2014年12月21日

格闘する者に○ 三浦しをんさんのデビュー作

格闘する者に○ (新潮文庫)
三浦 しをん
新潮社
2005-03-02


このブログで、「まほろ駅…」シリーズなど、何点か作品を紹介している三浦しをんさんのデビュー作。

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
三浦 しをん
文藝春秋
2009-01-09


三浦しをんさんは早稲田大学第一文学部を卒業。24歳の時に、この作品で小説デビューした。その当時は筆者が住んでいる町田市に三浦さんは住んでいて、高原書店という本屋でアルバイトしていたという。

東京の郊外の広い家に義母と義理の弟と暮らす大学の文学部に通う政治家の大学生の娘が主人公だ。政治家の父自身は東京都内に住んで、家に寄りつかない。

実は父は代々政治家の家への入り婿で、主人公以外には政治家の家の血筋を引く者がいないという設定だ。

主人公はマンガが好きで、マンガの編集者になるために出版社の就職を狙っている。大学院に進学することを考えている男友達と、すぐにイケメンに惹かれる美人の女友達といつも一緒だ。

K談社とか、集A社、丸川といった出版社が出てくる。

K談社のビルはパルテノン神殿のような古い建物ということだが、現在は近代的なビルに建て替わっている。

集英社は神保町にある。

タイトルは、K談社の筆記試験の監督者が、「該当(ガイトウ)するものに丸をしてください」と言うのを「カクトウ」と言っていたことに発している。

就職活動を描いた作品では、朝井リョウさんの「何者」をこのブログで紹介している

何者
朝井 リョウ
新潮社
2012-11-30


三浦しをんさんは2000年の作品。朝井さんは2012年の作品だ。

同じ早稲田大学を出て、実際に出版社に就職した朝井リョウさんの作品の方が、就職活動の苦しさや葛藤を描いていて、リアル感がある。

三浦しをんさんの方が、主人公もその友人たちも本当に就職する気があるのかよ?という感じだが、小説だから別にリアルである必要もないのかもしれない。

老人の書道家とつきあっている美脚の大学生という設定も奇抜で、喫茶店の中年男の独身のマスターなど、脇役も豊富で、テンポよくストーリーが展開する。

最初に唐突に出てくる象を引き連れた求婚者たちと王女の南国のお見合いの話が、半ばごろまで読み進めると、なぜ出てくるのか意味がわかってくる。

この出だしは面白い。

手軽に読めて楽しめる作品である。


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2013年12月28日

まほろ駅前狂騒曲 まほろ駅前多田便利軒シリーズ最新作

まほろ駅前狂騒曲
三浦 しをん
文藝春秋
2013-10-30


三浦しをんさんの、まほろ駅前多田便利軒シリーズの最新作。筆者の住んでいる町田市をモデルにしている。三浦しをんさんもかつて町田に住んで、書店でアルバイトをしていたようだ。

このシリーズは映画化され、多田便利軒のオーナーの多田に瑛太、いそうろう兼助手の行天に松田龍平という若手人気俳優が出演している。



第2作はテレビドラマになっている。




町田市は町おこしの一環で、映画が公開されるタイミングで通りの名前を「まほろ大通り」などに変えるなど、この小説を応援している。町田市図書館でも「まほろ駅前…」シリーズは大量に蔵書している。

この本も10月末に発売されたばかりの本だが、町田図書館で28冊も蔵書があるので、早めに予約したら12月にはもう読めた。

登場人物のイラストが楽しい。

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出典:本書イラスト

いつも通り小説のあらすじは詳しく紹介しない。「まほろ」駅前にある便利屋ー多田便利軒をめぐる出来事だ。

多田は幼い息子の死をきっかけに、妻と離婚して今の便利屋稼業を始めた。

そこに転がりこんできたのが高校の同級生の行天だ。行天は女性同士のカップルに精子を提供して、子供をつくるのを手伝ったという過去がある。

この本で、行天は「怖いものがあるのか」と聞かれて、「あるよ。記憶」と答える。

なぜ記憶が怖いんだ?

行天の両親のことや、幼い頃のことが今回初めて明らかになる。

無農薬野菜をまほろ市各地で生産し、販売しているHHFA(Home and Healthy Food Association)という集団が今回登場する。

そのリーダーが行天を知っていた。なぜだ?

行天とこの集団との接点は?

多田のロマンスや、行天の精子で人工授精して誕生した行天の娘・はるもはじめて登場する。

横中バス(神奈中バスのパロディ)の間引き運転有無の調査を多田に依頼するおじいさんや、息子に依頼されて息子を装って多田が見舞いに行く市民病院に入院している認知症のおばあさんなど、いわばレギュラー出演者も出てくる。(上のイラストから、それらしい人物がわかると思う)

470ページ余りの作品だが、一気に読んでしまう。まさにエンターテインメント小説である。


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2012年08月18日

舟を編む 辞書編纂をテーマとしたベストセラー小説

舟を編む舟を編む
著者:三浦 しをん
光文社(2011-09-17)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

三浦しをんさんのベストセラー小説。

家内が町田図書館で借りていたので読んでみた。現在町田図書館でリクエスト人気ナンバーワンの本だ。36冊蔵書があるが、800件弱のリクエストが寄せられているので、普通だと半年以上待たなければならない。

三浦しをんさんは、町田市に10年ほど住んでいたこともあり、町田を題材にした「まほろ駅…」シリーズなどの三浦さんの作品は、常に図書館のリクエスト上位にある。

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
著者:三浦 しをん
文藝春秋(2009-01-09)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

この本は250ページの本だが、1日で一気に読めてしまう。

本の帯が何種類かあるようで、アマゾンの表紙の絵も良いが、次の帯が一番登場人物がよくわかると思う。

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・右上から順に女性料理人の林香具矢(かぐや)。馬締が住む下宿の大家の孫娘だ。

・辞書編纂一筋で出版社を勤め上げ、定年後は嘱託社員となって同じ仕事を続ける荒木公平。

・営業部では変人扱いされていたが、辞書編集部に引き抜かれて天性の言葉に対する感覚を活かして新規の大辞書「大渡海(だいとかい)」編纂に取り組む馬締(まじめ)光也。

・左上が辞書監修者として常に用例採集カードを持ち歩き、辞書の用例として使う小説の初版本を捜し歩く松本教授。

・そして後半の主人公で、長年かけた「大渡海」が日の目を見る前に辞書編集部に異動してきた岸部みどり。

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・裏表紙の帯には辞書編集に取り組む馬締と、辞書編集部から営業部に異動した後もたびたび登場するチャラ男の西岡の絵が載っている。

小説のあらすじは詳しく紹介すると本を読んだときに興ざめなので、いつもどおり紹介しない。

ただ、250年近く続いているブリタニカ百科事典が印刷版を止め、電子版のみになってしまう時代なので、「大渡海」もいつ編纂中止に追い込まれるのかヒヤヒラしながら読んだとだけ書いておく。

三浦さんの小説は実にテンポが良い。

キャラクター設定も面白いので、いずれ映画化されるときには、誰が馬締になるのか想像するのも楽しい。ネットで調べたら、向井理(おさむ)という声がある。向井が身長182センチもあるとは知らなかったが、馬締も長身でやせ形という設定なので、たしかに適役かもしれない。

ちょっとした場面でも楽しめる。

たとえば、編集部の面々が松本教授と一緒に香具矢の務める料理屋「梅の実」に行く場面(アマゾンの表紙の帯の場面)では:

「馬締はいつにも増して、香具矢と目を合わせようとしない。そのくせ、器を受け取る際にちょっとでも指先が触れようものなら、盛大に赤面する。

香具矢はいままでよりも頻繁に、「みっちゃん」と呼びかける。そのくせ、贔屓だと取られてはならじと意識するあまりか、馬締のお通しだけ明らかに量が少ない。

なんなんだ。おまえら中学生か。なにがしたいんだ。

西岡の苛立ちは最高潮に達する。…」

辞書編纂の場面で、某大学教授の「西行」に関する原稿を西岡の依頼で馬締が編集してしまう場面も面白い。

某大学教授の原稿は、個人的思い入れ過多の文章だった。

「西行(1118〜1190)平安時代から鎌倉時代にかけて活躍した歌人にして僧侶。出家前の名は佐藤義清(のりきよ)。鳥羽上皇に仕えた北面の武士だったが、二十三歳の時に思うところあって、泣いてすがる我が子を振りきり出家した。

以後、諸国を旅し、多くの歌を詠む。「願わくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月のころ」は、現在にいたるまで人口に膾炙(かいしゃ)した歌である。

注:きさらぎの望月のころ=2月の満月の頃
  人口に膾炙=人々の評判になって広く知れ渡ること。

日本人であればだれしも、西行が描出したこの情景に感銘を受け、自分もそうありたいと願うことだろう。自然と心情を巧みに詠み、無常観に裏打ちされた独自の歌風を築いた。河内の弘川寺で没。」

これを馬締は次のように修正する。

「西行(1118〜1190)平安末・鎌倉初期の歌人、僧。俗名は佐藤義清(のりきよ)。北面の武士として鳥羽上皇に仕えるも、二十三歳で出家。

以後、諸国を旅し、自然と心情を詠んで独自の歌風を築いた。「新古今和歌集」には九十四首と最多歌数を採録。家集に「山家集」など。河内の弘川寺で没。」

しかし、馬締は、これだけでは辞書として不足だという。西行=不死身(西行が富士見をしている姿が好んで絵に描かれたことから、富士見から不死身となった)とか、西行=タニシ、西行桜西行掛け=西行背負い西行被き(かずき)などにふれる必要性についても議論をかわす。

そして西岡の意見を容れて、馬締は次のように付け足す。

「(西行が諸国を遍歴したことから)遍歴する人、流れもの」

いかにも辞書編集部でありそうなやりとりだ。ちょうど最近「西行物語」という本を読んだところだったので、興味深かった。

[新訳]西行物語[新訳]西行物語
著者:宮下 隆二
PHP研究所(2008-11-28)
販売元:Amazon.co.jp
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辞書編纂についても結構勉強になる。たとえば字体だ。辞書で使う漢字は「正字」(=「康煕字典」に基づいた正規の字体)をもって旨とするという。ただし「常用漢字表」と「人名用漢字別表」に載っている感じは「新字体」で表示するという。

たとえば「揃える」だ。

「揃える」のつくりの「前」の字が、「正字」だと、点々が右下がりのななめの点々になっており、横平行ではない。

これが活字としては正統な字体だという。

いままで全く気がつかなかった。

辞書の紙質についての製紙メーカーとのやりとりも面白い。辞書の紙は、薄くても裏が透けて見えず、指に吸い付くようにページがめくれるのがいい。紙同士がくっついて、複数のページがめくれるようなことがないような「ぬめり感」が重要だという。

これこそが辞書に使用される紙が目指すべき境地だと。

この本は岩波書店の辞書編集部と小学館の国語辞典編集、王子特殊紙株式会社の協力を得ているという。なるほどと納得できるやりとりだ。

筆者が中学に入って最初に買った辞書は三省堂の「広辞林」だった。実はみんなが言っていた「広辞苑」を買おうと思っていたのだが、名前が似ているので間違えたのだ。

その「広辞林」も昭和58年の第6版を最後に絶版となっている。その代りなのか、三省堂は「大辞林」という辞書を出している。

広辞林広辞林
三省堂(1983-01)
販売元:Amazon.co.jp
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大辞林 第三版大辞林 第三版
三省堂(2006-10-27)
販売元:Amazon.co.jp
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しかし「大辞林」もマーケットシェアという意味では、「広辞苑」に大きく差をつけられている。クイズなどでも、「広辞苑に載っている4文字熟語のなかで…」などという風に、「広辞苑」は良く使われている。

広辞苑 第六版 (普通版)広辞苑 第六版 (普通版)
著者:新村 出
岩波書店(2008-01-11)
販売元:Amazon.co.jp
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実は筆者の家では、古い広辞苑があったが、先日ついに処分した。大体ネットで検索すれば事足りるので、辞書を引く機会は本当に少なくなっている。

いつ辞書編纂が中止となるのか?そんな不安を覚えながらも、楽しく読めて、参考になる小説である。


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Posted by yaori at 17:51Comments(0)TrackBack(0)

2009年12月01日

まほろ駅前 番外地 まほろ駅シリーズ第2弾

まほろ駅前番外地まほろ駅前番外地
著者:三浦 しをん
販売元:文藝春秋
発売日:2009-10
おすすめ度:4.5
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このブログで以前紹介した三浦しをんの「まほろ駅前多田便利軒」シリーズの第2弾。

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
著者:三浦 しをん
販売元:文藝春秋
発売日:2009-01-09
おすすめ度:4.0
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筆者の住む町田をモデルにしたまほろ市の多田便利屋が関わる人間模様。

第1作と同じ人物が登場する。

チンピラの元締めで知性抜群の星良一、横中バスが間引き運転している証拠を掴むことを生き甲斐としている岡老人とその夫人、塾通いの小学生田村由良、まほろばキネマの看板娘だった要介護の曽根田のばあちゃんなど。

もちろん主人公の多田便利軒の多田と、高校の同級生で肉体鍛錬派の行天のバツイチコンビは前作どおりだ。

新しいキャラクターとしては、エンゲージリングの大きさで差を付けられ復讐を誓うまほろ信用金庫女性職員、ファミレスチェーンのキッチンまほろの女社長などだ。

筆者のポリシーとして小説のあらすじは詳しく紹介しないが、前作で紹介された多田と行天のありえない過去が、今回はほとんどふれられていない。

前作のような「小説は事実よりも奇なり」という底抜けの面白さはないが、前作の延長で楽しく読める。

ネタ出しに苦しむ感じがないので、このシリーズはたぶん第3作、第4作と続くのだろう。


手軽に読めるエンターテインメントの本である。


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Posted by yaori at 23:52Comments(0)TrackBack(0)

2009年10月20日

星間商事社史編纂室 三浦しをんさんの最新作

星間商事株式会社社史編纂室星間商事株式会社社史編纂室
著者:三浦 しをん
販売元:筑摩書房
発売日:2009-07-11
おすすめ度:3.5
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三浦しをんさんの最新作、「星間商事株式会社社史編纂室」を読んでみた。

三浦しをんさんの作品は以前「まほろ駅前多田便利軒」を紹介したが、あれは直木賞受賞作だからというよりは、筆者の住んでいる町田市をモデルにした小説だったから読んでみた。

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
著者:三浦 しをん
販売元:文藝春秋
発売日:2009-01-09
おすすめ度:4.0
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筆者も商事会社に勤めているので、この本はタイトルに興味を惹かれて読んでみた。

筆者のポリシーとして小説は詳しいあらすじは紹介しないが、「まほろ駅前…」と同じく、この本も「事実は小説より奇なり」ではなく、「小説は事実より奇なり」という感じだ。

社史編纂室に左遷されたアラ30の女性主人公が、実は「さぶ」(今や廃刊となっているようで、古いかもしれないが、他にうまい言葉が見つからないので)系の同人誌を女友達2人と10年来作っているオタク(ただし本人はノーマル)という設定だ。

商社に勤める筆者の目からして、ストーリーはありえない展開だが、エンターテインメントとしては大変面白いので、それでよいと思う。

登場人物もありえない設定だし、奇想天外で面白い。

こういう小説を読むと、読書はエンターテインメントなんだと妙に感心してしまう。

大変面白いので、小説が好きな方には是非おすすめする。


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2007年03月17日

まほろ駅前 多田便利軒 小説は事実より奇なり(?)

まほろ駅前多田便利軒


筆者は東京都町田市に住んでいる。

神保町にあるオフィスまで、電車に乗っているのがちょうど1時間と、都心から離れているが、町田の町は自然に恵まれており(ハミングバードかわせみも来ます!)、プールや図書館などの公共施設も充実しているので、気に入っている。

その町田市を舞台にしたのが、この「まほろ駅前多田便利軒」だ。

直木賞受賞作でもある。

もちろん小説なので実際とは異なるが、筆者の住んでいる分譲地の裏を流れる鶴見川(小説では亀尾川となっている)の源流の話や、町田駅前の昔ながらの商店街(仲見世)、駅裏のあやしげなホテル街など、風景が思い浮かんで楽しく読める。

筆者のポリシーとして小説は詳しいあらすじは紹介しないが、この本は「事実は小説より奇なり」ではなく、「小説は事実より奇なり」という感じだ。

まほろ駅前に小さなオフィスを構える便利屋に持ち込まれる仕事から起こる様々な事件を描いたもので、得体の知れない高校の同級生と偶然再会して、彼が相棒となる。

バツいち同士の主人公と相棒で、それぞれが数奇な過去を持つという、ありえないストーリー展開だ。

チワワの新しい飼い主を見つけてくれという最初の依頼が、全体のストーリーをつなぐ横糸のようになっている。

面白く一気に読めるので、息抜きに読まれることをおすすめする。


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Posted by yaori at 10:56Comments(0)TrackBack(0)