしい。最初のページに載っている世界地図とその地域で起こっている問題の一覧もよくまとまっていて大変参考になる。

ちょうど前回ブログで紹介した「中国はもう終わっている」を読んだ後なので、中国関係の情報も参考になった。

中国の汚職はケタが違う。逮捕された薄煕来の蓄財は5,000億円近いと言われ、清廉といわれていた温家宝もニューヨークタイムズが、親族に2,150億円もの蓄財があると報じているという。

もちろん薄煕来も習近平も子供を米国に留学させている。ほかの多くの共産党の幹部も同様だ。

中国では腐敗した官僚のことを、「裸官」というそうだ。不正な口利きで蓄財し、子供を海外に留学させ、得たお金はマネーロンダリングで、留学先の国に送金する。万一に備えて家族や資産を海外に送り出し、自分だけが中国にハダカでとどまっているので、「裸官」というのだと。

これでは国のトップがこれでは、中国国民が不満を持つのは当たり前であると池上さんは語る。

中国では経済成長に陰りがみられ、「保八」が「破八」になっている。中国では地方政府の役人が、勝手に土地利用権を売って利益を上げている。これが汚職とバブルを引き起こしており、以前から不動産バブルが崩壊すると言われている。

この本ではゴーストタウンとなっている新築高層マンション群の写真を紹介している。

尖閣海域で中国の監視船の領海侵犯が昨年から頻発している。中国の実効支配のやり方は次のパターンなのだと。

1.領有権を主張する
2.漁民を送り込む
3.漁船団・監視船を送り込む
4.漁民保護の名目で海軍を投入する
5.上陸し、施設を建設する

これが南沙諸島、スカボロー礁等を中国が実効支配したやり方だ。

ベトナム軍が実効支配していたスプラトリー群島を1988年に中国軍海兵隊が攻撃したビデオがYouTubeに公開されている。ベトナム軍の輸送船を中国軍の駆逐艦が攻撃するシーンが紹介されている。



日米安保条約があるから中国は手を出せないだけで、米軍の後ろ盾がなかったら、間違いなく中国は尖閣諸島に上記のステップでアプローチするだろう。

もっとも日本側でも尖閣については領土問題は存在しないと公式発言しているが、実態として棚上げとしてきた。その証拠に、日本人の尖閣上陸は許されていない。また尖閣周辺の天然ガス開発でも、日本企業の採掘申し入れを日本政府は認めてきていない。

歴代首相は、「棚上げと向こうが言ったのだから、相手を刺激するようなことはやめよう」とやってきたのだと。

韓国の現代自動車の燃費虚偽表示問題。米国で人気の韓国車「エラントラ」は日本車より燃費がいい(40マイル/ガロン)という触れ込みだったが、アメリカの消費者団体が調査したところ、実際には25マイル/ガロンだった。

燃費虚偽表示問題は2013年末に和解が成立したが、韓国車のブランドイメージ毀損は免れない

韓国はアベノミクスを批判しているが、円安・ウォン高で韓国製品の競争力が落ちていることのあせりがあったのかもしれない。

2012年12月の総選挙で自民党は大勝したものと思っていたが、実は3年前に自民党が負けた時よりも得票数は少なかったのだと。2009年が1,881万票で、2012年が1,662万票。実に219万票も減っている。

国民は決して自民党を勝たせたわけではないのだと。民主党に愛想をつかせ、「支持する政党がない」として棄権してしまった人も多かった。

アベノミクスはマスコミの造語で、レーガン大統領の「リーガノミクス」に由来するという。

レーガン大統領の経済政策は、当時の大統領予備選の対立候補だったブッシュ父から「ブードゥーエコノミー」と呼ばれたほど、経済学的には支持が少ない大胆な政策だった。

安倍首相の経済政策もどうなんだろうと、マスコミが疑問を持って名付けたのが「アベノミクス」なのだと。

その他の話題も大変参考になった。簡単に読めるので、一読をおすすめする。


参考になったら、投票ボタンをクリック願いたい。


  
Posted by yaori at 23:14Comments(0)TrackBack(0)

2012年07月11日

池上彰のやさしい経済学1 わかりやすくためになる経済学の基礎

池上彰のやさしい経済学―1 しくみがわかる池上彰のやさしい経済学―1 しくみがわかる
著者:池上 彰
日本経済新聞出版社(2012-03-24)
販売元:Amazon.co.jp
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池上さんの「やさしい〜」シリーズは何冊も読んだ。この本の姉妹編の「やさしい経済学2」も読んだが、1の方が経済学の勉強という意味で役に立つ。

この本では、そもそも経済って何だろうか?という質問から始まって、最初の2章は、経済学の基礎知識の説明や、銀行ってどんな仕事をしているんだろう?というような、まさに「週刊子どもニュース」のノリだ。

たとえば、お金に関する漢字の多くが貝偏なのは、中国では子安貝をお金に使ったから。サラリーと呼ぶのは、古代ローマでは塩(サラリウム)が兵士の給料として支給されていから、というような面白くてためになる情報が多い。

しかし、この本の真価は、その次の偉大な経済学者の理論のわかりやすい紹介にある。池上さんは、この本でアダム・スミス、カール・マルクス、(デヴィド・リカード)、ケインズ、ミルトン・フリードマンの4人についてわかりやすく解説している。

現在日経新聞で連載している関連記事も同様の内容だ。

池上











出典:日経新聞

実は、4人の中で筆者が読んだのは、アダム・スミスの本だけということで、不勉強を反省するとともに、筆者の経済学の知識が乏しいことにあらためて気づかされた。

筆者は大学2年の時に内田忠夫先生の「経済学」を学んだが、ほとんど覚えていない上に、その後読んだ本も限られている。

内田先生の授業を受けて、推薦書のサミュエルソンの「経済学」を英語で読もうと思って、本を買うまではよかったのだが、大学生の英語力では限界があり、数式などもあって、結局挫折してしまった。

EconomicsEconomics
著者:Paul Anthony Samuelson
McGraw-Hill(2010-04)
販売元:Amazon.co.jp
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それが後を引いて、経済学は難しいという固定観念ができてしまった。マルクスの「資本論」も読んだというか、字面だけ眺めたようなものだ。難解な上に、時代も違うので、全然理解できなかった。

資本論 1 (岩波文庫 白 125-1)資本論 1 (岩波文庫 白 125-1)
著者:マルクス
岩波書店(1969-01-16)
販売元:Amazon.co.jp
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最近「まんがで読破」シリーズの「資本論」を読んだが、これがはたして理解に役立つのかわからない。

資本論 (まんがで読破)資本論 (まんがで読破)
著者:マルクス
イースト・プレス(2008-12-01)
販売元:Amazon.co.jp
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続・資本論 (まんがで読破)続・資本論 (まんがで読破)
著者:マルクス
イースト・プレス(2009-04-28)
販売元:Amazon.co.jp
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アダム・スミスの「国富論」は数年前に、日経新聞版が出た時に読んだ。これはまさに古典であり、それまで聞いてきたことを自分で確かめたという感じだ。「国富論」は”見えざる手”で有名だが、”見えざる手”という表現は一か所に、それも目立たず出てくるだけだ。

その後のアダム・スミスの評価がこの一言で決まったといってもよい言葉だが、本の中ではさらりと扱われているのが印象に残る。

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)
著者:アダム・スミス
日本経済新聞社出版局(2007-03-24)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究 (下)国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究 (下)
著者:アダム・スミス
日本経済新聞社出版局(2007-03-24)
販売元:Amazon.co.jp
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この本は京都造形芸術大学での講義を元にしたもので、前記のように日経新聞でも毎週?連載されている。経済学部ではない大学生に対する講義なので、非常にわかりやすい。

まず、アダム・スミスについては、「見えざる手」=市場の自動調節機能を中心に、「国富論」で出てくるピンを自分で作る場合と、分業して作る場合などの有名な例を紹介しながら説明している。

マルクスについては、資産家の友人のエンゲルスの援助を受けられたからこそ、労働が価値を生み出し(労働価値説)、資本家は労働者を搾取しているとして、いずれは労働者が革命を起こすと説きつづけられたことを説明している。

しかし、その後生まれた社会主義国は効率が悪いので、ことごとく失敗して、ソ連など大半の国は資本主義に戻ったことなどを、旧東ドイツ製のトラバントというおもちゃのような自動車を例に出しながら説明している。

800px-Trabant_601_Mulhouse_FRA_001





出典:Wikipedia

ケインズについては、1929年の世界恐慌のあと、恐慌から脱出する政策として、政府が赤字国債を発行して資金を調達し、それを使って公共事業を拡大して、雇用を維持し、経済を回復させるという処方箋を書いて、米国を大恐慌から回復させた(もっとも米国が経済回復したのは、第2次世界大戦で大量の武器を生産したからという説もある)ことを紹介している。

またロシアのバレリーナと大恋愛して、それでお金が必要だったことも付け加えている。

デヴィッド・リカードについては、「比較優位」の考え方で、国際貿易は双方の国にとってメリットがあると主張して、国際貿易の飛躍的拡大をもたらしたことを紹介している。

最後にシカゴ学派のボス、新自由主義の旗手・ミルトン・フリードマンの経済理論をわかりやすく紹介している。

筆者はミルトン・フリードマンやシカゴ学派の理論については、ほとんど理解していなかったことが、この本を読んでわかったので、現在「資本主義と自由」を読んでいる。

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)資本主義と自由 (日経BPクラシックス)
著者:ミルトン・フリードマン
日経BP社(2008-04-10)
販売元:Amazon.co.jp
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小泉・竹中改革は、シカゴ学派の新自由主義を日本に導入しようとするものだ。「もしドラ」の二番煎じのような「もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら」も、この点を書いているのではないかと思うので、今度読んでみる。

もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだらもし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら
日経BP社(2011-11-25)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

フリードマンの学説は、シカゴ学派、マネタリストと呼ばれ、絶対自由主義の立場は、このブログで紹介したマイケル・サンデルの「これからの正義の話をしよう」で有名になった「リバタリアン」と呼ばれており、小さな政府を提唱し、米国の「ティーパーティ」政治運動にも影響を与えている。

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
著者:マイケル サンデル
早川書房(2011-11-25)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

フリードマンの理論を、池上さんは、次の「こんなものいらない」リストで紹介しており、こんな考え方もあるんだと、頭の体操をすることを勧めている。

1.農産物の買い取り保証価格制度
2.輸入関税または輸出制限
3.家賃統制、物価・賃金統制
4.最低賃金主義や価格上限統制
5.現行の社会保障制度
6.事業や職業に関する免許制度
7.営利目的の郵便事業の禁止(これが小泉郵政民営化の基本だ)
8.公営の有料道路
9.商品やサービスの参入規制
10.産業や銀行に対する詳細な規制
11.通信や放送に関する規制
12.公営住宅及び住宅建設の補助金
13.平時の徴兵制
14.国立公園
15.企業のメセナ活動
16.累進課税(ユニタリータックス提唱)

フリードマンは、学校選択制も提唱している。

日本でも新自由主義的な政策は、橋本政権から「金融ビッグバン」ということで始めており、小泉改革では派遣労働の自由化を推し進めたことで、格差拡大をもたらしたと非難されている。

エキセントリックな議論が多く、賛否両論があるフリードマンだが、上記のような本を何冊か読んでみる。


まさに「やさしい経済学」というタイトル通りだ。経済にはあまり詳しくない人に絶対おすすめの本である。


参考になれば投票ボタンをクリックして頂きたい。







  
Posted by yaori at 23:10Comments(0)

2011年03月21日

池上彰の知らないと恥をかく世界の大問題37 待ち時間の読書に最適

池上彰の知らないと恥をかく世界の大問題37 イラスト図解版池上彰の知らないと恥をかく世界の大問題37 イラスト図解版
著者:池上 彰
角川SSコミュニケーションズ(2010-06-24)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

わかりやすい池上解説のムック本。

この本はアマゾンのなか見!検索に対応していないので、目次と主なサブタイトルを紹介しておく。

イントロダクション 今、世界はどうなっているのか
  1 ”世界のお金”は西から東へと動いている
  2 世界の国々の新しい”縄張り争い”が始まった

第1章 ギリシャより大変!?問題山積みの日本はどうなる?
  4 日本の借金は実は大変なことになっているの?
  5 少子高齢化というけど、私たちの老後は大丈夫?
  6 「子ども手当」の代わりに「配偶者控除」がなくなる?
  7 結局、郵政民営化はやめて、元に戻ってしまうの?
  8 地方のトップがいま熱い。国に対して何を怒っているの
  9 ガソリン代って、結局安くなるの。ならないの?
 10 高速料金が値上げに?「無料化」じゃなかったの?
 13 地域ごとに連休をずらすと、面倒なことにならないの?
 14 誰もが希望すれば「農家」になれるわけじゃないの?
 18 なぜ沖縄だけにアメリカ軍の基地が集中しているの?
 
第2章 アメリカはオバマ大統領になって、よみがえったの?
 20 どうしてGMみたいな大会社がつぶれちゃったの?
 21 オバマで”チェンジ”?ブッシュは何が悪かったの?

第3章 次の世界の”親分”はどこになる?
 23 石油が出る中東の国は、オイルマネーで潤っている?
 24 かつてのソ連、ロシアってやっぱり超大国?
 25 中国が急成長!日本は追い抜かれるの?
 26 ゼロの概念を発見した国、インドはなぜITが盛ん?

第4章 世界には人類共通の問題がいっぱいある?
 30 地球が温まると、どうしてよくないの?
 32 本当に怖いのは鳥インフルエンザ

第5章 今も世界のどこかで”紛争”が起こっている?
 35 イスラム世界の大国、サウジアラビアはどんな国?
 36 注目株のアフリカを日本も中国も狙っている?
 37 世界から核をなくすことはできるの?


待ち時間に読むのに最適

5時起きでガソリンスタンドに並び、3時間半ほど待った時に車の中で読んだ。ムック本なので字も大きく、イラストや図が一杯なのでちょうど良かった。

東北関東大震災の影響でガソリンなどの物流が東北向けに集中しており、関東地方ではガソリンが不足している。筆者の住む東京都町田市も売り切れで休業しているガソリンスタンドが多く、ドライバーは皆ガソリンの手当てに苦労している。

品川区に住む先輩が5時から並んで給油したという話を聞いていたので、家族からのプレッシャーもあり、筆者も今日は5時起きでガソリンスタンドに行き、順番としては10番ぐらいで給油を待った。

実は前日深夜に自宅周辺のガソリンスタンドを30分くらいかけてチェックして、適当なスタンドの目星を付けていたのだ。

筆者の行ったスタンドは、「19日は休業・20日は営業」と張り紙がしてあった。前日夜にタンクローリーが横付けになっていたのを見ていたので、給油を受けられるのは間違いないと判断して朝から並んだ。

他のスタンドは「売り切れ」とか張り紙してあり、これだと今日給油できるのかどうか不明だ。

ここまで事前準備しているのにもかかわらず、並んでいたらパトカーが2台来て、「給油待ちの列が長くなって交通に影響が出ている。このスタンドの営業再開は未定なので、解散するように」とスピーカーでアナウンスしだした。

「20日は営業」と張り紙してあるにもかかわらず、警察がああまでいうなら、あるいは経営者と連絡を取っているのかと一瞬思ったが、誰も列を崩す人はいない。

警官は先頭の数台のドライバーに話しかけていたようだが、結局誰も列を離れようとしないので、20分ほどであきらめて立ち去り、その後15分くらいしてまた1回アナウンスしたが、列に動きはない。

そうこうしているうちに8時40分過ぎにスタンドが開店し、どんどん給油を始めたので、筆者も制限の20リッター給油した。

結局あの警官達は、給油待ちの列が長くなりすぎて交通の邪魔となってきたため、でまかせで「このスタンドの営業再開は未定だ」などとアナウンスしていたのだ。

全くいい加減な警官達だ。朝早く起きて3時間以上もじっと待っていたドライバー達をだます行為であり、公務員として許し難い。

列が長くなって交通に影響が出ていたら、自分たちで交通整理に当たるか、経営者に連絡を取って早く開店させるかすべきであり、「このスタンドの営業再開は未定だ」などというウソをつくことは、あのスタンドの営業妨害にもなる。

ちなみに同じスタンドを午後通ったら、列が短くなっていたので、もう一度列に並んで20リッター給油した。2度目は10分くらいの待ち時間で給油できた。どうやら多摩地区のガソリン事情は好転しているようだ。

閑話休題。

この本は、見開き2ページで一つのサブタイトルを説明している。詳しい解説ではないが、それぞれに「これも気になる」というコラムもあり、自分の基礎知識を確認するのに役立つ。

特に参考になったものを紹介しておく。


7 結局、郵政民営化はやめて、元に戻ってしまうの?
亀井静香国民新党代表が郵政民営化の逆コース推進に積極的で、郵貯の限度額を2,000万円に引き上げる案を打ち出している。池上さんは、郵貯預入額倍増案を国民新党の特定郵便局長の政治力を味方に付けるためと、今でも最悪の国の借金をさらに拡大するために、郵貯資金で国債引き受けを拡大するためと見ている。

13 地域ごとに連休をずらすと、面倒なことにならないの?
そもそも地域ごとに連休をずらすという案があることを知らなかった。また現在のハッピィーマンデー(成人の日とか体育の日とかを必ず月曜日にして、三連休とする制度)も時限立法とはしらなかった。

米国の場合は、企業ごとに毎年休日を決めており、国民の祝日というわけではない。たとえばマーチン・ルーサー・キングズ・バースデー(1月15日)は以前はほとんどの企業が休日にしていなかったが、現在は休日にしている会社が多いと思う。

ワシントンズ・バースデー(2月22日)、リンカーンズ・バースデー(2月12日)も同様だ。

14 誰もが希望すれば「農家」になれるわけじゃないの?
農家になる(農地を購入する)ためには、農業委員会の承認を得なければならない。農家はガチガチに守られているのだ。


18 なぜ沖縄だけにアメリカ軍の基地が集中しているの?
沖縄に米軍基地が集中している最大の理由は、その戦略的な位置にある。朝鮮半島、台湾にも近く、この地域で事件が起こった場合には、短期間に行動できる。

21 オバマで”チェンジ”?ブッシュは何が悪かったの?
ブッシュの2大失策は、イラク侵攻とサブプライム問題だという。特にイラク問題は、大量破壊兵器があるということでサダム・フセインを追い出すためにイラクに侵攻したが、結局大量破壊兵器はなかった。

戦争の時の大統領は負けないということで、父ブッシュが湾岸戦争に勝利を収めていながら、翌年の大統領選挙でクリントンに負けた轍を踏まないようにイラク戦争を起こしたのだといううがった見方もあるという。

24 かつてのソ連、ロシアってやっぱり超大国?
プーチンが大統領から一旦退いたが、メドベージェフを大統領として、自分は首相となって院政を敷いている。

ロシア国民はプーチンの手腕を高く評価しているが、結局ロシアはエネルギー輸出で食っている国であり、単にエネルギー価格が上がり、ロシアが裕福になっただけではないかと池上さんは手厳しい。


簡単に読めて参考になるムック本である。


参考になれば投票ボタンをクリックして頂きたい。




  
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2011年01月01日

池上彰の情報力 ベストセラー「伝える力」の原型

2011年の最初のあらすじは、ニュース解説というテレビプログラムを2010年に大ブレークさせた池上彰さんの「伝える力」の原型の2004年の本だ。

池上彰の情報力池上彰の情報力
著者:池上 彰
ダイヤモンド社(2004-01-29)
販売元:Amazon.co.jp
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池上さんは2010年の流行語ベスト2に「いい質問ですねぇ~」が選ばれている。

当時は池上さんはNHKの社員で「週間こどもニュース」のお父さん役だったので、今のようにブレークする前の本だ。

この本はなか見、検索!に対応しているのでここをクリックして目次を見て欲しい。以下に章のタイトルだけ紹介しておく。大体の感じがわかると思う。

第1章 私の情報収集術

第2章 私の取材・インタビュー術

第3章 私の情報整理術

第4章 私の読書術

第5章 私の情報解釈術

第6章 私の情報発信術

池上さんの情報整理ノウハウや、わかりやすい文章の書き方を指南している。第6章の「私の情報発信術」では、わかりやすい文章の書き方についてもガイダンスしており、今度紹介するベストセラー「伝える力」の後半部分と同様の内容だ。

伝える力 (PHPビジネス新書)伝える力 (PHPビジネス新書)
著者:池上 彰
PHP研究所(2007-04-19)
販売元:Amazon.co.jp
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池上さんは同じような本がいくつもあるが、それぞれが面白く読ませる。参考になる情報が多いのはさすがだ。

この本も池上さんの意見に賛同できる点が多く、参考になる情報が満載だ。


私の読書術

特に「私の読書術」では大変参考になる点が多かった。いくつか紹介しておく。

★判断力を鍛えるためにも、いつでも本を手元に
池上さんは読書が最大の趣味ということはさておき、ニュースキャスターとして世の中の動きを知っておく必要があるから本を読むのだと。

池上さんは「タリバン」という本を9.11が起こる前に読んでいたので、参考になったという。
タリバン―イスラム原理主義の戦士たちタリバン―イスラム原理主義の戦士たち
著者:アハメド ラシッド
講談社(2000-10)
販売元:Amazon.co.jp
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「コーラン」も、「ハディース」も文庫本を読んだという。

コーラン 上 (岩波文庫 青 813-1)コーラン 上 (岩波文庫 青 813-1)
岩波書店(1957-11-25)
販売元:Amazon.co.jp
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ハディース〈1〉イスラーム伝承集成 (中公文庫)ハディース〈1〉イスラーム伝承集成 (中公文庫)
中央公論新社(2001-01)
販売元:Amazon.co.jp
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筆者は「コーラン」自体は読んだことがない。以前紹介した「コーラン入門」という本を読んだ。

図解 これだけは知っておきたいコーラン入門図解 これだけは知っておきたいコーラン入門
著者:島崎 晋
洋泉社(2007-06)
販売元:Amazon.co.jp
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★新聞の書評欄には、本探しのヒントや新たな発見がいっぱい
池上さんは斉藤美奈子さんの書評に絶大な信頼を置いているという。

誤読日記 (文春文庫)誤読日記 (文春文庫)
著者:斎藤 美奈子
文藝春秋(2009-09-04)
販売元:Amazon.co.jp
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筆者も新聞の書評欄や「日経ビジネス」、「週刊東洋経済」等のビジネス書の書評欄は参考にしている。

★通勤電車の中は理想的な図書館
まさに筆者も同感だ。

★書店で「時代」を感じ取ろう
池上さんは毎日書店をのぞくという。書店も重要な本の選択情報ソースだ。

★積ん読だけでもためになる
並んでいる本の背表紙をみても発想がわいて来るという。

★そもそも何のために情報収集するのか
池上さんは、情報収集自体楽しいが、それだけではなく、仕事の面でもプライベートの面でも正しい判断をするために情報収集するのだと語る。その通りだと思う。


私の情報発信術

★良い文章か悪い文章か。音読すればすぐにわかる
たとえば長い文章だと、読んでいて息が続かないという。筆者も意識して短い文章にしているが、常に注意が必要だ。

★原稿はワインのように、書いたら寝かせておこう
池上さんは一週間は寝かせておこうと言う。筆者も書いたそのままではなく、必ず一日以上置いて見直して正式に提出している。

池上さんは「ひとり突っ込み」と読んでいるが、原稿を書いたら、きちんと読み直さないで提出する人が結構多い。書いたらそれで仕事が終わったような気がするからだろう。

読みやすい文章にするには、池上さんの「ワインのように」というアドバイスは貴重だ。

★意識的に接続詞のない文章を書くことで、論理力を鍛える
「そして」の連発は小学生の作文並になる。

★順接の「が」は使わない
筆者も最近気を付けているが、「○○だが、△△だ。」という文章の場合、△△が○○を否定していない場合が「順接」だ。

「順接」の「が」の場合論理が繋がらない文章となる場合が多く、要注意だ。

★プリントアウトするだけで、自分の文章を読者の立場で読める
これも100%同感だ。やはり画面では細部までチェックしにくい。

★矢印が持つ意味は?安易な図解でかえってわかりにくくなることも
これも注意しなければならない。

以上、印象に残ったものだけリストアップしたが、その他にも懇切丁寧なアドバイスが満載だ。

是非なか見、検索!で目次を見て欲しい。

全体を通して、読者のためにという思いが伝わってくる。まさに「伝える力」の本である。


参考になれば投票ボタンをクリック願う。



  
Posted by yaori at 22:39Comments(0)TrackBack(0)

2010年11月23日

ヨンピョン島砲撃発生!知らないと恥をかく世界の大問題 2009年池上解説

2010年11月23日追記:

昨日ブログに、北朝鮮と韓国の停戦ラインが海上でははっきりしていないと書いたばかりだが、本日北朝鮮が韓国のヨンピョン島を砲撃した。



まるで予期していたようなタイミングだ。

局地的な紛争で終わると思うが、挑戦半島が依然として「停戦」状態にある、つまり「終戦」ではないことを思いしらされる事件である。


2010年11月22日初掲:

知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)
著者:池上 彰
角川SSコミュニケーションズ(2009-11)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

テレビの「池上解説」で大人気の池上彰さんの本。

池上さんの解説本はいくつか読んだが、大変わかりやすい。

テレビでもよく「池上解説」を見るが、最近のもので一番参考になったのは、北朝鮮による韓国警備艇の沈没事件で、北と南の停戦ラインは陸上は38度線できっちり決められているが、海上では双方の主張がかみ合わず、停戦ラインがはっきりしていないという話だ。なるほどと思う。

ハルバースタムの朝鮮戦争を扱った「ザ・コールデスト・ウィンター」のあらすじを近々紹介する。日本では朝鮮戦争はいわば忘れられた戦争だが、朝鮮半島ではいまだに朝鮮戦争の残渣(ざんさ)が残っていることを池上解説で初めて知った。

ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争 上ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争 上
著者:ディヴィッド・ハルバースタム
文藝春秋(2009-10-14)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

この本は2009年10月の発行で、2008年のサブプライム問題から、リーマン破綻、FRBバーナンキ議長の舵取り、「第2のフーバー」と呼ばれるブッシュ前大統領など、世界と日本の話題を多く取り上げて、わかりやすく解説している。

いくつか参考になった点を紹介しておく。

★インドでIT産業が発達したのは、新しい産業でカースト制度の縛りがないから。能力さえあれば、ITの仕事に就ける、まさに”インディアンドリーム”だと。それと英語が共通語で、アメリカと昼夜が逆なためアウトソーシングが受けやすかった。

★フランスのサルコジ大統領は、地中海沿岸諸国だけで「地中海連合」をつくろうとした。北アフリカから安い労働力を使って低コストで生産し、雇用拡大することによってEUへの移民流入を防ぎ、資源も確保するという戦略だった。しかしドイツのメルケル首相が口をはさみ、ドイツも加わった。目的の一つは地中海の海洋汚染の除去で、これにはフランスの世界的な水道会社が強みを発揮する。

★コーランに出てくる「ジハード」とはそもそも「努力する」という意味で、「ジハードで亡くなった者は、アラーのもとで暮らしている」と書いてある。イスラム世界に攻めてくる異教徒と戦うことも「ジハード」とされ、異教徒と戦って死ねば天国に行けるという発想になった。

★ウィグル族はトルコ系の民族で、イスラム教徒で、文字はアラビア文字を使う。1933年には一時「東トルキスタン・イスラム共和国」が建設されたこともあり、漢民族の中国政府がウィグル人を弾圧すると、イスラム系のテロを引き起こ可能性もある。

★イランはアメリカのイラク侵攻を見て、「イラクがアメリカから攻撃されたのは、イラクが核兵器を持っていなかったからだ。核兵器を持っていれば、アメリカも報復を恐れて攻撃できないだろう」と考えて、核兵器製造を視野に入れているのではないか。

★今のような「農作業=仕事をしなければお金をあげます」という減反政策をやめて、つくりたいものをつくり、大量に農産物を生産して価格が下がったら、国が一定の補償をするという制度にすべき。ヨーロッパはこの方法で自給率を上げた。

ちょうど民主党が政権交代を果たした直後だったので、民主党政権に対する期待が込められている解説が多い。

簡単に読めて参考になる本だった。池上さんの最新作も読んでみようという気にさせる本だ。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。




  
Posted by yaori at 19:25Comments(0)TrackBack(1)